【リレー】今日もカオスなもんじゃ焼き   作:リレー小説実行委員会

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※このお話には、スピンオフ番外編【ワーキングプア侍、見参ッ!!】のキャラクターが登場します。未読の方は、先にそちらをお読み下さいますよう、お願い致します。





三巡目
小雪「信じて送り出したお兄ちゃんが、マスターPさんの変態調教にドハマリして、アヘ顔ピース動画を送ってくるなんて……」 (hasegawa 作)


 

 

 

 

「おっ、身体が元に戻ったな!

 あの機械の効果も切れたみたいだ!」

 

 早朝。

 目が覚めてみれば、あれだけプルンプルンしていた大きな胸も無くなり、流は元の青年らしい逞しさを取り戻していた。

 

「当然か! ずっと効く風邪薬なんて無いし、どんな治療だって効果が切れるもんな!

 いまごろみんなも、元の姿に戻ってるハズだ!」

 

 そして朝の準備を済ませた流は、いつものように、意気揚々とお地蔵さまの下へとやってくる。

 

「おはようお地蔵さま! ぐっもーにんっ! 今日もお供え物を持ってきたよっ!」

 

(あんれっ!? 流生きとるがなっ!?!?

 えっ……まさかワシ、とんでもない勘違いしとった!?)

 

 性別反転が解けた流を見た途端、ビックリしちゃうお地蔵さま。

 てっきり死んだと思っていた大切な少年が、いま正に目の前に居るのだ!

 

 そして内心で大慌てしながらも、お地蔵さまはさりげなく“徳”の加護を流に戻した(・・・・・)

 

(あぁ、なんちゅう失態じゃ……。流の両親に顔向け出来んわぃ。

 ワシが親代わりとして、しっかりこの子らを見守ったらなアカンというに……すまん流!)

 

 秋月兄妹が産まれた時から、ずっと見守ってきたハズなのに……。国生みをした伊邪那岐命のご神体という、全知全能に近い存在であるハズなのに……。

 まさか息子同然である流を、見間違えるだなんて……。

 自らが徳を授け、明らかに常人離れしているハズの彼の気配が、まさか分からなかったなんて……。

 

 お地蔵様らしくも無く、やらかしてしまった失敗、この【小雪への徳譲渡問題】は、流自身も気が付かないままに、さりげなく解決した。

 ――――たった半日で、全てが元通りになったのだ! よかったよかった!

 

(あぁ……あれは性別が反転した流じゃったのじゃな。ばいきんまんとやらの仕業か。

 辺りが薄暗かったとはいえ、ワシはなんというミスを……。危なかった……)

 

 本来、徳の加護とは、こんなポンポン渡したり取り上げたりする物ではないのだが……。こまったお地蔵さまである。とんだウッカリさんだ。

 しかし間違いに気が付いたからには、ちゃんと元通りに戻しておく。それが責任という物である。――――そりゃ元に戻すでしょ(真顔)

 お地蔵さんは少しショボンとしながらも、無事に力の行使を終えたのだった。

 

 もちろん、お地蔵さまはすごいパワーを持っているので、“徳”の譲渡先の変更など朝飯前。

 そもそもこれは、昨日実際にやって見せた事だし? もう一度やるのに何の問題もなかった。

 

 そして、今回はお地蔵さま自身の責任という事もあり、アフターフォローも完璧!

 流や小雪が徳を取り上げられて“裏秋月”になるような心配は、まったく無い(・・・・・・)

 

 ――――流が肆の遺影になるかと思ったが、そんなことは無かったぜ!

 きっと肆の遺影ってのは、別にいるんだな♪ その内また出てくるさ♪

 

 ということで、全て元通り! 何度も言うが――――全 て 元 通 り だ !!(強調)

 世界征服が出来るよ! やったね流くん☆

 

 

「さぁお地蔵さま! 今日は普通のおにぎり(・・・・・・・)を持ってきたよ♪

 たくわんとお味噌汁もあるから、いっぱい食べてくれよなっ!」

 

(今日に限って、普通のもん持ってくるな!! 罪悪感が凄いねんッ!!)

