三人はさっそく北養区の山中に秘密基地を作った。
そこを拠点に、計画を進めることにした。
もちろん、深夜に事を進めるのだ。
「じゃあ、笛吹くん。試しに探査機を出してくれないか」
「わかりました!」
彼は”ハーメルン”を起動させて、『丸太のような探査機』と投稿した。
後に、心根はこう語った。
それは探査機というにはあまりに丸太すぎた。
大きく分厚くそして丸かった。
それはまさに丸太だった。
「おい、ふざけんな!こんなん飛ぶか!」
「飛びますよ」
彼はまた打ち込んで、リモコンを出現させた。
彼がリモコンを操作すると、丸太は浮いて、上空を旋回した。
「・・・笛吹くん、これは異星人には理解できないかもしれないよ」
「むう、それでは・・・」
笛吹は普通に『絶対に壊れないという概念が付与され、解体可能な探査機』と投稿した。
すると、いかにも探査機らしい探査機が現れた。
「そうそう、これでいいんだよ!」
「・・・少し編集していいですか?」
「編集もできるのかい?まあ、ハーメルンだからできるのか」
彼は編集ボタンを押して、『光速で動く』と付け加えた。
すると、少し形状が変化した。
「よしよし、これは良い感じだな」
「あと、リモコンも用意しときましょう」
笛吹はさっきと同じように、リモコンを用意した。
ここまでは問題ない。
「それで、どうすんだよ。あの丸太」
「そうだね・・・笛吹くん、あれ削除できないかい?」
「できますが・・・その、なんというか」
「碑石、それは無理だ。あの丸太は笛吹の子供みたいなもんだからよ。
俺の周りにいる職人たちは、だいたいそんなもんなんだ」
「そうか、すまない。・・・そうだ、衛星軌道に置くのはどうだい?」
「それ、いいアイデアですね!」
「ちょ、まっ・・・」
心根の制止も間に合わず、丸太はさらに上空まで飛ぼうとしたが、急停止した。
「あっ、燃料切れそうですね」
「そうか・・・それは気の毒に」
「ねえ、もしかして俺が間違ってるのか???」
しかも、笛吹の指が滑ってしまい、慣性の法則を無視しながら、どこかに墜落してしまった。
「・・・あれはなかったことにしましょう」
「ああ、そうしよう」
「・・・そうだな」
とりあえず、気を取り直して、計画再開だ。
三人は秘密基地として作った小屋に探査機を運んだ。
「さて、探査機にデータを詰め込む前に翻訳アプリを作っておかないと」
「・・・確かに、それやっておかないと大変ですね」
また”ハーメルン”を起動させて、アプリの内容を投稿した。
投稿されたアプリは、自動的に探査機にインストールされた。
「これで異星人でも理解はできるはずですね」
「よしよし、順調だね。じゃあ、次は・・・」
「・・・待ってくれ。順調すぎやしないか?」
心根の言葉に、二人は目を丸くした。
「こんな理不尽な世界なのに、どうしてここまで事が進む?
まあ、その・・・俺が言いたいのは・・・」
「なるほど、もう少し慎重に進めろっていうことか。確かに、私も同意だね」
「僕もですね。念のため、確かめてみますか」
笛吹は懐から易経を取り出した。
「「えっ?」」
「それでは・・・なるほど、今日はやめといたほうがいいそうですね」
二人は確信した。意外と笛吹はやばい人間だと。
とりあえず、今日は解散することにした。
まだ時間はたっぷりある。いつ滅ぶわからない世界とはいえ、すぐにそうなるわけではない。
こういった仕事は、肩の力を抜いて、ほどほどにやっていくのが大事だ。
帰り道のことであった。笛吹はある少女に遭遇した。
「あの・・・ここで何をしているんですか」
彼女は自分の口を使わずに、マンドラゴラみたいなぬいぐるみに喋らせていた。
「夜遊びですよ。最近はついそれにハマってしまいまして・・・」
練習したおかげで、すんなりと言い訳ができた。
「そうですか・・・夜道は危ないので、気を付けてくださいね」
「わかりました!ありがとうございます!・・・そろそろ帰らないと!」
彼はそう言って、急いでその場を去った。
夜道では魔法少女に遭遇する確率が高い。
今の子も魔法少女かもしれない。後に違うとわかったが。
さて、翌日のことであった。
神浜市立大附属学校は騒がしくなった。
「ねえ、あれって・・・丸太よね?レナ、疲れてるのかしら?」
「ふゆう・・・丸太だね」
「どう見ても丸太ですね・・・はい」
学校のグラウンドの真ん中に、丸太が突き刺さっていたのだ。
生徒たちは、謎の事態に直面することになったのだ。
ある生徒がコンパスで傷をつけてみようとすると、まったく傷がつかなかった。
それどころか、逆にコンパスが破壊されてしまったのだ。
「丸太?ふーくんの小説じゃあるまいし・・・」
笛吹は参京院教育学園の生徒なので、この事件を知ることはなかった。