【リレー】今日もカオスなもんじゃ焼き   作:リレー小説実行委員会

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【劇場版】マジンガー絶頂(Z) ⅩⅥ

 

 

 

 

 ――――また君に会えますように。

 

 ずっと胸に抱き続けた想い。

 わたしのたったひとつのたからもの。

 七夕にかけた、願い。

 

 けれど……これを叶えるよりも、()()()()()()()()()()()、よほどタイヘンだったように思う。

 

 

 

『……なにぃ! 見逃したぁ!? 一体何を考えている貴様ッ!!!!』

 

 あの七夕の日、“みっつめのセカイ”に帰還した後、お腹が破れちゃうくらい蹴り回された痛みを、今も憶えてる。

 

『そのガキはどこだッ! 顔を見られたというガキはッ!! どこにいる!?

 すぐに代わりの者を送り、始末させるッ! 言わんかッ!!!!』

 

 縄で括られ、身体を打ち据えられた。長い時間をかけ、何百と叩かれた。

 骨が砕ける感触というのを、その時初めて知った。

 いつもわたしがやっていた事だけど、骨を砕かれた人はこんな想いをしていたのかって……胸がキュッとなった。

 

『こやつはシノビに不向きだ。心根が甘すぎる』

 

『一人しくじれば、里全体が危機に晒されよう。

 我らの任務とはそういうモノ、薄氷を踏むが如しよ。

 まだ幼き内に()()()と分かったのは、僥倖(ぎょうこう)やもしれぬ』

 

『面倒を起こす前に、いっそ処分してしまうか?

 目と腕を潰し、そこいらの獣にでも、くれてやればよい。

 または生き試しに使え。幼年組の者達にとり、情けを捨て去る良き訓練となろう』

 

 両腕を縛られ、サンドバッグのようにぶら下がりながら、遠くなる意識の中で、大人達の声を聴いた。

 歯が何本も折れているし、口の中もズタズタだったから、決して言葉にする事はなかったけれど……。やるなら早くやってくれ、と思った。

 

『――――その子の身元が割れたわ。

 “ひとつめのセカイ”に住む、マスターPとかいう、6才の男の子よ♨』

 

 けれど、この場にふらっと現れたピンキー様の一言によって、わたしは力なく閉じていた瞼を、限界まで見開く。

 

『健気じゃないの、男のために尽くすだなんて。……会ったばかりなのに。

 この子はシノビより、淫売の素質があるのかもねぇ♨』

 

 おねえっぽい口調で、楽し気に「くっく!」と笑いながら、ピンキー様がミノムシのようになったわたしの前に立ち、上を向かせる為にクイッと顎を持ち上げた。

 

『いい事を考えたわ、()()()をしましょうか? ちいさな淫売さん♨』

 

『貴方が一人殺す度、あの男の子に“三日の猶予”をあげる。

 だから、これからも里の任務をこなし、たくさん殺しなさい♨

 でなければ、()()()()寿()()()()()()()()?』

 

 男の子(マスターP)は始末する。これは決定事項よ。例外はない。

 けれど、貴方がここで()()()()()()()()()()()、彼を生かしておいてあげるわ。

 ……そうピンキー様が、ニタリと微笑む。

 妖艶に、心底愉快そうな様子で。

 

 

『いわば“命の貯金”ね。

 それが尽きたら殺す、里から逃げ出しても殺す。

 精々がんばって任務をこなす事ね♨』

 

『どう? 見ず知らずの人間の命で、彼の三日分の寿命を買うの♨

 その価値は充分にあるんじゃない? 貴方にとっては――――』

 

 

 

 

 誕生日、という物がある。

 その人が生まれた日。またひとつ歳を重ねたと、皆でお祝いする日なのだそうだ。

 

 なんの気まぐれか知らないが、ある日ピンキー様が、わたしに教えてくれた。

 きっと励みにでもなればと思ったんだろう。……P君の誕生日を。

 

