【リレー】今日もカオスなもんじゃ焼き   作:リレー小説実行委員会

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【劇場版】マジンガー絶頂(Z) ⅩⅡ

 

 

 

 

 

 みんな、優しかった。

 涙が出るくらい――――

 

 

 

「火は消し止めたぜ! 【despairster(絶望の凶星)】の俺さまにかかりゃ、軽いモンだ!」

 

 ROCKET-MANが「わはは!」と笑う。

 なんでアンタここに居んの? とは誰もツッコまなかった。

 美星町の懐は深い。マリアナ海溝の如く。

 

「安心してねHitomiちゃん。ゆっくり身体を休めて」

 

 環いろはが微笑む。子供を安心させる時のように。

 彼女の内面の優しさが滲む、静かで優しい笑み。

 

「織斑先生に車をまわして貰うか。ちょっと行ってくるよ」

 

「いやいやっ! 俺さまのUFOの方が速ぁ~い! ビューンって送り届けてやるぞぉ~!」

 

「ジュース飲む? 喉乾いてない? 無理しないでね♪」

 

 アルト、ばいきんまん、ナミ。

 誰もが率先して動く。言われずともHitomiを気遣う。

 

「今すぐ頭痛を治してあげようか?

 だからHitomi、ぼくと契約して魔法少女にn

 

「――――すっ込んでて。耳ギュ~ってするわよ?」

 

「何人勧誘すんだよ、きゅうべぇ。

 いくら美星町が人外魔境とはいえ」

 

「いま美星町中の学校では、『きゅうべぇクンに声をかけられても、決して返事をしないようにネ!』と、注意喚起が行われてるそうだ。

 ガン無視されてんじゃねーかお前……。もうちょっと“思いやり”っつーモンをだな?」

 

 グイッときゅうべぇを押しのける、VUMのメンバー達。

 この子に近づく事は許さんとばかりに、「おー!」とスクラムを組んで守る。

 ワケが分からないよ(べぇさん)

 

「よし、俺が気功砲をおみまいしよう。

 更なる修行を積み、パワーアップした俺n

 

「「「 お 前 は し ゃ べ ん な 」」」

 

 容赦なく言葉を遮る。

 この場の全員の声が、ピッタリ合わさった。「みんなの想いは同じ!」って感じだ。

 そしてすぐ、どこからかロビンマスクさんがこの場に推参し、ヤツに「おりゃー!」とタワーブリッジを決めた。この町から出ていけとばかりに。

 さよなら、天さん。

 

「わたしお肉焼いてくるねっ。

 ほら食べよ食べよ♪ ご飯は笑顔だよHitomiさん♪」

 

「いいねっ! じゃあアタシも手伝うっ!

 実はトマホーク・ステーキってゆーのが、すごい気になってたのよぉ!

 おっきい骨付きよ骨付き♪」

 

「田をかえせぇ~! 田をかえせぇ~!」

 

「コメコメも行くコメー! Hitomiに食べてもらうコメー☆」

 

 順番にキュアプレシャス、キュアブラック、妖怪泥田坊、マスコットのコメコメ。

 みんなHitomiにフリフリ手を振って、イソイソとバーベキューに向かう。

 

「えっ。いま変なの混ざって無かった……?」

 

「――――であえであえーっ! 妖怪だぁぁーーッッ!!

 妖怪泥田坊が出たぞぉぉぉーーッッ!!!!」

 

「クソがぁぁーー!! 者共ぉ! 出撃だぁぁぁあああ!!!!」

 

 さも当たり前のようにバーベキューしようとしていた妖怪泥田坊へと、VUMの面子が慌てて向かって行く。

 また悪さしに来たんか! この前おっきい田んぼ作ってやったじゃんか! 帰れよ! とばかりに。

 そして一気に場が騒がしくなり、みんなワーキャー叫びながら泥田坊を取り囲む。Hitomiを守れと。

 

「……おおい! ()()()()()()()()()!? 泥まみれじゃねーかよ!」

 

「田んぼに縁あるなアイツ!?

