【リレー】今日もカオスなもんじゃ焼き 作:リレー小説実行委員会
「よぉ、肝を冷やしたぜHitomi……」
平穏と静けさが戻った、アパート近くの空地。
「この前の爺さんもそうだが、あのハゲもやべぇ。
ぶっちゃけた話……オレには勝てるイメージが浮かばなかった。
お前の盾になってやるくれぇしか、きっと出来なかったよ」
だから、本当によかったぜ。アイツが退いてくれて。
そう天龍が胸をなでおろす。額に玉のような汗が浮かんでいるのが分かる。
きっと彼女はHitomiの身を案じ、こっそり後を追って来てくれたのだろう。
「つっても、一回斬られてお終いじゃ、お前を守った事にならねぇよな。
くっそ! 龍田もいればッ!
ホタテに小指を挟まれて、大破してなけりゃ……!」
艦娘って一体どんな仕組みなのだろう?
ホタテ獲ろうとして大破とか、あまりにも脆すぎるような気がする。そらワープアさんに勝てんわ。
「心配ないのわよ、テンリューさん。
ちょっと話をしてたダケ」
いい人だったヨ。だって目が優しかったモン。
そう傍に来た天龍に、ニコッと微笑みかける。
少しだけ声が小さく、どこかいつもの彼女とは違う雰囲気。
けれど、しっかり天龍に応えて見せた。
「ふむ……まぁお前がそう言うんなら、問題ねぇんだろうがよ。
でも美星町は魔窟なんだ。あんなのがそこら中、ゴロゴロしてやがる。
だから、あんま一人でどっか行くなよ?
出掛ける時ぁ、オレに声かけろ。連れてけ」
「うん、アリガト」
並んで、トコトコ歩く。
家までの帰路を。マスターP氏のいる、あのアパートへ。
「ねぇテンリューさん?
もし、あたしが
ふいに、ボソッと。
前を向いたまま、何気なく声をかける。
「テンリューさんは、第六の子達のオネーチャンわよね。
悪いことした子は、どんな風にする?」
「おぉ? オレかぁ? そうだなぁ~」
片方の眉を上げた顔で、うむむと悩む。
あまり想像出来ないようだ。Hitomiや第六の子達が、悪さをする所なんて。
「とりあえず、ポカッとゲンコツ入れっかなぁ?
んで正座させてぇ、言って聞かせてぇ、終わったら旨い飯食わせる」
「ごはん?」
ん? と愛らしい顔で、天龍の方を見る。
彼女は腕組みをしながら、今も想像を膨らませている様子だ。
ありえないと思える光景の。
「おうよ。怒るばっかじゃ、ガキは育たねぇよ。
悪いトコは言うけど、こっちだって憎くて叱るワケじゃねぇ。
それでガキがちゃんと成長してくれた時、『よく頑張ったな』って褒めてやる為さ」
愛がなかったら、叱れねぇ。
どーでも良いんなら、ほったらかすさ。お前の好きにしろってな。
好きの対義語は“無関心”なんだと、天龍は語る。
「まぁ正直……やってるオレの方もしんどいだろうから、しっかり説教した後は、何にもなかったみたいに飯食わせるよ。
いっぱい食えよ! 明日からも頑張ろうな! つって。
締めるトコは締めて、笑う時はおもいっきり笑う。この緩急がコツだぜ?」
へっ! と天龍が照れ臭そうな表情。
オレみてぇな荒くれが、ガラにもねぇこと言っちまったと自嘲する。
そんなあったかいこの人を、Hitomiは眩しそうに見つめる。
「なに食べさせる? あたしオムライスがいーカナ♪
今度はテンリューさんのヤツ」
「おいおい、怒らせる気マンマンかよ。
P提督の方が旨いつーの。ガッカリさせちまうよ……」
飯を目当てに悪さとか、そーいうのやめてくれよ?
そもそもお前には、もう叱る所がねぇよ。オレの方がよっぽど不甲斐ねぇ。
天龍がそう窘め、柔らかく微笑む。それは仲の良い友人に向ける笑み、その物。
「ううん、テンリューさんがいい♪
もし怒られるなら、貴方がいいナ。
だから……きっとあたしを叱ってね?」
ゆーびきぃーり、げぇーんまん♪ うーそつーいたら――――
二人が小指を絡ませ、元気よく上下。
天龍は困った顔。Hitomiは楽しそうな顔。
やがてアパートの前に辿り着いた時、二人は少し名残惜しそうに、その指を離した。
◆ ◆ ◆
「――――バーベキューっしょ。BBQしかねぇっスよ東雲さん」
「ふぇ?」
突然の言葉に、東雲がコテンと小首を傾げた。
ちんまい彼女がやると、まるで愛らしい子供のよう。
折り紙で作られた紫陽花の髪飾りも付けているし、容姿的には高価な日本人形のような感じか。
「丁度シーズンなんスよ。サンマとか椎茸とかが、めっちゃ美味い時期なんスわ。
やるしかねぇだろォん! わい達には今しかねぇだろォん!