 

『おめでとうP君。あれから1年だね?』

 

『誕生日おめでとう、もう9才だねP君』

 

『来年から中学ね。12才の誕生日おめでとう』

 

『……もう高校生になるんだぁ。

 立派になったねP君。おめでとう――――』

 

 

 ……それから私は、毎年彼を祝うようになった。

 独房のように狭く、暗い部屋で一人きり。呟くように。

 毎日まいにち、人を殺しながら。

 

 

 窓から夜空を見上げ、彼を想う。

 それだけは出来た。それしか出来なかった。

 

 日に日にすり減っていく心。慣れていく事への嫌悪。

 自分がバケモノになった感覚と、それをハッキリ照らし出す、お月様の光。

 “君”という、忘れられない暖かな灯。

 

 

 あの七夕のように、また同じ星の下、君の顔が見たい。

 

 

 

 

 

 

 ……

 …………

 ……………………

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「あっ……これベルセルクのヤツや(察し)」

 

 長い長い落下。

 かのゲートに飛び込み、いつ終わるともしれない浮遊感を耐えきった後、マスターPはまるで排泄物のように、ここにボテッと落ちた。

 

「“蝕”ん時のヤツや……。

 あのキャスカのエロシーンには、わいも胸が熱くなったもんだが(正直者)」

 

 大地を埋め尽くす、顔、顔、顔。

 憎悪と怨念に染まった人間の顔が、いまP氏の足元に……いや見渡す限り広がっている。たくさん沢山。

 いわば、()()()()()()()()()だった。

 

 足を動かし、一歩を踏み出せば、その足元から踏んず蹴られた顔達の「ぎゃっ!?」とか「あ゛ぁ!?」とかの悲鳴。

 ただでさえ醜い顔が、さらに憎しみに染まるという、マリオもビックリのグロいステージ構成。

 こんなトコ、たとえピーチ姫を助ける為にだって、来たいとは思わないだろう。

 

 そして、空は黒一色。星ひとつ見えない真っ黒な夜空。

 だが月だけは()()()()()()()輝いており、僅かながらこの場に光源をもたらしている。

 それが無かったら、とても歩くことは出来なかっただろう。……まぁこのグロテスクな人面床を見ずに済んだので、一長一短という感じだが。

 

「心象風景……心の闇とか言ってたかな、セキゾノフさんは。

 これが、あのおっぱい大きい銀髪ねーちゃんの……闇。

 “カノジョのセカイ”ってヤツかよ」

 

 何個ある? もう数える気すら起きない。

 たとえ美星町の全員が集まろうとも、この眼下に広がる人面の数には、遠く及ばないだろう。

 男、女、老人、赤子、わいと同じ年頃のヤツ……。

 様々な、だがどれもが苦痛の色に染まっている。生気の無い灰色、()()()()

 

 つーか――――いったい何人殺したんだ?

 ふとP氏の心に、そんな疑問が湧く。

 誰がとも、何でとも思わず、ただただ“何人”と数を問う想い。

 

 いったいどれほどの労力と、時間と、意思があれば、これだけの事が出来るんだろう。

 P氏には、これが一人の人間がやったモノだとは、到底思えなかった。

 

「とてもやないが、こんなトコおれんわ……。

 ちょっと失礼しますよォ。あーゴメンネゴメンネー!(軽)」

 

 ワケも分からぬまま、歩を進める。

 何かを探し、どこを目指すでもなく、とにかくこの場から動く。

 それが最良。こういう場合、同じ所に留まっていても、良い事なんて起きないのだ。

 どっかの漫画で仕入れた知識を頼りに、凸凹した歩きづらい人面の大地を、ひたすらヨチヨチと進んでいく。

 この無惨で物悲しい光景にも、きっと果て(オワリ)があると信じて。

 

 

 

「おん? あーそうそう! こういうのですよォ!!