 俺らが躱した泥田坊の攻撃が、全部アイツに当たっとる!!」

 

「東雲チャン、かわいそうカワイイ☆

 ……でも気道だけは確保したげてぇー! 死んじゃうーっ!」

 

 Hitomiがボーゼンと立ちすくむ中、みんなが大立ち回り。

 ちょえー! とかきえー! とか言いながら、ドカバキとバトルを繰り広げる。

 というか、この場のほぼ全員が戦える、というのがスゴイ。流石は美星町の住人である。

 

「田をかえせ~。田をかえせ~」ノシノシ

 

「ほんじゃあな泥田坊ぉー! もう悪さするでねぇどぉー!(農民感)」

 

「また春になったら、みんなで田植えに行ってやっから~。

 それまで待ってろな~」

 

「じゃあね泥田坊さーん♪ またねー♪」

 

 やがて必死の交戦の末、見事に妖怪泥田坊を撃退。説得に成功。

 収穫の時期が終わってしまい、きっと寂しかっただけなのだろう。

 またみんなと田植えをする約束を取り付けた泥田坊は、上機嫌で田んぼに帰っていったのだった。春が楽しみである。

 

「あーあ、泥まみれだよ俺たち……。まぁいいけどさ」

 

「ぷぷっ! すっげぇ顔だぞ君ら? ミニ泥田坊じゃんかw」

 

「お前も人の事いえるか。

 ほら、さっさと顔洗ってこよう」

 

 流&直樹&勝也が微笑み合いながら、川の方へ連れ立って歩いていく。

 それに伴い、VUMの者達も追従。みんな充実感が見て取れる清々しい表情で、泥の汚れを落としに向かった。 

 

「怖かった? でも大丈夫よHitomiさん。私達が守るわ」

 

「アイツらバカだけど、頼りになるのよ。

 いつも『誰かのために』って、頼まれもしないのに走り回ってる連中だからね。ふふ♪」

 

 そっと両隣に寄り添う、いろはとナミ。

 Hitomiの手をそっと握り、微笑みをもってHitomiを包み込む。

 

 そして、この場の誰もがHitomiを見守るように、一緒にいてくれている。

 アハハと笑い、心から楽し気に。そして優しく気遣ってくれる。

 

 まるで、先ほどのHitomiの奇行など、全く気にしていないかのように。

 掛け値なしの友愛、優しさ、善。

 

 

 

「……」

 

 けれど――――()()()()()Hitomiは、孤独を覚えた。

 このあったかい人達と、あまりにも汚い自分との違いを、まざまざと見せつけられた。

 

 悪い事……したよネ? あれあたしがやったんだよネ?

 なのに、何故だれもあたしを責めないの――――なんにも言わずに許すの。

 

 友達になったから。女の子だから。パパの娘だから。

 そんな理由はあるかもしれない。けれどこの場の誰一人として、嫌な顔ひとつ見せなかった。

 変な子だ、面倒なヤツだと、そう内心で思うことすら、微塵もしていないのがハッキリ見て取れる。

 その掛け値なしの優しさが――――“痛い”。

 

 

「ありがとう、みんな。

 あたし大丈夫わよ♪」

 

 

 Hitomiは笑う。心からの感謝を伝える。みんなも優しく頷き返してくれた。

 けれど、その()()()()()()()に気付くことが出来た者は、いったいこの中に何人いたのだろう?

 誰もが、ただ思いやりに溢れ、この子を気遣うばかりだから。

 

 

 これがパパの町。パパの世界なんだ……。

 Hitomiは思う。その素晴らしさに感動する。

 あまりの綺麗さに。絵に描いたような善に。

 大した理由もない、バカみたいな優しさに。

 

 

 でも……だからこそ、()()()()

 

 あたしはパパの楽園に、居ちゃいけないんだ――――

 

 

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「これな? セキゾノフさんがくれたんだ。

 もう使ってないからどうぞ、ってよ」

 

 夕焼けに染まる河川敷。

 オレンジ色の水面がキラキラしてて、とても綺麗だった。

 

「ほんとはサイドカーに乗せてやりたいけど、我慢してくれな?

