あの頃、僕たちは輝いていた   作:ryanzi

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神浜市(もうすぐ爆破予定)にて

外に色々な意味で出られなくなった心根は木彫りの仏像を彫っていた。

それは自分が奪ってしまった魔法少女たちに対する供養と懺悔も兼ねていた。

いつかはこういうこともあると覚悟していた。

そもそも、魔女も元をたどれば魔法少女だ。

彼自身、とっくにかなりの数の魔法少女の命を奪ったことになる。

 

「・・・わかってはいるんだけどなあ」

 

それでも、心のどこかで自身を責めていた。

いくらなんでも、殺すことはなかったんじゃないか。

しかし、同時にこんな思いもこみ上げる。

彼女たちも死くらいは覚悟していたのでは?

だから、恨まれる筋合いはないという気もしてきた。

それに、世間的には事故扱いだから、将来には関係しないはずだ。

魔法少女が彼をいくら責めたところで、彼女たちは社会的には少数派だ。

これからも、彼の人生は何の障害もなく続くはずだ。

それでも、心根は自分を許せなかったからこそ、こうやって仏像を彫っているのだ。

仏像といっても、掌に乗るような小さなサイズだ。

 

「うむ、木彫りの仏像か。いかにも罪人らしいな」

 

「・・・十七夜か、罪人とは聞こえが悪いな?」

 

「実際、魔法少女を殺したのは確かだろ?」

 

「正当防衛って言葉を知ってるか?」

 

「過剰防衛という単語もあるぞ?」

 

「ずいぶんと平気そうなんだな?殺人鬼と同じ部屋なのに」

 

「平気そうに見えるなら、ずいぶんとおめでたいな」

 

彼女は魔法少女姿に変身した。

 

「遺体で見つかった魔法少女はほとんどが私の弟子だったんだがな?」

 

彼女は武器を心根の喉のギリギリに近づけた。

 

「・・・正直な話、あいつらの自業自得じゃないのか?」

 

心根は臆せず、そう言った。

 

「奴らは、何の罪もない一般人に手を出そうとした。

そして、そいつは俺のダチで、危うく死ぬところだった」

 

「・・・確かに、話を聞くだけだと自業自得だな」

 

「俺もやりすぎたさ。あの中には、何の罪もない奴もいただろうな。

でも、それが何だっていうんだ?俺は俺のやるべきことをやった。

それはそれで、これはこれだ。もう帰ってくれないか」

 

彼女は普通の姿に戻っていた。

 

「・・・それはそれで、これはこれだ。いい言葉だな。

いつか、その言葉にお前が殺される日が来るのを待っているよ、心根」

 

「残念だったな、俺はそう簡単に死なねえよ、十七夜」

 

彼はまた一人、部屋に取り残された。

それと同時に、携帯の着信音が鳴り響いた。

それは、笛吹からのメールを知らせるものであった。

その頃、笛吹の家の前にある男女が訪れていた。

 

「あれ、笛えもんいないのか?」

 

「また日を改めましょうか、無花果さん?」

 

「そうするしかないよな、というか、そうした方がいいな。

もしかしたら、イカレ小説の執筆に全集中しているかもだし。

というより、出歩くの怖い」

 

「確かに・・・急に事故が起こったようですからね」

 

「あれ、絶対事故じゃねえだろ・・・なんで地中の天国が・・・」

 

そこに、たまたま水波レナの弟が通りかかった。

 

「あれ、無花果兄ちゃんじゃないですか」

 

「おっ、レナ弟よ。久しぶりだな」

 

「あれ、知り合いですか?」

 

「ああ、友人の弟だな」

 

「・・・その人は?」

 

「こいつは沖田総司、俺を毎日〔規制〕してくる奴だ」

 

「沖田さんの第一印象を最悪にしないでくださいよ!?」

 

レナ弟は溜息をついた。

 

「・・・姉ちゃん、怒っているよ?

無花果兄ちゃんが急に行方不明になってしまったから。

しかも、彼女までいるんですか。命の覚悟くらいはしといたほうがいいかと・・・。

あと、小説兄ちゃんは怪我で入院しています」

 

「「えっ?」」

 

そこに、秋野かえでも通りかかった。

 

「ふゆっ?無花果くん、生きていたの?」

 

「かえで先輩、勝手に殺さないでください。

あっ、これ、先輩へのお土産です」

 

彼は愛媛県銘菓であり作者の大好物の一六タルトの入った袋を渡した。

 

「ありがとう、無花果くん・・・じゃあ、死のうか」

 

「「えっ」」

 

「言い忘れていましたが、かえで姉ちゃんに会っても死だよ?」

 

「レナの弟さんの言う通りだよ・・・私はずっと待ってたの。

無花果くんが帰ってくるのを。そして、生きて帰ってきてくれた。

でも、余計なの持ってきちゃったね、ふゆう・・・。

レナちゃんを悲しませた罪、万死に値するよ?」

 

無花果と沖田は恐怖した。このままでは、明らかに殺される。

 

