あの頃、僕たちは輝いていた   作:ryanzi

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演奏はクライマックスに突入しました

「全部僕のおごりって・・・こりゃお小遣い消滅ですね」

 

いや、お小遣い消滅で済んだだけでもマシだったのかもしれない。

普段からの貯蓄があって助かっただけだ。

 

「悪く思わないでくれよ、くじ引きの結果なんだから。

それに、言い出しっぺはお前なんだしさ」

 

「・・・それもそうですね、照星さん」

 

「ごちになりまーす!笛吹くん!」

 

「・・・なんかすまんな」

 

「なんだろう・・・なんか誰かに睨まれてるような・・・」

 

照星と令は隣り合った席で仲良くラーメンを食べていた。

ここにいるのは、笛吹と照星と令と修也とギンだけではない。

かこはもちろんのこと、多くの友人や魔法少女と一緒に来ていた。

 

「ふ、ふーくん・・・後で貸してあげるから・・・」

 

「大丈夫ですよ・・・ええ、言い出しっぺは僕ですからね」

 

どんなに懐が寂しくなっても、これは彼が望んだ光景。

 

「はい、あーん」

 

「えっ」

 

「なんだよ、樹里サマがせっかく分け与えてあげるんだぞ?」

 

「はいはい、お姫様」

 

獅山と樹里を、PROMISED BLOODの魔法少女たちはスマホで取りまくっていた。

ちなみに、神浜マギアユニオンの少女たちも便乗していた。

 

「・・・まさか、アンタとこうやってラーメン食べるだなんてねえ」

 

「・・・ありがとうございます」

 

「勘違いしないでほしいわ。私はただ心根のダチの誘いに乗っただけなんだから」

 

かつて対立していた組織のリーダーも楽しそうであった。

 

「・・・ウチら中立やのにこういうのはどうなんやろなあ。旨いからいいけど」

 

「ふんふふん!」

 

「今更もう遅い、と申しております」

 

・・・なんか余計なのも来ているような気がしたが。

 

「ねえ、ネオマギと同盟結ばない?ラーメン同盟っていうことで!」

 

「私の腕切断しといて?」

 

「まあまあ、ちゃる。もう繋がったからいいじゃないか」

 

「そりゃ灯魂くんがたくさんグリーフシード調達してくれたからよかったけどさ・・・」

 

ネオマギと時女は意外と良好な関係に落ち着いていた。

 

「はい、あーん。みたまアレンジ聖杯ラーメンよお」

 

「ま、待って!嫌だ!死にたく・・・アッー!」

 

・・・心根は悲惨な目に遭っていたが。

ちなみに、氷河も似たような目に遭っていた。

 

「碑石くん、旨いラーメン屋教えてくれてありがとうなのです!」

 

「・・・ははは(ネタで言ったつもりなんだけどなあ)」

 

碑石は何故かアイドルと一緒に偶然ラーメン士郎にやってきた。

一部の少女からは熱烈な殺意を向けられているのは言うまでもない。

 

「タルト様、お口に合いますか?」

 

「ええ、とてもおいしいですよ」

 

正史郎には奇跡が起こっていた。

 

「・・・かこさん」

 

「どうしましたか?」

 

「僕、今とても幸せです」

 

「ええ、私もです」

 

しかし、目を覚ませばLobotomy Corporationの管理室を模した市長室。

無機質で蒼い線の書かれた壁、いくつものスクリーン、そして悲しく調和に満ちた旋律・・・。

 

「笛吹、大丈夫か?」

 

「・・・ええ、少し夢を見ていたようなんです」

 

笛吹は白昼夢の内容を振り返ってみる。

スクリーンに写っているピアニストもどきは夢にも出ていた。

一度も会ったことのないはずの青年なのに、名前を知っていた。

さっきの白昼夢は修也という青年が自分に見せたモノなのだろう。

おそらく、修也はああやってピアノを弾くことで、失われた未来に浸っているのだろう。

 

「行かないと・・・灯魂さんは他の勢力に連絡をお願いします。

このままではLibrary Of Ruinaになりかねませんから」

 