 明石ちゃんが帰って来たら、修理してもらうから」

 

 自転車に乗り、川沿いの道を走る。

 前がマスターP氏、後ろがHitomiだ。

 二人乗りだから、お巡りさんに見つかったら、きっと怒られる。けれど今だけはご勘弁願いたい。

 だって、こんな静かであたたかな時間、手放すなんて出来はしないから。

 

「見てろよHitomiぃ! わいの脚力をーっ!

 坂だろうが凸凹だろうが、パパにかかりゃー屁の河童ですわ!」

 

 力強くペダルを漕いでいく。「Hitomiにいい所を見せたい!」というのがアリアリと分かるような、微笑ましい姿だ。

 まぁぶっちゃけ、身体の大きなHitomiが漕いだ方が、早く家に着きそうな気もするのだけど……別に急ぐ理由など無い。

 まだ若いけれど、意外と逞しい背中――――それを後ろからじっと見つめながら、Hitomiはパパの声に耳を傾ける。

 

「アイツら花火するらしいわ。

 好きに使ってね! とばかりに金置いて来たから、ガキ共で上手くやるだろ。

 ジャムおじさんとかの大人も、ちゃんと付いててくれっしな!」

 

 お前も参加出来たら良かったのになぁ、とP氏は少し残念顔。

 Hitomiの体調を考慮し、残念ながら今回は、P氏達だけ先に帰らせて貰う事にしたのだ。

 せっかくの友達を作る機会だったのに、とP氏は悔しそう。

 町に来たばかりの愛娘を想いながら、頑張ってペダルを漕いでいる。

 

「けどさ? 艦娘のみんなも、東雲さん達も、こっち来てくれっから。

 後のどかチャンって言ったか? あの子も一緒に来るってよ♪

 愛されてますねェHitomiィ! ナイスゥ!」

 

 流石はわいの娘じゃと、P氏はご満悦。

 こんないい子が愛されんワケがない! と声高々に熱弁。

 P氏の機嫌良さげな笑い声が、夕方の河川敷に響いていく。

 

 

「なぁ……気にしてんのか? 今日のこと」

 

 

 ふと笑い声が途切れ、問いかける声。

 これまでじっと黙り込み、聞き手に回るばかりだったHitomiが、俯き加減だった視線を前に向ける。

 

「わいは焦った。ぶちゃけ『何しとんのコイツ!?』と思った。

 もし男だったら、ぶん殴ってたかもしれん。ゲンコじゃなくガチのグーパンだ。

 ……でもHitomiは、ワケも無くヤンチャする子じゃありませんねェ!」

 

 ハッと息を呑む。

 いつもおちゃらけていたパパの、初めての“真面目な口調”。

 それを場違いにも、一瞬“素敵だ”と思ってしまった自分は、反省が足りないんだろうか?

 Hitomiはそう自分を戒める。パパの声を聴きながら。

 

「なんかあんだな。お前も、妹達も。

 記憶喪失だけじゃなく、わいに言えんような事情が……。

 おっけおっけ、分かりますよォ(美星のホームズ)」

 

 ヒャッハー! と一気に坂を下る。

 強くて心地よい風がHitomiの髪を揺らす。あたかも心のモヤモヤを吹き飛ばすかのように。

 

「言いたくなったら()え。わいは待っとる。

 そんで……ヤンチャする時は、わいにせぇ」

 

「これでもパパなんスよ。遠慮はいらん。むしろしてくれんな。

 そーいうのホントいいんで」

 

「天龍の言葉やないが……わいの傍におれ。()()()()()()()

