【リレー】今日もカオスなもんじゃ焼き   作:リレー小説実行委員会

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【パラレル】美星祭編、最終回。 (hasegawa Ver.)

 

 

 美星祭2日目は、大盛況だった。

 

「ちょっと所長っ! 一人でどっか行かないで下さいよっ!」

 

「うへへへ! 若い男がいっぱいだわぁ~! これ何て楽園?!」

 

 バイトである流に入場券を貰い、来場してきた新聞配達所の所長(オカマ)が、あっちにフラフラ、こっちにフラフラと、男子高校生という若い燕たちに目移りしている。

 それを同僚の佐々木ちゃんや、未だギックリ腰に悩んでいる野田さんが、困った顔で追いかけている。

 

「うわぁ~、なんて華やかな学園祭なのかしらっ!

 流くんが生徒会長らしいけど、きっとすごく頑張ったのね♪」

 

「ほっほっほ。そうだねぇバタコ。さすがは流くんだよ」

 

 あの世界改変の後、しっかり挨拶に行き、そして顔見知りとなっていたジャムおじさんとバタコさん。

 流は彼らも美星祭に招待しており、今も目を輝かせて、学園の生徒が作り出すこの空間を楽しんでくれている。

 

「おい婆さんや! これメッチャ旨いぞ! 食うてみぃ食うてみぃ!」

 

「あらあらお爺さん。そんなに急いで食べると、喉に詰まってしまいますよ♪」

 

「あっ、あのフランクフルト美味しそう! おじいちゃん買ってもいーい?」

 

 ファンキー爺さん&ファンキー妻子も、もちろん美星祭に招待された。

 家族いっしょに色々な教室を見て周り、とても幸せそうな姿を見せている。

 

「スパム! スパム! スパム!」

 

「おう若いの、北斗神拳に興味は無いかの?

 今ならワシが手ほどきをしてやるぞぃ」

 

「待てぇルパァーン! こんな学園で、いったい何を盗むつもりだぁ~!」

 

「いくら美味しそうな物ばかりだからって、こんなに食べちゃうなんて……。

 あたしって、ほんとバカ……」

 

「いいじゃない、さやかさん! ダイエットなんてもう知らないわ!

 こんな気持ちはじめて――――もう何も怖くない」

 

「お嬢さん、ちくわを一本貰えるかね?

 えっ……置いてない?! 何故ちくわを置かないのだ?! 旨いのだぞちくわ!?!?」

 

 この町に住む沢山の人達が、美星祭に来場してくれた。

 生徒会長である流を中心とし、そして皆で作り上げたこの美星祭は、いま沢山の笑顔で溢れている。

 

 映画、ライブ、ヒーローショー。食い逃げ上等の武闘派メイド喫茶。

 なぜかマグロの解体ショーや、伝統芸能である歌舞伎の舞台や、流鏑馬(やぶさめ)のイベントがあったり、あと校庭に設営された特設リングではボクシングの世界タイトルマッチが行われたりと、かなりフリーダムな学園祭にはなっているが……。

 それでも皆、いま心から楽しんでいる。

 

 

 流がその青春を賭けて打ち込み、小雪という少女がずっと夢見ていた、“最高の美星祭”。

 それは今、確かに現実の物となって、ここにある――――

 

 みんなが夢見ていた最高の一日は、大盛況のまま過ぎていった。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「やぁ秋月くん、調子はどうかね?」

 

「あっ、校長先生じゃん!」

 

 時刻はお昼時となり、美星学園の校庭。

 何故かわざわざ特設会場まで設けて、バナナのたたき売りという謎のイベントをしていた流のもとに、この学園の校長先生がやって来る。

 そしてにこやかな笑顔で、生徒会長である彼に、労いの言葉をかけた。

 

「君のおかげで、過去に類を見ないほどに、素晴らしい美星祭となったよ。

 頑張ったね、秋月くん」

 

「えっ、いやそんな……。俺だけの力じゃないって」

 

 上品な青いスーツに身を包んだ、恰幅の良い身体。

 白髪だけど綺麗に整えられた、オールバックの髪型。そしてあたたかな表情。

 生徒たちに愛され、この美星学園の校長を務めるその人に、流は照れ笑いを返す。

 

