笛吹は神浜市を抜け出した後、ある豪邸の前に立っていた。
そこは、たまたま知り合った女友達が済んでいる家であった。
少し時を遡ろう。彼は夏目書房で政治に関する本を読んでいた。
それというのも、この世界、不自然なくらいに穏やかなのだ。
もちろん、中東情勢はいつも怪しいし、EUとロシアはいつも対立している。
それでも、現実と比べたらかなり穏やかな部類に入るくらいだ。
おそらく、原作とやらを円滑に進めるための補正だろう。
しかし、原作が終わったら、どうなる?翌日には第三次世界大戦かもしれない。
それはオーバーかもしれないが、生活は常に政治に左右される。
転生者だとしても、それは変わらないのだ。知っておくに越したことはない。
「ふ、ふーくんが政治に興味を持ってる・・・!明日は、大雪ですかね?」
夏目かこはまるでこの世の終わりを見たかのような顔をしていた。
それもそうだろう。それまでの彼はSFにばかりこだわっていたからだ。
「・・・この世界に一帯一路構想は存在しないのですか。中国もそこまで覇権的じゃないし」
「ふ、ふーくんが難しいことを・・・ぎゃふん」
衝撃のあまり、かこは気絶してしまった。
せっかく転生したというのに、原作介入もせずに、政治を勉強していた。
前世で勉強していたのもあって、スムーズに進んだ。
「・・・ずいぶんと政治に興味を持っているんですね」
話しかけてきたのは、白い髪の美しい女性だった。
「・・・ええ、結局、何かあったら僕たちのところに跳ね返ってくるので」
「ちゃんと意識があるんですね」
「少なくとも、物事の本質を一ミリでも理解できれば、
突然の事態にパニックにもならず、トイレットペーパーも買い漁らずに済みますから」
女性は一冊の本を手に取る。
「地政学・・・あまり聞いたことがないですね」
「まあ、日本だと半ば禁止されていたと聞きますからね」
マギレコ世界の日本でも、それは変わらなかった。
僕は一体何の小説を書いているのだろう?
その後、その女性、美国織莉子とは政治の話で仲良くなった。
お泊りに関しても、向こうから持ち掛けてきたのだ。
これは非常にグッドタイミングであった。
そろそろ、ワルプルギスの夜が来るかもしれなかったからだ。
駅に向かう途中で、友人の転生者にばったりと会った。
いつの間にか聖杯戦争が始まっていたようだ。
見捨てることはできないので、神様との直通電話をあげてやった。
そして、話は元に戻る。豪邸の前に立っていて、そしてメイドに案内された。
その後は、普通に政治の話題でいつも通り盛り上がった。
地政学に関しては、いつの間にか笛吹が教えられる側に回っていた。
「やっぱり一帯一路は駄目ですかね?」
「アイデアはいいんです。でも、それが長期的に持つか・・・」
「ですよねー」
こうしているうちに、いつの間にかワルプルギスの夜は討伐されたようだった。
「・・・僕の街がとんでもないことになっていますね。
帰らないと。少しでも人手が必要でしょうから」
「ええ、そうした方がいいわね」
こうして、神浜に帰ると・・・。
「・・・ふーくん?」
かこが、今にも怒り出しそうで、泣き出しそうな顔をしていた。
「・・・ちょっとお話しよ?」
「アア、オワッタ・・・!」
こうして、別の意味で難を逃れることには失敗したのだ。
「・・・というわけで、僕は織莉子さんの家にいたんですよ。
その後、酷い目に遭いましたがね。どうしました、碑石さん?」
「・・・君は、本当に善意で彼女が君を家に招いたと思うのかい?」
「それはどういう・・・もしかして、彼女は原作の登場人物だったと?」
「ああ、それも未来が見える魔法少女だ」
「・・・えっ」
「それで、来たる破滅とやらは回避できたのかい?」
「わからないわ?少なくとも、破滅していく神浜から離すことはできた。
・・・でも、見えた未来より被害が少ないわ」
「つまり、神浜はもっと酷いことになると?」
「ええ、そういうことになるわ」
「そこに、笛吹とかいう奴がいると、ジ・エンドか。
先に殺した方がいいんじゃないか?」
「・・・それはそれで、嫌な予感がするのよね」
「はあ・・・あんな男にどうして」
「悪い人ではないわ。考えも深いし、誰も考えたことない戦略を提案するから」
「イッタイ・イチロのことかい?あれってただ金で他の国を釣ってるだけじゃないか」
「そうともいうわね。それに・・・あれ自体、彼独自の考えじゃない気もするわね。
とにかく、今度も神浜市への警戒を怠らないでちょうだい」
「・・・わかったよ」
心根が遅れてやってきた。
「あっ、心根さん。この写真について詳しく」
笛吹はかごめからもらった写真を見せた。
「げっ・・・撮られてたのかよ。
あれは数日前のことだったな・・・」