【リレー】今日もカオスなもんじゃ焼き   作:リレー小説実行委員会

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【劇場版】マジンガー絶頂(Z) Ⅲ

 

 

 

 

「あぁ疲れたぁー! なんか20キロくらい歩いた気がするぞ。体感的に」

 

 夜の8時。二人で選んでテイクアウトしてきた、マックのハンバーガーでの食事を終えて、いまマスターP氏はお風呂に入っているトコロ。

 Hitomiはその身体のワリに、意外なほどに小食だったのが印象的だったと、今日の出来事を振り返りながら、のんびり湯船に浸かる。

 今日一日の疲労とか、新車のバイクが大破した悲しみとかが、お風呂によって一気に浄化されていく心地。極楽極楽ってなもんだ。

 

「まぁ気疲れとかは無かったし、そりゃーいいんだけども。

 アイツ話しやすいよな……。めっちゃ気が合う感じするぞ」

 

 今日会ったばかりだというのに、二人は早くも打ち解けている感。

 P氏が破天荒で、物怖じをしない性格というのもあるが、Hitomiだってそうとうな物だ。

 あたかも「パーソナルスペース? なにそれ」とばかりに、四六時中パパに引っ付いていた。めちゃめちゃ嬉しそうに。

 

 これまでずっと一人だった反動もあるのだろう。もう“懐く”という言葉が生ぬるいくらいベッタベタ。

 愛してもらおうという打算や、血縁だから頼るのでなく、心からマスターP氏のことを好いているように思う。今日一日でヒシヒシと感じた。

 

 とくに、一緒にメガネ屋さんに行った時のHitomiは、本当に嬉しそうで……。見てみて微笑ましいくらいだった。

 

 オシャレな赤いフレームの、なんかエロ女教師がかけてそうなメガネだったのだが、それを店員さんから受け取った後、Hitomiはまるで宝物のように、胸元でギュッと握りしめていた。

 この幸せを逃がすまいとするように。そっと目を閉じて、微笑みを浮かべていたのを憶えている。

 

 ありがとうパパ。ずっと大切にするね――――

 そう二パッ☆ と笑ってお礼を言われた時、P氏はガラにも無く赤面。慌ててゴホンと咳払い。

 イカンイカン、この子わいの娘なんだわと、プルプル頭をふってみたものの、あの慈愛に満ちた美しい顔は、今も鮮明に脳裏に焼き付いている。

 きっと、ずっと忘れないんだろう。

 

 

 

「ランカのことは気になっけど……、今それどころじゃないよなぁ。

 まだ艦娘たちも帰って来ねぇし、暫くはHitomiと二人っきりかぁ~」

 

 Hitomiを家に置いている以上、この状況でランカを説得するのは、非常に困難だろう。ひと悶着あった後だし、暫く二人を合わせたくない気もする。

 Hitomiが未来から来たというのも、自分の娘だという事も、とても信じて貰えるとは思えない。きっと今何を言っても、言い訳にしか聞こえてないだろうし。

 

 当アパート(美星鎮守府)の居候である艦娘たちも、帰還にはまだ少しかかるようだ。

 つい先ほど無線機に連絡があり、「潮干狩りをしてたら、全員大破しました」との事。

 いったい何故そんな事になったのかは不明だが、とにかく修復に時間がいるらしい。もう暫くは帰って来ない。

 

「まっ、なるようになるの精神っすよ!

 明日のことは、明日のわいが何とかする! がんばれTomorrow's Wai!!」

 

 今日も一日よくやった。まぁヤングストリートでパンツ見たり、買い物に行っただけかもしれないが、とにかく生き抜いた。わいエライ!

 

「風呂は日本人の魂ですねぇ! イイゾーこれ!