 

 

 あれだけ待ち焦がれていた普通のおにぎりは、何故か涙の味がした。

 塩味かな?

 

 そして流はお供え物を終えて、新聞配達の仕事をこなした後、イソイソと学校に赴いていった。

 みんなが楽しみにしていた、美星祭二日目が始まる――――

 

 

 

 ………………………………

 ………………………………………………………………

 

 

 

「小雪、起きとんのか?」

 

 病室の窓から見える景色が、一面の紅葉の色に染まっている、心地よい朝。

 ベッドに腰かけながら、ワーキングプア侍と楽しくお話をしていた小雪の耳に、ノックの音が聴こえてきた。

 

「おぉ、もうプアも来とんのか。二人共おはようさん」

 

「おはよう、チョコおじさん。もうじゅんびできたよ♪」

 

「おはようで御座る、太郎よ。

 朝早くからすまぬな」

 

 やってきた男は、いつもの蛇柄のスーツに、ワックスで固めたいかつい金髪という風貌。

 彼はとてもじゃないが、病院に来るような恰好では無いし、さっきもチョコ太郎と廊下ですれ違ったナースたちは、「ひぃ!」と悲鳴をあげてザザッっと道を空けていた。

 しかし今、彼の目の前にいるワープアと小雪の二人は、こちらを見てニコニコと微笑んでくれている。

 

「かまへんかまへん。ワシはいっつも、お天道さんが昇んのと一緒に起きとんのや。

 まぁ今日に限っては……実は一睡もしてへんかったりすんねんけど……」

 

「?」

 

 キョトンとする小雪を余所に、病室に入って来たチョコ太郎は顔を背けて、ポリポリと頬をかく。

 

「太郎……まさかお主。

 美星祭が楽しみ過ぎて寝られんかったとか、そんな幼子(おさなご)のような……」

 

「じゃかーしぃわボケ! しゃーないやろがい!

 と……とと友達と文化祭に行くとかぁ! そんな胸キュン青春イベント、こちとら初体験なんじゃい!」

 

 顔を真っ赤にしてグゥアーっと喚きたてるチョコ太郎。

 一族が背負った“業”により、きっとこういった行事には縁がない人生だったのだろう。

 そんな彼の事情を知っている二人は、あたたかな目でチョコ太郎を見つめる。

 

「わたしもだよ? 学園祭も体育祭も、いったことないの。

 小雪といっしょだね、チョコおじさん」

 

「拙者もで御座る。ゆえに今から楽しみでならぬ。

 一緒じゃな、太郎よ」

 

「っ!?」

 

 本当に……こいつらときたら。

 そう口には出さずに毒づきつつ、チョコ太郎はボリボリと金髪頭をかき回す。

 

「もうええから、はよ準備せぇや!

 どこやねん車椅子! はよ乗れや! 行くぞ!」

 

「いや、そのように急がずとも。まだ時間には早ぅ御座るぞ?

 お主もこちらに来て、ちと座ったらどうじゃ」

 

「チョコおじさん、ジュースのむ?

 お兄ちゃんがかってきてくれた、ゼリーもあるよ?」

 

「ゼリーとかええねん! そら旨いんやろうけどな?!

 ワイは限界まで腹空かせていって、美星祭の全メニューを食い散らかすと決めとんねん!