 それで、今日は許しといたる――――」

 

 

 

 トクン、と胸が鳴った。

 Hitomiは目をまん丸にして、夕日に照らされたP氏の背中を見つめる。

 

 こっちを向かず、あたかも背中で語るように。そして強い口調で言い切る。

 そんなP氏の姿に、胸の鼓動が早くなる。トクントクンと音が聞こえそうなくらい。

 確かに、高鳴ったのだ。

 

 

「うん……分かったヨ。

 パパの言うとおりにする」

 

「ええ子やHitomi。後で頭なでたろ」

 

 

 

 ピトッと、背中におでこをくっつける。

 そっとP氏に寄り添うみたいに。

 

 万の想いを込めて。

 

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「復活ですぅ! 元気の子ですぅ!」

 

 夜。もうお風呂も歯磨きも終わって、寝るだけの時間帯。

 いまアパートの6畳間には、「ぐわーっ!」と両手を振り上げている東雲の姿がある。

 

「不本意ながら、不幸慣れしていますのでぇ。

 もう歩くことが出来ますぅ」

 

「ほんとに大丈夫なの東雲さん?

 だって貴方、計250箇所の……」

 

「問題ありませぇん。青汁飲んでますのでぇ。

 不幸体質ですしぃ、せめて身体は健康でいようと心掛けてましてぇ。

 耐えてナンボの人生ですぅ」

 

「えっ、ボロ雑巾だったよね?

 半月板も損傷してたんだよ? 歩けるの?」

 

「ノープロですぅ。青汁飲みましたしぃ」

 

「青汁にそんな力ないのよ。過信しすぎだよ」

 

 プラシーボ効果? 何その青汁への信頼。のどかはタラりと汗をかく。

 この子、正露丸のんだらガンとか治りそう……。なんて綺麗な心の持ち主なのでしょう(白目)

 でも東雲が元気そうで良かった……という事にしておくとする。

 下手に訂正して、また寝込まれてちゃっても困るし? 今日はせっかくの“お泊り会”なんだから。

 ほうれん草じゃなく、青汁Ver.のポパイとでも思っておく事にしよう。

 

「そんな事よりぃ、私こういうの初めてかもですぅ。

 なにやらソワソワしちゃいましてぇ」

 

「ふふっ、いわゆる女子会。パジャマパーティってヤツね!

 まぁちびっ子たちもいるんだし、あまり夜更かしはNGだけどね」

 

「れ、レディだから大丈夫よっ! 私も遅くまで起きてられるものっ!」

 

 オシャマな暁が、プリプリと怒る。まぁ全然怖く無くて、おめめもパシパシしちゃってるので、微笑ましいばかりの姿。

 みんなホンワカした雰囲気で、「まぁまぁ」と彼女を諫める。

 

 ちなみに、今この部屋には女の子勢しか居ない。

 Hitomi&のどか&東雲、そして第六の子達とヘルキャットの二人だ。

 家主であるマスターP氏、およびポン助には、申し訳ないがお隣のセキゾノフさんの所に行って貰っている。

 ゆえに、今夜はHitomi達だけのお泊り会なのだ。

 

「天龍さんも、こっちに来ればいいのに……。

 そろそろ外も寒い季節だよ」

 

「うーん。でも幾ら言っても、聞いてくれないのよねぇ。

 オレには任務があんだ! とか言って」

 

「なのです……」

 

 第六駆逐隊の子達は、心配そうな顔。

 きっと天龍は、Hitomiを守るという想いから歩哨(警備)を受け持っているのだろうが、少し気負い過ぎな気もする。

 せっかくのお泊り会なのだし、彼女も一緒に……というのがこの場の総意なのだが、中々の頑固者なのだった。

 

「いっその事、どんちゃん騒ぎでもしてみる? “天の岩戸”作戦よ!」

 

「楽し気な雰囲気に釣られて、天龍さんもおいでになるとぉ?