 この狭っ苦しいバスルームこそ、わいのホーリーランドや!」*1

 

 とにもかくにも、お風呂を堪能。

 アヒルのおもちゃがプカプカと浮かぶ湯船で、P氏はのびぃ~っと身体を伸ばしたり、峰不二子みたくセクシーに足だけを出してみたり。のんびり寛いでいく。

 

「貧ぅぅ~♪ しさにぃぃ~♪ 負けたぁぁ~~♪」

 

 パパー! ドコニイルノー! オフロー?

 

「いえっ♪ 世間にーっ♪ 負けたぁぁ~~♪」

 

 アタシモハイル! パパー! パパー!

 

「……」

 

 P氏が機嫌良く【昭和枯れすすき】を口ずさむ中……何やら良からぬ声が聞こえる。

 ふと耳を澄ますと、いま脱衣所の方からドタドタと誰かが入ってくる音、そして「フゥー♪」みたいな嬉しそうな声が。

 ……ヤツだ。

 

「抜け出したか。しっかり括りつけといたハズなんだが……。

 流石ナチュラルボーンマッスルだな」

 

 ここは沢山の艦娘たちが住む家であり、鹿島や金剛などの“提督LOVE勢”の子達が、よくマスターP氏の入浴中に乱入しようとする。「お背中お流ししまーす♪」と。

 なので先のような備えは、このアパートでは必須だったりする。

 総勢30名を超える大所帯だし、曲がりなりにも艦隊。風紀の乱れは厳禁なのだ。

 

 今日もお風呂に行く前に、「何してるのパパ?」とキョトンとした顔のHitomiを、「まぁまぁ! まぁまぁ!」とか言いながら拘束。ササッと縄で柱に括りつけといた。

 だが案の定、あの子は簡単に脱出成功。

 いま脱衣所の方からは、「♪~」とカワイイ声の鼻歌が聞こえている。恐らく服でも脱いでるんだろう。

 

「――――パパぁーーっっ!!!!」バゴーン!

 

「案の定かチキショウ」

 

 扉を破壊し、Hitomiが姿を現す。ウッキウキの顔で。

 というか、ここの扉は対艦娘用に拵えられた、ちょっとした銃弾でも弾けるくらい頑丈な代物なのだが、今テンションが振り切っているこの子にとっては、紙も同然であるようだ。

 

 破壊音が風呂場に響くのと同時に、P氏は用意してあったグラサンをスチャッと装着。

 これは物作りを得意とする艦娘“明石ちゃん”が制作した物で、通常のサングラスよりも可視光線透過率が低く、かければ視界が真っ黒に近くなる。

 湯気で曇らない加工もされており、お風呂場でも安心な仕様である。

 

 これは、誰かが風呂場に侵入を果たした時の備えとして、あらかじめ明石ちゃんに渡されていた物だ。

 女の子の裸見ちゃダメですからね! このスケベ!! ……という罵詈雑言と共に。

 

「――――来たよパパ! いっしょに入ろ♪ 洗いっこするの♡」

 

 とにかく、満面の笑みでHitomi登場。

 扉を破壊した勢いそのまま、「わーい!」と元気に両手を突き出しながら、こちらに駆けてくる。

 その様は、お父さんの胸に飛び込んでいく子供のソレ。まぁちょっとグラマラス過ぎるのだが。

 

 水着? タオル? 恥じらい? そんな物がこの子にあるハズもない。

 いま彼女はすっぽんぽん。惜しげも無くP氏の前に、その裸体を晒している。

 

 きっと縄を引きちぎるのに、多少は手間取ったのだろう。

 Hitomiは軽く汗をかいているようで、肌がキラキラと美しく光っている。

 その光は、彼女の瑞々しい肌のみならず、肉体の凹凸をクッキリと際立たせる。奇しくもオイルのような役割も果たしていた。

 

 P氏は今、「エッチなのはいけないと思います!」的なグラサンをかけているので、ハッキリとは分からない。

 だがHitomiの身体は、この上なく美しかった。

 

 

