【リレー】今日もカオスなもんじゃ焼き 作:リレー小説実行委員会
連続投稿ですぅ。
まだの人は、前話からお願いしますぅ。
「――――キィエエエエエエエエエエエイ゛ッッ!!!!!!!!!」
夜の闇を切り裂く、奇声。
「ワシの飯はどこじゃぁぁぁーーッッ!!
チェストォォォオオオーーーーーーッッッ!!!!」
突然、窓を突き破って侵入してくる
唐突に、なんの脈絡もなく、この場に現れる。
それを認めた途端、モニターで見ていた力石は、慌ててHitomiの制御を手放す。
糸が切れた人形のように、P氏とHitomiが床に倒れ込んだ。
「なんにも飯ないやないか! 一体どーなっとるんじゃフィリッピンは!
くっさい水と、変な味するちっこい芋ばっかりやないか! 食えるかぁぁぁあああーーッッ!!」
きっと、戦時中のことがフラッシュバックしているのだろう。
有り体に言えば、
やだ美星町ってマジ魔境。悪事のひとつも出来へん。
「貴様ら米国かぶれの、えせアンクルサム共は、勤労の大切さと愛国心を知らぬッ!!
それでも亜細亜人かボケェ!! 祖先に恥ずかしないんかぁぁぁーーッッ!!!!」
ワケの分からない事を叫びながら、「うおー!」と部屋中を駆け回る。日本刀片手に。
以前の精悍でカッコ良かった爺さんなど、もう影も形も無い。
今のこやつは、大東亜戦争末期における地獄のような飢餓を生き抜いた、一人の日本兵。もっと言えばボケ老人なのだ。
「天皇陛下ぁ! ばんざぁぁぁあああいッッ!!!!
一億総火の玉じゃーい! お前も戦火で空が赤く染まるのを見たじゃろう?
皇国の興廃、この一戦にアリ! 銃剣ヲ装着セヨ! とつげぇぇぇえええーーきッ!!!!」
うっひょー! とか言いつつ、ファンキー爺さんが窓から飛び出していく。
何しに来たのかよく分からんが、とりあえず爺さんは帰って行った。
はやくファンキー妻子に保護される事を願う。
……
…………
……………………
「ほぉ~、えろぅ派手にやりおったなぁ」
「ぬうっ……!」
それと入れ替わりのように、やがてこの場に二人の男が現れる。
秋月チョコ太郎と、ワーキングプア侍が、夜の闇に紛れながら、HitomiとP氏がいる部屋に押し入った。
「昨日と今日で、二度や。
“時空連続体”に歪みが発生しよったから、一応確認しに来てみりゃあ、この有様かい」
「……」
「なぁプアよ、このにーちゃんって、確か“マスターP”っちゅーヤツやろ?
隣で寝そべっとる女は誰や。なんやねんコイツ」
目線を合わせず、前を向いたまま問う。だがワーキングプア侍は答えない。
今日の昼に会ったばかりだが、確かにこの子を知っているのに……。でも言葉が見つからなかった。
「まぁええわ、やる事は変わらん。
すまんが、ちょっと離れとってくれ」
気を失い、その場に倒れ込んでいるHitomiの所へ、何気ない足取りで向かう。
そして。
「――――おうコラ」
骨が折れる音。重い打撃音。
チョコ太郎の蹴りが腹を突き上げ、Hitomiの身体はくの字に曲がったまま吹き飛ぶ。
そのまま壁に激突し、大きな亀裂を入れた。
「起きぃ。おんどれの仕業やろがぃ。
何をのんきに寝てくれとんねんコラ」
「う゛っ……! ゴッ……ゴホッ!!」
血反吐と共に、胃液を吐き出す。
蹲り、苦し気に呻き声をあげるHitomiを、チョコ太郎が冷たい目で見下ろす。
「縛り上げて、尋問じゃボケ。爪剥いだるわ。
せやが……、とりあえず叩きのめさんとなぁ。ワイの気が治まらん」
