【リレー】今日もカオスなもんじゃ焼き 作:リレー小説実行委員会
「何このお爺ちゃん……人間?」
爆乳バスガイドことRuiが、信じられない物を見る目で、彼の方を向く。
「人間は、神速で地を駆けたりしないよぉ……?
なんなのぉ、あのエグイ剣圧ぅ……?」
ぜったい化け物だ。サイボーグか何かだ。
爆乳チアガールことAiは確信する。なんだこの威圧感はと。
「自分は、元大日本帝国陸軍、船木一等兵。
人はワシを、“ファンキー爺さん”と呼ぶ」
まぁ、今から死ぬる主らに、名乗りなど無意味だが――――
そう付け加え、ファンキー爺さんは父の形見である軍刀を、両手で握り直す。
凄まじい握力を感じさせる【ギュウゥゥ……!】という音が、こちらにまで聴こえてきた。
闘志マンマン、殺す気マンマンじゃないですか。
「……待って貰える? 私達三人は、この人の娘なの。
確かに、少し変な雰囲気に、見えたかもしれないわ。
でも家に帰ろうとしていただけよ」
「そ、そーだよおじいちゃ~ん☆ 勘違いだってぇ~♪」
懐柔にかかる。わざとらしい猫なで声で。さりげなくムニッと胸の谷間を作り、女の武器を使いながら。
ぶっちゃけ、いま二人は
何この爺さん。こんなのとやり合いたく無いよ。だって目に狂気が宿ってるもん。殺し屋の目じゃんコレ。
「その御人は、美星町の長ぞ。
加えて主らは、断じてカタギに非ず。
……そも、
「っ!?!?」
「?!?!?!」
――――付け過ぎた! 筋肉付け過ぎた!! 背ぇ高くし過ぎた!!!!
この映像をアジトで見守る爆乳ナイチンゲールこと力石さん(黒幕)が、人知れず冷や汗。
自分に似せたのか、はたまた趣味に走ったのかは知らないが、明らかに愛娘たちの肉体美は、人知を超越していたのだ。
「えっ。私達って変……? ウソでしょう?」
「なんでバレたのぉ!? あーし達って普通の子と違うのぉ~?!」
「ワシ90年くらい生きとるけど、主らみたいなん見たの、初めてぞ?
神話にしかおらぬわ、こんなアマゾネス。……よもや気付いとらんかったのか?」
筋肉モリモリ、マッチョの変態エロガール達が、オロオロ狼狽える。
こんなんによぅ偵察任務とか誘拐とか、させよう思ったな。目立って仕方ないだろうに。
「戯言はええ。主らはただ――――首を置いていけ」
「っ!?」
「ひぃ?!?!」
エゲツナイ風切り音。
なんとか超ギリギリで回避したが、ファンキー爺さんの放つ横薙ぎで、二人の髪が数本パラッと落ちる。
なんちゅー切れ味だソレ。なんちゅー太刀筋だアンタ。殺意MAXやないか。
「米国との戦に敗れ、かの東京裁判により“B級戦犯”の汚名を着せられ、はや70年あまり……」
「一等兵なのにB級?!?!*1
どれだけ殺し周ったらそうなるの!? 無茶苦茶じゃない貴方!!」
「平和の世に生き、固く口を閉ざし、ばあさんとのアチュラチュ☆ハッピーライフを謳歌しておったが……。久方ぶりに
なぁ? 首おいてけ――――その首おいてけ」
「そらアメリカに恨まれるよっ!
いったい戦地で何があったの!? 言ってよお爺ちゃんっ!」
主らの首を、我が父に捧げようぞ――――
なんかファンキー爺さんのおめめが、すんごいグルグルしてる。
このガタイの良い二人が、鬼畜米英とかに見えてるのかもしれない。
積年の恨みがフラッシュバック!
「 ちぇぇぇえええりゃああああああッッッッ!!!!!!
ワシの父を返せぇぇーッ!! 軍曹殿ぉぉぉおおおーーッッ!!!! 」
「無理無理無理っ! 死んじゃう! 死んじゃうわコレ!」
「聞いてないよこんなのぉー! あーしまだ生後1日なのにぃー!
死にたくなぁーーいっ!」
軍刀を振り回し、「きえーい!」と追い回す。
二人は涙を撒き散らしながら、なりふり構わず必死こいて逃げる。
噴水の周りを、何度も何度もグルグル。バターになりそうなくらい。
「て……撤退よAi! いったん退きましょう!」
「えっ、でもパパはぁ?! Hitomi姉さんは連れていかないのぉ!?」
ぎゃー! こーろーさーれーるぅ~! って感じで、両手を万歳しながらガンダる。*2
そんな最中、なんとか二人でコソコソ作戦会議。
背後から迫るドドドドド! という足音に震えつつだが。土煙がすげぇ。
「そんなこと言ってる場合っ!? 想定外の事態で、首チョンパの危機なのよ!?
