【リレー】今日もカオスなもんじゃ焼き   作:リレー小説実行委員会

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 連続投稿ですぅ。
 まだの人は、前話からお願いしますぅ。






【劇場版】マジンガー絶頂(Z) ⅩⅢ

 

 

 

 

「――――キィエエエエエエエエエエエイ゛ッッ!!!!!!!!!」

 

 夜の闇を切り裂く、奇声。

 

「ワシの飯はどこじゃぁぁぁーーッッ!!

 チェストォォォオオオーーーーーーッッッ!!!!」

 

 突然、窓を突き破って侵入してくる()()()()()()()()

 唐突に、なんの脈絡もなく、この場に現れる。

 それを認めた途端、モニターで見ていた力石は、慌ててHitomiの制御を手放す。

 糸が切れた人形のように、P氏とHitomiが床に倒れ込んだ。

 

「なんにも飯ないやないか! 一体どーなっとるんじゃフィリッピンは!

 くっさい水と、変な味するちっこい芋ばっかりやないか! 食えるかぁぁぁあああーーッッ!!」

 

 きっと、戦時中のことがフラッシュバックしているのだろう。

 有り体に言えば、()()()()()()()()()()()()()()()、この場に「わっしょーい!」と飛び込んで来たことにより、P氏誘拐は未遂に終わったのだった。

 やだ美星町ってマジ魔境。悪事のひとつも出来へん。

 

「貴様ら米国かぶれの、えせアンクルサム共は、勤労の大切さと愛国心を知らぬッ!!

 それでも亜細亜人かボケェ!! 祖先に恥ずかしないんかぁぁぁーーッッ!!!!」

 

 ワケの分からない事を叫びながら、「うおー!」と部屋中を駆け回る。日本刀片手に。

 以前の精悍でカッコ良かった爺さんなど、もう影も形も無い。

 今のこやつは、大東亜戦争末期における地獄のような飢餓を生き抜いた、一人の日本兵。もっと言えばボケ老人なのだ。

 

「天皇陛下ぁ! ばんざぁぁぁあああいッッ!!!!

 一億総火の玉じゃーい! お前も戦火で空が赤く染まるのを見たじゃろう?

 皇国の興廃、この一戦にアリ! 銃剣ヲ装着セヨ! とつげぇぇぇえええーーきッ!!!!」

 

 うっひょー! とか言いつつ、ファンキー爺さんが窓から飛び出していく。

 何しに来たのかよく分からんが、とりあえず爺さんは帰って行った。

 はやくファンキー妻子に保護される事を願う。

 

 

 

 ……

 …………

 ……………………

 

 

 

「ほぉ~、えろぅ派手にやりおったなぁ」

 

「ぬうっ……!」

 

 それと入れ替わりのように、やがてこの場に二人の男が現れる。

 秋月チョコ太郎と、ワーキングプア侍が、夜の闇に紛れながら、HitomiとP氏がいる部屋に押し入った。

 

「昨日と今日で、二度や。

 “時空連続体”に歪みが発生しよったから、一応確認しに来てみりゃあ、この有様かい」

 

「……」

 

「なぁプアよ、このにーちゃんって、確か“マスターP”っちゅーヤツやろ?

 隣で寝そべっとる女は誰や。なんやねんコイツ」

 

 目線を合わせず、前を向いたまま問う。だがワーキングプア侍は答えない。

 今日の昼に会ったばかりだが、確かにこの子を知っているのに……。でも言葉が見つからなかった。

 

「まぁええわ、やる事は変わらん。

 すまんが、ちょっと離れとってくれ」

 

 気を失い、その場に倒れ込んでいるHitomiの所へ、何気ない足取りで向かう。

 そして。

 

「――――おうコラ」

 

 骨が折れる音。重い打撃音。

 チョコ太郎の蹴りが腹を突き上げ、Hitomiの身体はくの字に曲がったまま吹き飛ぶ。

 そのまま壁に激突し、大きな亀裂を入れた。

 

「起きぃ。おんどれの仕業やろがぃ。

 何をのんきに寝てくれとんねんコラ」

 

「う゛っ……! ゴッ……ゴホッ!!」

 

 血反吐と共に、胃液を吐き出す。

 蹲り、苦し気に呻き声をあげるHitomiを、チョコ太郎が冷たい目で見下ろす。

 

「縛り上げて、尋問じゃボケ。爪剥いだるわ。

 せやが……、とりあえず叩きのめさんとなぁ。ワイの気が治まらん」

 