 気がききますねェ! ナイスゥ!」

 

 やがて歩く内、P氏は遠く前方に、白い大きな建物があるのを発見。

 喜び勇んで、犬のようにそちらへ駆けて行く。「おっしゃー!」って感じで。

 

「なんか……あの周辺だけ、光に包まれとる。

 これがRPGとかなら、セーブポイントなんやが(ゲーム脳)」

 

 建物だけじゃない。その周辺だけが、天から差し込む光に覆われている。

 あたかも、その一帯の土地だけが、神の恩恵により邪悪から守られているかのように。

 それは、孤独の中で抱く、たったひとつの希望。

 真っ暗闇で光る、お星さまの輝き。

 いや、耐え難い苦しみの中でも感じる、大切な思い出のぬくもりように……。

 

「ま! なんか()()()()()()()()ですけど!(爆笑)

 でもこの際、文句は言えませんねェ! ――――かいもぉぉぉおおおーーん!!!!」

 

 なんとその叫びと共に、ゴゴゴッと音を立てて、城門がひとりでに開いた。

 これを怪しいとか、警戒するとか、なんでこんなトコに城があるんだとか……そんなのは一切考える事なく、P氏は躊躇なく突貫。城に駆け込み、扉をバタンと閉める。

 ようやくあの狂った風景と、不快な淀んだ空気から開放され、「えがったえがった」一息ついた心地だ。

 

 いまP氏の眼前には、世界ふしぎ発見で見たような、豪勢で広いエントランスがある。

 正面の巨大な階段や、よく分からん芸術的な彫刻、美しい模様が入ったクソでかカーペット。

 もうまんま「お城!」って感じの、お姫様に憧れる小さな女の子が思い描いてそうな、西洋風の広間であった。

 

「おうわいやー! マスターPが来たやでー! 出てこーゥい!!」

 

 

 勢いよく、大股で、我が物顔で。

 マスターP氏が元気に侵入して行った。敵の本拠地へと。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「いらっしゃいませ。ようこそお越し下さいました♪」

 

 歩き初めて30秒としない内に、とても朗らかな声を聞く。

 明るく、優しく、どこかこちらを「ほっ♪」と安心させるような、柔らかいご挨拶。

 有り体に言えば“行き届いてる”って感じの。

 

「……お前っ! あん時のねーちゃん!?

 おっしゃい! ここであったが100年m……

 

「ささ、どうぞこちらへ♪ こういった所は初めてですか?」

 

 ドスドスと足音を立てながら、そちらに詰め寄って行くも、なしのつぶて。

 いま目の前にいるラスボス(らしき女)は、ニコニコと人当たりの良い笑顔を絶やさぬまま、こちらの言葉を遮る。

 あたかも我関せず……いや“接客マニュアル”の通り、と言った様子で。

 

「ではP君さま、こちらの()()()をご覧くださいませ」

 

「おん?」

 

 ここはまるで、何かのお店の()()のような場所。

 二人の間を遮っているカウンターらしきテーブルには、いま爆乳ナイチンゲールこと力石さんが「どうぞ」とばかりに差し出した、メニュー表らしき物が置かれている。

 ちょうどファミレスなどの飲食店であるような、カラフルで見ているだけでワクワクするようなデザイン。

 

「まずはこちらから、()()()()()()()をお選びくださいませ♪

 いま空いているのは、この辺の子達になりますね。どの子もカワイイでしょう?」

 

「ッ!?!?!?」

 

 だが、そのメニュー表の一番上部にデカデカと表示されているのは、()()()のお写真だった。

 目元を手の平で覆い(目隠しをして)、床にペタンと女の子座りをしている。しかもセクシーな下着姿だ。

 ――――えっ! どの子もメッチャ可愛いじゃん!! めっちゃレベル高いじゃん!!

