【リレー】今日もカオスなもんじゃ焼き   作:リレー小説実行委員会

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二巡目
美星祭完結ッ! 流、新たなる戦い! の巻。 (hasegawa 作)


 

 

「ぎゃー! おかあちゃーん!」

 

「いやーーん!」

 

 あれだけ楽しみにしていた、美星祭。

 流を始めとし、みんなで頑張って準備した学園祭――――

 

 だが突然起きた謎の地盤沈下によって、美星学園という学び舎が全壊してしまった今、それが開催されることは二度と無い(・・・・・)

 したたるウーマンと織斑先生は、どういう関係だったのか。

 今となっては、知る術も無い。

 

 

「美星祭のことは、残念だったな!

 だが俺は夢をあきらめんぞ!」

 

 

 流はそこらへんの公園で“ひとり美星祭”と称したフランクフルト屋の露店をやった後、なんやかんやあって高校を卒業した。

 彼の仲間達もなんやかんやあった後、元気にそれぞれの夢へと向かって、走り出していったのだった。

 

 そして時は流れ、3年後――――

 今や秋月流もベンチャー企業の社長となり、忙しくも張りのある生活を送っている。

 今日の予定は、某国の大統領との会食だ! 美味いモンがいっぱい食えると、今から胸が高鳴ってくる心地だ。

 

「……社長ッ! 大変です!」

 

「なんだね騒々しい。どうしたと言うんだね?」

 

 流が社長室でマフラーを編んでいると、部下の男が血相を変えて飛び込んで来た。

 彼は額に玉のような汗を浮かべ、急いでここまで走って来たことが見て取れる。

 

「社長! 東京湾に黒船が襲来しました(・・・・・・・・・)

 何を言ってもヤツらは、開国してくだサーイ、開国してくだサーイ、の一点張りで!」

 

「無視しろ。俺は忙しい」

 

 冬に備えてマフラーを編む――――それこそが今の流にとって、最も優先すべきこと。

 ちなみにこの国が、ごく限られた一部の国々を除いては鎖国体制をとっている事は、皆さんすでにご存知の事と思う。よってここでは割愛する。

 

「し、しかし社長!? このままでは我が国がっ……!」

 

「黙れ社畜野郎! アメリカなんてクソくらえだ!

 そもそも何で俺に言うんだ! 黒船への対応は、政府の仕事だ!」

 

「た、確かにッ……!!」

 

 部下の男は「はっ!?」とした顔で、なるほどとばかりにコクコクと頷く。

 

「ついでに言えば――――マフラーなんてクソくらえだッ!!

 なんでこんなモン編んでるんだ俺は! そんな趣味は無かったハズだッ!!」

 

 ファックとばかりに床に叩きつけ、流はその場を立ちあがる。

 

「何がベンチャーだ! 何が六本木ヒルズだッ!!

 俺はこんなトコで、社長なんてやってる場合じゃないんだよ!」

 

「しゃ、社長?! 貴方いったい何を……?!」

 

「――――俺は世界征服をしなければならないッ!!

 社長なんてやってる場合か! アホか!

 おい社畜野郎! この会社のことは、全てお前に任せる!!」

 

「社長ッ?! ちょっと待って下さい! しゃちょおッ!!??」

 

「家庭を大事にしろ? たまには休暇とれよ?

 お前のはにかんだ笑顔……嫌いじゃなかったぜッ!!」

 

「しゃちょぉぉぉおおおッッ!?!?」

 

 六本木ヒルズの高層ビル、その窓からピョーンと飛び降りた流は、両足を〈ゴキィ!〉と骨折する。

 

「うぎゃぁぁぁぁああああーーーッッッッ!!!!」

 

 なんとなしに「いける!」と思った彼の直感通り、なんとか一命だけは取り留めた。しかし流は両足のかかとを粉砕骨折し、足の指から股関節までの骨も全て骨折した。

 一歩も歩く事が出来ない!

 

「……あ、足の骨が折れた……!

