【リレー】今日もカオスなもんじゃ焼き   作:リレー小説実行委員会

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【劇場版】マジンガー絶頂(Z) ⅩⅤ

 

 

 

 

「妙やなァ、風が泣いとる――――」

 

 サラッとフラグを立てる。息を吐くように中二病発言。

 

「嫌な予感がしますねェ! 気を付けろ暁ィー!」

 

「了解っ!」

 

 肩車されている暁が、ビシッと海軍式の敬礼。

 マスターP氏も注意深く辺りを見渡しながら、美星町を駆けていく。

 

 野性の勘か、それとも歴戦の雄(北斗神拳伝承者)としての経験か、はたまた「漫画だったら次はこういうの来るな~」というしょーもない先読みなのか。

 ともかく、いまP氏はハッキリと“不穏な空気”を感じ取っており、さっきの英霊共&ウミンチュ( 海人 )さんとの邂逅で弛緩してしまった心を、改めて引き締めた。

 そして、とりあえず曲がりなりにも彼らの再登場を果たし、形だけでもバトンを引き継げた事に内心安堵しつつ、マスターP氏は走る。

 

「美星町の全ての皆様に感謝申し上げつつゥ! ありがとうの気持ちを忘れずにィ! ちょいと飛ばすぞ暁ィ!」

 

「分かったわ提督っ!」

 

 P氏の頭にギュ~っとしがみ付き、衝撃に備える暁。

 彼も前傾姿勢で「きぃ~~ん☆」と言いながら、さらに速度を上げていった。

 

 

 

「そして! 時速39㎞くらいで走り続けてたら、公園に辿り着いたぜッ!」

 

「わーい説明くさぁーい☆ でも分かりやすくてステキ!」

 

 秋の虫の鳴き声だけが遠くから響く、夜の公園。

 広大な敷地と、豊かな木々が見渡す限り広がり、街灯と月明りだけがぼんやりと照らす、青白い風景。

 どことなく心細さを感じる、深夜の公園という非日常の空間。

 P氏が「よいしょ」と暁を降ろし、二人でキョロキョロと辺りを見る。

 

「理由も理屈もよく分からんが、この辺りが怪しい気がするぜッ!」

 

「ご都合主義さいこー! これぞコメディの魔法ね☆」

 

 仮に明石ちゃんや瑞鶴あたりが居てくれたなら、レーダーなり艦載機なりで情報を集め、向かうべき場所の指示をくれるのだろうが……残念ながらまだ帰還していない。

 ゆえにマスターPは、独力でなんとかした。流石は北斗神拳伝承者である(?)

 

「……あっ、人影見ゆ!!

 数は2! 距離150です!」

 

「でかした暁ィー! 大きくなったら乳揉んでやっからなァー!」

 

「死ねっ!! とにかくあっちよ提督、行きましょう!」

 

 二人で「ウオォー!」と叫びながら、現場へ急行。

 17才の男の子と、ちんまい幼子が、横並びで元気に走っていく。

 その表情だけは、まごう事なき真剣さを宿して。

 

「なっ、なんだこの悍ましい気配はッ!?

 こんなの……ネット小説を書いてるだけなのに、サイコパスの人に粘着されちまった時にだって、感じた事ねぇぞ!」

 

「えらく具体的だけど……気をつけて提督っ! これホントにやばいわ!」

 

 P氏が、空中ダッシュする時の悟空みたいな構えを取り、暁は即座に艦娘の艤装を展開。全速力で芝の上を駆ける。

 高速で流れていく視界。近付けば近付く程にどんどん増していく悪寒と、得も知れぬ威圧感。

 けれど、二人は決して足を止めることは無い。額をつぅっと流れる冷や汗を感じながら、一刻も早くと懸命に足を動かす。

 

 そして、そこで目にしたのは――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほ~らHitomi、バナナよぉ。沢山食べなさーい♪」

 

「ウホホw ウホウホwww ウホホホwww」

 

 

「「――――Hitomiぃぃぃいいいッッ!?!?!?」」

 

 

 なんか見知らぬ女性にエサを貰っている、ゴリラみたいな愛娘の姿。

 

「あーら、もう20本もいってるわぁ。Hitomiはバナナが大好きなのねぇ♪」

 

「ウホw ウホホホwww ドンドコドンドコ(ドラミング)」

 

「「――――Hitomiちゃあああぁぁぁーーんッッ!?!?!?」」

 