「君の能力は戦いには向いてないと言ったはずだが?」

 

「これは僕のやるべき仕事なんです」

 

「・・・わかった」

 

灯魂は敬礼して笛吹を送り出した。

同時刻、呉キリカが夏目書房を訪れていた。

 

「まったく、なんで楽譜が空を覆ってるんだよ・・・。

失礼しまーす、かこさんいませんかー!」

 

かこはカウンターの方にいたが、演奏の影響で呆けているようだった。

 

「・・・どいつもこいつも、こんな状態か。

困ったな、織莉子がとんでもない未来を視たっていうのに」

 

神浜市の魔法少女はどれも似たような状態だった。

しかし、次々と正気を取り戻しつつあった。

いち早く本来の調子を取り戻したのは里見灯花であった。

 

「くふふ、これは興味深いにゃー」

 

彼女はありったけの機械を駆使して、この状況を調べていた。

次は相野みとであった。彼女は修也の幼馴染だ。

だからこそ、この演奏が修也のものだとも瞬時に判断できた。

そして、工匠区にある心根の家にいたみたまと十七夜も比較的早く正気に戻った。

ある意味で幻想体の塊である心根の近くにいたからだろう。

各勢力のリーダーと広江ちはるが正気に戻るのは比較的遅かったが。

彼女たちが正気を取り戻したのは、メールの着信音がきっかけだった。

 

現在、笛吹文雄が問題の対処に当たっている

 

とにかく、笛吹文雄と鍵譜修也が対峙することになった。

 

「・・・戻ってきてください、修也さん。

こんなことをしていても、誰も帰ってきてくれないんですから。

照星くんも令さんも・・・ネオマギの皆も、二木市の皆も・・・」

 

「・・・大丈夫だ、帰ってこれる。いや、俺が戻らせるから。

この世界に刻まれた記憶という名の楽譜から肉体を再現して、魂を呼び込める」

 

「「えっ」」

 

笛吹とギンがあっけに取られていると、数十万の音符が出現した。

その音符たちは人型になると、強い光を放った。

あまりの眩しさに笛吹は目を瞑ってしまった。

目を開けると、そこには笠音アオが立っていた。

 

「えっと・・・幻覚ですよね?」

 

「幻覚だったら良かったよね、笛吹くん?

どう、間接的に殺した女が自分の前に現れた気分は?」

 

「・・・どうもこうもありませんね。最悪ですよ」

 

笛吹はLibrary Of Ruinaのローランの服装を身に纏っていた。

しかし、選択ミスだったということを思い知った。

他のコアページに比べて動きづらいのだ。しかし、相手は待ってくれない。

それに、普段の状態よりかは戦いやすいのも確かだ。

装備した武器はもちろんMURASAMA BLADE。

 

「・・・わたしを殺した武器、か」

 

「僕には過ぎた代物です。・・・今となっては色々な意味でね」

 

「・・・心根があなたを守ろうとした理由、少しわかったよ。

さっきから演奏を通して、色々な記憶が頭に入ってくるんだ。

あなたって、本当に優しい人間だったっていうことが・・・。

友達のために、必死で戦ってたんだね・・・でもさ」

 

彼女は斧を笛吹に向けた。

 

「・・・やっぱ最低だよ。あなたの友達は私たちを殺した。

それでいて、あなたは友達を止めようとしなかった。

・・・矛盾してるよね?」

 

「・・・」

 

「友達が人を殺めようとしているのに止めようとしないのは、友達失格。

あなたの愛している誰かさんがそんなことを言っていたようだけど・・・」

 

「・・・まったくその通りでしたね」

 

これ以上、言葉は必要なかった。

両者ともに武器を構えて、一気に間合いを詰める。

勝負は一瞬だった。笛吹の左腕は斬り落とされ、アオのソウルジェムはひび割れた。

もはや完全に砕けるのは時間の問題であった。

 

「・・・どう、直接人を殺した気分は?」

 

「もっと最悪ですね。朝食を消化していたから、吐かずに済みました」

 

「・・・そうだよね。さようなら」

 