 マスターP氏は「カッ!」と目をひん剥きながら、そんな事を思った。

 メニュー表にゼロ距離まで顔をくっつけ、まじまじと見つめながら。

 

「この子はSMがOK。この子は赤ちゃんプレイなどが得意ですね。

 そしてこの子は“AF”が出来ますけれど……、これにはその日の体調などもありますし。お望みならご確認しますわ♪」

 

「――――AFって何!? アームズフォートすか?!(フロム脳)」

 

 わいの知らん言葉キタ! 何なのソレ!? 

 でも知らないのも無理はない。だってマスターP氏はまだ17才。()()()()()に来るのは初めてなんだから!(意味深)

 

「え、えっと……じゃあこの子で(小声)」

 

「はい♪ この真ん中の子ですね。ありがとう御座います♪

 この子は今日入った新人で、先ほど来たばかりですので、ちょうど良かったですわ。

 女の子に準備をさせますね♪」

 

 とりあえず、ETが指を合わせる時のように、そぉ~っと恐る恐るメニュー表を指さし、希望を伝える。

 一瞬、「店員さんにわいの好みがバレる!?」と心配になったが、眼前の女はニコニコと笑みを崩さず、微塵もこちらを変に思っている様子は無い。どうやらいらぬ心配だったようだ。

 P氏は改めて「めっちゃ行き届いてるな……」と感心。さすがはプロの人やでぇ。安心。

 

 ちなみにP氏が選んだのは、この中で一番おっぱいの大きい、ほわほわ系の優しい雰囲気がある、緑髪セミロングの女の子である。

 この子めっちゃエロいやないかい! 優しくリードしてくれそうやん! うひょー☆

 

「こちら有料オプションにはなりますが……この子は()()()()()()()()()()()()()

 犬耳と首輪をつけた主従プレイも、痴漢プレイも、AFでも。

 どうぞ貴方色に染めてあげt

 

「――――いや普通で!!!!

 わい今日が初めてなんで、普通のヤツで!!(膝ガックガク)」

 

「では無料オプションとして、P君さまの()()()()()を着させる事、そして()()()()()()にさせる事も出来ますが、如何いたしm

 

「――――スク水で!! いわゆる“旧スク”でオナシャスッ!!(迫真)

 あとすんまそん、ポニテとかも出来ます?

 水泳なのにギャルゲーみたいなリボン付けているという、非現実感をですね(にじり寄り)

 あと中に“しまパン”穿いてくれたら、マトリョーシカみたいでお得!(美星のエジソン)」

 

 脊髄反射で即答。マスターP氏の大声が、受付カウンターに木霊する。

 たとえ初めてであっても、言うべき事は言うタイプであった。

 いや“はじめて”というのは、あくまでこういったボス戦とかの事であるが。他意は無い。

 

「お時間の方はどうなさいます?

 60分コースから、丸一日独り占めコースまでお選び頂けますが」

 

「あ、時間多い方がお得なんスね。じゃあ思い切って、丸一日で」

 

「ありがとう御座います。きっとこの子も大喜びですわ♪

 ではお先にお会計、10万1700円になります」

 

「あ、ハイ。ちょっと金おろしてきて良いすか? ここらへんATMあります?」

 

 いそいそと受付の端っこにあるATMへ。

 艦娘たちを養っている身であるというのに、躊躇なく生活費をつぎ込む。

 

「では準備をさせますので、あちらの待合室にて、お待ち頂けますでしょうか。

 漫画本やゲームなどもご用意しておりますので」

 

「あざっす。いや~楽しみだなぁ。胸がワクワクするなぁ」

 

 わいこういうの初めてだけど、ボス戦ってこーいうモンなんだね! 自分の好きな敵を選べるシステムなんだな☆(思考放棄)

 主人公やってて良かった、ここに来て良かった、最近の悪党は随分気が利いてるなぁ~とか思いながら、P氏はイソイソと指示された待合室へ。その足取りは弾むように軽い。

 