 楽し気にドンドコ胸を叩き、腰をくの字に曲げながらウロチョロと辺りを徘徊。バナナ片手に。

 そのゴリラよろしくの仕草をしているのは、間違いなく自分たちが探していた人物。Hitomiその人であった。

 

 無駄に筋肉があるせいで、なんか物凄く()()()()()()というか、もうゴリラにしか見えない。

 人格がデリートされ、代わりにゴリラの人格をインストールされちゃったHitomiは、人語も忘れて只今バナナに夢中。美味しそうにモシャモシャ貪っている。器用に皮を剥いててエライ。

 

「……あら? 何かしら貴方たち、うちのゴリラに何か?」

 

「ウホw パパ来たwww ウホホw バナナ食べる?www」

 

「 目を覚ませHitomiィ!! オメェそれで良いのか色々!?!? 」

 

「 私の憧れを返せぇー!! 」

 

 しがみ付き、必死にガクガク肩をゆするも、Hitomiは「ウホホホw」って感じ。

 辛うじて人語を喋り、P氏のことも認識しているようだが……もう在りし日の彼女は居ない。全ては失われていたのだ。

 

「そうそう! この子はHitomiじゃなく、【Hanako】に改名するから。

 みんなよろしくね♪」

 

「 やめてよそのゴリラみたいな名前っ! かわいそうでしょ!? 」

 

「後で毛皮的なコスチュームも着せて、()()()()()()()に進化するから。

 仲良くしてあげてね☆」

 

「――――あの子を解き放て! あの子は人間だぞッ!!」

 

 ゴリラっぽい仕草で「♪~」と歩き回るHitomiを余所に、P氏たち大激怒。

 必死に見知らぬ女性に詰め寄る。わいの娘を返せと(人権的な意味で)

 

「ちょっと前に、“逆バニー”っていうコスが流行ったじゃない?

 ゴリラの毛皮って、形があれに似てると思うんだよね。エロくない?」

 

「んなこと思うのはアンタだけよ! 考え直してっ!」

 

「まぁここはひとつ、私のことは【動物好きの優しいお姉さん】って感じで、なんとかならない?

 貴方には少しでも良く見られたいのよ、P君」

 

「 努力の方向オンチかッ!! もうサイコパスは沢山だッ!!(迫真) 」

 

 なんでどいつもこいつも、わいに粘着してくるんだろう? すり寄って来るの? 変人を引き寄せるオーラでも出してんのかな……。

 そうP氏は己を省みる。もしかしたら“類友”なのかもしれないと凹む。

 

「まぁ冗談はこの辺にして……Hitomi?」

 

「――――」

 

「っ!?」

 

 これまでおちゃらけていたHitomiの目の色が変わり、瞳孔が縮む。気配が一変。

 次の瞬間、獣のような速度で駆け出し、一瞬にして暁を捕獲。後ろから羽交い絞めにする。

 

「て、テメェ!? ……暁ィィーッ!!」

 

「おっと、動かないで頂戴ね?

 私の命令ひとつで、その子の背骨が折れる。Hitomiは躊躇なくやるわ」

 

 想定していなかった。あのHitomiが暁に手を出すなどと。

 だがこの状況においては、P氏の考えが甘かったと言わざるを得ない。

 あの子はすでに、()()()()()()()()()。そしてプアに「操られている」と忠告を受けていたハズだ。

 比喩では無く、もう在りし日のHitomiは、どこにも居ない。

 生来の活発さゆえか、ここにきて未だ楽観的に物事を捉えていた彼には“取り戻す”という意思はあっても、“交戦する”という覚悟までは、出来ていなかったのだ。

 その油断を、最悪の形で突かれた。

 

「夜の公園、素敵だね♪

 お月様の薄明り……まるであの森のよう」

 

 ふいに、どこか遠くを見つめるような目で、力石は小さなため息。

 

「夜のブランコで語り明かすのもいいけれど……、ここでは少し、舞台が不足してるよ。

 だから、場所を移そっかP君?」

 

 腰のポシェットから、手の平に収まるサイズの機械のような物を取り出し、おもむろにスイッチを押し込む。

 その途端、この場に淡い赤色の光が、柱のように円形で、空まで立ち昇る。

 あたかも魔法陣……いや異世界へとつづく扉のよう。

 

「この子カワイイね♪ 大事な子なんでしょう?