 ここで俺は死ぬのか……。俺に世界征服は、出来ないのかッ……!」

 

 自社ビルの前にある植え込みの上、流は倒れ伏す。

 足の激痛、動かない身体、そして深い絶望を感じながら、彼の意識がだんだん遠のいていく。

 

 大好きだった美星学園の仲間達……みんなの顔が走馬灯のように浮かんでは消える。

 いま正に、流の命の灯火は、儚く燃え尽きようとしていた!

 

 しかし……その時。

 

『――――はっはっは! 無様だなぁ、流よ!!』

 

 突然この場に、男の高笑いが響く。

 不運にも足を粉砕骨折してしまい、満身創痍である流は、最後の力を振り絞って顔を上げる。

 

「所詮、貴様は世界征服をする器では無かった! ここで死ぬのがお似合いだ!」

 

「な……何者だてめぇ! 唐草模様のスーツなんか着やがって! どこで買ったんだ!」

 

 起き上がろうと頑張ってみたが、それも叶わずに流は倒れ込む。どうやら足だけでなく、両腕までも粉砕骨折しているようだ。なんという不運!

 

「先祖の“徳”を受け継ぐのは、なにも貴様だけでは無い(・・・・・・・・)

 300年続いた一族の血……当然その血筋を受け継ぎし者は、他にもいるという事よ!」

 

「ッ?!?!」

 

「闇に潜みし我らが一族……今より表の世にいでんッ!

 ――――この“裏秋月家”当主、秋月ポン助が! 貴様に代わって世界征服を果たす!」

 

 なんかタヌキみたいな名前の男が、ビシッと流に指を突き付け、ガッハッハと高笑いをあげる。

 

「光と影は、これより入れ替わるのだッ!!

 ……ずっとコンビニバイトや、工場のパートで生計を立ててきた、我ら裏秋月……。

 辛酸を舐め尽くした歴史も、今日で終わりだ! ――――貴様の死によってなぁ!」

 

 まさか秋月家に、知られざる分家があったとは。

 そして、このピッチリ横分けクソダサ眼鏡の男は、流とおなじ血を受け継ぎし、裏秋月家の当主であったのだ。流は驚愕に目を見開く。

 

「ここで無念のまま果てるがいい!!

 本家当主である貴様の“徳”は、全てこのポン助が貰い受ける!

 いや~。貧乏でも頑張ってきて良かった……。ホント諦めないで良かった……」

 

 これで幸せになれる。先祖の徳を受け継げば、今までよりマシな生活が出来る。

 今まで買えなかったコンビニのからあげだって、これからはたらふく食べる事が出来るだろう。

 

 ちなみに裏秋月家が貧乏だった理由は、稼いだお金を全部、秋月家への妨害に充てているからである。

 彼らはバイトやパートでお金を稼いでは、それを全て秋月家と戦うための武装購入や、よく分からない要塞を建設するための資金に充てている。

 いつか秋月家に成り代わり、世界征服を果たすこと――――それが裏秋月の悲願だ。

 

 ご飯は朝と夜の二食だけ。部屋は風呂なし4畳半。

 出来るだけ節約してお金を貯めながら、彼らは細々と生きてきた。

 

「お前ん所の家は、いくら妨害行為をおこなっても、それを全て“徳”で跳ねのけるからな……。

 窓ガラスを割ろうが、電気ガス水道の供給を止めようが、家にトラックを突っ込ませようが、全てその徳で何事もなかったかのように……。

 どうやって秋月家を潰せばいいのか……もうよく分からなくなってたんだ。

 ほんと助かったよ……流」

 

 いままで秋月家を倒そうと、ほんと彼は頑張ってきたんだと思う。

 だが先祖より受け継ぎし“徳”により、もう何をやろうが秋月家を貶めることは出来ず、心が挫けそうになっていたようだ。

 

 この降ってわいたような“流の大怪我”という幸運。

 彼としては、逃すわけにはいかない。必ずここで流を倒さなければ。

 

 

「あ、でも何年か前にやった“美星学園の破壊”は、上手くいったかな?