 この日の為に、7㎏くらい減量しとんねん!」

 

「お主ッ……どれだけ美星祭を楽しみに!? お主という男は……!」

 

「ふふ♪」

 

 ドスドスと肩を怒らせながら歩いて来て、ベッド脇の椅子に腰かける。

 悪態をつきながらも、照れ隠ししているがバレバレなチョコ太郎の様子に、二人とも楽しそうに笑う。

 

 ちなみに昨日あった“美星祭初日”への来園は、小雪の治療や診察の都合で、残念ながら見送られた。

 小雪は魔法少女になり、健康を取り戻しはしたが、まだ経過観察の為に入院中なのだ。

 ゆえに、今日が小雪にとっての初来園――――念願の美星祭の日なのである。

 チョコ太郎は彼女の為に車を出す役目を引き受けており、そして一緒に遊びにいく約束をしていたのだった。

 

 

(……ったく、まさかこのワイに、こんな穏やかな日々が来るとはなぁ)

 

 

 柔らかな笑みを浮かべている小雪。そして慈愛に満ちた表情で彼女と接するワーキングプア侍。

 そんな二人に囲まれながら、チョコ太郎はひとつため息をついて、暫し過去を回想する。

 

 

 

 ………………………………

 ………………………………………………………………

 

 

 

 一週間ほど前だろうか。ワーキングプア侍に付き添い、初めてこの病室を訪れたのは。

 

 チョコ太郎としては、ただ友人である彼を、車で病院に送り届けるだけのつもりだったが、ワーキングプア侍の強い勧めによって、一緒にこの病室までやってくる羽目となったのだ。

 惚れた弱み……とは少し違うが、唯一と言ってもいい友人の頼みを断り切れなかったという、ただそれだけの事だった。

 

『おじさんは、だれ?』

 

 その瞬間、息が止まる気がした。

 名前や家柄という、そんな書類上の情報を知ってはいても、初めてこの少女の姿を目にしたチョコ太郎は、暫くのあいだ硬直し、動く事が出来なくなった。

 

 病的に白い肌。儚げな雰囲気。そしてこの上なく可憐で、消えそうなくらい小さな声。

 秋月小雪という、あの日、自分が殺そうとしていた少女――――

 

『ああ小雪どの。この男は拙者の友人で、チョコ太郎という名に御座る。

 強面(こわもて)じゃが、中々に気の良い男で御座いましてな』

 

 そうワーキングプア侍によって紹介され、彼女と話をする機会を得た。

 ベッドに腰かける小雪と、備え付けの椅子に座る自分達三人で、暫しの間、雑談に興じたのだ。

 

 違和感を感じたのは、すぐだった。

 それは、この病室に入ってすぐの事。

 小雪がこちらに振り向き、じっと自分の方を見つめている表情を、ひとめ見た途端に。

 

 この子は――――ワイを嫌悪しとらへん。

 チョコ太郎を見ても眉一つ動かすことなく、ただ穏やかに微笑みを浮かべている。

 それがハッキリと分かったのだ。

 

 

『やはり、思った通りに御座る。

 太郎よ? 恐らくお主の背負う“業”とやらは、小雪どのには効かぬよ』

 

 やがて病院での面会を終え、二人が帰路に着くために車に乗り込んだ後、ワーキングプア侍は静かにそう語った。

 

『単純な話に御座る。そのような物より、小雪どのの方が強い(・・・・・・・・・)

 相対する全ての者に嫌悪を抱かせる……、すなわち“人心を惑わす”、忌まわしき呪いに御座るが、かような物が通じるお方では御座らぬ。

 小雪どのは、本家秋月の“徳”、その力に守られしお方ぞ?』

 

 エンジンをかける事も忘れ、駐車場に停めたままの車内で、チョコ太郎はただ愕然とした。

 

『拙者は……まぁ自慢ではないが、お主と同等に“不運な人生”を歩んできた。

 それに加え、お主と同等の力を持つ人間。決して常人などでは御座らぬよ。

 ……すなわち、その呪いに抗える(・・・・・・・・)力を持つが故に、お主に嫌悪など抱かんかったのじゃろう』

 

『そして太郎よ、小雪どのも同じぞ――――

 小雪どのは、その忌まわしき呪いなどに惑わさる事なく、お主の真の姿を見てくれる、数少ない人間ぞ』

 