 部屋の外から、大勢の者達が駆けてくる足音が聞こえる。

 恐らく、隣の部屋にいる東雲たちを救助に来たのだろう。

 今も血まみれで床に横たわっているであろう、彼女らの命を救いに。

 

「なっ……なにっ? 貴方っ……誰なのッ!?!?」

 

「ボケが、質問すんのはこっちじゃ。

 おら立て。次いくぞコラ」

 

 目を白黒させているHitomiに対し、おもむろに、瞬時に間合いを詰める。

 そこから叩き込まれる、背中までぶち抜くようなボディブロー。

 彼の格闘術は、ボクサーのそれに酷似した、独自の拳闘ともいうべき物だ。

 しかし、今はフォームの美しさなど、微塵もありはしない。

 ただただ相手に近付き、思いっきり殴りつけるだけ。憎悪に任せて。

 

 Hitomiの身体が浮く。割れた窓をさらに破壊しながら、二階の高さから落下。身体を地面に打ち付ける。

 

「いよっとぉ! まだ終わらんぞクソガキ。

 つか……ワレえらい頑丈やのぉ? 絶対カタギちゃうやろ、こんなん」

 

 強靭なHitomiの肉体をしても、耐えられないほどの打撃。

 彼女は痛みと衝撃にあえぎ、混乱した思考のままで、必死に起き上がろうと藻掻く。逃げようと試みる。

 

「まぁ丁度ええ。好きなだけ殴れる」

 

 そうせねば嬲り殺される――――この金髪の人にはそれが出来る。微塵の躊躇なくやる。

 チョコ太郎がスタッと窓から飛び降り、すぐこの場に降り立つ。

 何事もなかったかのように、さも当たり前のようにHitomiに近付き、髪を掴んで無理やり起こす。

 

「何発入れた? あのちんまい子らと、()()()()()()

 なぁ何発入れてんお前? ――――言わんかコラァァア゛ア゛!!!!」

 

 膝が叩き込まれる。Hitomiの身体がバタフライナイフのように、強制的にUの字で折れ曲がる。

 そしてすぐ、浮き上がった身体は重力に従い地面へ。

 足を付くどころか、受け身すら取れず、人形のように叩きつけられる。

 再び血を撒き散らしながら、倒れ伏した。

 

「気ぃ変わった。ワレ生きて帰さんぞコラ?

 この場で償え。ミンチにしたるわ。こねて焼いたろかボケ」

 

 見せつけるように拳を鳴らしながら、ゆっくりと歩く。

 何も出来ず、力なく倒れているHitomiへと。トドメを入れる為に。

 

「そこまでだ――――太郎よ」

 

 だが、二人の間に割り込む者の姿。

 ワーキングプア侍がこの場に駆け寄り、彼を手で制した。

 

「……おぉ? なにを止め腐っとんねん。

 おんどれ、どういうつもりや。仏心も大概にせぇよ……?」

 

「そうでは無い。この者には聞くべき事がある。

 見失うな、太郎」

 

 暫し、睨み合う。

 友とはいえ……いや()()()()()()()()()、チョコ太郎の感情が激しく波打つ。

 

「身内がやられとんねんぞッ!?

 お前もそうやろうがッ……! ポン助も東雲も、好きやったやろがいッ!!

 ワレ悔しないんかッ?! ワイら4人で飲んだやろッ!!!!

 いつも堅物のお前さんが、あん時は笑うとったやないか!! なぁプアよ!!??」

 

「……」

 

「――――風穴空いとったわ! ポン助の身体に!! あいつやなかったら即死やッ!!!!

 東雲もそうやッ! あの顔の怪我じゃ、もう元に戻らんかもしれんッ……!

 あいつ女やのにッ!! ベッピンやったのにッッ!!!!」

 

 冷静であろうと、これまで必死に抑えてきた感情が、決壊。

 チョコ太郎は絶叫。ガクガクと身体を震わせ、大粒の涙を流す。前が見えなくなる位。

 その悲痛な声に、Hitomiは凍り付く。

 この人の怒りと悲しみを、拳ではなく姿で突き付けられ、絶望が心を覆っていく。

 

 

「 しっ……知らないっ! あたし何にも知らないもんっ!!

