【リレー】今日もカオスなもんじゃ焼き 作:リレー小説実行委員会
みんな、優しかった。
涙が出るくらい――――
「火は消し止めたぜ! 【
ROCKET-MANが「わはは!」と笑う。
なんでアンタここに居んの? とは誰もツッコまなかった。
美星町の懐は深い。マリアナ海溝の如く。
「安心してねHitomiちゃん。ゆっくり身体を休めて」
環いろはが微笑む。子供を安心させる時のように。
彼女の内面の優しさが滲む、静かで優しい笑み。
「織斑先生に車をまわして貰うか。ちょっと行ってくるよ」
「いやいやっ! 俺さまのUFOの方が速ぁ~い! ビューンって送り届けてやるぞぉ~!」
「ジュース飲む? 喉乾いてない? 無理しないでね♪」
アルト、ばいきんまん、ナミ。
誰もが率先して動く。言われずともHitomiを気遣う。
「今すぐ頭痛を治してあげようか?
だからHitomi、ぼくと契約して魔法少女にn
「――――すっ込んでて。耳ギュ~ってするわよ?」
「何人勧誘すんだよ、きゅうべぇ。
いくら美星町が人外魔境とはいえ」
「いま美星町中の学校では、『きゅうべぇクンに声をかけられても、決して返事をしないようにネ!』と、注意喚起が行われてるそうだ。
ガン無視されてんじゃねーかお前……。もうちょっと“思いやり”っつーモンをだな?」
グイッときゅうべぇを押しのける、VUMのメンバー達。
この子に近づく事は許さんとばかりに、「おー!」とスクラムを組んで守る。
ワケが分からないよ(べぇさん)
「よし、俺が気功砲をおみまいしよう。
更なる修行を積み、パワーアップした俺n
「「「 お 前 は し ゃ べ ん な 」」」
容赦なく言葉を遮る。
この場の全員の声が、ピッタリ合わさった。「みんなの想いは同じ!」って感じだ。
そしてすぐ、どこからかロビンマスクさんがこの場に推参し、ヤツに「おりゃー!」とタワーブリッジを決めた。この町から出ていけとばかりに。
さよなら、天さん。
「わたしお肉焼いてくるねっ。
ほら食べよ食べよ♪ ご飯は笑顔だよHitomiさん♪」
「いいねっ! じゃあアタシも手伝うっ!
実はトマホーク・ステーキってゆーのが、すごい気になってたのよぉ!
おっきい骨付きよ骨付き♪」
「田をかえせぇ~! 田をかえせぇ~!」
「コメコメも行くコメー! Hitomiに食べてもらうコメー☆」
順番にキュアプレシャス、キュアブラック、妖怪泥田坊、マスコットのコメコメ。
みんなHitomiにフリフリ手を振って、イソイソとバーベキューに向かう。
「えっ。いま変なの混ざって無かった……?」
「――――であえであえーっ! 妖怪だぁぁーーッッ!!
妖怪泥田坊が出たぞぉぉぉーーッッ!!!!」
「クソがぁぁーー!! 者共ぉ! 出撃だぁぁぁあああ!!!!」
さも当たり前のようにバーベキューしようとしていた妖怪泥田坊へと、VUMの面子が慌てて向かって行く。
また悪さしに来たんか! この前おっきい田んぼ作ってやったじゃんか! 帰れよ! とばかりに。
そして一気に場が騒がしくなり、みんなワーキャー叫びながら泥田坊を取り囲む。Hitomiを守れと。
「……おおい!
「田んぼに縁あるなアイツ!?
