【リレー】今日もカオスなもんじゃ焼き 作:リレー小説実行委員会
「――――うぼぉい!! なにウチの信者を、イジめてくれてるのぉん!?」
バーン! と大きな音を立てて、部屋のドアが開いた。
みんなで一緒に食卓に着き、モグモグ幸せそうにオムライスをパクついていた時に。
「あの子とーっても、ナイーブなんだからねっ!
人をイジりはしても、自分がイジられるのは大嫌いなのぉ~ん!
すんごい打たれ弱い、ビンカン☆ヘタレおちんちんなの!
優しくしてあげなさいよバカァ~ン! 豆腐を扱うが如くぅ~!」
乳首の辺りを謎の光で隠す、パンいちの変態淑女。
したたるウーマン――――もやはこの町の名物となりつつあるオモシロ教祖の女が、プリプリクネクネしながらマスターP宅に推参した。
……えっ、なんでわいの家知ってんの?(驚愕)
「ぐちぐち、ぐちぐち……さんざん恨み言を聞かされたわぁん!!
あの子ガン凹みじゃないのよぅ! どーしてくれんのぉん!? メンドクサッ!!
ワテクシは野望実現の為に、クッソ忙しい身なのに、構ってらんないのよぉん!!」
「いやあの、なんでアンタここに?
わいらって敵同士じゃ……」
「ワテクシが“業務連絡”のメッセ送っても、いつも返信も寄こさず、無視するくせにぃ!
面倒なのか何か知んないけどぉ!? アンタ曲がりなりにも
なのに……こんな時だけ『わーん! つらいよぅ!』って泣きついて来んじゃないわよぉん!!
甘ったれんなぁぁぁーーーっ!!」
「おいしたたる……? お前ちょ! 聞いt
「いっつもいっつもぉ、
しかも、た~まに口を開くかと思えば、『したたる様大丈夫ですか……? ご無理はなさらないで下さい……』ってぇ!
――――何その上からのヤツ?! 心配してます感! 三点リーダー! なんなのぉん?!?!
前に教団がピンチの時、
なにを今さら『大丈夫ですか?』って、こっちすり寄ってきてんのぉん!?!?
全部ほとぼりが冷めた頃にいぃぃぃーーッ!!!!」
「お、おい……お前さn
「――――ワテクシ頑張ってるでしょうが! 精一杯やってんでしょうがッ!!
少なくとも、
何を以ってアンタがッ! ワテクシにッ! 『大丈夫か?』って言ってんのぉーん?!
お前が大丈夫かっつーのよぉーーん!!!!(迫真)」
ワテクシなんて言えばいいのん? 彼と一体どう接すれば良いのん……?! 分からないのよぉん!!
なにやら積もり積もっていた怒りや悲しみが、ここにきて爆発したらしい。
したたる様、ただいま暴走中。クレイジートレインである。
「はぁっ……! はぁっ……! ぜぇぜぇ!
ちゅー事で、もうちょっとだけ彼に、優しくしたげてくんなぁ~い?
アンタにも人情って物があるでしょん? 同じ美星町の仲間じゃないのよん」
「いやお前ら、町の平和を乱す側っスからね?
悪い事してるヤツほど、良識とか人情とかを持ち出して来るよなぁ……。
自分のした事を棚に上げてさぁ」
このしたたるウーマンの仲間である以上、これからもホリコンさんと上手くやって行くことは、正直厳しいと思える。
けれどアイツいい人ではあるし、いつもボルシチ持って来てくれるんだよなぁ……。その義理がなぁ……。
これは難しい問題だと、P氏は「うむむ」と唸る。どーしたもんかなコレと。
「ハーイ! これからはホリコンさんに、優しくするのわよー♡」
「私もなのです! もうイジったりしないのです! かわいそーなのです!」
「了解した! んじゃあ今後、なるだけアイツの事は、そっとしといてやろうぜ!
なんかメッセ来てもガン無視してやるぜ☆」
Hitomi&雷&天龍が、元気よく手を挙げる。「先生分かりましたー!」って感じで。
――――人をホモ扱いするだなんて、もっての外だ!
