三人は秘密基地に集まり、作業に集中していた。
心根はE.G.Oで探査機をデコレーションして、
碑石は神浜の歴史も改めてデータ化して、
笛吹はそれぞれのデータに関する解説文を書いていた。
「差し入れだ。平伏するがよい」
ギルガメッシュが理子の家のお弁当を持ってきた。
「あんがとー。よし、そろそろ飯にするか」
心根の一言で、いったん休憩になった。
「うまい!」
笛吹の瞳はどこぞの炎の呼吸の使い手みたいになっていた。
「・・・小僧、こいつ結構ヤバい奴では」
「言うな、ギル。これでもいい奴なんだ」
そこに、正史郎も入ってきた。
「あっ、こんにちは!あなたが正史郎くんですか!」
「そうだ。お前が笛吹という奴か。核シェルターを貸してくれてありがとう。
おかげで、タルト様のお姿を全て守ることができそうだ」
「いえいえ、どうってことありませんよ」
核シェルターは小屋の秘密基地の隣にある。
いざという時は、そこに避難するのだ。
「・・・ところでだ、笛吹、氷河を説得できないのか?」
心根はそう訊ねた。
「説得ですか・・・しかし、肝心の神が生き残っている限り、氷河くんは安心できませんよ」
「だったら、その神を代わりにやっつければいいじゃねえか」
「その手も考えたんですが、目的を失った氷河くんがどうなるか、不安なんですよ」
「げっ、確かにそれは嫌な予感がするな」
碑石はコーヒーを飲みながら話を聞いていた。
「碑石さんは何かいいアイデアありませんか?」
「そうだね・・・どちらにせよ、彼は神浜市を吹き飛ばすだろうね。
市政を続けるにしても、神浜市の東西対立は大きな障害だ」
「けっ、迷惑な話だぜ」
心根は一気に弁当をかきこむ。
「そもそも、そいつ魔法少女の存在忘れてんじゃねえか?
もし、あいつらが真実を知ったら、そいつ、ただじゃ済まねえぞ」
「それは困りますね。僕にとっては大切な友人なのに」
笛吹は悲しそうな顔をした。
「現状を嘆いても仕方あるまい。他の事を考えるべきであろう」
ギルはいつの間にかワインを飲んでいた。
こいつ、数日前まで乞食だったんだぜ?
笛吹の慈悲で、小屋に住まわせてもらっているのだ。
もちろん、警備員としてだが。これが本当の自宅警備員。
「・・・そうですね。ギルさんの言う通りですね。
では、話題を変えて・・・水名女学園の文化祭で、
スペースを借りることができました。端っこですがね。
そこで小説を配布する予定なんです」
全員が吹き出してしまった。
「ごほっ・・・おい、あそこって女学校じゃねえか!」
「なんか、最近は男女の交流とかいう風潮になっているそうなんです。
まあ、審査基準は怪しかったんですが。顔と出身地区で選んでましたから」
どんな人が落とされるのかは確実であった。
「とにかく、あと三人くらい招待できるんですが・・・」
「俺はやめとく。だって、俺、東の人間だろ?
お前らは気にしないだろうけど、この世界の奴らは違うからな。
それに、みたまのこともあるし、どうしても参加できねえよ」
「そうですか・・・ギルさんはどうですか?