 月明りと、ぼんやりした街灯の光に照らされた、薄暗い車内。

 二人は深くシートに腰かけ、ただただ前を見ながら、静寂に身を委ねる。

 

『因縁、これまでの苦渋、打破すべき呪い……。

 恐らくは、拙者には分からぬほどの強き想いが、その胸の内にあるのじゃろう』

 

『だが太郎よ、今一度、考えてみるがよい。

 書類や伝聞で見聞きした事だけでなく……、今日の小雪どのの姿、そしてお主自身の想いを鑑みて、今後の身の振り方を決めよ』

 

 

 

 ………………………………

 ………………………………………………………………

 

 

 

「おいしょっとぉ!」

 

 小雪を車椅子から抱え上げ、後部座席に乗せる。

 愛車である黒塗りベンツのシートには、小雪の為に用意したクッションやぬいぐるみなど、とてもじゃないが強面な彼には似つかわしくないような、ファンシーグッズが並んでいる。

 

 きっとこの日の為に、チョコ太郎がイソイソと買い揃えたのだろう。

 小雪への思いやり、そして美星祭に賭ける並々ならぬ情熱が伺える。

 

「いっちょ上がりや。ほな行くで小雪。

 ゆっくり運転はするけど、しっかりシートベルトは締めとけや?」

 

「うん。ありがとう、チョコおじさん♪」

 

 その笑顔にコクリと頷きを返し、チョコ太郎も優しい表情を浮かべる。

 さぁ、いよいよ美星祭に出発だ。

 チョコ太郎も運転席に向かうべく、小雪のいる後部座席のドアを締めてやろうと、取っ手を握る。

 

 けれど今……ふと思い直したかのように……。

 チョコ太郎は一度だけ座席を覗き込み、まっすぐに小雪の顔を見る。

 

 

「なんでもしたるよ」

 

 

 

 

 

 

 ボソリと、呟くような声だった――――

 よく聞き取れなかったのか、小雪は「?」とキョトンとした顔。愛らしく小首を傾げる。

 それにプイッと顔を背けたチョコ太郎は、優しくドアを締めてやった後、運転席の方に向けて踵を返した。

 

「おら! ボケっとしとらんで、はよ乗れやワレ! 出発すんぞ!」

 

「うむ。しからば」

 

 傍で彼らの様子を見守っていたワーキングプア侍は、その顔にほのかな笑みを浮かべたまま、後部座席に乗り込んでいった。

 ニヤニヤしよってからに……とか思わないことも無いが、決してチョコ太郎を茶化すことなく、何も言わずにいてくれた事に、内心で少しだけ感謝する。

 

(えらい軽かったなぁ……小雪の身体は)

 

 先ほど抱き上げてやった時の、まるで羽のように軽かった、小雪の体重。

 少し力を入れたら壊れてしまいそうな程、小さくて華奢な身体。

 けれど……自らの腕の中で、とても嬉しそうにしていた、少女の笑み。

 それを思い出しながら、チョコ太郎は運転席のドアを開く。

 

(こちとら極道や。任侠で生きとんねん)

 

 たとえ、これまで愛情や信頼というものを知らずに、生きてきたとしても。

 この世の全ての者達から、嫌悪されていたとしても。

 

(義理人情に身体はってこその、極道やろうが。

 なんでもしたるよ、小雪)

 

 

 友達は、一人おったらええ――――

 ちゃんとワイの顔を見てくれるヤツが、一人でもおったらええねんって、そう思ってたのに。

 まったく、人生ってのはホンマよぅ分からん。

 まさか、あんなにも願っとった友達が、いっぺんに二人も出来るやなんて……。

 

 チョコ太郎は、愛車のハンドルに手をかけながら、思う。

 

 

(せやからな? この命、お前らのために使うわ)

 

 

 そう心に誓いながら、エンジンに火を入れた。

 

 

 

 ………………………………

 ………………………………………………………………

 

 

 

「……で、小雪よ?」

 

「?」

 

 美星祭真っ最中の、視聴覚室。

 いま二人は隣り合わせに座り、目の前にあるスクリーンを見つめている。

 

「これが……あの言うてたヤツか?