俺らが躱した泥田坊の攻撃が、全部アイツに当たっとる!!」
「東雲チャン、かわいそうカワイイ☆
……でも気道だけは確保したげてぇー! 死んじゃうーっ!」
Hitomiがボーゼンと立ちすくむ中、みんなが大立ち回り。
ちょえー! とかきえー! とか言いながら、ドカバキとバトルを繰り広げる。
というか、この場のほぼ全員が戦える、というのがスゴイ。流石は美星町の住人である。
「田をかえせ~。田をかえせ~」ノシノシ
「ほんじゃあな泥田坊ぉー! もう悪さするでねぇどぉー!(農民感)」
「また春になったら、みんなで田植えに行ってやっから~。
それまで待ってろな~」
「じゃあね泥田坊さーん♪ またねー♪」
やがて必死の交戦の末、見事に妖怪泥田坊を撃退。説得に成功。
収穫の時期が終わってしまい、きっと寂しかっただけなのだろう。
またみんなと田植えをする約束を取り付けた泥田坊は、上機嫌で田んぼに帰っていったのだった。春が楽しみである。
「あーあ、泥まみれだよ俺たち……。まぁいいけどさ」
「ぷぷっ! すっげぇ顔だぞ君ら? ミニ泥田坊じゃんかw」
「お前も人の事いえるか。
ほら、さっさと顔洗ってこよう」
流&直樹&勝也が微笑み合いながら、川の方へ連れ立って歩いていく。
それに伴い、VUMの者達も追従。みんな充実感が見て取れる清々しい表情で、泥の汚れを落としに向かった。
「怖かった? でも大丈夫よHitomiさん。私達が守るわ」
「アイツらバカだけど、頼りになるのよ。
いつも『誰かのために』って、頼まれもしないのに走り回ってる連中だからね。ふふ♪」
そっと両隣に寄り添う、いろはとナミ。
Hitomiの手をそっと握り、微笑みをもってHitomiを包み込む。
そして、この場の誰もがHitomiを見守るように、一緒にいてくれている。
アハハと笑い、心から楽し気に。そして優しく気遣ってくれる。
まるで、先ほどのHitomiの奇行など、全く気にしていないかのように。
掛け値なしの友愛、優しさ、善。
「……」
けれど――――
このあったかい人達と、あまりにも汚い自分との違いを、まざまざと見せつけられた。
悪い事……したよネ? あれあたしがやったんだよネ?
なのに、何故だれもあたしを責めないの――――なんにも言わずに許すの。
友達になったから。女の子だから。パパの娘だから。
そんな理由はあるかもしれない。けれどこの場の誰一人として、嫌な顔ひとつ見せなかった。
変な子だ、面倒なヤツだと、そう内心で思うことすら、微塵もしていないのがハッキリ見て取れる。
その掛け値なしの優しさが――――“痛い”。
「ありがとう、みんな。
あたし大丈夫わよ♪」
Hitomiは笑う。心からの感謝を伝える。みんなも優しく頷き返してくれた。
けれど、その
誰もが、ただ思いやりに溢れ、この子を気遣うばかりだから。
これがパパの町。パパの世界なんだ……。
Hitomiは思う。その素晴らしさに感動する。
あまりの綺麗さに。絵に描いたような善に。
大した理由もない、バカみたいな優しさに。
でも……だからこそ、
あたしはパパの楽園に、居ちゃいけないんだ――――
◆ ◆ ◆
「これな? セキゾノフさんがくれたんだ。
もう使ってないからどうぞ、ってよ」
夕焼けに染まる河川敷。
オレンジ色の水面がキラキラしてて、とても綺麗だった。
「ほんとはサイドカーに乗せてやりたいけど、我慢してくれな?
明石ちゃんが帰って来たら、修理してもらうから」
自転車に乗り、川沿いの道を走る。
前がマスターP氏、後ろがHitomiだ。
二人乗りだから、お巡りさんに見つかったら、きっと怒られる。けれど今だけはご勘弁願いたい。
だって、こんな静かであたたかな時間、手放すなんて出来はしないから。
「見てろよHitomiぃ! わいの脚力をーっ!