 肋骨の形が分かるほどに、全く無駄な脂肪が存在しない、キュッと引き締まった脇腹。

 それは大きくて丸みを感じさせるヒップと合わさり、信じられないくらいセクシーなクビレを形作る。

 スラッと伸びたモデル顔負けの美脚も、彼女の美しさを構成する、大切な要素。

 

 それに加え、まったく重力に負けていない、十代の張りを感じさせる巨大なバストは、もうエッチだとか綺麗だとかいった言葉では、とても表現しきる事は出来ない。

 彼女こそ女! これがおっぱいだ! と言わんばかりの圧倒的な説得力。

 

 しかもだ。そこにきて彼女の最大の特徴である、まるで彫刻刀で彫りを入れたかのようにハッキリ6つに割れた、芸術的な腹筋だ。

 汗のテカリによって、それはいつもにも増して綺麗。まるで大理石のような輝きを放っている。

 

 そんな見事なまでに豊かなお胸(女性らしさ)&至高のバッキバキな腹筋(カッコ良さ)が、上下で合わさり同時に視界に入るというアリエナサ。

 これを見た者は、脳が一瞬バグってしまう事だろう。それ程までに、この世の物とは思えない、非現実的なボディ。

 

 この肉体美よ――――神々しいまでの“美”よ。

 彼女の童顔や無邪気さとは、まるでアンバランスな()()()()()()()

 

「パパーッ♡ パパぁーー♡♡♡」タッタッタ!

 

 そんなHitomiが! 一糸纏わぬ姿で! こちらに駆けてくる!

 ばいんばいん! ボンキュッボン!! たゆんたゆん! ムキッ! ムキッ!

 おっきくて、逞しくて、すごく柔らかそうデス! えっろッ!?!?(迫真)

 

 

 

「――――だが断る」

 

「えっ」

 

 P氏が紐を〈グイッ!〉と引っ張った途端、足元の床がパカッと開き、Hitomiが落下。

 ヒューっと、絵に描いたように。

 あーれぇ~! と穴に落ちていった。

 

「甘ぇよ、ここをどこだと思ってんだ? 美星鎮守府だぞ」

 

 鹿島、イクを始めとする“肉食系艦娘勢”。

 彼女らは、隙あらば「ぐへへ♪」とマスターP提督の貞操を狙う、とても積極的な子達だ。

 それに対抗するための装置など、ここには当然の如く、バッチリ備わっている。

 全ては艦娘たちの淑女協定――――いわば「抜け駆けすんなよこのアマ」的な掟と、工作艦明石ちゃんの努力の結晶だ。

 

「悪ぃけど、わいが望むのは()()()()なんよ。キャッキャウフフなんよ。

 ボンキュッボンだか、何だか知らんけど、わいを好きに出来ると思うなよッ!(迫真)」

 

 P氏のグラサンがキラーン!

 まるでエヴァQの碇ゲンドウみたいな、中二病全開のサングラスだが、この場においては凄く似合っていた。

 

 相手は自分の娘(自称)。しかも記憶喪失の身であり、右も左も分からない雛鳥のような子。

 そんなHitomiに手を出そうものならば、“人間の屑”の誹りは免れないだろう。

 裸を見るのも、それに興奮するのも、彼女の無邪気さをいい事にボディタッチしちゃうような事態も、すべてご法度である。

 たとえあの子が何と言おうとも、絶対にNO!

 

「 パァァァパァァァアアアッッ!!!! 」ドドドド!

 

 そうフフン♪ とニヒルな笑みを浮かべていた時、またしても外からHitomiの声。

 確かあの穴は、このアパートの地下にある、おいたをしちゃった艦娘用の“懲罰房”に繋がっていたハズだが……。どうやら速攻で抜け出して、戻って来たらしい。無駄なフィジカル。

 

「 お風呂入るぅー♪ パパと入るよーっ♡ 」

 

 カワイイ声で雄たけびを挙げながら、Hitomi再臨。

 今度は脱衣所から一足飛び。床を一切踏まずに、ピョーンとP氏の胸に飛び込んでいく。とんでもない身体能力。

 

 

「――――だが無駄ァ!!」

 

「 おっぷ!?!? 」

 

 

 下から〈バサッ!〉と網が跳ね上がり、Hitomiを捕獲。

 そのままUFOキャッチャーみたく、ウィィィンとHitomiが運ばれて行き、さっきの穴にポイ!