ここでイモ引くわけにはイカンのですわ! アイアムザマン!!」キリッ
「いえ、BBQ自体の事ではなくぅ。
なぜ唐突にぃ、お誘い下さったのかなーってぇ……」
自分達は、今日会ったばかり。
ヘルキャットの子達を送り届けた後、お昼までご馳走になってしまったというのに、そこに来てこの提案である。
東雲もポン助も、なんか「意味が分かりません」って雰囲気。P氏の得も知れぬ勢いに、圧倒されちゃってるように見える。
「お二人には、この子らが大変世話になりましたからねェ!
なんでも
「それに関しては、申し訳ありませんでしたぁ。
後で私のお人形さんに、グーパンさせときますぅ」
「そもそもの話っスけど……多分お二人は、
こんな懐かれちまったら、もう無理だと思いますわ。
少なくとも夜までは」
「……」
「…………」
ちなみにだが、いま東雲はHitomiのお膝の上、「♪~」って感じで抱っこされている。
ニッコニコご機嫌な様子で、彼女を後ろからギューッと抱きしめ、片時も離そうとしないのだ。
さっき人形の話があったが、彼女らの凄まじい体格差によって、ホントそんな風に見えてしまう。
もうその様は、無邪気な子供そのもの。「シノノメちゃん大好き☆」って感じだ。
ポン助に関しても、Rui&Aiにじぃ~っと見つめられ、常に無言のプレッシャーをかけられている始末。
えっ、ダンボール師匠帰るの? 帰っちゃうの……?
まるで捨てられたネコみたいに、うるうる潤んだ目で、ポン助をここに繋ぎ止めているのだった。
もうエロいわカワイイわで、抗いようが無い。
せめて夜まで。……もっと言うと、この子らが
東雲とポン助の二人は、ここに居るしか無いように思えた。大人はツラい。
……
…………
……………………
「ヒャッハー肉だぜ! 全てを焼き尽くしてやるッ!(BBQ的な意味で)」
「おい直樹、あまり無茶するなよ?
Pさんにご迷惑だからな」
飯島直樹と室斑勝也の二人が、あーだこーだ言いながらBBQグリルを囲む。
「子豚とか無いの? あれグルグルやって丸ごと焼こうぜ! なんか派手じゃんか!」
「またお前は……。食いたいんじゃなく、焼きたいだけなんじゃないのか?
少しは落ち着け、もう高2だろう」
VUMのトリックスターの名を欲しいままにする、破天荒な直樹。
空手道を嗜む好漢で、落ち着いた雰囲気の勝也。
対照的な二人ではあれど、なんか良い感じで凸凹が組み合わさっている印象。
今ギャーギャー騒いでいるけれど、まごう事なき親友同士である。
「えっと……なんかゴメンね?
アイツらどうしてもって言って、ついて来ちゃったの。
男子高校生は腹ペコの化身でね? 肉食わせろこの野郎! みたく。」
「ううん、大歓迎なのわよ。
パパは『みんなに声をかけろー!』って言ってたし。
たくさん来てくれて、パパも喜んでる♪」
それを少し離れた場所で見守る、のどかとHitomiの二人。
彼女らは仲良く寄り添って立ち、一緒にソーセージとか海老とかをパクついている。
時折のどかはメガネをクイッと直しつつ、「おっと、野菜も焼かなきゃ」となにやら計画的に考えを巡らせている模様。
BBQの具材達を“兵士”に例え、それで独自の布陣を組もうとしているかのように。
せっかくのインテリジェンスの無駄遣いをする、文系少女であった。
同じメガネっ子という事で、のどかとHitomiが並ぶと、とても様になる感じがする。
まぁシンプルな銀縁メガネと、エロ女教師みたいな赤いフレームのメガネではあるが。
しかしながら、二人はとても仲良さげ。彼女達の間には、常に穏やかで優しい空気が流れている。
あっ、もうここらへん焼けたわよっ! Hitomiさーん!
了解わよー! ええーい!
そんな風にのどか(軍司殿)の指示の下、ドンドンみんなの分のお肉を焼いていくHitomi。
隣では爆乳バスガイドことRui&爆乳チアガールことAiも、「ルンルン♪」と元気に手伝ってくれてるので、なんかノーパンしゃぶしゃぶならぬ【爆乳コスプレ焼肉】みたいになってしまってる事には、みんな閉口していた。
「ぐ……グギギ!