 むむむ。真面目そうな方ですしぃ、難しいかもですぅ」

 

 歯ぎしりしながらも、必死に耐えてしまいそう。というのが東雲の弁。

 軍師殿(のどか)のアイディアはわるく無いが、夜間だしご近所迷惑の事もある。この作戦は少し難しそうだ。

 

「ではこーゆーのは如何ですかぁ?

 私いい物を持って来たんですぅ♪」

 

「えっ……これって!?」

 

 Hitomiが思わず声を出した。

 いま彼女のお膝にチョコン☆ と座っている東雲が、ゴソゴソと懐から“アルバム”らしき本を取り出した途端に。

 まぁそんなちんまい身体で、どうやって仕舞っていたのかは知らないが。裏秋月の神秘なのだろう。

 

「実はですねぇ。

 あくまで名前だけですがぁ、私は以前から、P氏の事は存じておりましたぁ。

 立場上、町の有力者の情報を調べておくことは、必須だったものでぇ」

 

 ゆえに、資料として手に入れたのだと、東雲は語る。

 これは、P氏のアルバム――――それも小学生時代の写真がたくさん入った、子供の頃のアルバムだった。

 

「少し前にぃ、とある組織のアジトを、襲撃した事が御座いましてぇ。

 うふふ~♪ その時にぶん盗ってやったんですぅ♪

 おっ、これは町長の子供時代ね? 資料になるます! とばかりにぃ♪」

 

「えっと……あんま子供の前で、ぶっそうなこと言わないで貰える?

 でもよく今持ってたね? もしかして、部下に持って来させたの?」

 

「ですぅ♪ お泊りする話になった時ぃ、きっと女子会的なモノになると思いましてぇ。

 こんな事もあろうかとぉー!(カッ!)」

 

 彼を好いているHitomiや艦娘の子達に、ぜひ見せてあげたいと思った。

 あくまで“子供の頃”の写真だし、マスターP氏はすでに町長を退任しているので、このアルバムは資料としての価値を失っている。

 ゆえに機密でも何でもない物なので、せっかくだし、ここで活用しようと。

 むしろHitomi達にプレゼントしてやるつもりで、部下に持って来させたのだった。青汁と一緒に。

 

「流石の天龍さんでも、P氏の写真は見たいハズ。

 これをエサにおびき出しますぅ。ちょっとしたハニートラップですぅ」

 

「6才のパパかわいーん☆ とか言ってキャーキャーしてたら、こっち来てくれるかも!?

 いいじゃん東雲ちゃーん! みんなで見ようよ☆」

 

「ダー。ハラショー」

 

「なのですっ!」

 

 爆乳チアガールことAiが「わーい!」と駆け寄り、響や電たちも追従。お膝だっこされている東雲の周りに集まる。

 暁だけは「うにゅう……」とかいって、早くもコクリコクリと船を漕いでいるが、この子にはまた明日見せてあげたらいいだろう。寝かせてあげる事とする。

 

「……天使か」

 

「ショタの天使か」

 

「げぼかわ」

 

「げぼかわですぅ」

 

 ひとたびページを開いた途端、ある意味で静まり返る一同。そのあまりのプリチーさに。

 えっ……マスターPさんって、こんな()()()だったの!?

 現在の彼は爽やかな感じの短髪で、活発さや破天荒さを感じる顔付き。まさに男の子って感じの。

 だが幼少期のP氏は、髪の毛も艶やかでサラサラ。有り体に言えば小動物的な愛らしさを感じさせる、とっても“もきゅい”男の子だった。

 

 やっばい、鼻血でそう……。とは爆乳バスガイドことRuiの弁。

 なんか「ほわわ~ん」って感じの顔しちゃってるし、きっと愛おしさが溢れ出しそうなんだろう。

 ただし母性は鼻から出る。

 

「ねぇ、この子が外歩いてたら、ぜったい攫われちゃうよね?