 この場に静寂が戻る。

 

「お風呂シーンか……ラブコメの華だなぁ。

 誰しもが見てぇ、みんなに喜んでもらえるシチュだろうよ。ToLOVEるチックなよぉ……」

 

 再び「ふわぁ~」と吐息を漏らしながら、一人のんびりと湯船に浸かる。

 

「でもわい、マスターPなんスよねぇ――――

 普通の事やってたら、破天荒は名乗れんのですわ。益荒男(ますらお)にはなれませんねぇ!」

 

 きっと、エロをやるべきなんだろう。

 可愛くてエッチなHitomiと、ラッキースケベなシーンを繰り広げ、「あわわ!」なんてラノベ主人公みたく慌てふためきながら、愉快でエロいドタバタを享受する所だろう。

 

 なれど、目先の小銭に飛びつくのは、()()()()()()

 降って湧いたようなエロなんぞ、己が抱く“野望”に比べたら、いったい何だと言うのか。小さい小さい。

 

「わいは大統領になる男やぞ?

 日本人の常識では、考えも及ばんような、酒池肉林のハーレム作るんスよ絶対。

 既成事実とか責任は、断固ノーセンキュー!!

 据え膳なんぞ、ちゃぶ台返しじゃボケェェーーッ!!!!」

 

 今は辛抱の時。我慢は男の修行なのだ。童貞で何が悪い!

 とりあえず、早く大統領にならなくちゃ。わいの夢の為にも。

 チュニジアをどげんかせんとイカン(使命感)

 

「あれ? あれれ?

 パパあたしヨ? Hitomiだヨ?

 これじゃあお風呂入れないのわよ。あれれ?」

 

「OH! まだ諦めねぇのかコイツ。

 往生際が悪ぃですねぇ! ふぁっきゅめぇ~んッ!!」

 

 そう己の野望に想いを馳せていると、またしてもこの場にドドドという地響き、Hitomi推参。

 さっきのボッシュートから、まだ1分と経っていないのだが、速攻で復活して来たらしい。不屈のアフロディーテ。

 

「しゃーない、とことん付き合ってやらぁ!!

 小娘がッ! 美星鎮守府の力、とくと味わうが良いッ! カマァーーン!!!!」

 

 その後も、バネでビヨーンと吹っ飛ばしたり、洪水のように押し流したり、強風でバシルーラしたりと、多種多様な面白ギミックでHitomiを撃退。愉快にドタバタとやる。

 

「お、どうしたどうした? もうお終いっスか?」

 

 そうして、約20回ほど撃退を繰り返した後……、ふいにこの場に、長い静寂が訪れる。

 さっきまでは矢次に向かって来たのに、今はその気配すらない。どれだけ耳を澄ませても、物音がしなくなったのだ。

 

「よーやくアイツも諦めたかなぁ~。どれどれぇ~?」

 

 リモコンを操作し、備え付けのモニターを出現させる。

 これは、たとえお風呂に入っている時でも、外や部屋の様子を見ることが出来るようにと、指揮官たるマスターP氏の為に備えられた設備だ。

 

「…………う゛お゛っ!?!?!?」

 

 そこに映っていたのは、脱衣所の出入口の前で()()()()()()()、愛娘の姿。

 いまHitomiは、何をする事もなく、ただじっーとその場に座り続けているのだ。

 感情のうかがえない、色の無い表情。子供のように無垢な目で「ぽお~」っとお風呂場の方を見つめながら。石像のように微動だにしない。

 

「こ、これはッッ……」

 