「レナ弟よ、ここはちょいっと助けてくれないか」

 

「沖田さんからもご褒美あげますから」

 

「仕方ないなあ、俺が何とかしますよ・・・」

 

レナ弟はおもちゃの剣を構えて、深呼吸した。

 

「ここは煉獄兄ちゃんから教えてもらった技を使いますか。

・・・炎の呼級、壱の型、不知火」

 

剣は炎を纏い、一瞬で彼は間合いを詰め、かえでを斬りつけた。

 

「峰打ちですよ、勘弁してくださいね」

 

「ふ、ふゆう・・・」

 

「悪は滅びましたよ、無花果兄ちゃんと〔検閲〕姉ちゃん。

もし、小説兄ちゃんに会いたかったら里見メディカルセンターに行ってくださいね

俺はおつかいにいかなくてはいけないので、それでは。

あと、ご褒美とやらはいりませんから。俺は健全な少年ですから」

 

彼はそれだけ言って、立ち去った。

 

「沖田さんの第一印象、最悪になってたじゃないですか!

・・・それにしても、今の子は何者なんですか」

 

「それは俺が聞きたいよ???どうして炎の呼級を使えるんだよ????

なんだろう、あまり描かれないモブが二次創作で強化されるような・・・」

 

同じ時間、大東区、かごめは一人さまよっていた。

 

「・・・」

 

「あら、あなたこの前の・・・」

 

「紅晴結菜さん、ですか」

 

「ずいぶんと酷い顔してるじゃない」

 

「結菜さんこそ、さっきまで殺し合いをしていたような顔ですよ」

 

「お互い、酷い顔ね。そこのベンチに座りましょ」

 

「・・・そうしますか」

 

二人とも、溜息をついた。

 

「・・・ふーくん、いえ、笛吹文雄は知っていますか?」

 

「知っているわよ、心根のダチでしょ?私のダチのダチに当たるわ」

 

「・・・私、その子が傷つけられたことを知って、ネオマギの奴らに殺意が湧きました」

 

「私たちもよ、ダチの親友が傷つけられたっていうんだし。

今頃、私の妹たちが駆逐しているはずよ」

 

「でも、ふーくんの幼馴染のかこさんは違ったんです。

真っ先に、病院に向かったんです。

それでわかったんです。どうやったってかこさんには勝てないって。

私、恥ずかしくなったんです。この前までかこさんに殺意を抱いていた自分が」

 

「・・・一つだけ言うわ」

 

「・・・何ですか」

 

「幼馴染だからって、そのまま結びつくわけじゃないわ。

幼馴染だと油断していたら、他の女に取られるんなんてケースはいくらでもあるわ」

 

「・・・勝ち目あるんですか?」

 

「勝ちに行くのよ」

 

「・・・ありがとうございます。少しだけ、元気が出ました」

 

そう言って、かごめは立ち去ろうとした。

 

「待ちなさい、あと一つだけ助言があったわ」

 

「・・・」

 

「ころしてでもうばいとる、という選択肢が昔のゲームにあったらしいのよ」

 

「やっぱ最低ですね、結菜さん。参考にさせてもらいます」

 

美樹さやかという少女が急に血を吐き出したらしいが、神浜市外なのでカット。

 

「ひ、ひどい・・・ゴハッ。恭介は私と・・・」

 

台詞だけでも出してやっただけ感謝したまえ、さやかくん。

さて、里見メディカルセンターに視点を移そう。

 

「・・・ふーくん、コーヒーですよ」

 

「うん、ありがとうございます」

 

「今、どこまで読み進めましたか?」

 

「ちょうどヨーロッパが全滅したあたりですね」

 

「さらっと怖いこと言いましたね!?」

 

病院内でも、二人の日常は変わらなかった。

のんびりと、平凡で・・・そんなものだった。

 

「・・・あれっ、砂糖がありませんね」

 

「大丈夫ですよ、かこさん。持っていますから」

 

「あれっ、いつも持ち歩いていましたっけ?」

 

「なんかポケットに入っていたようなんですよ」

 

笛吹はそんな日常を崩したくなかった。

だから、申し訳ないとは思いつつも、それを実行に移した。

 

「・・・おいしいですね、コーヒー」

 

「うん・・・あれっ、何だか眠たく・・・」

 

カップの割れる音、笛吹は準備を始める。

かこには後で謝らなくてはならないだろう。

 

「・・・

 

それから十分後、碑石が入った後には全てが手遅れだった。

病室には、ベッドの上に移されたかこだけが残されていた。

外からの風で、ページがぱらぱらとめくられていた。

 

「あっ、碑石さ・・・えっ、事件?」

 

「久しぶりだね、無花果くん?脱走だよ」

 

沖田が零れていたコーヒーを舐める。

 

「ペロッ、これは・・・睡眠・・・ぐう」

 

案の定であった。

 

「・・・この〔放送禁止〕馬鹿は放っておくとして、笛えもんが脱走?」

 

「ああ、彼は彼の責務を果たそうとしているんだ・・・」

 

