──────鷹吊村、教授──────
街灯も少なく、八月とはいえ少し肌寒い時間帯、彼の車は鷹吊村に到着した。要石と呼んでいた物は粉々に砕け散り、何も知らぬ人が見ればそれが元は水晶であった事に気づける人は少ないだろう。
「はっ、ここまで割れてまだ無事とは思わなかったが、しぶといようで何よりだ。が、今も砕けているということはまだ何か起きているという事だからな、急がねばなるまい」
彼の言葉の通り、その水晶は未だに大きな欠片から不定期に、しかし確実に、少しずつ割れ続けていた。
「きょおーじゅぅー!!!! 」
上から少女の叫ぶ声が少しずつ近づいてきていた、その声は弥子の物ではなかったが、彼にはその声の主に当たりがついているようだった。
「まさか・・・もう来たのか?」
ズドンッ!! と大きな音を立て、彼のすぐ隣に何かが着地する。
「
そう言いながら立ち上がる少女には、犬のものと思しき耳と尻尾が着いている。
「まだ呼んだ訳では無いし、どうやってここが分かった?」
「教授の匂いは独特の物ッスから! らくしょーッスよ!」
「そうか、まあいい。お前が居るなら楽になるだろう、弥子は探せるか?」
「持ち物があれば簡単ッスけど、やこって誰ッスか?」
「少し前に拾った」
「ひろ・・・った・・・?」
「何だ?」
「えっと・・・えっと。誘拐、ッスか?」
「違う! 怪異関連で孤児になってたから養子にしたんだ!」
「なるほど?」
「それで、持ち物だったならこれでいいか?」
「何スかこの粉」
「今弥子の持ってる物と共振させてる要石だった物だ、触らない方がいいぞ」
「そうなんスか?」
「ああ、これは指向性を持たせてあるから触らなければ問題ないがな。それで、追えるか?」
「問題ないッス! こっちッスね!」
「分かった」
──────鷹吊村内部──────
狛子の鼻を頼りに村の中を進んでいく、不意に立ち止まると首を捻りつつ声を出す
「んんん? ・・・スンスン、うえぇ」
「どうした」
「いや、何か匂いが・・・
「
「弥子ちゃんの匂いもあるんスけど・・・」
「けど?」
「色んな匂いがすると言うか、いや、匂い自体はどこでもするにはするんスけど。同じ方向、場所? から違う匂いがするし、違う場所から同じ匂いがするんスよ」
「どういう事だ?」
「あう、私にもわかんないッスよ・・・。怪異の匂いなんスけど、まったく同じ場所から人の匂いがしたり、違う場所から同じ匂いがするんス」
「違う場所から同じ匂いはまだ有り得るんじゃないのか?」
「匂いが繋がってないッス、だからこれは別のモノから同じ匂いがしてるんスよ、多分・・・。なんか匂いで騙されてる気分ッス・・・自信無くすッスよ」
「・・・! いや十分だ、助かった」
「へ?」
「あと少し足りない。検証すべきだな」
「あの?」
「狛子」
「はいッス!」
「神社に行くぞ、ここにもあるだろう」
「え? 弥子ちゃんは?」
「弥子なら大丈夫だ、アイツなら何とかするだろう」
「アイツ? ・・・まあわかったッス」
──────弥子、数時間前──────
空が赤くなり、日も沈む頃。二人は山の中、少し開けた場所へと到着した。
「もしかしてここですか?」
「ええ、ここから見る夕日が綺麗なのよ、ほら」
その場所からは丁度よく夕日が景色の中へ沈む様子が見て取れた
「おおー! 凄いですねえ!」
「でしょう? ・・・ねえ、弥子ちゃん」
「はい?」
「楽しかった?」
「はい!」
「じゃあ、ずっと楽しく、いましょうね?」
「え?」
いただきます
がぷり
時系列が分かりずらいかもしれないですが
前回の[弥子、夕方]の少し後が今回の[弥子、数時間前]にあたります