 寒気がした。

 得も知れぬ恐怖が駆け抜け、ドクンと心臓が跳ねた。

 P氏の呼吸がハァハァと荒くなり、目の焦点が合わなくなる。いま眼前のモニターに映っている、あまりに衝撃的な光景に。

 

 あっ、これストーカーがやるヤツだ――――()()()()()の行動パターンだ。

 それに気が付いた時、風呂に入っているのに寒イボが立つ。身の毛がよだった。

 

 

 余談だが、以前ネットか何かで読んだ“心理テスト”に、こういう物がある。

 

【いま貴方は、包丁を手に、余所の家に強盗に押し入っています】

【目の前には大きな洋服ダンスがあり、中には家の住人が逃げ込んでいて、今ガタガタと恐怖で震えているようです】

【さて。貴方はどんな風にして、この人を殺しますか?】 ……と。

 

 これを見た当時、P氏が何気なく思い浮かべたのは、洋服タンスをドカドカ蹴りつけて、外に出てくるように仕向けるという回答。

 他には、ハンマーか何かで洋服タンスを壊すとか、トラックで突っ込んでペシャンコにするとか、すごく残酷だけどガソリンぶっかけて火を着けてやるとか、そういった方法だ。

 

 どれも非常に派手で、アグレッシブ。

 きっと中に居る人を、おおいに怖がらせる事だろう。

 ウケケとばかりに自信満々で答えたものだ。

 

 けれど……この心理テストにおいては、P氏の回答は間違い。

 何故ならこれは、「貴方のサイコパス度を診断する」という内容であり、彼のアグレッシブさや破天荒さは、それとは全くの別物だったから。

 

 このテストの正しい回答は――――【タンスの前で待つ】

 声を出さず、物音も立てずに、ただじっとその場に座り、獲物が自ら出て来るのを待つのだ。

 

 もう大丈夫、アイツは行ったハズだと、ホッとした表情で扉を開いたハズが……、扉の前にいるこちらの姿を見た途端、一転して絶望に染まる。

 その顔が見たくて、正にその瞬間に()()()()()()()、サイコパスはタンスの前に座る。じっとその場で待ち続けるのだ。いつまでも。 

 

 

 

「……ッ」

 

 いま目にしているモニターの映像が、あの日読んだ心理テストと被る。

 今もHitomiは、じっとその場に座っている――――パパがお風呂から出てくるまで。

 

 全くの素の表情で、微動だにせず、「ぽけー☆」っとそこに居る。

 見ようによっては、“主人を待っているお利口な犬”に見えなくも無い。

 けれどその顔には、不気味なくらいに色が無い。なんの感情も浮かんでいない。

 ただただ、そこにいる。じっと。何を思うこと無くだ。

 

 ――――怖ッッ!!!!

 やばいやばい! わいミンチみたくされる! ハンバァァァーーグッッ!!!!

 

 Hitomiの異常なまでの執着に、背筋が凍り付く。

 鬼のようなフィジカルだとは思っていたが、まさかこんなにも闇の深い子だとは。

 愛憎は表裏一体だと言うが、洒落にならんぞマジで。これからどうすっかな……。

 

 なんて事を、ウムムと考えてはいたのだが。

 

「おぉん? Hitomiさん……?」

 

 しかし、ふと改めてモニターを覗き込んでみれば、そこには()()()()()()()()()()、Hitomiの姿が。

 さっきと同じ顔ながら、その目だけがウルウルと潤んでおり、絶え間なく涙が零れているのだ。

 

 まるで、自分が涙を流している事にすら、気が付いていないかような泣き方。

 その感情に表情が追い付いておらず、ポカーンと放心したままで、涙だけが自然と零れている……という風な。

 

「こりゃあかんヤツですね(痛感)」

 

 前言撤回。このHitomiの姿は、決して先ほど言ったような、猟奇的なソレじゃない。

 むしろ正反対。似ても似つかないという事に、P氏は気付く。

 

 パパが拒絶するハズない。だってパパのこと大好きだもん。あたしのパパだもん――――

 