坂だろうが凸凹だろうが、パパにかかりゃー屁の河童ですわ!」
力強くペダルを漕いでいく。「Hitomiにいい所を見せたい!」というのがアリアリと分かるような、微笑ましい姿だ。
まぁぶっちゃけ、身体の大きなHitomiが漕いだ方が、早く家に着きそうな気もするのだけど……別に急ぐ理由など無い。
まだ若いけれど、意外と逞しい背中――――それを後ろからじっと見つめながら、Hitomiはパパの声に耳を傾ける。
「アイツら花火するらしいわ。
好きに使ってね! とばかりに金置いて来たから、ガキ共で上手くやるだろ。
ジャムおじさんとかの大人も、ちゃんと付いててくれっしな!」
お前も参加出来たら良かったのになぁ、とP氏は少し残念顔。
Hitomiの体調を考慮し、残念ながら今回は、P氏達だけ先に帰らせて貰う事にしたのだ。
せっかくの友達を作る機会だったのに、とP氏は悔しそう。
町に来たばかりの愛娘を想いながら、頑張ってペダルを漕いでいる。
「けどさ? 艦娘のみんなも、東雲さん達も、こっち来てくれっから。
後のどかチャンって言ったか? あの子も一緒に来るってよ♪
愛されてますねェHitomiィ! ナイスゥ!」
流石はわいの娘じゃと、P氏はご満悦。
こんないい子が愛されんワケがない! と声高々に熱弁。
P氏の機嫌良さげな笑い声が、夕方の河川敷に響いていく。
「なぁ……気にしてんのか? 今日のこと」
ふと笑い声が途切れ、問いかける声。
これまでじっと黙り込み、聞き手に回るばかりだったHitomiが、俯き加減だった視線を前に向ける。
「わいは焦った。ぶちゃけ『何しとんのコイツ!?』と思った。
もし男だったら、ぶん殴ってたかもしれん。ゲンコじゃなくガチのグーパンだ。
……でもHitomiは、ワケも無くヤンチャする子じゃありませんねェ!」
ハッと息を呑む。
いつもおちゃらけていたパパの、初めての“真面目な口調”。
それを場違いにも、一瞬“素敵だ”と思ってしまった自分は、反省が足りないんだろうか?
Hitomiはそう自分を戒める。パパの声を聴きながら。
「なんかあんだな。お前も、妹達も。
記憶喪失だけじゃなく、わいに言えんような事情が……。
おっけおっけ、分かりますよォ(美星のホームズ)」
ヒャッハー! と一気に坂を下る。
強くて心地よい風がHitomiの髪を揺らす。あたかも心のモヤモヤを吹き飛ばすかのように。
「言いたくなったら
そんで……ヤンチャする時は、わいにせぇ」
「これでもパパなんスよ。遠慮はいらん。むしろしてくれんな。
そーいうのホントいいんで」
「天龍の言葉やないが……わいの傍におれ。
それで、今日は許しといたる――――」
トクン、と胸が鳴った。
Hitomiは目をまん丸にして、夕日に照らされたP氏の背中を見つめる。
こっちを向かず、あたかも背中で語るように。そして強い口調で言い切る。
そんなP氏の姿に、胸の鼓動が早くなる。トクントクンと音が聞こえそうなくらい。
確かに、高鳴ったのだ。
「うん……分かったヨ。
パパの言うとおりにする」
「ええ子やHitomi。後で頭なでたろ」
ピトッと、背中におでこをくっつける。
そっとP氏に寄り添うみたいに。
万の想いを込めて。
◆ ◆ ◆
「復活ですぅ! 元気の子ですぅ!」
夜。もうお風呂も歯磨きも終わって、寝るだけの時間帯。
いまアパートの6畳間には、「ぐわーっ!」と両手を振り上げている東雲の姿がある。
「不本意ながら、不幸慣れしていますのでぇ。
もう歩くことが出来ますぅ」
「ほんとに大丈夫なの東雲さん?
だって貴方、計250箇所の……」
「問題ありませぇん。青汁飲んでますのでぇ。
不幸体質ですしぃ、せめて身体は健康でいようと心掛けてましてぇ。
耐えてナンボの人生ですぅ」
「えっ、ボロ雑巾だったよね?
半月板も損傷してたんだよ? 歩けるの?」
「ノープロですぅ。青汁飲みましたしぃ」
「青汁にそんな力ないのよ。過信しすぎだよ」
プラシーボ効果? 何その青汁への信頼。のどかはタラりと汗をかく。
この子、正露丸のんだらガンとか治りそう……。なんて綺麗な心の持ち主なのでしょう(白目)
でも東雲が元気そうで良かった……という事にしておくとする。
下手に訂正して、また寝込まれてちゃっても困るし? 今日はせっかくの“お泊り会”なんだから。
ほうれん草じゃなく、青汁Ver.のポパイとでも思っておく事にしよう。
「そんな事よりぃ、私こういうの初めてかもですぅ。
なにやらソワソワしちゃいましてぇ」
「ふふっ、いわゆる女子会。パジャマパーティってヤツね!