「・・・どういうことだよ?僕がいない間に何があったんだよ?」

 

「・・・悪いが、後で説明させてもらおう。私は行かなくてはならない」

 

そう言って、碑石は立ち去ってしまった。

入れ替わるように、正史郎が来た。

 

「・・・何があったか予想ができるな」

 

「正史郎、何がどうなっているんだ?」

 

「さあな、ただわかることは、笛吹たちが負ければ神浜に未来はないということだ」

 

「そろそろ安全だと思って帰ったら、とんでもないことになってた件について」

 

「この世界で平穏な生活を送れる奴がどれほどいると思うんだ?」

 

さらに、ななか一派がやってきた。

 

「あら、無花果さん・・・生きてたんですね。

あと、この状況について説明を」

 

さらにさらに、かごめが窓ガラスを割って入ってきた。

 

「殺しに来ましたよ、かこさん!ふーくんは私のも・・・あれ?」

 

数秒で彼女は取り押さえられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その男は、神浜市役所における最後の人間の職員であった。

彼は転生者だった。それも物語に関わることを好まなかった部類の。

そのために、原作とやらが始まる二十数年前に転生した。

大人だったら、学生である魔法少女に関わる確率は少なくなるからだ。

そして、大人になった彼は市役所職員という比較的安定した職に就いた。

最近、恋人(もちろん原作には関係ない)もできたばっかりで人生は順調だった。

しかし、ワルプルギスの夜の襲来後に就任した市長により不安定になった。

次々と業務はAIに取って代わられて、同僚はどんどんいなくなってしまった。

それもそのはず、市長は転生者だったからだ。どんな無茶苦茶でも許される。

男は改めて、自らの立場に恐怖した。転生者は何でもできてしまうのだ。

街一つ吹き飛ばすこともできるし、神も殺すことだって企める。

彼は自分がどうして原作に関わろうとしなかったのか思い出した。

そう、怖かったのだ。自分が力を振るうことで、大事な物を壊してしまうのではないかと。

 

「・・・今日までありがとう」

 

目の前にスクリーンが現れる。

今までは、同じ転生者のよしみで解雇を免れていた。

同じ理由で、彼も市長の計画を教えてもらっていた。

だが、ついにその時がやってきたのだ。

もはや、転生者には人間という手足は必要ないのだ。

それが、たとえ同じ転生者であったとしても。

 

「市長・・・いつ神浜を吹き飛ばすつもりだ」

 

「それは今日の戦いで決まるさ」

 

「えっ」

 

それと同時に、仮面をつけた魔法少女が一人だけ入ってきた。

男は必死に記憶をたどって、その少女が誰なのかを思い出した。

そう、夏目かこ。どういうわけか、仮面をつけているが。

しかし、その仮面はどこかで見たことがあるような気がした。

そう、LobotomyCorporationの笑顔というギフトだ。

 

「・・・かこさんですか。ボクに勝てると思ってるんですか?」

 

男は初めて生で白谷氷河の姿を見た。

 

「ここで陳腐な自己紹介を。

ボクは魔導士白谷氷河、魔力量はオーバーSSSSS。

それでも、ボクに挑むつもりなのかい?」

 

それが白谷の恐ろしさだった。

彼は代価を払うことで、どんなものでも手に入れられる。

それは、別作品の代物でも同じことだ。

彼はリンカーコアを体内に埋め込むことで、最強の魔導士となったのだ。

言っておくが、この世界はマギレコであって、リリなのではない。

 

「・・・魔力量で強さは決まりませんよ」

 

それは少女の声にしてはやけに野太かった。

 

「えっ、その声・・・」

 

市長は目を丸くした。

だが、彼に驚いている時間は与えられなかった。

なぜなら、かこらしき誰かはすぐにビームを連射したからだ。

氷河はギリギリのところで、それを避けることができた。

 

「くっ・・・でも、リリカル世界の魔法の方が火力は優れてるさ!」

 

男はそれを聞いて、すぐに伏せた。

一瞬の大震動と塵煙。

並みの人間が当たったら、即気絶だろう。

たとえ、魔法少女でも大ダメージのはずだ。

しかし、ソレは立っていた。

大きな盾を持って。

それは夏目かこでも、二葉さなでもなかった。

二葉さなの服を着て、彼女の盾を持った少年だった。

 

「笛吹くん・・・女装が趣味だったのかい?」

 

「これしか方法がないんですよ!氷河くんを止めるためには!」

 

次の瞬間、笛吹は常盤ななかの服を着て、日本刀で氷河に斬りかかった。

 

「・・・君の能力は”ハーメルン”のはずだ」

 

氷河は難なくそれをデバイスで弾いた。

 

「そうですよ。でも、戦い方は能力では決まりませんからね!」

 

そのたった二秒後に、少年は由比鶴乃に変わっていた。

もちろん、顔は少年の顔そのままで、体型も女性のものではない。

男にはわけがわからなかった。

しかし、一つだけわかることがある。

この勝負に、神浜市の明日が賭けられているのだ。

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