【リレー】今日もカオスなもんじゃ焼き   作:リレー小説実行委員会

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【劇場版】マジンガー絶頂(Z) Ⅶ

 

 

 

「ひもじいよぅ。ひもじいよぅ」

 

「寒いわ」

 

 美星町の外れの方にある河川敷。その高架下。

 

「お腹すいたよぅ。キューキューいってるよぅ。ひもじいよぅ」

 

「辛いわ」

 

 現在ヘルキャットの二人、爆乳バスガイドことRui&爆乳チアガールことAiは、肩を寄せ合って三角座りしている。

 少しでも体温を逃がさないように、ギュッと足を胸に引き寄せ、お互いに密着。

 心と身体に吹きつける寒風に耐えながら、町の片隅にチョコンと座る。

 

「バッグ落としちゃったものね。お爺ちゃんから逃げた時に。

 ごめんね、私が預かっていたのに……。お金なくなっちゃったわ」

 

「いいんだよぉ。あーしが持ってるより、お姉ちゃんが管理したほーが良いもん。

 きっとあーしだって、バッグ放り出してたと思うし。あんな状況だもぉん……」

 

 バッグごと所持金を失ったので、ごはんを食べる事も出来ない。

 さっきヤングストリートで見つけたウォータークーラ―で、まわりの人達がドン引きするくらい、ガブガブお水を飲んで来た。みじめだ。

 

「ママに怒られちゃったねぇ。怖かったねぇ」

 

「ええ、泣きそうだったわ。

 ママに怒られると、胸がキュッってなる……。悲しくなってしまうの」

 

 グジグジと、二人がすすり泣く声が、朝方の高架下に響く。

 二人ともえらい綺麗な子達なのだが、今は子供のようにえぐえぐ。美人が形無しだ。

 辺りはチュンチュンと鳥の声が聴こえ、お天気も良いし、清々しい朝なのだが……二人の気分は沈んでいるのだった。

 

 愛するママに、怒られる。

 こんな悲しい事が、この世にあるのかって思った。

 

 あの人を捕まえるまで、お家に帰って来ちゃいけません――――

 昨日、アジトにすごすごと帰還した時、そう怒鳴るでもなく叩くでもなく、ただ淡々と叱りつけられた。とても冷たい声で。

 自分たちの不甲斐なさを痛感したヘルキャットの二人なのだ。ガチ凹みである。

 

「ねぇねぇ、あーし昨日生まれたばっかだし、知らないんだけどさぁ?

 ご飯ってゆーのは、どんなのがあるの?

 “おいしい”って、どんな感じなのかなぁ?」

 

「私は半日ほどAiより早かったから、一度だけご飯を食べさせてもらった事があるの。

 お米を三角の形に固めた物……おにぎりっていうらしいのだけど。

 あれはとても“美味しい”と思うわ。なんだか胸がポカポカするよ?」

 

「へぇー。いいなぁ。あーしも食べてみたい~。

 でも三角って、なんか()()()()()()()()()()、おもしろい感じするなぁ……」

 

 高架下の壁にもたれ、三角座りで寄り添い合う。

 そんな今のあーし達には、そのおにぎりという食べ物が、ピッタリかもしれない。おんなじ三角だし。

 

「はやくパパを捕まえて、おにぎり食べよーね? お腹いっぱいになろーね?」

 

「ええ、そうしましょう。一緒におにぎりを食べましょうね。

 たしかタクアンというのもあったから、楽しみにしているといいわ。

 お姉ちゃんの、ひとつAiにあげる」

 

 ありがとーお姉ちゃん! えへへ♪

 いいのよAi、うふふ♪

 こんな時でも、二人は仲睦まじい。とっても姉妹想いな子達だった。

 

「ねぇお姉ちゃん……バチが当たったのかなぁ?

 あーし達って、Hitomi姉さんに酷いこと、いっぱい言っちゃたじゃん?」

 

「……」

 

「きっとそれで、神様が怒ったんだよ……。いま腹ペコの刑に処されてるんだよ。

 姉妹なんだし、Hitomi姉さんとも仲良くすればよかった……」

 

 膝におでこをくっつけ、小さく縮こまる。

 顔を隠し、心から悔いている様子が分かった。

 

「そうね……きっと嫉妬していたのね。

 自分だけ早く生まれて、パパと暮らしてたーって。

 私、Hitomi姉さんに、辛くあたってしまったわ……」

 