 あたかも、もう暁やHitomiの事なんて、忘却の彼方であるかのように。

 そんなこと無いと思いたいし、「もう全部どーでもいーや♪」みたいに思ったりもしてない筈だ。きっと。

 

 これ別に浮気とか責任とか関係ないヤツだし、ぜんぜん大丈夫ですよね? ただのサービス業……いやボス戦っすからコレ♪ ――――間 違 い な い(真顔)

 そんな風にP氏は、ルンルン気分でスキップをしながら、力石さんに指示された部屋に向かったのだった。

 

 

 

 

「……ふぁ? なんすかココ……」

 

 そして、ガチャリと扉を開けて待合室に入室したマスターP氏。

 とりあえず置いてあるソファーに腰かけ、テーブルの上に並んでいた爪切り(※大切なエチケット)をひとつ手に取って、パチパチと何気なく爪を整えていたのだが……。

 

「空気が重い(確信)」

 

 小綺麗な部屋だ。清潔だし、壁紙も明るいし、漫画本がたくさん並んでいる棚や、TVゲームなんかも備わっているし。

 けれど……この待合室にただよう空気は、まさに()()()()()

 もうお通夜とか目じゃなくて、アウシュビッツもかくやという絶望感が漂っているのだ。

 

「っ! っっ!」ガタガタガタ!

 

「ふぅっ! ふぅっ! ふぅっ!(過呼吸)」

 

「…………(無呼吸)」

 

 ちなみにこの場には、大きなクマのぬいぐるみ達が(きっとこの世界の住人なのだろう)、P氏と同じく順番待ちのために、何人も待機しているのだが……。

 でもその誰もが、この後に自分が行うであろうプレイ(意味深)の事を思い、その身から凄まじい緊張感を発しながら、ケータイみたくガタガタ震えているのだ――――

 

「ついに、ついにぼくも……この時が!(白目)」

 

「コワイ……! コワイ……! コワイ……!(俯き)」

 

「ノウマクサマンダー、バサラダンカン。ノウマクサマンダー(祈祷)」

 

 よくよく見れば、この場にいるのは皆、()()()()()()()()()()()ばかりだ。

 きっと人気無いだろうし、誰かに好かれたり、女の子に手に取ってもらった経験など、人生で一度も無かったに違いない。

 

 そんな彼らが今日、()()()()()()一念発起を果たし、このお店ちっくな城へと足を運んで来た。

 自分を変える為……これまでの自分と決別すべく。そして「もうここで済ますしか無い」という、謎の諦観を以って。

 男にとって凄く不名誉な“ナニカ”を捨て去るべく、今この待合室で「深爪しちゃう~!」ってくらいに爪を整えながら、じっとその時を待っているのだ。

 

 これは余人には想像するしか無いのだが……、いま彼らの胸にのしかかっている不安や恐怖は、いったい如何ばかりか?

 未知の行為への恐怖……。自分はブサイクだからという悲観と、全部お金で済ませちゃうという敗北感……。でもぼくにはもう無理なんだという諦め……。

 そして「これから本物のおっぱい見れる」という、これまでの人生で感じた事がない程の、期待感。

 それらが全部ごっちゃになったような感情が、いま彼らの顔を、どんより曇らせているのだった。

 

 だって今日という日は、彼らにとってまごう事なき“人生の岐路”であり、また一生忘れられないであろう、大切な大切な“記念日”となるのだから――――

 そりゃー緊張だってするし、ガクガク膝を震わせもするってモンである。

 

「ごめん! お母ちゃんごめん……! こんな息子でっ……!」

 

「負け犬がなんだっ! 俺は捨てるっ……! もう決めたじゃないかっ!!」

 

「お金も払ったろ! いったい何が悪いって言うんだっ!