 この美星祭を作り上げたのは、生徒会を始めとする仲間達。そしてこの美星学園の全ての生徒たちだ。

 たくさん苦労し、精一杯準備し、仲間達と力を合わせて頑張って来たのだ。

 今日というこの日まで、この上無く充実した楽しい時間と共に、それを強く実感していた流は、頭をポリポリかきながら謙遜する。

 

「みんなで企画して、準備して、みんなで作り上げたんだ。

 俺ひとりの力なんて、ぜんぜん大した事ない。すげぇのは美星学園のみんなだよ」

 

「はっはっは! そうか……そうだね秋月くん」

 

 あたたかな表情で、校長先生は流に笑いかける。

 

 

「だが貴様の青春も――――ここが終着点となる」

 

 

 ドカン!!!! という物凄い音が鳴った――――

 その途端、流の身体は大きく吹き飛び、何度も地面をバウンドしながら、何十メートルも転がって行った!

 

「えっ……流ッ?!?!」

 

「ながれぇーーッッ!!??」

 

 傍にいたVUMのメンバー達が、悲鳴にも似た声を上げる。

 それに構わず、その場に佇んだままで、校長先生は「わっはっは」と笑う。

 

「油断したな、秋月流。

 私は今日この時を、ずっと待っていた――――」

 

「!?!?」

 

「???!!!」

 

 地面に倒れながらも、即座に顔を上げた流。そしてその場で硬直するVUMのメンバー達が、驚愕にひん剥いた目で校長先生を見る。

 

「校長とは、世を忍ぶ仮の姿。

 ――――我こそは裏秋月(・・・)肆の遺影(・・・・)! 秋月 魔化論(マカロン)なりッ!!!!」

 

 ババーン! と言い放ち、流の方にビシッと指を突き付ける!

 

「流よ! 今日が貴様の命日だッ!!

 そして、貴様の紡いできた物語――――その最終回となるのだッ!!」

 

「!!??」

 

「「「 !!!!???? 」」」

 

 驚愕するVUMのメンバー達を余所に、いま校長先生改め“秋月 魔化論”が、まるで熊のように雄々しく両手を広げ、戦いの構えを取る!

 

「下がれ流ッ!!」

 

「こいつとんでもねぇぞ!? いったん距離を取れッ!!」

 

「逃げなさいッ! 流くんっ!」

 

 早乙女アルト、渡辺摩利、布仏虚といったVUMのメンバー達が、校長先生こと魔化論の前に立ちふさがる。……だがしかし!

 

「――――じゃかぁしいわぁ!!!! ごるぁぁぁあああああッッ!!!!」

 

「ぐぅあーーーっ!!」

 

「うおぉぉぉ?!」

 

「ぎゃあああああ!!!!」

 

 魔化論が腕を一閃した途端、全員が天高く跳ね飛ばされる!

 そして「ぐえっ!」という声を出して地面に叩きつけられ、そのまま動かなくなる!

 

「 マクロスも! ISも! 劣等生も! 私はよく知らんのじゃぁぁぁあああ(・・・・・・・・・・・・・・・・)!!!!

  サブキャラならともかく、何を普通にメインキャラなっとんのじゃ!!

  ――――書けんのじゃ! お前らなんか!! 死ねボケぇぇぇえええッッ!!!! 」

 

「「「 !!!??? 」」」」

 

 今までどうしても言えなかった、ほんとうの気持ち――――魂の叫び。

 それを今、魔化論が声を大にして言ってのける。

 これは良い機会であったのだ。

 

「――――書かんッ! もう私は、こいつらの事は書かんぞぉぉーーッ!!!!

 さぁ来い流ッ!! VUMなんて捨ててかかって来い!!

 お前と私で、正々堂々と勝負しようじゃないかッ!!

 あっ……別に勝也くんや、直樹くん、のどかチャンの事は、呼んでくれても良いぞ?

 あの子らはオリキャラだしな。別にいろはチャンも良いぞ? 可愛いし」

 

「「「…………」」」

 

 何その注文。なにその自分勝手……。

 いくらラスボスだからって、もう好き放題に言ってくれる。

 それぞれが自分に書けるキャラで書いたら、それでいいじゃないか! なぜ人の作風やスタイルに、無理やり合わせようとするんだ! 自分の色を出せ!

 

「――――裏秋月奥義、版権滅殺拳。

 我が拳は、版権キャラに対して、1.25倍の威力補正が入る」

 

「えっ、意外とそんなでもなくない?

 頑張ったら戦えそうなんだけど……」

 

「やかましいっ!