 お前さんが脚本を書いたっていう……映画なんか?」

 

「うん、そうだよ?」

 

 先ほどまで、美星学園中の教室をまわり、チョコバナナだの焼きそばだのを片っ端から買い求め、ご満悦だったチョコ太郎。

 しかし、いま彼の表情は困惑の色に染まっており、額からツゥーっと汗が流れている。

 

「まいにちちょっとずつ、がんばってかいたよ。

 どう、チョコおじさん。おもしろい?」

 

「んん!? あぁ~……」

 

 行きの車内での雑談で、今日は小雪が脚本を担当したという映像作品が、ここ視聴覚室で上映されるのだという話は聞いていた。

 これは流たち生徒会が作る映画とは別の、この学園の映画部の協力により作成した物である。

 ゆえに彼も、そしてワーキングプア侍も、やんややんやと小雪を囃し立てつつ、胸を躍らせながら映画を観ていたのだが……。

 

「いや、すごいで? こんな立派なモン、よう作ったな~思うねんで?

 でもな……小雪よ」

 

「?」

 

「ワイちょっと、男がアヘェーとかオホォ~とか言うとる映画(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)の事は、よう分からんくて……」

 

 いまチョコおじさんと小雪ちゃんの眼前では、半裸の男が縄で縛られ、変な喘ぎ声を出している映像が映し出されている。

 

「なんや……、いったい何をやっとんのやコイツ等は。

 確かお前さん……お兄ちゃんがモデルの映画やと、そう言っとったハズやが……」

 

「そうだよ?

 この主役の“ナガレくん”はね、お兄ちゃんをモデルにしてかいたの」

 

「アカンがな! 大事なお兄ちゃんを、こんな風にしたらアカンねんで!?」

 

 演者こそ別人のようだが、今もスクリーンには“ナガレくん”という、自身の兄と同姓同名の人物が、「ひぎぃ~!」とか「イグゥ!?」とか叫んでいる姿がある。

 

「あのね? じつはこの脚本、“爆乳ナイチンゲール”こと、力石さんからもらった本を参考にして、かいてみたの」

 

「誰や?! 爆乳ナイチンゲールこと力石さんて! なんか知らん名前出てきたぞ!?」

 

「爆乳ナイチンゲールこと力石さんはね? ウチのびょういんにいるナースさんだよ?

 わたしを担当してくれてる、おんなのひと」

 

「小雪お前っ……爆乳ナイチンゲールこと力石さんに担当されとんのか!? 大丈夫なんか?!

 ……つかその無駄に強そうな名前なんやねん?!」

 

「爆乳ナイチンゲールこと力石さんは、いつもわたしのために、いろんな本をもってきてくれる、やさしいひとだよ。

 なんかひらべったくて、薄い本ばかりをもってくるよ?」

 

「それアカンのとちゃうかッ!?

 子供に読ませたら、あかんタイプのヤツちゃうか?! なんか聞いたことあるで?!」

 

「小雪ちゃんもお年頃だし、そろそろこういうのをお読んでおくぞなもし。でゅふふwww

 って爆乳ナイチンゲールこと力石さんは、ゆってたよ?

 しゅくじょのたしなみだ~って」

 

「嗜まんでええねん! そういうのは!

 ――――つか患者に何を読ませとんねん!!

 美星中央病院の医療方針、いったいどーなっとんねん!?」

 

 子供の吸収力! 純真無垢な心!

 疑うことを知らぬ小雪の純粋さのおかげで、スクリーンの中のお兄ちゃんが今、えらい事になっている。

 情けない声で「ゆるじでぇ~!」とか、「ぎんもぢいひぃ~!」とか言ってる。

 

 ちなみに、いま小雪たちの後ろの席では、美星学園が誇るエリート腐女子達による「キタコレ! キタコレ!」の大合唱がおこなわれている。

 マスターP×秋月流キタコレ! 尊い!