 あれって俺が業者に頼んで、地盤沈下をさせたんだけども……。

 どうだ? 流石のお前もアレにはビックリs

 

『 テ メ ェ か ぁ ぁ ぁ ぁ あ あ あ あ あ ッ ッ !!!! 』

 

 

 ポン助の顔面に、流の拳が叩き込まれる。

 殴られた瞬間、ポン助はタヌキみたいに「ポンッ?!」と叫んだ。

 

 足を骨折してたのに、腕だって粉砕しているのに、流は怒りのままに拳を突き出し、ポン助を天高く舞い上げた。

 擬音にすれば、なんか〈ぼぐしゃぁぁああ!!〉みたいな音が鳴った。

 

「何してくれてんだテメェ!?!? 美星祭どうしてくれんだ?!?!

 ――――アルトに謝れ! 摩利に! 虚に! ルカとナミに謝れ!!

 頑張って準備してた連中に謝れぇぇぇーーーーッッ!!!!」

 

「お゛ごっ?! ぶふっ!? ぎっ?! 死゛ぬ゛っ……!?!?」

 

 マウントポジションを獲り、ひたすらポン助を殴りつける。

 まるで「俺がお前の千手観音だ」とばかりに、ドゴゴゴと殴り続ける。

 

「ランカとシェリルにエロい恰好させようって、みんな密かに企んでたんだぞ!

 勝也も! 直樹も! のどかも! なんだかんだ言いつつ手伝ってくれてたんだぞ!」

 

「ぐえ! おごっ!! ふごっ!!」

 

「なんか全員、したたるウーマンの教徒になっちまったり……アンパンマンと一緒にひとりづつ殴って、目を覚まさせたりはしてたけどぉ!!

 いつの間にか、ワーキングプア侍とかいうオッサンが、浮浪者みてぇに学校に住み着いてたりしたけどぉ!

 ――――でもみんな、頑張ってたんだよ!! 俺の青春返せこの野郎ッ!!!」

 

「だっ! や゛っ!! ほげっ?!

 な、ながれっ……! マイフレ~ンド……!!」

 

 暴力!! ああ暴力ッ!! なんと心地よい!!

 流は怒りで我を忘れ、一心不乱に殴り続ける。優しかったその心が、憎悪に支配されてしまったかのように。

 しかし――――

 

 

《流……流よ……》

 

 

 突然、耳ではなく流の“頭の中”に、何者かの声が響く――――

 

《怒りに囚われてはならぬ……。憎しみでは、何も救えぬのじゃ……》

 

「こ……これは? お地蔵さま?!

 

 見上げれば、高層ビルの隙間から巨大なお地蔵が、\ペッカー!/と眩い後光を背負って、こちらを見つめているではないか!

 お地蔵様は優しく微笑み、そして厳しさを持って、流の心に語り掛けている。

 ああ、なんという神々しさだろう! 南無阿弥陀仏!

 

《目が覚めたか、流よ……。

 お前ともあろう者が、なんという様じゃ……》

 

「お地蔵さま! ごめんよお地蔵さま!

 俺ってば、我を忘れちまってたってばよ!」

 

《慈悲の心をもって、その男を赦すのじゃ……。

 具体的に言えば、あと3回くらい殴ったら(・・・・・・・・・・・)、許してあげなさい……》

 

「分かったよお地蔵様!

 よ~しいくぜぇ!! いーち! にーい!」  

 

 やがてポン助はグッタリ気を失い、地面に大の字となった。

 

《流よ、ワシはいつでも、お前を見守っておるぞ……。

 努々それを忘れることなく、精進していくのじゃ……》

 

「分かったよお地蔵さま! ありがとう!

 おかげで俺、前科が付かなくて済んだよ! またお供え物しに行くねっ!」

 

《いや……、あの、いっぺん言うとこうと思っとったんじゃがな……?