 だってこれ……可愛すぎるでしょ……」

 

「ですぅ。よくぞこれまで無事だったものだと、関心してますぅ」

 

「なんか提督、アメとか貰ったら簡単について行きそう……。

 じゅんしんむく? って感じだもん。すごくキラキラしてる」

 

「Урааааа!!(ウラー!)

 ぼくはこの命を、美星鎮守府に捧げるよ! 提督のために戦うんだ!」

 

「なのです! がんばってお守りするのです!

 ついでに今度、髪を伸ばしてみて貰えるよう、お願いするのですっ!」

 

 ただでさえラノベ主人公くらいモテるのに、これ以上カッコ良くなっちゃったら大変だ。

 きっと艦娘たちの淑女協定は、ベルリンの壁の如くガッシャーンと崩れ去り、このアパートに血の雨が降るだろう。

 主に恋心に狂った艦娘たちの血が。

 

 そして、Hitomiも東雲を抱きかかえつつ、上からアルバムを覗き込む。

 じっと、呆けたように無言で見入る。

 優しい目なのに、どこか芯の強さを感じさせる、まるで“おうじさま”のような男の子に。

 

「この子になら、何されても良い――――ひとつになりたい(直球)」

 

「お姉ちゃん?」

 

 爆乳バスガイドことRuiが大分おかしな事になっているが、それはこの場の皆が同じ。今は気にしている余裕が無かった。

 私はこの町で、ショタコンに目覚めました! って感じだ。P君きゃわわ。

 

「ねぇ、これは何ぃ? なんか木みたいのがあるよぉ~?」

 

「ああ、これはクリスマスツリーですぅ。

 ご家族とパーティをなさっているんですねぇ」

 

「こっちは七五三ね。キリッとした顔しちゃって。

 アンタがそんな事しても、可愛いだけなのに」

 

「うっわぁ……! パパの七変化じゃーん☆

 いろんなパパがいるよぉーーっ♪」

 

 キャッキャとはしゃぐAiが、矢次に「これは? これは?」と質問。のどか&東雲がニッコリと答えていく。

 

「あーっ! 亀仙人流の道着を着て、悟空みたいなポーズ決めてるー! かわいーっ♪」

 

「コナン君みたいな服も着てるのです! 蝶ネクタイが似合うのです!」

 

「こっちは麦わら帽子だ。白いタンクトップに、半ズボン姿。

 ショタっ子の生足が眩しいね。ハラショー」

 

 第六のちびっ子たちも、すごく楽しそう。

 この頃に提督と出会っていたら、きっと恋に……なんて今とは違う世界を想像しつつ、パラパラとアルバムのページをめくる。

 そのひとつひとつが、宝石のように煌めいて見えた。

 

「東雲ちゃん、これは?

 なんか笹みたいのに、ワサッと飾り付けがしてある♪ カラフルで綺麗☆」

 

「これは“七夕”の写真ですねぇ。

 短冊に願いを込めて、お空にいる織姫と彦星に届けるんですぅ」

 

 そして、沢山の短冊が吊るされた笹の写真に、一同の目がとまる。

 その前に立ち、元気にピースサインをしているP君が愛らしかった。

 

 

 

「……っ!?」

 

 だが……ふいにHitomiが息を呑む。ある短冊の文字が目に入り、それから目を離せなくなる。

 愕然とし、目の前が白く染まる。

 

 恐らく、これは女の子が書いた物なのだろう。

 かわいい丸文字で綴られた、とてもシンプルで短い言葉(ねがい)

 

 

 

 ――――またPくんと会えますように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

『 始めなさいHitomi、()()()()()() 』

 

 そんな声が、頭の中に直接届いた気がする。

 だがHitomiは無力だ。なぜならその声がした途端、ふっと意識が遠のいたから。

 

 

 

 ……

 …………

 ……………………

 

 

 

「……ん? どうしたよHitomi。もう遅い時間だぜ?」 

 