その体験は、笛吹の心に何らかの変容をもたらした。

それは心根が自分だけのE.G.Oを発現させたときの、または修也の能力の覚醒に似た変容だった。

笛吹は刀を鞘に納めると、それを左腕と共にギンに渡した。

 

「・・・えっ、どうすりゃいいんだよ?」

 

「とりあえず預かってください。その刀、僕にはもう不要なんです。

あっ、左腕の方はまたつなげるつもりなので取っといてくださいね」

 

「???」

 

笛吹は何も持たずに、修也に近づいていった。

すると、彼の服装は失楽園というE.G.O防護服に変わり、

右手にもその武器E.G.Oが握られていた。

本来ならば、”ハーメルン”を発動するには画面を立ち上げる必要があったはずである。

しかし、今の笛吹はその予備動作を飛ばしていた。

そのとき、音楽室の床に、蜘蛛の巣状の亀裂が走った。

いや、そこだけではない。学院全体に亀裂が走った。

 

「えっ、待って・・・あれ、俺の体浮いてる!?」

 

ギンだけが重力に縛られていないかのように浮かび始め、じたばたともがいた。

その一方で、笛吹は歩き続け、修也は弾き続けていた。

ギンと同じように、ひび割れた床やガラスもばらばらになり浮かび始めた。

 

「・・・ギンさん、でしたっけ?今、君の安全を保証しました」

 

その笛吹の言葉通り、ギンは他の物体にぶつかることがなかった。

 

「ちょっと待ってくれよ!お前はどうするつもりなんだ・・・?」

 

「とりあえず修也さんを気絶させます!今はそれ以外に方法がありません!」

 

「そ、そんな・・・」

 

ギンは必死に近づこうとするが、誰かに掴まれて、デコピンされた。

 

「大人しくするです!まったく・・・」

 

「・・・えっ、メル?」

 

「そうですよ。それ以外に何だっていうんですか!

修也くんの演奏を逆手に取って復活したんです!

・・・とりあえず、修也くん、一言だけいうです。

いつまでもうだうだと引きずってるんじゃねーですよ!

ボクの尊敬するリーダーだって立ち直ったんです!

それなのに、お前というやつは・・・」

 

だが、笛吹と修也にはもう聞こえていないようだった。

失楽園とは白夜から抽出されるE.G.Oである。

その白夜の使徒が、笛吹の頭上に突如として降臨した。

 

「・・・お前のE.G.Oの楽譜を参考に演奏してみた。

しばらく、そこで戦ってろ。俺は演奏を続ける」

 

しかし、彼の思い通りにはならなかった。

笛吹が右手を上げるだけで、使徒たちは一瞬にして消滅した。

 

「ははは・・・まさか、お前も俺と同じように神髄に辿り着いたのか」

 

「ええ、そのようですね。ようやく使い勝手が良くなりましたよ」

 

すると、修也は力強い演奏を始めた。

何百もの五線譜が笛吹に向かってくる。

しかし、その五線譜でさえも障壁にぶつかったかのように消滅した。

そして、笛吹は一つの画面を立ち上げた。

その画面には以下のように記述されていた。

 

笛吹文雄の周囲に修也の演奏を弾くバリアが展開される。

その際、バリアを無効化する演奏さえも無効化される。

そして、笛吹は修也を気絶させることに成功する。

 

「修也さん、もう諦めてください」

 

いまや、笛吹の能力は覚醒に至っていた。

予備動作も必要なくなり、モノだけではなく状況さえも作成可能となった。

 

「・・・だったら、最後の最後まで演奏を続けるだけだ」

 

それまで笛吹に向かっていた五線譜が向きを変え、修也の周りを飛び始めた。

演奏も力強い者から、悲しげなものに戻っていた。

 

「・・・無駄なことです」

 

笛吹はその五線譜を消すために、人差し指で触れた。

すると、そこから閃光がほとばしった。

 

「言っただろ?俺の能力は楽譜を演奏することだ。

森羅万象が俺にとっては楽譜だ。それはお前の能力も含まれる。

演奏の内容は至極単純だ。お前は俺を気絶させれるが、お前は代償を払う」

 

その光は、大東学院全体を包んだ。

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