――――ロリコン呼ばわりなんざ、そんなのケンカ売ってるのと同じだろうが! 何考えとんのじゃゴラァ!!
ゆえに! 絶対やっちゃ駄目な事なのだ! 人として!(迫真)
ここにいる女の子たちは、みんなお利口で良い子ばかりなので、しっかり理解してくれた。
親しき中にも礼儀あり。優しさを忘れるべからず。地球は愛で周っているのである。
「あれっ? ……あーそういう事なのん! おっけおっけ~☆」
みんなでホリコンさんについての処置を確認し合っていた時、ふいにしたたるウーマンがポン! と手を叩く。
なにやら、一人なにかに納得したかのように。
「ねぇそこのビューティ三姉妹? そうならそうと、言ってくれたら良かったのにぃ~ん☆」
「えっ」
「は?」
「うん?」
順番に爆乳チアガールことAi、爆乳バスガイドことRui、そしてHitomi。
彼女らはポカンとしながら、ウーマンさんに向き直る。
「入りたいんでしょん?
いや~、おちんちん好きそうな顔してるもんねぇ! このドスケベ♡キャッツアイ!
ウーマンは「おっほっほ♪」と機嫌良さそうに笑う。口元に手の甲を当て、もう絵に描いたような令嬢笑い。
「
クスクス♪ そんな事しなくても、別に入れたげるわよぉ~ん♪
だって!
そのえっちなコスプレは、ワテクシへのリスペクト? かなりいい線いってると思うわぁん! 実に優秀な人材よぉん!
そうしたたるウーマンが、引き続き高笑いを挙げる。
( ゚д゚)ポカーン… としてる皆の事など、気にも留めていないようだ。
「ささっ! 本部へ行きましょん、忠実なるしもべ達よ!
オゥケェ、ガ~ルズ! レッツエクササイーズ! イエー♪
ラァイト、ヒゥイゴ! ワン、トゥ、スr
「――――フッ!!(吹き矢)」
「う゛っ!?!? …………ガックリ……」
窓から顔だけを出した“ワーキングプア侍”が、一撃の下に彼女を仕留める。
上機嫌で笑っていたしたたるは、成す術なくその場に倒れ込むのだった。
「悪の栄えた試し無し。これにて報酬5万円GET也。
闇に滅せよ――――」
右手で南無と拝み手をしつつ、彼が「よいしょ!」って感じで窓から入室。
いったいこいつは誰なんだ。なんでそんなとこ居たんだ……。
みんなには知る由もない。
「つかぬ事を訊ねるが、この辺りに、メロンを売っている店はあるか?
我が主の為、買うときたいので御座る」
「いやそれよか、入って来ないでくれますかね(白目)
ここわいの家なんでね」
誰なんスかおっさん……何してはるんですかアンタ。土足で……。
通報するぞこの野郎、とマスターP氏は冷や汗。
とりあえずワープアはスチャっと部屋の中へ入り、無駄にキリッとした顔をする。
その堂々とした佇まいが、無駄にカッコ良かった。なんにも悪びれてないし。
「この女は連れて行く。各々方、構わぬな?」
「そりゃー、もちろんっすけど。
ついでに牢にぶち込んどいてくれよな! 頼むよ頼むよー!」
まぁしたたるウーマンなら、すぐ脱獄とかしそうだけど……。
このぶっ飛んだ女を拘束するだなんて、日本の警察や刑務所には無理だ。
催眠術とかサイコキネシス使うんだぞ。これでもメチャメチャ強いのだウーマンは。
「それと――――そこの
あいすまぬが、少しばかり顔を貸してもらえぬか?」
さっきまでの弛緩した空気じゃなく、突然ワーキングプア侍が、鋭い目で睨む。
「えっ……、あたしカナ?」
「いかにも、御身だ。
手間は取らせぬで御座る。表で話そうぞ」
Hitomiがキョトンとしながら、指で自分の顔を指す。
それを見届けた途端、彼は先んじて部屋を出ていく。こちらを振り返ることもせずに。
みんなが茫然と見守る中で、Hitomiが慌ててパタパタと後を追っていく。
◆ ◆ ◆
「やはり似ておる。
生き写しの如く、瓜二つに御座る」