 ぼくはッ……! ぼくはッ……!!」

 

 

 ――――地 獄 や な い で す か(驚愕)

 悲しいクマさん達が醸し出す、なんとも言えない切ない雰囲気に、P氏は涙が出そうになる。

 一応この場には、なんか良さげなBGM(有線の音楽)もかかっているのだが……それもガン無視するかのように、みんな自分の世界にブツブツ閉じこもっている。まったく場の空気を緩和出来ていなかった。

 せっかく用意してくれてるのに、誰も漫画なんか読んでないし、ゲームもしてない。

 

 本当は、せっかく誰かと居るんだし、P氏的には「どんな子を選んだんスか?」とか、「好きなコスプレは?」とか話しかけて、お喋りに花を咲かせたいのだが……。

 でもとてもじゃないが、クマさん達はそんな雰囲気ではない。いま彼らの顔は、死刑執行当日の受刑者みたい。

 

 誰もが皆、愛されるために生を受けたハズなのに……一体どこで差が付いてしまったのだろう?

 そんな無意味なことを哲学せざるを得ない程、この“待合室”というヤツは、いたたまれない感じの空間であった。

 

 きっと試合前のボクサーだって、こんな悲壮感ない。

 ここは決して、自分のような陽キャが来ていいような場所じゃない――――“覚悟の間”なのだ。

 

 わい初めてだわこんなの(白目)

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「 くそっ! なぜ入れないの!? 」

 

「 提督ぅぅ!!!! 」

 

 オートマタ( 天使たち )の掃討をあらかた終えた、深夜の公園。

 今この場には、流たち美星町の戦士達に加え、ようやく修理を終えて美星町に帰還して来た30名もの艦娘たちの姿が。

 

「行かなきゃ駄目なのにっ……! 守らなきゃいけないのにっ……!」

 

「私達は艦娘なのっ! 提督の所に!! おねがいっ……!!」

 

「これじゃ……私達はいったい何の為に! P提督ぅぅーーッ!!!!」

 

 魔法陣のような模様が描かれた地面から、天にまで届く光の柱が上がっている。

 それは自分たちの提督であるP氏が飛び込んだ“ゲート”であり、その事をこの場の者達から聞かされた艦娘たちは、誰もが躊躇なく体当たりを敢行。彼の下へ駆けつけようと。

 

 しかし……これは闇の者が作った、余人を拒む不可侵の扉。

 他者を拒絶する心の闇(イセカイ)への入口だ。

 どれほど体当たりしようと、また無理をおして砲撃を打ち込もうと、その悉くが弾き返された。

 まるで彼女達の無力さ、そして哀れさを、痛烈に突き付けるかの如く。

 貴方たちの提督は貰った。彼は私のモノよ――――そう艦娘たち( 他の女 )に示しているかのように。

 

「危ないって! もう止めとけよッ! あの人なら大丈夫だって!!」

 

「イヤァァアア! 離してぇぇ!! 提督ぅぅぅうううーーッッ!!!!!」

 

 勝也を始めとする、この場の心ある者達が、彼女らを止める。時には羽交い絞めにして抑えつける。

 だが彼女らの動きは制すことが出来ても、その慟哭が鳴り止むことは無い。

 今この公園には、どこもかしこも、いたる所でこのような光景が繰り広げられている。

 

 ゲートに拒まれるばかりか、凄まじい衝撃を伴って、何メートルも吹き飛ばされる。

 これに触れようとした者達の身体は、視覚化出来るほどに強力な黒い電気のようなモノが、バチバチと纏わりついており、その身に強烈な痛みを与えているのが見て取れた。

 

 ある者は気絶し、ある者は地面に身体を打ち付けられて負傷。ひとたびこのゲートに触れれば、只では済まない事など、もうこの場の誰もが重々承知している。

 けれど、艦娘たちは決して諦めようとせず、やがて力を使い果たすか、気を失うかする時まで、慟哭その物である動きを止めることは無かった。

 まあぶっちゃけ、いま君たちの提督は、風俗行ってるけども。

 

 

 

「――――ふむふむ。かの者が作り出した、“心象風景の具現”ですかぁ」

 