パパの居所は割れてる、また出直せばいいの!
それに、出来損ないの姉さんなんて、もう構ってる余裕ないわ!」
「あっ! ここに置いて行けば、囮になるかもだねぇ?
あーし達の役に立ってもらおーっ♪ Hitomi姉さんも本望っしょ☆」
ヘルキャット印の閃光手榴弾が炸裂。
金属を叩いたような音が、鼓膜をつんざき、辺り一帯が白い煙に包まれる。何も見えなくなる。
「不覚、取り逃がしたか。……次は必ず殺す(比類なき殺意)」
フラストレーションを振り払うように、刀をビシュッ! と一振り。
もう二人の姿はどこにも無かった。スタコラ逃げ去ったのだろう。まるでネコのように。
その後、ファンキー爺さんは背後を振り返り、そこにいる男女に目を向ける。
光のない目で、じっとその場に立っているHitomi。その胸に抱きかかえられ、気を失っているらしきマスターP氏の方へ。
「傀儡か。……哀れな、同胞に見捨てられるとは」
クマの人形を抱きしめる少女のように、大事そうにP氏を抱えているのが分かる。
その様は、愛らしく見えなくもないが……。
「死ね――――」
おもむろに歩み寄り、一閃。
ファンキー爺さんの刀が、Hitomiの首を目掛け、横薙ぎに放たれた。
◆ ◆ ◆
「おいおい……なんて斬撃だよ爺さん。
両腕がしびれてやがる」
キィィィーン! という固い音。
それがこの場に、大きく響き渡った。
「……貴様、何者ぞ?」
「お前こそ何だよクソが。
わりぃけど、この人は
ファンキー爺さんが、ギロリと眼前の女を睨む。
天龍だ! 彼女が爺さんの前に立ちふさがり、斬撃を止めたのだ!
もっとも、艦娘の艤装であるハズの愛刀は、半ばからポッキリ折れてしまったようだが。
なれど、Hitomiは無事。咄嗟にこの場に駆けつけた天龍が、しっかりと守ってみせた。
「人ならざる者……、なれど邪気は無し。
どけ、勇敢な娘よ。お主の首は獲らぬ」
「やだね、お前の言う事なんざ聞くかよ。
オレに命令できんのは、P提督だけだ」
へし折れ、半分の長さになった刀を、ビシッと突き付ける。
意思を示すように。艦娘の矜持を見せつけるように。
「老人は敬え、って言うけどよ? アンタは別だよ爺さん。
どうしてもってんなら、押し通れよ」
「その意気や良し。気に入ったぞ、娘」
勝てぬ事など、承知している。だが退くのはあり得ない。
それは艦娘の生き方では無いから。守るべき人達が、いま背中にいるから。
向かい合う。お互い正眼の構えで。
一足一刀の距離……から爪半分ほど離れた間合いで、静かに睨み合う。
「――――お爺さぁ~ん! ご飯が出来ましたよぉ~!
貴方の大好きな、筑前煮ですよぉ~♪」
「おぉワイフ! ファンキーマイワイフ!
いま行くぞぉー妻よぉー☆」
「ずこぉぉぉーーーーーーっ!!!!!!」
てってけてー♪ と爺さんが踵を返す。
そのまま迎えに来たお婆さんのもとへ、駆け寄って行った。
「今日は上手に出来たの。鶏肉も柔らかくなりましたよ♪
味のヤマモト(有)のちくわも入ってます♪」
「そいつぁ楽しみじゃーい! 婆さんの料理は、宇宙一じゃあああーい!!」
「おい爺さん! アンタそれで良いのかっ!?