 なら追って来て。……P君だけは、このゲートをくぐれるから。()()()()()()()()

 

 世界を繋ぎ渡る力――――そうボソッと彼女が呟く。

 だがその言葉の意味を考える暇も無いまま、暁を抱えたHitomiが、躊躇なく光の柱の中へ飛び込んでしまう。

 

「てっ……提督ぅぅぅーーーっっ!!!!」

 

「暁ィィィイイイーーッッ!!!!!!!」

 

 手を伸ばす。必死に。

 だが二人の姿は、まるで煙のようにスッと消失。この世界から消える。

 どこかへ飛ばされた。ここではないどこかへ……そうP氏は直感的に理解。

 

「少し準備がしたいから、悪いけど時間稼ぎをさせて?

 童貞の君は知らないだろうけど、女の子は色々あるんだ♪

 このゲートは開いておくし、終わったらここに入ればいいよ。P君ひとりでね」

 

 彼女がふわっと手を上でかざした途端、この場に大きな地震めいた地鳴りが。

 立っているのも困難なほどの揺れに、P氏は彼女を捕まえるどころか、前を睨むことで精一杯となる。

 

 

「それじゃあがんばってね、みんなの護り手(ヒーロー)さん。――――まってる」

 

 

 彼女の身体が、すぅっと光の柱の中に消える。

 

 次の瞬間……、この場に台風を思わせる凄まじい爆風が吹き荒れ、P氏の身体が大きく跳ね飛ばされた。

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「こ、これは……洒落になりません(白目)」

 

 胸に思い描くは、艦娘たちの姿。そして自らが専属パイロットを務めるロボット“マジンガー絶頂”の事。

 だがそのどちらも、いまこの場には無い。

 

「生身でどうしろってんだ、こんなの……。

 わい今日で最終回っすか?(察し)」

 

 ゴロゴロと地面を転がり、ようやく勢いを殺して立ち上がった時、異変に気付いた。

 月明りが消え、辺りがより一層暗くなっている事。そしてどこからか聞こえる“笑い声”。

 

『 アハハ。アハハハ。 』

 

『 ハハ。アハハハ 』

 

 ふと視線を上げれば、そこには“天使たち”の姿。

 背中に翼を持つ小さな女の子たちが、月明りどころか空を覆い隠すほど大量に、視界いっぱいフワフワと浮かんでいる――――

 

『 アハハ、パパ、パパ 』

 

『 パパだ。アハ。アハハハ 』

 

 ゆっくりと降りてくる。徐々に高度を下げているのが分かる。

 やがて近付いてくる内に、彼女らの容姿がハッキリ見て取れるようになり、この子達が全て“機械人形(オートマタ)”であることを悟った。

 まるで腹話術のパペットのように、左右の口角から真っすぐ下に線が入っているのが分かる。今も口元をカクカク動かし、楽し気に「パパ」と呼びながらアハハと笑っている。

 白いベールを身に纏い、手に小さな弓矢を携えた数えきれないほどの天使たちが、こちらを目掛けて舞い降りてくる――――

 

 ここは丁度公園だ。いまマスターP氏の脳裏に、以前なにげなくハトにパンを投げてやった時の思い出が、ふと思い浮かんだ。

 クルッポーと首を前後に動かしながら、テクテクこちらに歩いて来るハトに気が付いた時、P氏はちょうど手に持っていた食べ掛けのパンを、ポイっとそちらへ投げてやったのだが……。

 次の瞬間、この場に()()()()()()()()()()()()()()()()()、瞬時にパンに群がって来たのだ。

 バタバタと煩いくらいの羽音を鳴らしながら、恐ろしいほど沢山のハトが、大群となって一斉に襲い掛かり、瞬く間にパンを穴だらけに。原型を留めないほどバラバラにしてしまった。

 

 その時に感じた悪寒と、今のこの状況が、ピッタリ重なる。

 

『 アハハ 』

 

『 パパ 』

 

『 アハハ 』

 

『 パパだ 』

 

『 パパだね 』

 

『 パパいた 』

 

『 いたね 』

 

 食い散らかされる――――成す術なく。

 これから自分は、この空を覆い隠すほどの天使の大群に、一斉に群がられるだろう。

 あのパンのように、一瞬にして穴だらけにされ、バラバラになってしまう未来が、容易に想像出来た。

 

 見上げる。空を。もう愕然としながら。

 奥歯を噛みしめ、ギュッと拳を握る。……もうそれくらいしか、今の自分に出来ることが、思い浮かばなかった。

 

 ……時間稼ぎ? ウッソだろお前?