  うわぁぁぁぁぁああああああ!!!! 」

 

 

 駆け出す。

 咄嗟に、大泣きしながら。

 

 子供みたいに。

 ワケも分からず。

 ただこの絶望や、目の前の現実から、逃れたい一心で。

 

 卑怯だとか、悪いとか、そんな事すら思い至らなかった。

 ただ必死に足を動かし、少しでも遠くにと、この状況から逃げた。

 今のHitomiに出来るのは、もうそれしかなかったから。

 

 

「……太郎よ。拙者は一度、P氏と話さねばならぬ。

 付き合ってはくれぬか?」

 

 追っては来なかった。

 二人ともその場で、逃げ去り遠くへ離れていく背中を、ただ見つめるのみ。

 

 泣き崩れる太郎、それに寄り添うプア――――

 彼らが追って来なかった事で、そんな光景が容易に思い浮かび、またHitomiの心を痛烈に責め立てる。

 

 全部、Hitomiのせいだ。

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「……Hitomiさんは?」

 

「いまVUMのみんなが、手分けして探してくれてる。

 アンパンマンもいるし、きっとすぐ見つかるよ」

 

 セキゾウノフ氏の部屋。

 Hitomi失踪の連絡を受けた友人達が、この場に集まってくれた。

 

 中には、比較的軽傷で済んだヘルキャットの二人や、第六の暁の姿もある。

 暁が無事な姿を見せているのは、あの場でただ一人、先に眠ってしまっていた為に、見逃されたからだろうか? 真相は知る由もない。

 

 だが逆に、ヘルキャットの二人も無事とはいえ、今はとても動けるような身体じゃない。戦闘は元より、歩き回るなんて以ての外。

 

 第六の子達は艦娘ゆえに、独自の治療法を施せば完治も出来ようが……。

 しかし、血染めで倒れ伏している幼い彼女らを見た時、誰もが胸を引き裂かれるような想いをし、言葉を失っていた。

 

 そして特に、“のどか”の怪我が拙かった。

 本来ただの高校生である彼女は、意識不明の重体。即座に病院へと搬送されて行ったのだ。

 あんなにも優しく、あったかい子が、何故こんな目に合うの……?

 それに答えられる者は、誰も居なかった。

 

 いまこの場は、誰もが意気消沈。

 少し突けば溢れ出しそうなほどの、深い悲しみに包まれている。

 

 

 

「組織? 暗殺者の……里?」

 

「然り。Hitomi殿はそこで生まれた。

 実質的に“みっつめのセカイ”を牛耳る、闇の組織に御座る」

 

 マスターP氏が不自然なほどに深い眠りから、ようやく目覚めた時……、そこにこの侍の姿があった。

 彼はP氏と向かい合って座り、まっすぐな目で真剣さを伝えるように、静かな声で語る。

 

「全ての世界を手中に収め、王となるが目的。

 それゆえ、既に幾人かの先兵たちが、この世界にも潜んで居る。

 この子らが“母”と呼んでいる女も同様。

 恐らくは御身……マスターPを狙い、娘達を差し向けたに相違ござらん」

 

 今もお布団の中、苦しそうに呻き声を挙げつつも、パパの力になろうと健気に頑張っているこの子達が、悪党? Hitomiが悪の手先?

 

 思わず激高しそうになる。訂正しろと叫びそうになる。

 だがワーキングプア侍の目は真剣だ。この人が嘘を、しかも二人を目の前にして戯言を抜かすハズもない。

 逆に言えば、プアがそんな荒唐無稽な真実を、無理を押して告げなければならない程に、状況は切迫しているのだ。

 

「恐らく、操られておる。……いや精神を“支配”されておると申すべきか。

 あたかも繰り人形の如く、動かされておるのであろう。

 父たる御身を想う心や、自らの意思とは関係無く」

 

 ヘルキャットの二人に事情を聴き、また直接Hitomiと話をした結果、導き出した答え。

 全ては、かの女が黒幕。

 そしてHitomiは、あの組織の繰り人形にして、()()()()()()()()に他ならないと。

 

「Hitomi姉さんは、特別……。

 私達二人は、そのフォローをする為に、急造で作られた量産型に過ぎないわ」

 

「きっと、ママの“パパに会いたい”って気持ちを、いちばん色濃く受け継いでいるのが、Hitomi姉さんなんだよぉ。だから一番つよいのぉ。

 あーし達も、会わせてあげたかった……。

 暴力じゃなく、ちゃんとお話をして、パパをママの所へ連れてってあげたかったの。

 でもぉ……」

 

 時は、彼女らを待ってはくれなかった。

 Hitomiは操られ、強制的にP氏を強奪しようとし、そして幸せだった全ては、壊れてしまった。

 戻るかもしれないモノと、決して取り戻せないモノ……その両方がある。

 たとえ仮に、Hitomiが家に戻って来たとしても、今日までの楽しかった日々には、もう戻れないのだ。

 