「記憶そーしつって、きっとすごく怖いよねぇ? 自分が何だかも分かんないんだもん。

 不具合なんて、Hitomi姉さんのせいじゃないのに……。悪いことしちゃった……」

 

 自分たちが辛い境遇になった事で、初めてあの子の気持ちが分かる。

 不安とか、悲しみとか、頑張りとか……それを理解する事が出来た。

 

 いくらパパと会いたかったからといって、これが任務だったからとて、Hitomiに酷いことをするのは違う。辛く当たるのは可哀想だ。

 私達は今、とてもひもじい想いをしているけれど、Hitomiはこれと同じ気持ちを、一か月もの間あじわっていたんだから。

 しかも、たった一人きりで。

 常に二人で行動し、互いに慰め合える自分達とは、きっと比べ物にならないほど辛かったハズだ。

 今ならそれが分かる。

 

「ムキムキだしね。きっと怖がられてたよぉ」

 

「ええ。頼れる人も、友達も居なかったことでしょう。ムキムキだしね」

 

 考えてみれば、()()()の放浪生活だ。

 腹筋バキバキの、あんなえっちぃ恰好をした変態淑女が、オロオロ町を彷徨ってたんだから。

 たぶん、何度か通報されてるクサイ。

 許可取ってんのかオラァン!? 公然猥褻だろオラァン!(AV撮影的な意味で)みたく。

 ほんと大変だったろうに。

 

「それよりも、さっき良い物を拾って来たのよ?

 さてAiちゃん、右手側をご覧くださいませ」

 

「えっ、なにこれぇ?」

 

 話がひと段落した時、爆乳バスガイドことRuiが、おもむろに何かを取り出す。

 

「“ダンボール”って言うらしいのだけどね?

 これがあれば、寒さもヘッチャラなんだそうよ」

 

「おーっ! すごいじゃーん!

 さっすがお姉ちゃんだ♪ でっきるぅー☆」

 

 ゴソゴソとダンボールを開き、暫し二人で眺める。

 さっき道で拾って来たのだが、これはそんなに凄い物だったのか。ゴミじゃなく文明の利器なのね。

 

「これにくるまっておきましょう。

 さぁAi、こっちにいらっしゃい」

 

「えへへ♪ お邪魔しまーす♪

 わぁ! お姉ちゃんあったかーい☆」

 

 ギューッとくっつき、ダンボールにくるまる。

 安らぎとぬくもりを感じ、二人ともすごく幸せそう♪

 ……まぁこんな美人の子達が、()()()()()()()()()()()()()()()()()というのは、本来涙がちょちょ切れんばかりの光景なのだが、まだ生まれたばかりの二人には、知る由もない。

 

「でもこれ、なんかゴツゴツしてるねぇ。

 意外と固いし、冷たいよぉ……」

 

「まっ平らだから、あまり身体に密着しないわね。

 隙間風で、ガンガン体温が奪われてく……」

 

 布団や毛布とは違い、これはダンボール。

 とてもじゃないが、秋の寒風から身を守れるようには、出来ていなかった。

 二人とも、おへそ丸出しの服を着ていることもあり、すごい寒い。

 丈の短いバスガイドコスとチアコスは、動き安くはあれど、防寒には向いてないようだ。

 

「がんばるのよAi。ダンボールを信じましょう。

 これは文明の利器よ」

 

「そーだねお姉ちゃんっ!

 Fight! Go! Win! Let's Go☆」

 

 ――――もうやめて! 助けてあげて! 誰かこの子達をッ!!

 さりげなくモニターで見守っていた、幾人かの組織の者達は、思わず拳を握りしめて叫んだ。あの子らがいったい何したって言うんだと。

 

 そんな彼らの尊い祈りが、神様に届いたのかは分からないけれど……。やがでこの場の状況に、少し変化が訪れる。

 

「 君たちっ! ちょっと来たまえっ!! 」

 

「「っ!?」」

 

 怒鳴り声。朝の河川敷に、すごく大きな声が木霊する。

 

「何をやってるんだ君たちはっ! 早く! こっちに来ないかっ!!」

 

「えっ、あの……」

 

「おにーさんは……?」

 

 今こちらに向けてプンプン怒っているのは、“秋月ポン助”。

 かの裏秋月・壱の遺影(いえ)当主であり、だっさい唐草模様のジャージを着た、ピッチリ横分け七三メガネの男である。

 

 いそいそとダンボールを傍にどけて、言われるままに彼のもとへ向かう。

 二人はキョトンとした顔だし、なんでこの人が話しかけてきたのかなど、ぜんぜん分からないのだが、とりあえず声に従う。

 あのぉ……ナンデスカ? みたく。

 

 

「――――君たちはダンボールを、何だと思っているんだい!?