デレッデレじゃねーかよ!」
さっきまでの絶人ぶりはどうした。形無しじゃないか。
もしかすると、この美星町で最強なのは、あの優し気なお婆さんなのかもしれない(爺さんを制御出来るという意味で)
天龍は地面にひっくり返りながら言い募るが、爺さんはもうテンションMAXだ。心から妻を愛しているのだろう。ラブラブであった♡
「あ、ファンキー爺さんだ。この前はぶっ殺しちゃってゴメンね♪」
「ぬぅ! 貴様、剛力甘男!!(アンパンマン)
ここで会ったが百年目じゃーい! きぃえええーーい!」
「あらまぁ、どこへ行くんですかお爺さん。あらあらあら♪」
「……」
偶然通りかかったアンパンマン目掛け、ファンキー爺さんが突進していく。
後を追ったお婆さん共々、嵐のようにこの場から去って行った。
忙しい人達だ。
「ッ! おいHitomiッ!?」
あまりの展開に、天龍が呆けていた所……背後で物音。
バタリと、糸が切れたようにHitomiが倒れる音が聞こえ、即座に駆け寄る。
あのヘルキャットの二人が去った事で、彼女を縛っていた呪詛が解けたのだろう。
グッタリと力が抜け、地面に倒れ込んでいる。
それでも、まるで宝物のようにP氏を抱きかかえたまま、微塵も離す気配が無い。
たとえ無意識下でも、パパを守っているかのように。
◆ ◆ ◆
「あれ……? あたし、どーしテ……」
もうすっかり夜となった、午後8時頃。
寝かされていたベンチの上で、Hitomiは目覚めた。
「よぉ、災難だったな。
なにはともあれ、お前が無事でよかった」
パチクリとまばたき、キョロキョロと見渡せば、すぐ傍に天龍の姿。
彼女はHitomiに寄り添い、ずっと看病をしてくれていたのだ。
額の上に、濡れたハンカチがあるのを見つけ、それを察する。
「怪我は無いようだが、頭痛とかは? 無理して動かなくていいぜ」
「ててテンリューさん!? あ……あのあのっ!!」
慌てて姿勢を正し、ベンチの上に正座。
動かなくて良いと言われたのに、めっちゃ機敏な動き。
それを見た時、天龍は「へっ!」と小さく苦笑。どこか照れくさそうな顔で。
「あたし、テンリューさんに酷いコトを……。
いっぱい反省しなきゃって……」
「おっと、その話はいい。
今は負傷兵みたいなモンだろお前。安静にしてろ」
グイッと額を押し、Hitomiをコテンと寝かせる。
わー! というカワイイ声が聞こえたが、容赦なんてしない。
「……すまねぇ、こりゃオレの責任だ。
お前を外にほっぽり出したから……。面目次第もねぇ」
“提督の娘”は、立派な護衛対象だろうに。
オレはどうかしてたんだ、すまねぇ――――
そう天龍が頭を下げる。これは自分の罪だと、沈痛の面持ちで。
「オレ達には、たくさん敵がいる。
お前が狙われる事態だって、充分ありえたんだ。……なのに」
「ちょ! 待ってヨ! 悪いのはあたしなのに!」
すまねぇ、すまねぇ。ごめんなさい! ごめんなさい!
そうお互いペコペコ。必死に謝り合う。
傍から見てれば「なんだコレ」みたいな感じだが、どこか微笑ましい光景。
「んじゃ、仲直り……だな?」
「うん。あたしテンリューさんと、友達になりたい。
いい子になって、みんなの役に立ちたい。テンリューさんみたいに」
フフッと、微笑み合う。
夜の公園で、スポットライトみたいな街燈に、ふたり照らされながら。
「おっ、オレがいい子だぁ!? そりゃねーだろオイ……Hitomiよぉ」
「そんなこと無いのわよ。テンリューさんやさしーもん♪
ちっちゃくてカワイーし♪」
「おぉい!?!?」
手を引いて、Hitomiを立たせてやる。
宝塚の女優さんみたいに凛々しい天龍がやると、その仕草はまるで、物語の王子様みたい。
まぁ背丈に関しては、Hitomiの方が圧倒的におっきいのだけど。
「にしても、さっきのありゃ何だぁ?
公園にモクモク煙が上がって、そっから誰かが飛び出してくのを見たが……何があったんだ?」
二人で寄り添いながら歩き、すぐ隣のベンチへ。
そこには、未だに「ぐがぁ~!」と気持ち良さげに眠る、P氏の姿。
パパの寝顔を見つめながら、Hitomiは小さく首を横に振る。
「分からないの、何にも。
憶えてない……。なんであたし、気を失ったりなんか……」
……
…………
………………
◆ ◆ ◆
「失敗、かぁ。
なかなか上手くいかないわねぇ。何なのよあの爺さんは……」
美星町は恐ろしい所だ。まさかあんな伏兵が、普通に町を闊歩しているとは……。
ともかく、Hitomi達が映っているモニターを眺めながら、薄暗い自室でコーヒーをひとくち。
爆乳ナイチンゲールこと力石さんが、小さくため息を吐く。
「
ま、焦らずやりますかぁ」
相手はあのP君、一筋縄でいくとは思っていない。
艦娘たちも居れば、本人もエゲツナイ戦闘力なのだ。簡単にいくハズも無し。
「けど彼は、お気楽でお人好し。
あの子の出生も、その真偽も、さして気にしてはいない。
物を考えてないように見えるなぁ……アホなの?」
なれば、引っ掻き回してやればいい。
彼の心に取り入り、信用させ、絆なんてクダラナイ物を育めばいい。
そうすれば、彼はあの子に手出し出来なくなる――――敵だというのに、逆に守ろうとするだろう。
その命が尽きる最後の瞬間まで、父親ヅラをして。
これが仕組まれた事だとも知らずに。
「ここから楽しくなるよ? 大変だねぇP君。
私のヒーローさん?」
モニターに映る、グースカ眠っているP氏の顔を、何気なくツンツン。
束の間の休息だね。しっかり身体を休めてね。また忙しくなるだろうからさ。
「早く会いに来て。私はここに居るよ?
愛しの旦那様♪」
巨大なバストがぷるるんと揺れる。
けれどその顔は、まごう事なき、恋する乙女の物――――