部屋の外から、大勢の者達が駆けてくる足音が聞こえる。
恐らく、隣の部屋にいる東雲たちを救助に来たのだろう。
今も血まみれで床に横たわっているであろう、彼女らの命を救いに。
「なっ……なにっ? 貴方っ……誰なのッ!?!?」
「ボケが、質問すんのはこっちじゃ。
おら立て。次いくぞコラ」
目を白黒させているHitomiに対し、おもむろに、瞬時に間合いを詰める。
そこから叩き込まれる、背中までぶち抜くようなボディブロー。
彼の格闘術は、ボクサーのそれに酷似した、独自の拳闘ともいうべき物だ。
しかし、今はフォームの美しさなど、微塵もありはしない。
ただただ相手に近付き、思いっきり殴りつけるだけ。憎悪に任せて。
Hitomiの身体が浮く。割れた窓をさらに破壊しながら、二階の高さから落下。身体を地面に打ち付ける。
「いよっとぉ! まだ終わらんぞクソガキ。
つか……ワレえらい頑丈やのぉ? 絶対カタギちゃうやろ、こんなん」
強靭なHitomiの肉体をしても、耐えられないほどの打撃。
彼女は痛みと衝撃にあえぎ、混乱した思考のままで、必死に起き上がろうと藻掻く。逃げようと試みる。
「まぁ丁度ええ。好きなだけ殴れる」
そうせねば嬲り殺される――――この金髪の人にはそれが出来る。微塵の躊躇なくやる。
チョコ太郎がスタッと窓から飛び降り、すぐこの場に降り立つ。
何事もなかったかのように、さも当たり前のようにHitomiに近付き、髪を掴んで無理やり起こす。
「何発入れた? あのちんまい子らと、
なぁ何発入れてんお前? ――――言わんかコラァァア゛ア゛!!!!」
膝が叩き込まれる。Hitomiの身体がバタフライナイフのように、強制的にUの字で折れ曲がる。
そしてすぐ、浮き上がった身体は重力に従い地面へ。
足を付くどころか、受け身すら取れず、人形のように叩きつけられる。
再び血を撒き散らしながら、倒れ伏した。
「気ぃ変わった。ワレ生きて帰さんぞコラ?
この場で償え。ミンチにしたるわ。こねて焼いたろかボケ」
見せつけるように拳を鳴らしながら、ゆっくりと歩く。
何も出来ず、力なく倒れているHitomiへと。トドメを入れる為に。
「そこまでだ――――太郎よ」
だが、二人の間に割り込む者の姿。
ワーキングプア侍がこの場に駆け寄り、彼を手で制した。
「……おぉ? なにを止め腐っとんねん。
おんどれ、どういうつもりや。仏心も大概にせぇよ……?」
「そうでは無い。この者には聞くべき事がある。
見失うな、太郎」
暫し、睨み合う。
友とはいえ……いや
「身内がやられとんねんぞッ!?
お前もそうやろうがッ……! ポン助も東雲も、好きやったやろがいッ!!
ワレ悔しないんかッ?! ワイら4人で飲んだやろッ!!!!
いつも堅物のお前さんが、あん時は笑うとったやないか!! なぁプアよ!!??」
「……」
「――――風穴空いとったわ! ポン助の身体に!! あいつやなかったら即死やッ!!!!
東雲もそうやッ! あの顔の怪我じゃ、もう元に戻らんかもしれんッ……!
あいつ女やのにッ!! ベッピンやったのにッッ!!!!」
冷静であろうと、これまで必死に抑えてきた感情が、決壊。
チョコ太郎は絶叫。ガクガクと身体を震わせ、大粒の涙を流す。前が見えなくなる位。
その悲痛な声に、Hitomiは凍り付く。
この人の怒りと悲しみを、拳ではなく姿で突き付けられ、絶望が心を覆っていく。
「 しっ……知らないっ! あたし何にも知らないもんっ!!