 そんな使い方で、()()()()()()()()()()()!!!!」

 

「えっ」

 

「えっ」

 

 

 しばし……、時が止まる。

 あまりの男の剣幕、意味の分からなさに。

 

「可哀想だとは思わんのかっ!! ダンボールに申し訳ないと思わんのかっ!!

 君たちはっ……、ダンボールの可能性を潰しているんだぞっ!?

 何故もっと真剣に、()()()()()()()()()()()()()()()!!??」

 

 ブチギレ。激おこだ――――

 今ポン助は、彼女らのあまりに拙い“ダンボールの使い方”に、我を忘れて激怒しているのだった。

 

「ばっきゃろう! こうだっ!

 これがダンボールの使い方ッ! 正しい活用だッ!!」テキパキ

 

 ポン助の手によって、みるみる内に“家”が出来上がっていく。

 何枚もダンボールを重ね、強固な一枚板を形成。それに窪みを作っていくつも合体させる。

 釘一本、ガムテープすら使わず、ガッチリしっかり組み立てて見せる。

 やがてこの場に、約10畳ほどの広さがある、立派な一軒家が完成。

 

「耐震、防水、湿気や強風などへの対策……。

 考えることは沢山あるよ? でも創意工夫すればいけるさ」

 

「すっ……すごい! 魔法みたいだわ!」

 

「おにーさん大工なのっ!? めっちゃ手早く作っちゃったぁ!」

 

 ふーやれやれって感じで、汗を拭いながら“作品”を眺める。

 娘たちもテンションMAX! なんて立派なお家なんだろう! 広いしすごく丈夫そうだ!

 

「いま見せたように、ダンボールはここまで出来るんだ。

 風よけにも緩衝材にもなるし、使い方次第で、色々なことが可能だ」

 

 先ほどとは違い、ポン助が優しい顔で微笑む。

 腰に手を当て、しっかり胸を張り、まっすぐ娘たちの顔を見る。

 

「たかがダンボール、されどダンボール――――

 感謝して、ありがたく享受するんだ。

 しっかり使ってあげてね?」

 

「うんっ! ありがとうおにーさん♪ あーし分かったぁ☆」

 

「使い手によって、ここまで差が出るだなんて。感服しましたわ。

 ありがとう御座います、おにいさん」

 

 わっはっは! いいのいいの!

 そうポン助が朗らかに笑う。貧乏人とは思えない爽やかさだ。

 

「ダンボールを馬鹿にするヤツは、僕が許さないぞう! 今まで何人()()()()()()()()

 牛乳パックや割り箸を活用して、何が悪いって言うんだまったく」

 

「そのとーりだよおにーさん♪

 ゴミじゃない! 資源ですっ!」

 

「愛してあげて。大切にしてやってね?

 そうすれば、()()()()()()()()()()()()()()

 手をかけてやればやるほど、ダンボールは羽ばたく事が出来るんだ」

 

「なにやらダンボールが、愛おしく見えてきましたわ。

 すごいんですねダンボール。私にも出来るかしら?」

 

 ――――やめぇ、変なこと教えるな。

 監視していた者達は、そう叫びたくなる。

 この場の朗らかな雰囲気と、モニター室との温度差が凄い。

 まだ子供なんだぞ、その子らは。

 

「おーいポン助ぇ。おんどれどこ行っとんねーん。

 お前が『ランニングしたい』言うたんとちゃうんかーい」

 

「あっ、チョコ太郎! ごめんごめん!」

 

 やがてこの場に、紫色のスポーティなジャージ姿の男が現れる。

 金髪をオールバックにしてるし、ガタイもすごく大きいので、とても厳つい風貌だ。

 

「ワイにとっちゃ日課やし、付き合うのは構わんけどな?

 でも後で、プアにメシ届けたらなアカンねん。

 あのボケ……。ほっといたら何も食わんと過ごしよる。

 PFCバランスをなんやと思っとんねん」

 

 【PFCバランス】とは、一日で摂取すべきタンパク質、脂質、炭水化物。その理想的なバランスの事。身体作りや健康には必須だ。

 わしゃアイツのオカンか――――みたいな事を言いながらも、ぜんぜん嫌そうではないチョコ太郎の顔が、とても印象的だった。

 

「あーっ! 何あの怖いオッサン! きんもーい☆」

 

「嫌悪感があるわね。こっちに来ないで下さる?」

 

「ッ!!??」

 

 ランニング中にはぐれたポン助を探し、何気なくここへやって来たら、ものすごく辛辣なことを言われる。

 

 

「すまんポン助……ワイ帰ってもええか?