 アンタこの美星町を、()()()()()()()()()()()()()

 跡形なく、慈悲もなく、殺し尽くす気じゃないか。ここに住む全ての人達を――――

 

 

『 パパ 』

 

   『 パパ 』

 

     『 パパ 』

 

  『 パパだ 』

 

    『 あいして 』

 

 『 あいして 』

 

      『 アイシテ 』

 

  『 すき 』

 

     『 好き 』

 

    『 スキ? 』

 

  『 いい子 』

 

 『 イイコ 』

 

『 ほしい 』

 

   『 して 』

 

        『 パパ 』

 

                 『 愛せ 』

 

 

 ()()()()()()。道徳の授業で習った、焼夷弾による空襲を彷彿とさせる炎が、煙が、遠くの方でそこら中から上がっている。

 空から来襲した天使たちが地上へと放つ、雨のような矢。いくつも重なって騒音のように木霊する悲鳴。阿鼻叫喚。助けを乞う声。

 今この町の誰もが逃げ惑い、成す術なく貫かれ、また炎にまかれて死んでいる姿が、P氏の脳裏にアリアリと浮かぶ。

 

 絶望――――これがそうなんか。

 彼は、生まれて初めて知る。

 

 いま己の胸に去来している、如何ともし難い感情、そしてブルブルと震えが止まらない身体。まったく言う事をきかず、身動きすら出来ない我が身。全てを失うという恐怖。

 これが“コワイ”って事なんか。今わい絶望しとんのか。……MJD(マジで)

 こんな時だというのに、P氏は己の心を疑い、打ちひしがれずにはいられなかった。

 まさか、このわいが? と。

 

『 パパ 』

 

『 パパ 』

 

『 パパ 』

 

 そして己の内に閉じこもる暇もなく、この場にも多くの天使たちが降り立った。

 周りを取り囲み、この広大な敷地を全て埋めつくすほどの数。

 P氏は歴史の授業中はいつも居眠りをしているけれど、話に聞く関ケ原の合戦のことが思い浮かんだ。まぁ東軍も西軍もなく、自分はたった一人なのだけど……。

 

『 すき 』

 

『 スキ 』

 

『 好き? 』

 

『 して 』

 

『 して 』

 

『 ダイテ 』

 

『 あいして 』

 

 少しずつ円を縮めるように、近付いて来る。

 それは地面だけの話ではなく、空も。

 いま己は、ドーム状にこちらを取り込む天使たちにより、完全に逃げ場を失っている。どうする事も出来ない。

 

 左右の目をデタラメにぐるぐる回し、カクカクと口をカスタネットのように動かしながら、数えるのも億劫になるような無数の天使たちが、ゆっくりと迫って来る――――

 

 

 

「ッ!!!!!!?????」

 

 だが、爆音――――

 地面が激しく揺れ、空気が振動。

 

『 あぁ!? 』

 

『 ぎゃっ!? 』

 

『 あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!! 』

 

 ()()。それもすごく巨大な。

 いくつもいくつも、この場に降り注ぎ、地面に穴を空ける。

 辺りにいる天使の軍勢を、蹴散らしていく。

 

 空だ! でもこれは天使じゃない! もっと大きな!

 全長20メートルを超える巨大な人型の影が、ジェット機のような飛行音で大気を振動させながら、物凄い速度で空を駆けている!!

 

 

「――――動け! マスターPさんっ! 貴方らしくもない……!」

 

 

 赤いカラーの機体。()()()()()

 いわゆる“アーマードコア”と呼ばれる、汎用人型兵器。鉄の死神。 

 

「その声はホリコn……いや()()()()()さんすか!?!?」

 

「そうだっ……! ホモではないけれど私だ……!

 自称、ロリコンにもなれないスナハァラ・セキゾノフだ!(?)」

 

 乗っているのは彼!

 歴戦の傭兵であり、通称“リンクス”と呼ばれる元パイロットの彼が、アーマードコア・ネクストを操り、“謎の主張”を引っ提げてこの場に現れたのだ!