 そんな、この上なく無垢な……無条件で親を信じる幼子の純粋さ。

 ようやく理解した。これは無邪気とかそんなレベルじゃない。彼女の精神はまさに、“子供そのもの”なのだ。

 

 

 

「……あーHitomiや? ゴメンわいの負けっス。

 風邪ひいちゃうから、こっちおいでおいでー。パパが悪かったぁッ!!」

 

 ガックリしながら脱衣所に行き、そう声をかける。

 案の定、歓喜のアメフトタックルを喰らったけど……これはわいの自業自得だと、納得しておく事にした(臓器損傷)

 この子の信頼を裏切ってはいけない。もうイタズラにからかうのは無しだ――――そう心に決めて。

 

 

「おっぱいにサランラップ巻いてくるネ。それならいーでしょ?」

 

「よくねーよッ! 何その妥協点ッ!?」

 

 

 透明じゃねーか。なんの意味があるんだ。下手かッ!!

 まぁそーいうAVもあるけd……ゲフンゲフン!!

 

 とりあえず、また明日にでも水着を買いに行こう。Hitomiと風呂に入る時用の。

 マスターP氏は「ふぅ」とため息をつき、思った。

 

 

 

 

 

 

 ……

 …………

 ……………………

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「あんれまぁ、グースカ眠ってからに」

 

 深夜。モニターの光だけが照らす、薄暗い研究室。

 

「誰が仲良くしろと言ったの。

 お前の役目は、そうじゃないでしょうに」

 

 いま彼女……爆乳ナイチンゲールこと力石さんが見つめる先には、「♡~」って感じでギューっとP氏に抱き着きながら、幸せそうに寝息を立てるHitomiの映像がある。

 まぁその剛力のせいか、P氏の方は「うーん……」とうなされているが。めっちゃ寝苦しそう。

 

「ま、彼女にもフラれたみたいだし?

 私生活を引っ掻き回してる、取り入ってるって意味では、これもアリかなー?」

 

 かの者は、曲がりなりにも北斗神拳の継承者であり、あのマジンガー絶頂(Z)のパイロット。

 そう簡単にいくとは思っていないし、次なる手段もすでに頭の中にある。

 それにピンキー忍者(親方様)は、なにやら「アイツを観察するのが最近の趣味」みたいなトコあったし、このシッチャカメッチャカな状況を、意外とお喜び下さってるかもしれないと思う。結果オーライ。

 

「にしても……やっぱ()()()みたいねぇ、あの子。

 記憶の部分に難アリ。今後の課題ね――――」

 

 

 

 背後に向き直る。

 そこには、オレンジ色の液体で満たされている、巨大な縦長の水槽があった。

 

 今この中に居るのは、酸素マスクらしき物を装着した、H()i()t()o()m()i()()()()()()()()

 この世界に生まれ出る時を、じっと待っているかのように、静かに瞳を閉じて、羊水の中を揺蕩っている。

 

 “二号”の経過は順調ね。そろそろ“三号”の制作に、取り掛かりましょうか。

 そう一人コクリと頷き、隣にあるまた別の水槽の所へ、スタスタと歩く。

 

「ねぇP君……。貴方はあの七夕を、憶えているのかな?」

 

 何気なく白衣のポケットに手を入れ、タバコくらいの大きさのケースを取り出す。

 それに収められていたのは、人間の髪の毛だ。

 以前ピンキー様より賜った、短い男性の黒髪。そして自分の頭から引っこ抜いておいた銀色の髪が、それぞれ一本づつ。

 

「私が短冊に書いた願いはね? “またP君と会えますように”……だよ」

 

 おもむろに、水槽へ落とす。

 色の違う二本の髪の毛が、科学によって作られた羊水の中で、ユラユラと揺れる。

 二人でダンスを踊るみたいに、溶け合っていく。

 

 

 

「代わりで悪いけど、私の子達が行くわ。

 あの日の約束を、叶えて――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
【ホーリーランド】 己の居場所、魂の住処の意

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