 

 しかし。ふとこの場に……。

 

 

「闇の住人だか何だか、知りませんけどぉ……、陰キャ具合では負けませぇん。

 私は生まれついての、かわいそうな子(ダークヒロイン)――――日陰者を生業としておりますぅ♪」

 

 

 さりげなく流の足を「むんず!」と踏んづけて、()()が姿を現す。

 

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「うん、予想はしてたんよ。……どうせこんな事じゃねぇかって」

 

 受付でキーを受け取り、喜び勇んで指定された部屋に向かったP氏。

 

「ウホw いらっしゃいパパw ウホホホww」

 

「おうHitomi……、元気そうで安心したぞクソが」

 

 ――――【悲報】風俗行ったら、スク水のゴリラが出てきた【わいの娘です】

 そんな絶対クリックしないタイプのスレタイが、ふとマスターP氏の脳裏に浮かんだ。

 

「ウホホwww さぁパパwww

 お風呂にする? バナナにする? それとも……ゴ・リ・ラ?(うざいテンションで)」

 

「育て方を間違えたかなぁ。

 いや……コレはわいへの天罰か? なぁゴッドよ」

 

 天を仰ぎ、「アンタ残酷やなぁ」とか思いつつも、ちゃんと己を省みる主人公の鑑。

 いやぁ~、悪い事は出来ないもんだぁ! 世の中うまい事できてんなぁチキショウ! と反省。ちょうど猿のように。

 

「抱いてみたら良いと思うウホ。

 なんでも試してみたらいいのウホ」

 

「いつもの“わよ”が、ウホにすり替わってやがる……。

 でもあんま違和感ない! 不思議っ☆」

 

 無茶苦茶言いよんなぁこの子、とか思いつつも、冷静に対処。

 旧名Hitomi(現Hanako)がウホウホ言いながらチューしようとしてくるが、顔をグイッとやって押しのける。

 ちなみにだが、今この子が着ているのは旧スクであり、胸に縫い付けられた白い所には、ちゃんとひらがなで「ごりら」と書いてあるのだ。

 せめて名前書けバカ。

 

「そ、そんなっ……!(ガーン!)

 あたしのこと抱けないって言うの!? 娘だから……?」

 

()()()だからだよ(キッパリ)

 せめて正気に戻れ下さい。それからだぞ話は? 頼むよ頼むよ~」

 

「えっ……。でもパパお金払ったよネ? 10万1700円。

 もったいなくないカナ? ちゃんと中にしまパンも穿いたヨ?」

 

「おぅ、()()()()()()()()()

 これも勉強代だと思って、今月はモヤシ食って過ごす。一袋30円」

 

 さらばPFCバランス。腹が膨れりゃとりあえずOKの精神だ。致し方なし(血涙)

 まぁこれ、艦娘たちやランカから見たら、ぜったい「自業自得!」って言われるだろうし、なんか怒られずに済んで良かったまである。よくよく考えたら、Hitomiに救われた形なのかもしれない。流石はわいの娘。

 

「さぁ帰んぞHitomi。早くお家かえるべ。みんな待っとるから」

 

「――――やっ! 嫌なのわよっ!

 これでもプロわよ! この商売とゴリラキャラで、身を立てていくのわよ!

 エッチしてくれるまで、ここを動かんウホ! 抱けウホわよ!」

 

「混ざってる混ざってる。

 お前はホント~に、めんどくさい子だなぁ(しみじみ)」

 

 手をぐーっと引っ張るが、今も「いやいや!」と首を振る彼女は、もう微塵も動く気配が無い。筋力が高すぎるのだ。

 流石はゴリr……いやHitomiである。どっちも同じだとか言ってはいけない(戒め)

 

 とりあえず、この度【スク水ゴリラ】という新しい言葉が、めでたくこの世界に誕生した。

 某オネショタ小説の投稿者いわく、創作活動とは“新しい価値観の提示”であるらしいので、今回はそれで良しとしようではないか。

 