まぁちびっ子たちもいるんだし、あまり夜更かしはNGだけどね」
「れ、レディだから大丈夫よっ! 私も遅くまで起きてられるものっ!」
オシャマな暁が、プリプリと怒る。まぁ全然怖く無くて、おめめもパシパシしちゃってるので、微笑ましいばかりの姿。
みんなホンワカした雰囲気で、「まぁまぁ」と彼女を諫める。
ちなみに、今この部屋には女の子勢しか居ない。
Hitomi&のどか&東雲、そして第六の子達とヘルキャットの二人だ。
家主であるマスターP氏、およびポン助には、申し訳ないがお隣のセキゾノフさんの所に行って貰っている。
ゆえに、今夜はHitomi達だけのお泊り会なのだ。
「天龍さんも、こっちに来ればいいのに……。
そろそろ外も寒い季節だよ」
「うーん。でも幾ら言っても、聞いてくれないのよねぇ。
オレには任務があんだ! とか言って」
「なのです……」
第六駆逐隊の子達は、心配そうな顔。
きっと天龍は、Hitomiを守るという想いから歩哨(警備)を受け持っているのだろうが、少し気負い過ぎな気もする。
せっかくのお泊り会なのだし、彼女も一緒に……というのがこの場の総意なのだが、中々の頑固者なのだった。
「いっその事、どんちゃん騒ぎでもしてみる? “天の岩戸”作戦よ!」
「楽し気な雰囲気に釣られて、天龍さんもおいでになるとぉ?
むむむ。真面目そうな方ですしぃ、難しいかもですぅ」
歯ぎしりしながらも、必死に耐えてしまいそう。というのが東雲の弁。
軍師殿(のどか)のアイディアはわるく無いが、夜間だしご近所迷惑の事もある。この作戦は少し難しそうだ。
「ではこーゆーのは如何ですかぁ?
私いい物を持って来たんですぅ♪」
「えっ……これって!?」
Hitomiが思わず声を出した。
いま彼女のお膝にチョコン☆ と座っている東雲が、ゴソゴソと懐から“アルバム”らしき本を取り出した途端に。
まぁそんなちんまい身体で、どうやって仕舞っていたのかは知らないが。裏秋月の神秘なのだろう。
「実はですねぇ。
あくまで名前だけですがぁ、私は以前から、P氏の事は存じておりましたぁ。
立場上、町の有力者の情報を調べておくことは、必須だったものでぇ」
ゆえに、資料として手に入れたのだと、東雲は語る。
これは、P氏のアルバム――――それも小学生時代の写真がたくさん入った、子供の頃のアルバムだった。
「少し前にぃ、とある組織のアジトを、襲撃した事が御座いましてぇ。
うふふ~♪ その時にぶん盗ってやったんですぅ♪
おっ、これは町長の子供時代ね? 資料になるます! とばかりにぃ♪」
「えっと……あんま子供の前で、ぶっそうなこと言わないで貰える?
でもよく今持ってたね? もしかして、部下に持って来させたの?」
「ですぅ♪ お泊りする話になった時ぃ、きっと女子会的なモノになると思いましてぇ。
こんな事もあろうかとぉー!(カッ!)」
彼を好いているHitomiや艦娘の子達に、ぜひ見せてあげたいと思った。
あくまで“子供の頃”の写真だし、マスターP氏はすでに町長を退任しているので、このアルバムは資料としての価値を失っている。
ゆえに機密でも何でもない物なので、せっかくだし、ここで活用しようと。
むしろHitomi達にプレゼントしてやるつもりで、部下に持って来させたのだった。青汁と一緒に。
「流石の天龍さんでも、P氏の写真は見たいハズ。
これをエサにおびき出しますぅ。ちょっとしたハニートラップですぅ」
「6才のパパかわいーん☆ とか言ってキャーキャーしてたら、こっち来てくれるかも!?