 死にたくなければマクロス、IS、劣等生のキャラ達は、発言を控えるように!

 校長先生からのお願いだッ! 廊下にでも立ってなさいッ!」

 

「理不尽ッ……!」

 

 そうしてアルトたち版権キャラは、ぶつくさ文句を言いながら、しぶしぶ校舎の方へと歩いて行く。

 なんだかよく分からないまま、この場にいたVUMのメンバーたちが去り、流は絶対絶命のピンチである。

 

「よくも俺の仲間達を、仲間外れにしたなッ!

 許さねぇぞ魔化論ッ!!」

 

「ふははは。いくら膨大な徳を持つとはいえ、貴様などちょっと身体能力に優れた、熱い心と優しさを合わせ持つ、おバカな少年に過ぎん!

 それは当学園の校長を務めるこの私が、一番知っている! 内申書にも目を通している!

 この裏秋月最強と謳われた魔化論に、敵うと思っているのか!」

 

「ぐぅあーーっ!?」

 

 魔化論のアッパーカットを喰らい、流の身体が校舎の三階まで跳ね上がる。

 そして「ぐえっ!」という声を出して、地面に叩きつけられた。ベシャッって感じで。

 

「くっ……くそっ! 身体が動かねぇ!! なんてこった!!」

 

「無様だな! 秋月流ッ!!

 所詮は貴様も子供。お地蔵さまが居ないと、何にも出来んのか!」

 

「なっ!? なんだとテメェ!!」

 

 なぜお前が、あのお地蔵さまの事を知っている?!

 未だこの町の勢力や、闇社会の事情に疎い流は、その一言に目を見開く。

 

「流よ! こちらを見るがいい!

 これを見ても、まだ私に歯向かうと言うのかっ!!」

 

「!?!?」

 

 魔化論は、すぐ傍に置いてあった風呂敷らしき荷物の所に行き、それをバッと払いのけて、中身を流に見せつける。

 

《な……流ぇ~! 助けてくれぇ~い!》

 

「――――お゛っ! お地蔵さまっ?!?!」

 

 そこにあったのは、自身がいつもお供え物をしている、あのお地蔵さまの姿! 今日もおにぎりをお供えしたばっかりだ!

 恐らく魔化論は、裏秋月の組織力を使い、ようやくお地蔵さまの在処をつきとめ、それを今日ここに持ってきたのであろう!

 流を倒すために! 大切なお地蔵さまを人質(?)にし、流の戦意を削いで無力化させるために! ああ何という事だろう!

 

 石の身体ではあるが、お地蔵さまも心なしか、困った顔をしているような気がするッ!

 

「てめぇ卑怯だぞッ! お地蔵さまを放しやがれッ!!

 とっても偉いんだぞ! そのお地蔵さまは!! 失礼だろうがよッ!!」

 

「ふははは! 知ったことか秋月流ッ!

 お前を倒せるのなら、この魔化論! もう何でもする所存よ!

 お地蔵さまには後で、必死こいてご無礼を謝罪してくれるッ!!

 土下座でもなんでもしてくれるわッ!!」

 

 信仰心が厚いのか薄いのか、もうよく分からなくなっている校長先生、こと魔化論。

 

「さぁいくぞぉ流ぇ! そいやー!!」

 

「ぐぅあーーッ!?」

 

 魔化論のアッパーカットを喰らい、流の身体がヒューっと跳ね上がる。

 そして「ぐえっ!」という声を出して、地面に叩きつけられた。ドテーっとばかりに。

 関係ないが、もう今日三回くらい見た光景だ。

 裏秋月・肆の遺影は、なんか攻撃がワンパターンであった。

 

《なっ……流ぇ~! しっかりするんじゃ~! 流ぇ~!》

 

「ううっ……お地蔵さまっ!」

 

 お地蔵さまのスピリチュアルな応援は、今日は流に届いているようだ。

 今は非常事態であるし、流もお地蔵さまも必死だ。こういう時はお話が出来るのかもしれない。

 

 しかしながら、状況はいっこうに変わらない。

 たたでさえ強大な相手だというのに、お地蔵さまを人質(?)に取られ、流はまったく抵抗が出来ないのだ。このままでは負けてしまう! 

 

「ははは! いい気味だぁ流!