 

 砂漠に住む肉食獣を思わせるような、痩せっぽちなボディ。

 装甲をかなぐり捨て、何よりも速度を重視し、軽量化した機体。

 その両手に握られたサブマシンガン型の武装が、(あられ)(ひょう)のように次々と弾丸を吐き出す。

 天使のお株を奪うが如く、視界に留めることすら困難なスピードで空を駆けながら、次々とヤツらを駆逐している。

 流星のように夜空を駆け、延々と鳴り続ける銃撃音と、破壊を撒き散らす。

 

「ここは任せて……! 成すべきを成して下さい……!

 貴方にしか出来ない事がある筈だ……!」

 

 スピーカーからの声。だがそれは酷くかすれており、彼がいま咳込んでいるのが分かった。血の混じった唾液を吐き出しながら。

 

「このじゃじゃ馬(アマジーグ)は、精神負荷が酷くてね……?

 乗っているだけで、心をやすりで削られるようだ……。

 申し訳ないが、長くはもちません……。急いで下さいPさん……」

 

 本来、彼には傭兵たる……アーマードコアに乗る素質は無かった。

 彼はただ、僅かばかりの操縦技術と、“皆を守りたい”という想いのみを以って、戦場に出ていただけの男だったから。才能など無かったのだ。

 

 けれど、この致命的な精神負荷を引き起こす機体【AC・アマジーグ】と、無理やり己をリンクさせる事により、力を手に入れた。

 乗る度に、気が狂いそうになるほどの頭痛、そして戦えば戦うほどボロボロになっていく心。朝食のメニューや、友達の顔さえ思い出せなくなる程の、強烈な精神ダメージ。

 それに耐え続けながら、ずっと長い間、アーマードコアを駆って来た。

 家族や、愛する人々を守らんが為に、己の全てを捧げたのだ。

 身も心も、己の明日さえも。

 

 しかも、その致命的な精神負荷に加えて、いま彼は重傷を負っている。

 先のHitomiの暴走による負傷が、耐え難い激痛を与えているハズだった。

 

「いちおう言っておきますが……、別にいいカッコしてホモにモテたいとか、ょぅι゛ょに愛されたくてACに乗っているワケでは……。

 この“致命的な精神負荷”というのも、あくまでACによるコジマ汚染で、決して私の性癖に関する悩みとか葛藤とか、そういうのとは無関係なので……!」

 

「分かってるっすよセキゾノフさん。

 そもそもわい、アンタの事ロクに知らんのやし」

 

 ナイーブなのか、めっちゃ気にするタイプなのか、この期に及んでセキゾノフさんが懇願。ホント辛いんですと――――

 

「大丈夫。うちの艦娘たちに、ちゃんと言っとくから。

 ホリコンのことをスナハァラと呼ぶのはやめろ! って」

 

「逆。逆ですPさん。

 あぁ、意識が……(くらっ)」

 

 だんだんスピーカーから聞こえる声が、弱々しくなってるような気がする。

 それでも操縦を止めず、鬼神のような動きで天使たちを駆逐し続けている所は、流石セキゾノフさんである。

 

「とりあえず、役目は果たしたかな、っと……。

 どうやら私だけでは無かったようだ。これで一安心です……」

 

「えっ? ……あぁー! お前らぁーー!!??」

 

 気が付けば、この場に大勢の人達が。

 VUMのメンバーや、アンパンマン達、そして美星町中の猛者たちが集まり、「おらぁー!」とか言いながら()使()()()()()()()()()()

 

「なんだこの野郎! 通販で買った“クマ撃退スプレー”を喰らえ!

 かかって来いこの野郎!」

 

「直樹ッ! あまり突出するな! 陣になって戦え!」

 

 二人で協力し、天使たちと対峙する、直樹と勝也。

 お互いに背中合わせで、ニヤッと微笑み合いながら、どんどん敵を駆逐していく。

 

「大丈夫か、我が弟子よ?

 時代がお主の拳を必要としておる。ここで死なれては困るのぅ」

 

「老師っ! 北斗神拳のお師さん!?」

 

「あーらイケメンっぽい声♪

 でもセキゾノフさんのケツを掘るのは、この戦いが終わってからにしましょ♪」

 

御釜田(おかまだ)さん! 新聞配達所のっ!」

 

「スパム! スパム! スパム! こいつらの肉でスパム!」

 

「いや止めとけよバイキングの皆さん!?

 誰も食わねぇし、そもそも機械人形(オートマタ)だよっ!」

 

 次々に集まる、美星町の戦士達。

 中にはホモとか変態とかもいるが、誰もが町を守ろうと奮闘し、その拳を振るっている。

 

「どうしたのファンキー爺さん、もう疲れた?