いいじゃん東雲ちゃーん! みんなで見ようよ☆」
「ダー。ハラショー」
「なのですっ!」
爆乳チアガールことAiが「わーい!」と駆け寄り、響や電たちも追従。お膝だっこされている東雲の周りに集まる。
暁だけは「うにゅう……」とかいって、早くもコクリコクリと船を漕いでいるが、この子にはまた明日見せてあげたらいいだろう。寝かせてあげる事とする。
「……天使か」
「ショタの天使か」
「げぼかわ」
「げぼかわですぅ」
ひとたびページを開いた途端、ある意味で静まり返る一同。そのあまりのプリチーさに。
えっ……マスターPさんって、こんな
現在の彼は爽やかな感じの短髪で、活発さや破天荒さを感じる顔付き。まさに男の子って感じの。
だが幼少期のP氏は、髪の毛も艶やかでサラサラ。有り体に言えば小動物的な愛らしさを感じさせる、とっても“もきゅい”男の子だった。
やっばい、鼻血でそう……。とは爆乳バスガイドことRuiの弁。
なんか「ほわわ~ん」って感じの顔しちゃってるし、きっと愛おしさが溢れ出しそうなんだろう。
ただし母性は鼻から出る。
「ねぇ、この子が外歩いてたら、ぜったい攫われちゃうよね?
だってこれ……可愛すぎるでしょ……」
「ですぅ。よくぞこれまで無事だったものだと、関心してますぅ」
「なんか提督、アメとか貰ったら簡単について行きそう……。
じゅんしんむく? って感じだもん。すごくキラキラしてる」
「Урааааа!!(ウラー!)
ぼくはこの命を、美星鎮守府に捧げるよ! 提督のために戦うんだ!」
「なのです! がんばってお守りするのです!
ついでに今度、髪を伸ばしてみて貰えるよう、お願いするのですっ!」
ただでさえラノベ主人公くらいモテるのに、これ以上カッコ良くなっちゃったら大変だ。
きっと艦娘たちの淑女協定は、ベルリンの壁の如くガッシャーンと崩れ去り、このアパートに血の雨が降るだろう。
主に恋心に狂った艦娘たちの血が。
そして、Hitomiも東雲を抱きかかえつつ、上からアルバムを覗き込む。
じっと、呆けたように無言で見入る。
優しい目なのに、どこか芯の強さを感じさせる、まるで“おうじさま”のような男の子に。
「この子になら、何されても良い――――ひとつになりたい(直球)」
「お姉ちゃん?」
爆乳バスガイドことRuiが大分おかしな事になっているが、それはこの場の皆が同じ。今は気にしている余裕が無かった。
私はこの町で、ショタコンに目覚めました! って感じだ。P君きゃわわ。
「ねぇ、これは何ぃ? なんか木みたいのがあるよぉ~?」
「ああ、これはクリスマスツリーですぅ。
ご家族とパーティをなさっているんですねぇ」
「こっちは七五三ね。キリッとした顔しちゃって。
アンタがそんな事しても、可愛いだけなのに」
「うっわぁ……! パパの七変化じゃーん☆
いろんなパパがいるよぉーーっ♪」
キャッキャとはしゃぐAiが、矢次に「これは? これは?」と質問。のどか&東雲がニッコリと答えていく。
「あーっ! 亀仙人流の道着を着て、悟空みたいなポーズ決めてるー! かわいーっ♪」
「コナン君みたいな服も着てるのです! 蝶ネクタイが似合うのです!」
「こっちは麦わら帽子だ。白いタンクトップに、半ズボン姿。
ショタっ子の生足が眩しいね。ハラショー」
第六のちびっ子たちも、すごく楽しそう。
この頃に提督と出会っていたら、きっと恋に……なんて今とは違う世界を想像しつつ、パラパラとアルバムのページをめくる。
そのひとつひとつが、宝石のように煌めいて見えた。
「東雲ちゃん、これは?