 このまま貴様を殺し、我が一族が受けてきた辛酸を味合わせてやるのも良いが……。

 しかしそれは、あまりにも味気ないという物だ」

 

 流は今も苦しそうに……、よくある90年代ジャンプ漫画の主人公みたく、身体をプルプルしつつも必死に立ち上がろうと頑張っている。

 そんな彼の姿を見て、あまりにも簡単だった勝利を噛みしめながら、魔化論が言い放つ。

 

「よし決めた! ――――貴様はこの美星学園その物(・・・・・・・)で、息の根を止めてやろう!

 慣れ親しんだ校舎に殺され、無念の内に果てるが良いっ!!」

 

 魔化論はスーツの懐から、何かのリモコンらしき物を取り出す。

 そして「ぬぅえーい!」とばかりに、そのボタンを押し込む!

 

「変形だッ!! これぞ我が美星学園の、真の姿ッ!!

 ――――熱血最強! ゴウ〇ウラー!!」

 

 するとどうだ! 突然ゴゴゴゴと地面が揺れたかと思えば、いま眼前にある美星学園の校舎が動きだし、だんだん巨大なロボットの形(・・・・・・・・・)になっていくではないか!

 ――――普通の朝が、日常が! 遠くに消えていく!

 この現実的でない、非日常な光景は何だっ! というかこのロボも版権キャラじゃねーか!

 

「うわぁ! なんだこれは!」

 

「ぎゃー! 助けてぇー!」

 

「うわぁーー!」

 

 校舎の中に取り残された大勢の人達が、悲鳴を上げているのが聴こえる。

 たった今まで、美星祭を楽しんでいた人々の顔が、恐怖に歪んでしまっている!

 

「て……てめぇ! なんてことしやがるんだッ!!

 なんだこの、でけぇロボットは!!」

 

「これは、我が裏秋月が対オールインワン、ComeTrue用に開発した、巨大ロボットだ。

 まさか貴様も、自分が毎日のように通っていた学び舎が、ロボットに変形するとは夢にも思わなかっただろう? だからこそ奴らを欺けるという物だ!」

 

「くっ……!」

 

 流はどうする事も出来ないまま、ただただ驚愕の表情を浮かべる。

 やがでこの美星学園……いや熱血最強ゴウ〇ウラーは完全に変形し終わり、なんか「ガッシーン!」みたいなカッコいい決めポーズを取った。

 

「本来これは、貴様のような人間相手に使う程、安いロボットでは無い。

 だが今日は、我が裏秋月がようやく表舞台に立つ……その記念日よ。

 ひとつ冥途の土産に、お前に見せてやろうと思ってなぁ!

 そして自らが青春を過ごした、この“美星学園その物”によって、死んでいけぇい!」

 

 これはいったい、何の冗談だ?

 自分は今日、ようやく目指していた美星祭の日を迎え、仲間達とその喜びを分かち合っていた所じゃないか。

 

 なのに――――秋月流 vs 美星学園。

 これまで、何人かの敵を退けてきた流ではあるが、その最後の敵は……大好きな美星学園その物!

 

 流はその現実を、未だ受け入れる事が出来ず、ただただその場で立ちすくむ。

 いま見上げんばかりの巨体で眼前に立つ、美星学園という名のロボットを前に。

 

「さぁ行けゴウ〇ウラーよ! 秋月流を踏みつぶせッ!」

 

「くっ……!?」

 

 即座に駆け出し、受け身を取ることも考えずに前転する。

 次の瞬間、流がたった今まで立っていた場所に、ゴウ〇ウラーの巨大な足が踏み降ろされた。鼓膜どころか空気すらも振動する、途轍もない轟音を立てて。

 

「どうしたぁ流ッ! そのままではペシャンコだぞ!」

 

《なっ! 流ぇ~! 流ぇぇ~~!!》

 

 お地蔵さまのスピリチュアルな叫び。その願いも届かないまま、次々に流がいる場所に、ロボットの足が踏み降ろされていく。

 今は持ち前の運動神経で、なんとか躱しているようだが……相手は30メートルにも及ぶ巨大ロボット。流が踏みつぶされてしまうのは、もう時間の問題に見えた。

 

《流っ! 逃げるのじゃ! ワシのことはええからっ!