 何故お前んとこの一族は、いつも変なモンばかり……》

 

 流はこの前、「今日は暑いですから」と言い、お地蔵さんの額に“ひえピタ”を張るという暴挙に出た。

 ――――わし石なんやから、いらんて。いい加減おにぎり持ってこいて。

 いくら念話で言おうが一向に伝わらなかったので、もしかしたら今日は、話をするにはとても良い機会かもしれない。

 お地蔵さんの300年の苦難は、ようやくここで終わりを告げるのだ。

 

「じゃあねお地蔵さま! ありがとうッ!

 こんど魔法瓶に、焼肉のタレをいっぱい入れて持ってくね!」

 

《流ッ?! 聞いておるのか流ッ?! どこへ行く?!

 いくらワシでも、それ一気飲みすんのは流石に……って流ッ?!?!》

 

 流が子供のような笑みで、嬉しそうに手を振って駆け出していく。

 ものすごい速度で走っていくものだから、すぐお地蔵さんの念話も“圏外”となってしまったのだった。

 

 

 ………………………………

 ………………………………………………………………

 

 

 その後、いちおう流はケータイで銭形のとっつあんを呼び、ポン助を連行してもらった。建築物破壊の容疑で。

 ひとしきり殴ってスッキリしたし、いつのまにやら全身骨折も治った。先祖の徳ってスゴイ。

 

「ポン助、早く出所しろよ! ドーンマイ!

 そして見ていてくれ! 秋月の悲願は、俺が果たすッ!!」

 

 楽しかった美星学園の思い出、頑張って立ち上げたベンチャー企業の思い出……。

 その全てを振り切って、流は走り出す。

 世界征服という、己の夢の為に――――

 

 首元のネクタイを外した時、なぜか胸に解放感が満ちた。

 このビジネスマンの象徴たる“鎖”。それをスッとほどいて、お気に入りの道着姿になった時、流は再び自由を取り戻した。

 精神の自由を!!

 

「――――さぁ、俺の第二章を始めよう!!

 次は何をしよう? どうやって世界征服をしよう?

 爺さん! お地蔵さま! 俺はやるぜッ!!」

 

 

 

 

 恐らくこの先も、裏秋月の者達が、そして多くのライバル達が、流の前に立ちはだかる事だろう。

 

『ほう、ポン助が敗れたか。

 仕方あるまい。ヤツは裏秋月“四天王”の中で最弱――――』

 

『アテクシはまだ生きてるわよぉ~ん? 必ず流を手に入れてみせるわぁ~ん♪』

 

『拙者、ぜったい諦めんで御座る! 必ずや5万円をこの手に!!」

 

『は~ひふ~へほぉーう!! なんだアンパンマン、改名したのか?

 ……えっ? 剛力 甘男(あまお)ッ?!?!』

 

 

 流は歩き出す。

 高校を卒業し、脱サラして21才となった彼は、これからの冒険にわくわくと思いを馳せる。

 

 とりあえず流は、インドにでも行こうかと思ってる。あそこで5年も暮らせば人生観が変わると評判だし。

 それとも宇宙を目指し、NASAにでも行こうか?

 大統領になって国を動かしてみるのも良いかもしれない。

 中国の秘境に行き、ハゲた仙人から拳法を伝授してもらうのもアリだ。

 

 

 

 

 

 

「あの……おにいさん?

 わたしもいっしょに、連れてってほしいの……」

 

「っ!? 君は……?」

 

 

 振り向くと、そこには泣きそうな瞳でこちらを見つめる、見知らぬ幼い少女の姿。

 

 流の冒険の旅が、いま始まる――――

 

 

 






↓作者のページ
https://syosetu.org/?mode=user&uid=141406


☆もんじゃ焼き伝言板☆

 3710さん、俺は謝らないぞ! これで美星祭編は終わりだ!!(笑)

 しかし、また君が新たな舞台を作るんだ!
 俺達がそれに続くッ! 楽しみにしてるぞ!w

 貴方が考えてくれた“流くん”というキャラクター。
 今回それを書く事が出来て、私ほんとに幸せでした♪ ありがとぉ~う!

(hasegawa)

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