なんか笹みたいのに、ワサッと飾り付けがしてある♪ カラフルで綺麗☆」
「これは“七夕”の写真ですねぇ。
短冊に願いを込めて、お空にいる織姫と彦星に届けるんですぅ」
そして、沢山の短冊が吊るされた笹の写真に、一同の目がとまる。
その前に立ち、元気にピースサインをしているP君が愛らしかった。
「……っ!?」
だが……ふいにHitomiが息を呑む。ある短冊の文字が目に入り、それから目を離せなくなる。
愕然とし、目の前が白く染まる。
恐らく、これは女の子が書いた物なのだろう。
かわいい丸文字で綴られた、とてもシンプルで短い
――――またPくんと会えますように。
◆ ◆ ◆
『 始めなさいHitomi、
そんな声が、頭の中に直接届いた気がする。
だがHitomiは無力だ。なぜならその声がした途端、ふっと意識が遠のいたから。
……
…………
……………………
「……ん? どうしたよHitomi。もう遅い時間だぜ?」
扉を空けると、すぐそこに天龍の姿。
柵に背を預けて、じっとこの場で警備をしていた事が伺える。
だがHitomiには、それを認識する事は出来ない。
「提督に用か? あの人なら隣の部屋だが……もう寝ちまってるくせぇなぁ。
また明日にしたらどうだ」
もう深夜と呼べる時間帯。辺りは暗かった。
だから艦娘の天龍といえども、気が付くことが出来なかったんだろう。
いまHitomiが、色素の無いアルビノのような目をしている事。そして限界まで瞳孔が縮み、カッと瞼を見開いている事を。
「お……」
その声で、終わりだった。
Hitomiが何気ない仕草で、おもむろに一閃した腕が、天龍を
いま出てきたばかりの部屋の中で、赤く染まった身体を布団に横たえている東雲、のどか、ヘルキャット、第六の子達と同様に、天龍もグシャリと音を立てて地に伏す。
たった一撃の下に、倒されたのだ。
『――――っ』
血潮を吹きながら倒れ込む天龍など、気に留める事もないまま、Hitomiの視線が隣の部屋に向く。
さも当たり前のようにスタスタと歩を進め、ゆっくりとドアノブを捻り、中へと侵入。
あのお泊り会が行われていた部屋を出て、たった5秒ほどの出来事。
今Hitomiの眼前には、ポン助やセキゾノフの間に挟まれながら、豪快な寝息をたてているマスターPの姿がある。
『――――パパ』
ガラッと開けた窓から、ポン助とセキゾノフを投げ捨てる。
胸板に貫き手を突き刺した後、おもむろに首根っこを掴み、両の腕で大の男を二人同時に持ち上げ、まるでゴミ袋を扱うような無機質さで、外へ放り投げた。
そしてすぐ、下から重い物体が潰れたような、鈍い音がした。
あたかも、邪魔だとばかりに。
この世界にはパパだけ居ればいい、とでも言うように、彼らを始末して見せた。
特に何を思うことも無く。
『 すき 』
ゆっくりと歩み寄り、P氏の上に跨る。
愛おし気な手つきで、彼のシャツをめくり、胸板とお腹にキス。小鳥がついばむような口づけを繰り返す。
『 すき。すき。すき 』
鎖骨、首筋、頬。それは段々と上に。
やがてHitomiの顔は、真っすぐにP氏の寝顔と向かい合い、吸い込まれるように自然な動きで、唇を重ねた。
甘える子供のように。慈しむ母のように。大切な宝物を扱うように。娼婦の如く妖艶に。
ゆっくりと彼を愛撫していく。
ピチャピチャと、小さな水音だけが、静寂の中で響いた。
『 パパ。パパ。パパ 』
そっと彼の手を取り、自らの胸へあてがう。
Hitomiの大きな胸に、彼の手が埋まっていき、柔らかな弾力を感じさせながら形を変える。
色の無い目をしたHitomiが、ちょうど三日月のような笑みを浮かべ、恍惚の表情に染まっていく。
月明りに照らされた、小さく幻想的な薄暗闇の世界の中、二人は熱を交換し合う。
お互いの存在を確かめる。
『いこう? あたし達だけのセカイ。
愛してあげる――――溶けて無くなるまで』
やがて、この場が月明りとは違う、強い光に包まれる。
二人を中心とし、魔法陣のようなサークルが展開。P氏とHitomiの身体が、ゆっくりと宙に浮いていく。
召されるように。天使によって天上に誘われるみたいに。
転送術式が、動き続ける。
我を失くした淫靡な娘と共に、マスターPがどこかへ飛ばされて行く。