 

「この映画はね?

 町長のマスターP氏がその権力をつかって、お兄ちゃんを手に入れようとするお話だよ」

 

「何しとんねん町長!? そんなことに権力を使うな!」

 

「“病弱な妹”という弱みに付け込まれたお兄ちゃんは、病院を追い出すとか、断れば手術を受けさせない~とか脅されて、その身を差し出すの」

 

「リアリティを出すな! 生々しいわ!

 お前はそれでええんか小雪ッ!?」

 

『お兄ちゃんな……、マスターPさんの養子になる事にしたんだ……。

 手術代のことは、なんにも心配しなくて良い……。俺がなんとかするから。

 絶対にお兄ちゃんが助けてやるからなッ! 小雪ッ!!(キリッ)』

 

「音読すな!

 それ多分、この映画における名シーンなんやろうけどな?! やめとき!」

 

「でもそのあとすぐ、お兄ちゃんはアヘェ~って即オチするの」

 

「さすな!

 自分の兄ちゃんをアヘェ~ってさせたらアカン! どんだけ業深いねん!?」

 

「たとえ強靭な精神力があろうとも、快楽には抗えんぞなもし。でゅふふwww

 って爆乳ナイチンゲールこと力石さんが」

 

「何してくれとんねん力石さん! こんな純粋な子にッ!!」

 

 ちなみにであるが、今も小雪の隣に座り、一緒にこの映画を鑑賞していたハズのワーキングプア侍は、すでに白目を向いて気絶している。

 この脚本を書いたのが小雪だという現実に、心が耐え切れなかったのだろう。口からブクブクと泡も吹いている。

 

 勝手にリタイアしよってからに……! それでも臣下かワレ……!

 大切な友達ではあるが、そう毒づかずにはいられなかった。

 

「映画のラストでね?

 ぶじに手術が成功したわたしのもとに、お兄ちゃんから一通のメールと動画が送られてくるの。

 そこに映ってたのが……」

 

「ええて! さっきの『アヘェー!』みたいなんとタイトルで、大体想像つくわ!

 言わんでもええて!」

 

「その変わり果てたお兄ちゃんの姿に、わたしはショックをうけて、ポックリ逝っちゃうの」

 

「――――死んどるやないか! なんでそんな話書いたんや小雪?! なんでや!?」

 

 今も小雪たちの後ろでは、「見てあの悔しそうな顔!」「感じてるのを必死に隠してる顔!」「尊い!」とかなんとか、腐女子の皆さんが歓声を上げている。

 関係ないが、マスターP氏もえらいとばっちりやな、とも思う。そんな人ちゃうやろ絶対。

 

 

「この脚本を、お兄ちゃんにみせたらね?

 小雪は絶対ハリウッドに行ける! ってゆってた。えっへん」

 

「甘やかし過ぎやろ!!??

 時にはガツンと言うたるのも愛やで?! いくら可愛くても!」

 

 

 

 ちなみにこの映画は、お子様でも安心して観られる、KENZENな内容だった。(震え声)

 

 

 

 







 作者のページ ↓
 https://syosetu.org/?mode=user&uid=141406


 そこら中に喧嘩を売っていくスタイル。(もんじゃ焼きの狂犬)

 しかし、私は約束を守りましたよ3710さんっ。
 ――――私達は君を、美星祭に連れてきたぞ!!

 今回の手番では、ちょっと強引にですけど、次話のための下準備をさせて頂いたつもりです。
 上手くセンタリングが上がっていれば良いのですが……いかがでしょうか?

 次はいよいよ、3710様の手番! ついに美星祭編も大詰め!
 秋月流という少年が目指した「最高の美星祭」
 その結末が見られるのを楽しみにしております☆

(hasegawa)

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