とりあえず、立っているだけでも・・・」
「我はここを守る役目があるからな」
「それでは・・・碑石さんと、正史郎さんは」
「私はあそこの人間とは知り合いだからな。
心根の代わりに、工芸品を売ってみようか?」
「おっ、頼むわ」
その一方で、正史郎は不安そうになっていた。
「タルト様のお姿は全て、あのシェルターにしまっているんだが?」
「破壊耐性のあるキャンパスとか紙を出すので大丈夫ですよ」
「なら問題ない」
「あと一人ですが・・・僕の方で何とかしておきますね」
そういうわけで、あれやこれやあって、文化祭当日。
「ねえ、あそこにいる人たちって、例の・・・」
「あっ、ほんとだー」
「売り子もイケメンじゃん!」
端っことはいえ、珍しく男子がいるのだ。
しかも、ちゃんと物もある。
一人は綺麗な本を配布していて、
一人は工匠区の職人の卵が作ったという工芸品を売っていて、
一人は美人画を書く有名な芸術家。
そして、売り子は好青年。
「ちょっと待って!?なんでボクが売り子なの!?」
「地下にばかりいたら、体に悪いですよ」
「・・・ボクのやろうとしていること、知ってるんですよね?」
「それがどうかしましたか?友達なのは変わりませんから」
「はあ・・・笛吹くんこそ変わりませんね」
とりあえず、万全を期して文化祭(女子校)に挑むことになった。
さっそく、一人目のカモ客がやってきた。
「あれ?これって心根くんの作品だよね?」
「おや、彼を知っているのかい?私の友人でね、彼は今日忙しくてこれないんだよ」
「えっ、心根くん、なんかゲームセンターで見かけたんだけど・・・」
「お嬢さん、それは気のせいだよ」
碑石は心の中で心根の顔に釘を打ち込んでいた。
「まあ、今回はどれも百円だ。お買い得だよ」
「値段設定間違えていませんか?これもっとお金取れますよ」
「彼がそう言っていたんだ。なんか模倣だからって」
「・・・まだ、気にしていたんですね」
「?」
碑石は心根が工匠学舎でどういう評判なのかを知らないのだ。
もし、工匠学舎の生徒がこれを見たら、暴徒化すること間違いなしだ。
笛吹の方にも客がやってきていた。
「あれ・・・氷河くん・・・?」
「・・・お久しぶりですね」
「あちゃー・・・」
笛吹は頭を抱えた。
よりにもよって、葉月が来てしまった。
つまり、他の二人も、もうすぐここに来るということだ。
チームアザレアと、氷河は、つぐみの家で育ったのだ。
迂闊だった。文化祭は、外部の人間がやってくる。
しかも、水名は普通に魔法少女が多い。
他校の魔法少女が来ても、おかしくはない。
「氷河くん、今までどこにいってたのさ?」
「黙秘権を行使します」
「葉月さん、どうか彼の黙秘権を・・・」
「クソ超展開駄作マシンは黙ってて」
「えっ」
笛吹は灰になりかけた。
「ちゃんと食べてるの?顔青白いじゃない!
ちょっと待ってて!何か買ってくるから!」
「ちょっ・・・」
葉月はそのまま行ってしまった。
「笛吹くん、ボク体調悪くなったので・・・」
「逃げないでください。僕だって逃げたいんですよ。
間違いなく、僕も取り調べ対象で・・・ありがとうございましたー」
こうしている間にも、どんどんと本が消えていった。
綺麗な装飾で、しかも一人一冊無料なので、どんどん取っていくのだ。
「ほら、たこ焼き買ってきたから。ちゃんと食べなさい」
「もごもご・・・」
無理矢理口に突っ込んでいるのだ。軽い拷問である。
さて、正史郎の方にも客が来ていた。
「これが噂のタルト・・・様」
梢麻友は息を飲んだ。あまりにも美しいのだ。
ちなみに、様付けしないと、正史郎に半殺しにされるともっぱらのウワサ!
キャーコワーイ!
「ふむ、見る目があるようだな。一つ百円だ」
「えっ!?そんな値段だと駄目ですよ!内臓売ってでも百万払うので!」
「別にいい。神浜市が吹き飛んだときに、その値段で売ればいい。生活の糧になるだろう」
「えっ、今なんて・・・」
「気にするな。とにかく、一つ持っていけ。ふう、今日もタルト様は美しい」
「あ、ありがとうございま・・・ちょっ、天音さん、どうしたんですか!」
月夜は陳列されている工芸品を見て、血の涙を流していた。
「おのれ、心根・・・私は認めないでございますよ・・・月咲ちゃんは渡さないでございます」
「おっと、私は君たちの人間関係には何も言わないからな。関係ないからな」
「心根の弱みを教えて欲しいでございます」
「何が何でも言わんぞ」
笛吹の方に視点を戻そう。氷河がアザレア三人組に連れ去られたことを除いて、
まったくもって、順調であった。どんどん小説を取っていってくれるのだ。
文化祭では、よく文芸部が作品集を配布するが、そのノリでやっているのだ。
彼は前よりかは前向きに小説を配布していた。
面白いと言ってくれる人がいた。それだけでも、大きな自信になるのだ。
前世で、ハーメルンで小説を書いても、まったくお気に入り登録がなかった。
でも、今回は違う。この世界には、自分の書いた小説を面白いと言ってくれる人がいる。
しかし、破滅の足音は確実に笛吹に迫っていた。