うわぁぁぁぁぁああああああ!!!! 」
駆け出す。
咄嗟に、大泣きしながら。
子供みたいに。
ワケも分からず。
ただこの絶望や、目の前の現実から、逃れたい一心で。
卑怯だとか、悪いとか、そんな事すら思い至らなかった。
ただ必死に足を動かし、少しでも遠くにと、この状況から逃げた。
今のHitomiに出来るのは、もうそれしかなかったから。
「……太郎よ。拙者は一度、P氏と話さねばならぬ。
付き合ってはくれぬか?」
追っては来なかった。
二人ともその場で、逃げ去り遠くへ離れていく背中を、ただ見つめるのみ。
泣き崩れる太郎、それに寄り添うプア――――
彼らが追って来なかった事で、そんな光景が容易に思い浮かび、またHitomiの心を痛烈に責め立てる。
全部、Hitomiのせいだ。
◆ ◆ ◆
「……Hitomiさんは?」
「いまVUMのみんなが、手分けして探してくれてる。
アンパンマンもいるし、きっとすぐ見つかるよ」
セキゾウノフ氏の部屋。
Hitomi失踪の連絡を受けた友人達が、この場に集まってくれた。
中には、比較的軽傷で済んだヘルキャットの二人や、第六の暁の姿もある。
暁が無事な姿を見せているのは、あの場でただ一人、先に眠ってしまっていた為に、見逃されたからだろうか? 真相は知る由もない。
だが逆に、ヘルキャットの二人も無事とはいえ、今はとても動けるような身体じゃない。戦闘は元より、歩き回るなんて以ての外。
第六の子達は艦娘ゆえに、独自の治療法を施せば完治も出来ようが……。
しかし、血染めで倒れ伏している幼い彼女らを見た時、誰もが胸を引き裂かれるような想いをし、言葉を失っていた。
そして特に、“のどか”の怪我が拙かった。
本来ただの高校生である彼女は、意識不明の重体。即座に病院へと搬送されて行ったのだ。
あんなにも優しく、あったかい子が、何故こんな目に合うの……?
それに答えられる者は、誰も居なかった。
いまこの場は、誰もが意気消沈。
少し突けば溢れ出しそうなほどの、深い悲しみに包まれている。
「組織? 暗殺者の……里?」
「然り。Hitomi殿はそこで生まれた。
実質的に“みっつめのセカイ”を牛耳る、闇の組織に御座る」
マスターP氏が不自然なほどに深い眠りから、ようやく目覚めた時……、そこにこの侍の姿があった。
彼はP氏と向かい合って座り、まっすぐな目で真剣さを伝えるように、静かな声で語る。
「全ての世界を手中に収め、王となるが目的。
それゆえ、既に幾人かの先兵たちが、この世界にも潜んで居る。
この子らが“母”と呼んでいる女も同様。
恐らくは御身……マスターPを狙い、娘達を差し向けたに相違ござらん」
今もお布団の中、苦しそうに呻き声を挙げつつも、パパの力になろうと健気に頑張っているこの子達が、悪党? Hitomiが悪の手先?
思わず激高しそうになる。訂正しろと叫びそうになる。
だがワーキングプア侍の目は真剣だ。この人が嘘を、しかも二人を目の前にして戯言を抜かすハズもない。
逆に言えば、プアがそんな荒唐無稽な真実を、無理を押して告げなければならない程に、状況は切迫しているのだ。
「恐らく、操られておる。……いや精神を“支配”されておると申すべきか。
あたかも繰り人形の如く、動かされておるのであろう。
父たる御身を想う心や、自らの意思とは関係無く」
ヘルキャットの二人に事情を聴き、また直接Hitomiと話をした結果、導き出した答え。
全ては、かの女が黒幕。
そしてHitomiは、あの組織の繰り人形にして、
「Hitomi姉さんは、特別……。
私達二人は、そのフォローをする為に、急造で作られた量産型に過ぎないわ」
「きっと、ママの“パパに会いたい”って気持ちを、いちばん色濃く受け継いでいるのが、Hitomi姉さんなんだよぉ。だから一番つよいのぉ。
あーし達も、会わせてあげたかった……。
暴力じゃなく、ちゃんとお話をして、パパをママの所へ連れてってあげたかったの。