 お前が死んでしもうたらっ……ワシはっ!》

 

 石の身体であるハズなのに、お地蔵さまの瞳から、ポロリと涙が零れていく。

 その悲痛な表情は、たとえスピリチュアルな感性を持つ者でなくとも、ハッキリ分かることだろう。

 

《やめれっ! 流が死んでしまうっ……! やめておくれ魔化論とやらっ!》

 

 だがその叫びは、決して悪党の耳には届かない。

 お地蔵さまは、何度も何度も叫ぶ。石であるハズの、その喉が、枯れてしまうんじゃないかと思うくらい。必死に。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「き……きゃあぁぁーー!!」

 

「小雪ッ……!!」

 

 流が戦っているのと、同じ時。

 今日美星祭に来園しており、いま偶然グラウンドに出ていた小雪の頭上に、吹き飛んできた沢山の瓦礫が振って来る!

 傍にいたチョコ太郎が覆いかぶさり、その身を呈して小雪を守る。死を覚悟して!

 

「……ん?」

 

「なっ……なんや?!」

 

 守るように小雪を抱きしめていた、チョコ太郎。

 じっと身を固くしながら、ただ死を待つばかりであった二人……だがいつまで経っても、その瞬間は訪れなかった。

 

「――――何をしてるんだチョコ太郎! しっかり守ってやれよ!」

 

「貴方ぁ――――それでも裏秋月ぃ?

 情けない声を出しちゃって、恥ずかしくないのですかぁ~♪」

 

「おっ……お前らッ??!!」

 

 やがて二人が、閉じていた瞳をそっと開いた時……そこにいたのは、こちらに襲い来る瓦礫を完全に防ぎ切って見せた、ポン助と東雲(・・・・・・)の姿だった。

 裏秋月・壱の遺影、参の遺影の当主の二人だ!

 

「なっ……何しとんねんお前らッ!! なんやねんっ!!

 貧乏人と、運なし娘が、いったい何のつもりやねん!!

 ……なんでワイらの事をッ……!」

 

「あら、貴方だって嫌われ者でしょ? 裏秋月の業を背負ってるのは、お互い様です」

 

「その通りさ、チョコ太郎。

 たしかに俺たち裏秋月は、今まで仲良くも無かったし、バリバリに敵対してた。

 なんとかお前らを出し抜こうって……俺もそう躍起になってはいたけどさ?」

 

 声を張り上げながらも、今もキョトンとしている小雪を大切に抱きしめているチョコ太郎。その姿を見て、裏秋月の二人がクスッと小さく笑う。

 

「けれど……別に貴方のことを憎いだなんて、一度も思ったことはありませんよ?

 私たちは同じ物を背負い……、同じ苦しみを分かち合う者同士。

 この世で唯一、分かり合える存在。……違いますか?」

 

「そう。倒すべきは、秋月本家ってな!

 まぁ俺も、こうして小雪ちゃんのことを知っちゃった以上は……、こんな可愛らしい子を殺そうだなんて、とても思えないけど」

 

「お……お前らっ……!」

 

 二人がチョコ太郎たちの所へ歩み寄り、手を貸して身を起こしてやる。

 

 

「――――裏秋月にだって、友情はあるんだ!!」ドンッ!

 

 

 まるで悪魔超人みたいな事を言い、ポン助がメガネをクイッとやりながら、カッと決め顔を作った。

 言ってはなんだけど、非常に暑苦しかった。

 もしかして、そのセリフがやりたかっただけなんじゃ? と思ってしまう程に。

 

 

「三人揃えば、文殊の知恵です♪

 今後は私たちで協力をしつつ、この業をどうにかする方法を探してゆきましょう♪」

 

「まぁ……あの肆の遺影とかいう、狂ったオッサンは別だけどな……。

 アイツのことは、流に任せよう。

 大丈夫、きっと流なら何とかするさ。俺はよく知ってる――――」

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

《流っ! 大丈夫かぁ流ぇ~! やめておくれぇ~っ!》

 

 場所は戻り、再び流たちの戦場。

 今も魔化論が操る巨大ロボ……美星学園その物である巨人が、流を踏みつぶそうと襲い掛かっている。

 

《その子は、ワシの大事な子ぉなんじゃ! たった一人の信仰者なんじゃあ!