 ぼくが全部やっつけてあげようか♪」

 

「笑止、すっこんどれ剛力甘男(あまお)

 きゃつらが片付かば、次はヌシぞ」

 

 夜の公園に、キェェェェェとかアーンパーンチとかの、大きな叫び声が響く。

 今ここに、ファンキー爺さんとアンパンマンが並び立ち、戦場を席巻。瞬く間に賊を誅殺していく。

 

「この町をやらせるワケには、いかないんですよ。

 私のホーリーランド*1なんでね」

 

「自分達でやるのならともかく、よそ者に好きにされるのはね……。

 僕の庭で何をしてるの? ――――()ね、下種共が」

 

「テンジクボタンちゃんもいっくよ~☆

 ハーイとっつげぇーーき♪ きゃは☆」

 

 大道塾*2仕込みの膝蹴りを叩き込む、ハセ・ガワ氏。

 目から青白い光を放ち、カマイタチめいた突風を巻き起こす、ミスター慧眼人くん。

 そして、無双系ゲームのように「どかーん☆」と敵陣に飛び込んでいく、テンジクボタンちゃん。

 銃器や兵装を携えたComeTrueやオールインワンの構成員たちも雪崩れ込み、この場はすでに戦の様相。激しい戦闘が繰り広げられる。

 

「よし、俺もやろう。気功h

 

「うぉぉ! タワーブリッジ! タワーブリッジ!!(瞬殺)」

 

「いいから黙ってろよオメェは。ここは俺らでやっからヨォ。

 まだ俺のバトルフェイズ(タイガリティ運動)は終了してないゼ」

 

 クソ野郎(天津飯)の脊髄を極めるロビンマスク。そして何故かいるトラゴロー。

 彼らも美星町を守るべく、推参してくれたのだ。

 

「うおー! お地蔵さまデッケェな!

 やっぱカッコいいよ!」

 

(アホンダラ! 流の町を壊すな! みんなが住まれへんようなるやろ! アホーっ!!)

 

 そして、アーマードコアに負けないくらい巨大化した()()()()()が、「えいえい!」と頑張って天使たちを踏んづけていく。

 とっても頼りになる伊邪那岐命(いざなぎのみこと)であった。

 

 

 

「ご覧の通りです……。行って下さいPさん。

 その力で――――君は何を守る?」

 

「セキゾノフさん……」

 

 “砂漠の狼”と呼ばれた傭兵が、そっと心で、彼の背中を押す。

 

「恐らく、今から貴方が向かうのは“カノジョのセカイ”。

 手で触れられるほどに具現化した、あの女の心象風景に近い場所……。

 闇の者が作り上げた、決して光の届かないセカイです」

 

 ゆえに、援軍は送れない。この心の闇の如き不可侵のゲートをくぐれるのは、選ばれし英雄たるマスターP氏のみ。

 単身で赴く他はなく、また「貴方ならやれる」と、力強くセキゾノフが頷く。

 

「行って来いよ、元町長。

 ほんで、さっさと帰って来いな?」

 

「アンタなら、何の心配もいらんだろう?

 またゲリラライブを見せてくれ。今度は小雪ちゃんにも」

 

 直樹と勝也が激励を贈る。頼りがいのある“男の顔”で。

 

「なぁPさぁーん? これ終わったら遊ぼうぜーっ!

 いっかいアンタと話してみたかったんだよ俺♪ ぜったい友達になれるって♪」

 

 そして、「おるぁー!」と天使共を束にしてシバきながら、流くんもこちらへ振り向き、ニカッと笑う。

 

 

「わーったよ流きゅん。わーったよみんな。

 ――――ほなわい突貫しますわァ! おっしゃー見とけよ見とけよー!」 

 

 

 

 

 

 

 

 もう振り向かない。迷わない。

 P氏はダッシュで光の柱に駆け込み、その途端バリバリ~っと電気のようなモノを受けて「うぎゃー!」と叫びながらも、なんとか旅立っていった。

 

 あの女と、暁と、ゴリr……いや愛娘のもとへ。

 

 

 あの子を連れ戻し、また一緒に生きるため。

 彼らしい元気さで赴いて行った。――――最後の決戦(カノジョのセカイ)へと。

 

 

 

 

 

 

*1
魂の居場所、心の住処

*2
空手道の団体。関節技や投げまで許容される過激さが特徴

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