でもぉ……」
時は、彼女らを待ってはくれなかった。
Hitomiは操られ、強制的にP氏を強奪しようとし、そして幸せだった全ては、壊れてしまった。
戻るかもしれないモノと、決して取り戻せないモノ……その両方がある。
たとえ仮に、Hitomiが家に戻って来たとしても、今日までの楽しかった日々には、もう戻れないのだ。
「ハッキリしたやんけ――――あいつは“敵”や。
そもそもワイら裏秋月は、いつもあの組織とは、バチバチにやっとんねん」
向こうのセカイのヤツやし、秘匿されとんのか知らんが、名前もよぅ分からん。実態も掴めん。でもエグイくらい手練れ揃いで、イケイケドンドン。*1
……それが“かの組織”なのだと、太郎は語る。
「猫みたいにすり寄って来たから言うて、
なんや改心しとるっぽいし、そこの二人は百歩譲ってええ。Pさんの好きにせぇや。
だがワイは……、あのナースのガキだけは許さんよ」
まぁ暫くはプアの顔立てて、大人しゅうしといたるけど……。
そうふてくされた顔をプイッ! と背ける。
さっき散々泣いたのを、優しく慰めて貰ったばかりだし、彼には頭が上がらないのだった。
「かの女は、組織の構成員にして、マッドサイエンティスト也。
なんか設定がフワフワとした闇の力と、理屈不明の摩訶不思議な科学力により、Hitomi殿を生み出したので御座ろう」
プアさんのフワフワした説明が続く。
しょーがないじゃん、拙者ただの侍なんだもん。脳筋ですよ脳筋。
「見た所、Hitomi殿の精神は、相当に深い所で支配されておる様子。
きゃつ本人が解くならともかく、余人にこのコントロールを断ち切るは、並大抵の事では御座らぬ」
「盗んだ髪の毛の遺伝情報を元に、科学で作られた子……。
娘だけど、娘じゃない……。
人に災いを成す為に生まれた、闇の子供だなんて……」
ボソリとランカが呟く。
色々あったものの、ちゃんとHitomiと仲直りし、しっかり友達になれたのに……。
その悲しみと、やるせなさが、心から溢れ出たような声。
「――――だったら! なおさら助けてあげればいいっ!!
提督はヒーローでしょ!? 護り手じゃないっ!」
突然、これまで静観を貫いていた暁が立ち上がる。
目を滲ませ、涙声で叫ぶ。皆の諦観をぶち壊すかのように。
「おんぶしてくれたよっ?! 将来美人になれるって、頭をなでてくれたよっ?!
あんなに優しいのに! 一緒にご飯食べたのに! みんなはHitomiさんを見捨てるの!?
――――そんなの友達じゃないよっっ!!!!」
大きな声で意思を叫び、外へ飛び出していく。
Hitomiのもとへ。大好きなお姉さんを取り戻しに、表へ駆けていく。
「……プアさん、
Hitomiが操られた以上、この子らにも何があるか分かんねっす。
お任せしてもよかですか……?」
「相分かった。承知」
考慮するまでもなく、肯定。
この人は我が主ではないが、それと同じくらい、強い目を持つ御仁だ。
ひとりの侍として、力になれるのであれば、恐悦。
「後すんまそん……チョコさんにも。ここに居てくれると嬉しいっス。
アンタは信用出来ますんで。絶対この御恩は、お返しするっス」
「えー。この人はいらないよぉパパー。辛気臭いもーん☆」
「出てって下さる? 貴方がいると空気が淀みます」
「 んなこと
またエグエグしそうになりながらも、チョコ太郎がヘルキャットの二人を諫める。
この場でただ一人、厳しい意見を言ってくれて、しかも掛け値なしに手を貸してくれる、義に厚い人。
マスターP氏の人を見る目は、決して間違っていなかった。
「P殿、かの敵は手練れに御座る。
また必ずや、御身を狙ってくる筈。用心なさいませ」
「あざっすプアさん! ほないっちょ行きますわぁ!
わいの子を連れ戻しにぃぃ~っ!! ヒャッハァァァアアアーーーーッッ☆☆☆」
暁ぃー! わいも行くどぉー! 待て待てー!(ドドドド!)
そう元気に声を挙げ、たくさん土煙を巻き上げながら、マスターP氏が