早くごめんなさいしたいけど、タイミングが掴めないよぉ~っ!」
「まぁ焦らずやりなさいな。
さっきもあの人、『久しぶり♪』って、明るく迎えてくれたじゃない。
何にも心配すること無いわ」
またその様子を、なんか可愛く「むきゃー!」とか言いながら見つめる、女の子二人組の姿。
彼女らはランカ・リーと、ルカ・アンジェローニ。みんなと同じく美星学園の生徒である。
ランカの方に関しては、先日ひと悶着あった事もあり、「はやくあの人と仲直りしたい! 友達になって欲しい!」と、モヤモヤしちゃってるようだった。
「スパム! スパム! スパム!」
「おー、スパムおにぎりですかー!
凄く美味しそうですね。ウチのコンビニでも、人気商品なんです。
焼きおにぎりで食べられるなんて、これは楽しみだ! みんな喜びますよ!」
若者たちと少し離れた一角には、みんなの為にスパムおにぎりを量産するヴァイキングの皆さんと、それを快くお手伝いするコンビニ店長さんの姿がある。
さっきマスターP氏と朗らかに談笑していたし、彼らもBBQを楽しんでくれているみたいだ。
「ねぇ、私達なんで呼ばれたんだろう?
ぜんぜん面識なかったっぽいのに……アリエナイ」
「わざわざ“みっつめのセカイ”まで、声をかけに来てくれたね。
プリキュアの皆さん! いつもご苦労様っス! みたいに……」
そして、この場には主に異世界で活躍する、大勢の“プリキュア達”の姿も。
マックスハートの三人や、5GoGoの面子、そして19年にも渡る歴代のプリキュア達がワラワラと勢ぞろい。
味のヤマモト(有)のご協力により、異世界間移動の装置を使わせて貰い、わざわざHitomiとP氏が誘いに行ったのだ。「BBQやりません?」と。
もちろん味のヤマモトに話を付けたのは、その社長さんと知り合い(?)であるファンキー爺さんである。
有無を言わせず協力を取り付けることに成功したのだ。
ちなみに彼女らプリキュアの“マスコット達”も、なにやら向こうの原っぱの方で、「わーい!」と遊んでいる模様。
現在はみんなで鬼ごっこをやっているらしく、見ていて心が癒される、めっちゃ微笑ましい光景である。
「おぉ? やんのかコラ? やったんぞオイ、このショタっ子が。
こちとらカロリー制限でピリピリしとんのじゃい」
「品のないこと言わないでよ。知性の欠片も無い。
そんなだから、いつも僕らに出し抜かれるんじゃないのかい?」
「いーから楽しもーよぉ♪ 今日はブレイコーだって約束したじゃん! きゃは☆」
今回のキャンプ場となっている河川敷、その隅っこの方では、なんか「おっコラ? あぁコラ?」と、関西人のガラの悪さを発揮しているハセ・ガワ氏。
それを余裕のある態度で軽く受け流す、ミスター慧眼人くん。
加えて「まーまー☆」と二人を諫めている、テンジクボタンちゃんの姿があった。
彼らは普段敵対しており、もうバッキバキにやりあっている仲なので、この場に三人が集まったのはとても意外であった。
いくら元町長であるマスターP氏の呼びかけとはいえ、なんか奇跡的に全員が来てくれた。
ある意味これは、マスターP氏の器のデカさが成せる業なのかもしれない。
だがこの場の空気の険悪さがスゲェ。
「どうだお地蔵さま、うまいか?
いっぱい焼くから、どんどん食べてくれなっ!」
(――――わざわざ担いでまで連れてくるなっ! 重ぅなかったんかお前は!)
そして会場の中央には、大好きなお地蔵さまと一緒にBBQを楽しむ、秋月流くんがいた。
「新商品の“プロテインバー”を持ってきたんだよ!
これチョコタイプのヤツだけど、焼けばなんでも美味くなるよねっ!」
(――――たまには普通のモン食わしてくれ! もうタンパク質はええて!)
助けてくれ小雪ぃー! お前が居てくれればぁーっ!
そうお地蔵さまが、心で涙を流すが、小雪はいま経過観察のために入院中。残念ながらここには居ないのだ。
けれど、プアやチョコ太郎も付いていてくれてるし、後でお土産や写真をたくさん持って、いつものように妹の病室に向かう予定だ。
彼の周りには、たくさんの人達が集まる。
アンパンマンとかばいきんまんとか、いろはとかROCKETーMANとかきゅうべぇとか、あと天津飯も。
秋晴れのポカポカした陽気の中、みんな代わる代わる流のもとを訪れては、ワハハと談笑をしたり、一緒に焼きプロテインバーを食べたりしている。
お地蔵さまに「とほほ……」と見守られながら、愉快で楽しい光景を繰り広げていった。
「よかったねパパ、みんな楽しそうわよ♪」
「おうっ! 美星町中のバカ共が勢ぞろいだ! 壮観な光景ですねェ!」
やがて、ひとしきり役目を終えたHitomiが、コーラ片手に椅子にふんぞり返っているP氏のもとに。
この幸せを感じ入るように微笑みながら、そっとP氏の隣に寄り添う。
「Hitomiが頑張ってくれたから、こんなすげぇBBQが出来たんだ!