 扉を空けると、すぐそこに天龍の姿。

 柵に背を預けて、じっとこの場で警備をしていた事が伺える。

 だがHitomiには、それを認識する事は出来ない。

 

「提督に用か? あの人なら隣の部屋だが……もう寝ちまってるくせぇなぁ。

 また明日にしたらどうだ」

 

 もう深夜と呼べる時間帯。辺りは暗かった。

 だから艦娘の天龍といえども、気が付くことが出来なかったんだろう。

 いまHitomiが、色素の無いアルビノのような目をしている事。そして限界まで瞳孔が縮み、カッと瞼を見開いている事を。

 

「お……」

 

 その声で、終わりだった。

 Hitomiが何気ない仕草で、おもむろに一閃した腕が、天龍を()()()()()()()()()()()()

 いま出てきたばかりの部屋の中で、赤く染まった身体を布団に横たえている東雲、のどか、ヘルキャット、第六の子達と同様に、天龍もグシャリと音を立てて地に伏す。

 たった一撃の下に、倒されたのだ。

 

『――――っ』

 

 血潮を吹きながら倒れ込む天龍など、気に留める事もないまま、Hitomiの視線が隣の部屋に向く。

 さも当たり前のようにスタスタと歩を進め、ゆっくりとドアノブを捻り、中へと侵入。

 あのお泊り会が行われていた部屋を出て、たった5秒ほどの出来事。

 今Hitomiの眼前には、ポン助やセキゾノフの間に挟まれながら、豪快な寝息をたてているマスターPの姿がある。

 

『――――パパ』

 

 ガラッと開けた窓から、ポン助とセキゾノフを投げ捨てる。

 胸板に貫き手を突き刺した後、おもむろに首根っこを掴み、両の腕で大の男を二人同時に持ち上げ、まるでゴミ袋を扱うような無機質さで、外へ放り投げた。

 そしてすぐ、下から重い物体が潰れたような、鈍い音がした。

 

 あたかも、邪魔だとばかりに。

 この世界にはパパだけ居ればいい、とでも言うように、彼らを始末して見せた。

 特に何を思うことも無く。

 

『 すき 』

 

 ゆっくりと歩み寄り、P氏の上に跨る。

 愛おし気な手つきで、彼のシャツをめくり、胸板とお腹にキス。小鳥がついばむような口づけを繰り返す。

 

『 すき。すき。すき 』

 

 鎖骨、首筋、頬。それは段々と上に。

 やがてHitomiの顔は、真っすぐにP氏の寝顔と向かい合い、吸い込まれるように自然な動きで、唇を重ねた。

 甘える子供のように。慈しむ母のように。大切な宝物を扱うように。娼婦の如く妖艶に。

 

 ゆっくりと彼を愛撫していく。

 ピチャピチャと、小さな水音だけが、静寂の中で響いた。

 

『 パパ。パパ。パパ 』

 

 そっと彼の手を取り、自らの胸へあてがう。

 Hitomiの大きな胸に、彼の手が埋まっていき、柔らかな弾力を感じさせながら形を変える。

 色の無い目をしたHitomiが、ちょうど三日月のような笑みを浮かべ、恍惚の表情に染まっていく。

 月明りに照らされた、小さく幻想的な薄暗闇の世界の中、二人は熱を交換し合う。

 お互いの存在を確かめる。

 

 

『いこう? あたし達だけのセカイ。

 愛してあげる――――溶けて無くなるまで』

 

 

 

 

 

 

 

 

 やがて、この場が月明りとは違う、強い光に包まれる。

 二人を中心とし、魔法陣のようなサークルが展開。P氏とHitomiの身体が、ゆっくりと宙に浮いていく。

 

 召されるように。天使によって天上に誘われるみたいに。

 

 

 転送術式が、動き続ける。

 

 我を失くした淫靡な娘と共に、マスターPがどこかへ飛ばされて行く。

 

 

 

 

 

 

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