 ちょっと自分の部屋で、()()()()()()()()()

 

「――――挫けんなよチョコ太郎っ!!

 君には友達がいるじゃないか! 僕だってそうさっ!」

 

「?」

 

「???」

 

 

 キョトンとした顔で、彼らを見る。

 一方はウジウジと地面に「の」の字を書き、もう一人は必死に慰めている。

 

 あ、大の大人でも、三角座りってするのね。

 少しだけ親近感が湧く、ヘルキャット達だった。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「という事で、本日はお伺いしたんです。

 この子たちの話を、聞いてやっては貰えませんか?」

 

「お願いしますぅ」

 

 お昼時。美星鎮守府(6畳間)。

 今この安アパートの一室に、ポン助&東雲の姿があった。

 後ろの方でチョコンと座り、申し訳なさそうに俯いているヘルキャットの二人も一緒だ。

 ちなみに嫌悪の“業”の事もあり、問題が起こるといけないので、チョコ太郎は同行していない。今はワーキングプア侍の所へ行っているハズだ。通い妻みたく。

 

「いや……いきなりの事で、正直ちょっと混乱してっけども……。

 でもご親切にあざっす。この子らを送って下さって」

 

「構いませんよ、これも何かも縁です。

 まさか前町長の娘さん方だったとは。お力になれたなら光栄です」

 

「ですぅ」

 

 ポン助が事情を説明し、東雲が優しくRui&Aiに寄り添う。「大丈夫ですよぉ♪」と元気づけるように。

 この子達が、貴方の娘だと言ってて――――そう告げられたマスターP氏は、飛び上がるくらいビックリしちゃったのだが、今はちゃんと客人に対応している。流石は元町長。

 

「最初はね? 行く所が無いと言っていたんです。

 でもよくよく話を聞いてみると、この町にお父さんがいるとの事で。

 遠くから訪ねて来たそうです」

 

「おせっかいかもしれませんがぁ、放っておけなかったんですぅ。

 どうかこの子達の事、よろしくお願いしますぅ」

 

「もちろんスよ! ホントあざっしたお二人とも! まかして下さいっ!」

 

 深々と頭を下げ合う。ははーっ! みたいな感じで。

 ポン助と東雲に心からの感謝を告げた後、P氏は改めて、娘達に向き直る。

 

「ごっ……ごめんなさいパパ。めーわくだよね……?」

 

「あんな事をしておいて、どの面下げて来たって言われても、仕方ないわ……」

 

「おん?」

 

 P氏は気絶してたので、二人の言うことに、まったく覚えが無い。

 それどころか、Hitomiに連れられて来た公園での出来事……その記憶が酷く曖昧なのだ。

 防衛本能が働いて、事件の前後の記憶が消し飛んだのか。それとも何者かの手によって、意図的に記憶を操られたのか……。それは定かでは無い。

 

 とにかく、P氏が憶えているのは、昨日の仕事終わりに、部屋でひとり晩飯を待っていたって事。

 そして次に気が付いたら、時刻は夜の10時になってて、なんか知らないが布団に寝かされてたって事だけだ。

 

「とりあえず、()()()()()()()

 小難しい話は、その後にしましょうねぇ!」

 

「「えっ!?」」

 

 ちょうど昼時だし、ナイスですねぇ!

 のびぃー! っと背筋を伸ばす。堅苦しい空気を壊すように。

 

 

「いまアイツらが、材料買いに行ってくれてっから。

 今日のご飯は、パパのオムライスですじゃ! たくさん食えよ食えよー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 バカ、能天気、考え無し。

 そんなパパの人柄は聞いていた。でも違うって思う。

 

 これは……“優しさ”だ、

 この上ない器の大きさから来る、あったかさなんだ――――

 

 

「うぉおい! なぜ泣く!? 娘たちナンデ!?

 そんな腹減ってたのかお前ら!?!?」

 

 

 

 泣いた。たくさん泣いた。

 RuiとAIはグジグジ鼻を鳴らしながら、「あーん!」と天井を見上げて、泣き続けた。

 

 けれど、さっきまでの心細さじゃない。

 心があったかかった。

 

 

 

 

 

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