「ハッキリしたやんけ――――あいつは“敵”や。

 そもそもワイら裏秋月は、いつもあの組織とは、バチバチにやっとんねん」

 

 向こうのセカイのヤツやし、秘匿されとんのか知らんが、名前もよぅ分からん。実態も掴めん。でもエグイくらい手練れ揃いで、イケイケドンドン。*1

 ……それが“かの組織”なのだと、太郎は語る。

 

「猫みたいにすり寄って来たから言うて、()()()()()()()()()()

 なんや改心しとるっぽいし、そこの二人は百歩譲ってええ。Pさんの好きにせぇや。

 だがワイは……、あのナースのガキだけは許さんよ」

 

 まぁ暫くはプアの顔立てて、大人しゅうしといたるけど……。

 そうふてくされた顔をプイッ! と背ける。

 さっき散々泣いたのを、優しく慰めて貰ったばかりだし、彼には頭が上がらないのだった。

 

「かの女は、組織の構成員にして、マッドサイエンティスト也。

 なんか設定がフワフワとした闇の力と、理屈不明の摩訶不思議な科学力により、Hitomi殿を生み出したので御座ろう」

 

 プアさんのフワフワした説明が続く。

 しょーがないじゃん、拙者ただの侍なんだもん。脳筋ですよ脳筋。

 

「見た所、Hitomi殿の精神は、相当に深い所で支配されておる様子。

 きゃつ本人が解くならともかく、余人にこのコントロールを断ち切るは、並大抵の事では御座らぬ」

 

「盗んだ髪の毛の遺伝情報を元に、科学で作られた子……。

 娘だけど、娘じゃない……。

 人に災いを成す為に生まれた、闇の子供だなんて……」

 

 ボソリとランカが呟く。

 色々あったものの、ちゃんとHitomiと仲直りし、しっかり友達になれたのに……。

 その悲しみと、やるせなさが、心から溢れ出たような声。

 

 

「――――だったら! なおさら助けてあげればいいっ!!

 提督はヒーローでしょ!? 護り手じゃないっ!」

 

 

 突然、これまで静観を貫いていた暁が立ち上がる。

 目を滲ませ、涙声で叫ぶ。皆の諦観をぶち壊すかのように。

 

「おんぶしてくれたよっ?! 将来美人になれるって、頭をなでてくれたよっ?!

 あんなに優しいのに! 一緒にご飯食べたのに! みんなはHitomiさんを見捨てるの!?

 ――――そんなの友達じゃないよっっ!!!!」

 

 大きな声で意思を叫び、外へ飛び出していく。

 Hitomiのもとへ。大好きなお姉さんを取り戻しに、表へ駆けていく。

 

「……プアさん、AiとRui( 娘達 )の事、オナシャス。

 Hitomiが操られた以上、この子らにも何があるか分かんねっす。

 お任せしてもよかですか……?」

 

「相分かった。承知」

 

 考慮するまでもなく、肯定。

 この人は我が主ではないが、それと同じくらい、強い目を持つ御仁だ。

 ひとりの侍として、力になれるのであれば、恐悦。

 

「後すんまそん……チョコさんにも。ここに居てくれると嬉しいっス。

 アンタは信用出来ますんで。絶対この御恩は、お返しするっス」

 

「えー。この人はいらないよぉパパー。辛気臭いもーん☆」

 

「出てって下さる? 貴方がいると空気が淀みます」

 

「 んなこと()ーとる場合かッ! ええから大人しゅう寝とき!(泣) 」

 

 またエグエグしそうになりながらも、チョコ太郎がヘルキャットの二人を諫める。

 この場でただ一人、厳しい意見を言ってくれて、しかも掛け値なしに手を貸してくれる、義に厚い人。

 マスターP氏の人を見る目は、決して間違っていなかった。

 

 

「P殿、かの敵は手練れに御座る。

 また必ずや、御身を狙ってくる筈。用心なさいませ」

 

「あざっすプアさん! ほないっちょ行きますわぁ!

 わいの子を連れ戻しにぃぃ~っ!!  ヒャッハァァァアアアーーーーッッ☆☆☆」

 

 

 

 

 暁ぃー! わいも行くどぉー! 待て待てー!(ドドドド!)

 

 そう元気に声を挙げ、たくさん土煙を巻き上げながら、マスターP氏が()()した。

 

 

 

 

 

 

*1
極道の言葉で、「非常に好戦的で冷徹」という意味

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