 やめておくれっ……! どうかその子を殺さないでおくれっ……! お願いじゃあ~っ!》

 

 今も流は必死にグラウンドを駆け回り、もう成す術なく逃げ回っている。

 時に衝撃で吹き飛び、地面を転がり、傷だらけになりながらも走り続けている。

 その必死で、哀れな姿を……お地蔵さまは涙を流しながら見つめ続ける――――

 

《なんで殺すんじゃ! こんなにもまっすぐで、頑張り屋なええ子を、なんで殺そうというんじゃっ! なんでなんじゃあ~っ!》

 

 その叫びは、決して届かない。

 石であるお地蔵さまは、ただただ見守ることしか出来ない。

 

 当然だ。この300年の間、いつもあんなに酷いお供え物をされていたのに、それを咎めることも止めさせる事も、お地蔵さまには出来なかったのだから。

 いくら大切に思おうと、どれだけその心を痛めようとも、ただの石に過ぎないお地蔵さまでは、流を助けてやる事が出来ない。

 ここから動くことすら、出来ないのだ――――

 

《流っ! 流ぇぇ~っ! 嫌じゃあーー!! 流ぇぇーーーっっ!!》

 

 いま、自身の心から愛する少年が、巨大ロボットの攻撃によって、空高く吹き飛ぶ。

 なんとか受け身を取り、着地はしたが、もう流の身体に力は残っておらず、その場から起き上がる事が出来ない。

 

《やめれっ! やめておくれぇぇ~っ! 流ぇぇぇーーっ!》

 

 そして今……ついに美星学園という巨大ロボットの大きな足が、流の身体を覆い隠すように、ゆっくりと踏み降ろされ……。

 

 

 

 

《――――止めろと言うとるじゃあ!! ぼけぇぇぇええええッッ!!!!》

 

 

「!!??」

 

「?!?!?!」

 

 

 その時! 突然お地蔵さまの身体が〈ズモモモ……!〉と巨大化し始めた(・・・・・・・)

 それは見る見る内に大きくなり、もう瞬く間に空へと届かんばかりの、巨大な姿となる!

 

《なんで止めへんのじゃ! 止めろと言うとるんじゃ! お地蔵さま舐めとんのかコラァ!!》

 

「!!??」

 

「????!!!!」

 

 この突然の出来事に、怒られている魔化論はもちろんの事、流までも硬直している。

 もう「アンガー!」と口を空けて、目をひん剥きながら絶句した。

 

《――――もう怒ったワシ! お地蔵さまの本気みせたるっ!

 何がゴウ〇ウラーじゃ! 伊邪那岐命(いざなぎのみこと)の本気みせたるっ!》

 

 気が付けば……お地蔵さまのお身体は、山より大きくなっていた。

 怒りで顔面が般若のようになったお地蔵さまの、〈ドシーン! ドシーン!〉という足音が、美星町に木霊する。

 

 たかだが30メートルそこそこのゴウ〇ウラーなんて、もう目じゃない。今のお地蔵さまは、もうそれが子犬に見えてしまうくらいに大きいのだ。

 

《喰らえっ! お地蔵さま頭突き! お地蔵さまタックル! お地蔵さまドロップキック!》

 

「 !!!!???? 」

 

「 ッッ???????!!!!!! 」

 

 あんなにも大きいのに、すんごくコミカルな動きで、お地蔵さまがゴウ〇ウラーをボコボコにしていく! 瞬く間にスクラップにしていく!

 もちろんそのスーパーな力で、ロボットの中にいた民間人を、すべて別の安全な場所へと転送してからだ。

 流と魔化論がポカーンと見つめる中……天地に木霊するお地蔵さまの怒りが、炸裂する。

 ドガガガガガーッ! みたいな音がしている。

 

《流死んだらどうすんねんっ! ワシめっちゃ悲しいやないかっ!

 何してくれてんねんアホ! アホォー!

 お地蔵さまアタック! お地蔵さまストンピング! お地蔵さまファイナル・クラッシュ!》

 

「……」

 

「…………」

 

 ――――えっ、俺と美星学園ロボの戦いじゃなかったの?

 これって確か、俺が主役の物語だと思ってたんだけど……お地蔵さまが倒しちゃうの?

 さっきもポン助、「流がなんとかする」って言ってたじゃん。なんでお地蔵さまが倒すの?

 

 流はポカンとしつつ、ただただめいっぱい空を見上げて、お地蔵さまがハッスルし続ける姿を見守る。

 あれだけ温厚で、どんなお供え物をされても怒らなかったお地蔵さまのマジギレなど、きっとこの何千年もの間、誰も見たことが無いんじゃなかろうか。

 

 もう止められない。何も出来ない――――俺主人公なのに。

 あんな風になっちまったお地蔵さま、俺とめらんねぇよ。だって無理だよアレ。

 

 

《――――なんやお前コラァ! 何が裏秋月じゃコラァ!