えらいぞぅHitomi! 流石はわいの娘やでェ! ナイスゥ!」
「ふふっ、すごいのはパパわよ。あたしはお手伝いだけ。
でも喜んでくれて嬉しい♪ あたし今、とっても幸せだよ♪」
親子二人、ワイワイとバカ騒ぎをするみんなを見つめる。
みんな心から笑っているし、とても喜んでくれてるのが分かった。
「この町に来てよかった。がんばってパパを探して良かった……。
挫けないで、よかった」
出会い、奇跡、幸せ、喜び。
そんな全てをギュッと抱きしめ、そっと目を閉じる。
まるで宝物を仕舞い込むように。
ずっと、このままでいられたらと――――
「オイHitomi! こんくらいで満足してたら、この先もちませんぞォ?
なんたってお前は、このワイの娘ですし!
これからもぉ~~っと! 面白くしてくんだかんなァ!!」
……
…………
……………………
◆ ◆ ◆
「……」
薄暗い研究室で、モニターを眺める。
「……」
茫然と。ポォっとした顔で。まるでパレードを見つめる幼子のように。
いま力石が見つめる眼前のモニターには、美星町の大勢の者達が、楽し気に笑い合っている光景がある。
料理やジュースを手に、肩を組んだり、ダンスをしたり、騒いだり。
あれだけ自分が望んだ“普通”の世界が、決して通ることの出来ない画面の向こう側に、存在していた。
「……っ!」
そして、こんな嫉妬で狂いそうになるほど眩しい光景の中に、マスターPが居る。
あたかもこの楽園の中心であるかのように、強い存在感を放って。
仲間と語らい、ガハハと肩を叩き、お腹いっぱい美味しい物を食べている。
その隣には、自らが生み出した“娘”。
出来損ないのヒトガタ。一山いくらの疑似生命体。私の偽物。
あの子が今、ずっと待ち望んでいた私の王子様の隣にいるのだ。
「なぜ……笑ってるの? なんでそんなに楽しそうなのP君?
私は、ずっと待ってるのに。
暗闇の中、貴方にまた会える日を。…………なのに」
マスターPが笑う。心底愉快そうに。ワハハと。
それを見れば見るほど、私は――――
『
……
…………
……………………
『――――』
ふいに、Hitomiの目の色が変わった。
比喩ではなく、美しいグリーンだった眼が、アルビノのような色素のない色へと変化。
瞳孔が小さくなり、カッと瞼が全開になる。
『――――』
「んぉ?」
駆け出す。突然。
P氏が呆けた声を出すが、それを気に留めもせず、BBQグリルの方へ走る。
今も沢山の木炭が、中で赤く燃えているハズのそれへ。
「……っ!? おいHitomiぃ!?」
彼女がパシッと“着火剤”を手に取る。
炭に火を着ける為に使う、ガソリンのような液体を、何故かおもむろに掴んだ。
即座に蓋を捨て去り、間を置かず撒き散らす。
勢いよくブンと腕を振り、ボトルの中身を全部、燃え盛る炭へと。
その途端、この場に見上げるような爆炎が上がった――――
「 ――――危ないっ!!!!!! 」
咄嗟の出来事に、誰もが状況を理解出来ずに立ちすくむ中……
彼女が小さな身体で突進。頭からツッコむロケットのような体当たりで、見事Hitomiの身体を押し倒す。
間一髪。今まさに爆炎に包まれようとしていたHitomiは、東雲と一緒にもんどりうって倒れ、ゴロゴロと転がる。
人体が地面に打ち付けられる鈍い音が、何度も辺りに響く。
けれど、二人とも無事だ。
「あ、アハッ……♪ なんか
この“業”も、たまには役に立つんですねぇ。……知らなかったぁ……」
◆ ◆ ◆
BBQ会場は騒然。
誰もがこの場に駆け寄り、倒れ込んだ二人を取り囲む。
女の子達の悲鳴、消火作業をする男達の怒号、P氏の叫び。
そんな沢山の声が響く中、東雲はふぅ……と意識を閉じる。
ほっとした表情。やさしい顔。
この子が無事で、ほんとうに良かったと――――