話は二日前に遡る。
「突然どうしたんだ、氷河?市役所に呼び出すなんて。
というか、なんで復帰してんの?」
「そこも含めて、一緒に話したいと思ったんだ。
まず、知ってると思うが笛吹くんが消えただろ?」
「うん」
「我が世の春だと思わないか?」
「うn・・・いや、お前何言ってんだ?」
「自分に正直になろう、無花果くん」
氷河は微笑みながら言った。
「君はなんというか・・・悪い奴に思えるんだよ。
今までは強力な転生者が傍にいたから仮面を被っていただけで」
「・・・バレてしまったか。実は、僕はワルだったんだよ」
「ボクも映像を見て知ったんだ」
「盗撮じゃねえか」
そこに、沖田・・・と思いきや沖田(オルタ)が飛び込んできた。
「実は私も正体隠してたんだよ!」
「褐色か・・・無花果くん、どうだい?ボクは無理だけど」
「いけなくはない」
「お前ら、そこ座れ」
そして、今に至る。
「僕を脅かすものはついにいなくなった!
転生して好き勝手できると思ったら、とんでもないバケモノの卵に遭遇したんだぞ!
その時の気持ちがお前にわか・・・待て、帰るんじゃねえ!」
「ええ・・・面倒くさいし、というか病院にも帰れないんだよ。
かこさんが病んだ状態になってるし」
「安心しろ、僕はNTRが嫌いだから」
「そういう問題じゃな・・・おっと、さゆさゆは私に残してくれよ」
「ちゃっかりしてるな・・・じゃなくて、お前、僕を止めようという気はないのか!?」
「言っただろ、面倒くさい。ハーレムだか原作改変とか、勝手にやってくれ」
無花果は嬉しそうに、だが同時に唖然としていた。
「お、お前・・・笛吹の友達じゃなかったのかよ・・・!
俺はどんなに疎ましくても友達だったから、かこに手を出さないと決めてるんだぞ!」
「友達だよ。でも、今回の件もPROMISED BLOOD壊滅の件も、全て彼の責任じゃないか。
自分で物語に参加して、間接的とはいえ人を殺して、そして自分で消えて・・・。
責任は誰にあるかといえば・・・まあ、彼自身の責任というわけだ。私には関係ない」
「おい、碑石。後ろ」
「えっ・・・あっ」
道を塞ぐように、包丁を持ったかごめが立っていた。
「ここで死ぬか、ふーくんのために戦うか、どちらか選んでくださいよ?」
「事情が変わった。ごめんよ、無花果くん。君の野望を止めさせてもらおう」
「・・・ははは!僕に勝てるわけないじゃないか!」
その瞬間、無花果が金色の光を放ち始めた。
「僕の転生特典はささやかな願いを叶えるというもの!
だが、氷河にもらった薬で能力を覚醒させたんだ!
もしもの力になった!VIPRPGにおける最強の能力に変化したんだよ!
VIPRPGを知らない奴には何のことだかわからないだろうけどな」
「ご説明ありがとう。じゃあ、終わりだ。
残念だけど、私もVIPRPGのことは知ってたんだよ」
「えっ」
碑石はファンファーレを口笛で演奏した。
「お・・・犯されるのか!?僕は犯されるのか!!」
「そういうことだよ、無花果くん。ゴメスオチという奴さ。
もっとも、私も君と同じ代償を払うことになるがね。
今日からよろしく、
しかし、次の瞬間に喘ぎ声をあげたのは二人ではなかった。
「ご、ごめんなさい!かごめちゃん!」
「い、いろはさん・・・どうして・・・アッー!」
それはもうR-18でなければ書けない光景が繰り広げられたのだ。
だが、同時に無花果は違和感を感じた。
「・・・ばかな!?もしもの力が使えない!?」
「魔王把握が終われば元通り、ということか。帰るか」
だが、碑石はあることを忘れていた。
魔王把握は、勇者が「帰るか」と言った瞬間にオチを迎えるということを。
「ケンコーくん!すっごくキレイな短刀を貰っ・・・あっ!」
沙優希が転んだことにより、彼女が持っていた短刀が宙を舞った。
そして、そのまま碑石の尻に飛んでいった。
「アッー!」
全治三十分の怪我で済んだのが奇跡であった。
「・・・今度は君の尻穴の治療か」
「すいませんね・・・」
「ごめんなさいなのです・・・」
ちなみに、かこは鎮静剤を打たれて、床に転がっていた。
笛吹の左腕はちゃんと冷凍保存されている。
「さて、どういうわけか説明してもらおうじゃないの」
「僕悪くない」
「ほう、たいした度胸ね・・・ももこ、かえで、院長さんから借りた部屋に連れて行くわよ」
「わかった」
「ふゆう・・・これはいっぱいお仕置きが必要だねえ」
「放せ・・・!うわああああ!」
無花果は『関係者以外立ち入り禁止』の部屋に引きずられていった。
そして、いろはの評判はさらに悪化した。
その夜、みかづき荘の周囲で、気温が急激に低下したとかしなかったとか。