 お地蔵さまに何か文句あるんかぁコラァ!! 流殺すなコラァーッ!!》

 

「はいッ! すんませんすんませんッ!!

 止めますッ! もう流くん殺すの止めますッ!! だから許して下さいッ!!」

 

「…………」

 

 

 もう土下座せんばかりの勢いで、裏秋月・肆の遺影の男が、お地蔵さまに平謝りしている。

 

 流、小雪に、VUMのメンバー。そしてこの美星町に住む全ての人々が……なんとも言えない気持ちで、それを見つめるのだった。

 

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 後日。

 念願だった美星祭も無事に終える事が出来た、その翌日のこと――――

 

「お地蔵さまって、強かったんだな。

 でもあんなに怒っちゃ駄目だよ。俺はいつもの、優しいお地蔵さまが好きだなぁ」

 

《~~っっ!!》

 

 朝になり、いつものようにお供え物をしに来た流が、お地蔵さまに語り掛ける。

 お地蔵さまの方は、石であるハズの顔を「カァァ~!」っと真っ赤にし、なにやらすんごく恥ずかしがっているように見えた。

 

 なんであんな事したんじゃろう、ワシ……。

 いくら流のピンチじゃからって、我を忘れて見境なく暴れてまうなんて……。

 ワシけっこう偉いさんで、みんなの模範となるべき立場やのに……トホホ。

 

「でも、守ってくれてありがとう――――

 お地蔵さまのお蔭で、あれからちゃんと美星祭を再開できたよ。

 小雪も、学校のやつらも……、みんなお地蔵さまありがとう~って、感謝してたよ?」

 

《…………》

 

 ニコッとこちらに微笑む、大切な少年。

 

「俺も感謝してる。いつも俺たちを見守ってくれて、ほんとありがとう。

 俺お地蔵さまのこと、大好きだよ――――」

 

 

 お地蔵さまは喋れないし、彼に気持ちを伝える事も出来ない。

 今回のように何か非常事態でも無い限りは……石である自分には、彼のためにしてやれる事は少ない。

 若くして親を失くし、それでも兄妹のために必死で頑張っているこの子に、何もしてやる事が出来ずにいる。

 昔も、そして今も、お地蔵さまはそれを、すごく流に申し訳ない気持ちでいるのだ。

 

 変な物ばかりだけど、いつも毎日かかさずお供え物を持ってきてくれる、こんなにも優しくて良い子なのに。

 

 VUMの者達や、チョコ太郎だって同じ気持ちなんだろう。

 小雪も、そして流も、もうなんでもしてあげたいって思えるくらいに、すごく良い子たちだから。

 

 けれど今……流のまっすぐな気持ちの籠った、心からの感謝を伝えられて……。

 石であるはずのお地蔵さまの胸が、とても温かくなる。

 

「さって! 今日からまたバイトに学校に……あとは少しくらい勉強もしなきゃ。

 美星祭は終わっちまったけど、これからは何を目標にしよっかな?

 また目標を考えなきゃ」

 

 そうじゃな、流。お前は美星祭を成し遂げたんじゃ。

 なんか、ちょっとワシが邪魔してもうた気がせん事も無いんじゃが……とにかくお前さんは、しっかり頑張っておったぞよ? ワシは見ておったでな。

 

 

「今日からまた頑張るよ。小雪や仲間達といっしょに。

 だから見守っててくれな、お地蔵さま♪

 俺ぜったいに、世界征服が出来るような、すごいヤツになるから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あぁ、がんばれ流――――

 

 正直、世界征服はせんでもええんじゃないかと、そう思うんじゃが……。

 まぁとりあえず頑張れ。

 お前らしく、一生懸命に走れ。

 

 ワシはずっと見守っておる。応援しておるでな。

 お主が紡いでいく物語を、ずっと見守っておるよ。

 

 このイザナミノミコトが――――

 

 

 

 

 

 やがて、流が山道を後にし、新聞配達をする為に、美星町へと向かっていく。

 

 その元気で頼もしい後ろ姿を……、どこか微笑んでいるようにも見えるお地蔵さまが、優しく見守っていた。

 

 

 







・エンディングその1。 ――お地蔵さまEND――


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