アパートから少し行った先にある“空地”。
まるでのび太達の遊び場のように、三つ積み重なった土管や、いかにも野球が出来そうな芝生が広がっている。
「お前、
力石めの血縁者と見たが、如何に?」
ここに二人が着いた後、暫し無言の時間が流れた。
プアはじっとHitomiの顔を見つめており、彼女はオドオドとするばかりだった。
しかし、ここにきて彼が口を開く。
その内容は、Hitomiに対する問いかけである。
「拙者も、過去にあの里におったので御座る。
今は抜け忍の如く、この町で生きておる身ではあるが……。
力石めの事は、よく知っている。歳は離れておるが、同じ釜の飯を食った仲だ」
戸惑う。意味の分からなさに。
“組織”という物に聞き覚えも無ければ、その“力石”という人物も知らない。
当然の事だ、彼女は記憶を失っているのだから。
過去の自分の事や、血縁者の事など、分かる筈もない。
「ごめんなさい。分からない……。
気が付いたら、この町に居たの。
あたしがパパの娘だってこと以外、なにも憶えてなくて」
「……」
じっと、目を見られる。
まっすぐ、謀ることは許さないと言うように。
せめてもの誠意として、Hitomiは視線を逸らさぬよう心掛け、負けじとプアを見つめ返す。
弱々しく、恐怖に曇った眼ではあったが、懸命に潔白を示した。
「ならば、
どうしてここにいる。何を企んでおる。
お前と、力石は」
「っ!?」
チャキッと、彼が刀に手をかける音。
それが緊張感に満ちたこの場に、驚くほどハッキリと響いた。
「我が主には触れさせぬ。あの御方を守るためだけに、この身はある。
危機の可能性は摘む。命に“やり直し”など無いのだから。
怪しきは――――斬る」
分かる。この人はあたしを殺せる。
その刃は、斬られた事すら気付かせない内に、あたしの身体を真っ二つにするだろう。
他ならぬこのお侍さんなら、それが出来る――――
「所詮、殺し屋稼業に御座る。それしか出来ぬし、他に生き方を知らぬ。
拙者も、力石も、
あの里に生まれた者は、皆」
「何を成すつもりにせよ、ろくな事にはなるまいて。
お前の存在は、必ずやこの町に、災いをもたらす。
……いっそ、ここで死んでおくか? 雛鳥よ」
「もう苦悩せずとも良い。思い出せぬ事など、そのまま忘れてしまえ。
お前が世に害を成さぬ内、
同胞のよしみぞ」
重い。空気が。
身体が動かない。息が上手く吸えない。
侍が放つ威圧感に、Hitomiは氷のように身を固くする。
指一本でも動かせば、次の瞬間あたしは死ぬ。その明確なビジョンがハッキリ頭に浮かんでいる。
だけど……。
「ねぇ、貴方の主さんって、どんな子?
貴方はその人のこと、好き?」
ふいに、この場に似つかわしくないような、何気ない声。
力まず、気負わず、あたかも世間話をするような声色で、Hitomiが問いかける。
「きっと私にとって、パパがその子なんだと思う――――」
生まれた時から。
別に憶えてるワケじゃないけど、きっとそうだ。絶対。
あたしはパパのことが好き――――ずっとずっと好き。
だからこの身体は、パパのためにある。
触れるため。手を握るため。
あの人に抱きしめて貰うために、あるんだ――――
「……」
そんなHitomiの胸の内が、届いたのかは分からない。
しかしワーキングプア侍は、ゆっくりと刀から手を放し、静かに居合の構えを解いた。
どこか遠くにいる大切な誰かを想うように、どこを見つめるでも無い眼のまま。
そして、身体から力を抜くように、ふぅとため息を吐き出す。
「何かあれば、拙者を呼べ。
居所は東雲殿がご存じでおられる。
スマホなどという高価な代物……、持っては御座らぬゆえ」
そう短くHitomiに告げ、踵を返した。
あー生活が苦しい! 働けど働けど! なんて呟きながら。