 

『そんなこと言っても良いの? ――――P君』

 

 

 突然、女の声。

 Hitomiとは別の。

 

『部屋の奥を見てごらんなさいな。

 なにか大切なモノがある事に、気付かない?』

 

「ッ!? あ、ありゃあ!!」

 

 力石だ。

 彼女が今、客と嬢以外は不可侵のはずのプレイルーm……いやこの部屋に立ち入り、なんかタンス(高い所)からこちらを見下ろしているじゃないか! あたかもラスボスの雰囲気を漂わせて!

 そして、ヤツに言われるがままに、部屋の奥へと目線を向けてみると、

 

「あ……暁ィ!!!! テメェらぁぁぁあああ!!」

 

 まるで街角に立つクリスマスツリーのように巨大な、笹の葉。

 沢山飾られた、色とりどりの短冊。その中心に埋もれるようにして、暁の姿があった。

 手足を縛られ、磔にされたキリストのように、ぐったりと頭をうなだれて。

 意識を失っている。

 

 咄嗟に駆け寄ろうとするP氏。だがその行く手をHitomiが阻む。

 手を横に大きく広げ、通せんぼ。

 その目にはもう、先ほどのように光は宿っていない。……意識を支配されている!

 

「そんなに怒るなんて、よほど大事な子なのね。

 少し妬けちゃうな……」

 

 ふわりと宙に浮かび、スタッとこの場に降り立つ。

 力石がP氏と対峙。まっすぐその目を見つめる。

 

 

「――――さぁP君、()()()()()()()()()()

 でなければ、その子の命は無いわよ?」

 

「 なんだその条件!? コレ最終決戦だぞ!!!!! 」

 

 

 これが無駄に長く続いたマスターP氏の物語の、()()()()()()である。

 綺麗な構成や起承転結など、犬に食わせろである。――――これがお前の物語だ(真顔)

 

「ウホホw ウホw ウホホホwww」キャッキャ!

 

「ほらHitomi( ゴリラ )も喜んでるわ。準備万端じゃないのP君。早くしてよ」

 

「いい加減にしとけよアンタ!?!?

 つかお前、ホントに見てぇのか!? ゴリラ(娘)とチュッチュしてるわいを!」

 

「いや、どちらかと言うと……、()()()()()()()()()()()()()()

 ムキムキにしたのも、腹筋バキバキなのも、ゴリラインストールもそう。

 これでもHitomiを愛せるんなら、貴方の勝ちよ。潔く白旗を上げるわ……。

 でも貴方が、私以外の女に優しくしてる所なんて、見たくはないのよP君」

 

「お 前 が 分 か ら ね ぇ !!!!(迫真)

 包丁持って突っ込んで来たランカが、今はヒヨコに見える! すげぇなアンタ!?」 

 

 サイコパスの思考など、常人に理解出来ようハズもないのだ。

 けど彼女は先天的じゃなく、色々あって歪んでしまった方なので、同情の余地はあった。

 本来はとても優しい子だったのに、どうしてこんな事に……。

 憎むべきは、このセカイなのだ! 変態その物ではなく!

 

「P君は知らないだろうし、()()()()()()()()()()……。

 遅くなったけど、ここで自己紹介をさせてね?

 私は爆乳ナイチンゲールこと、力石さん。

 本名は力石・ノースカロライナ・徹子よ」

 

「 ノースカロライナどっから出てきたよ!?

  お前どーみても、ポン人じゃねーか!! 」

 

「それじゃあ、とりあえずこの子への愛は、そんなモンだったという事でね(閉廷)

 やっておしまいなさい――――Hitomi」

 

「ッ!!!???」

 

 

 先ほどまでの空気が一変。

 瞳孔を開き、目の色が変化したHitomiが、P()()()()()()()()()

 

「やっ、やめろバカタレ!! わいが分からんのかっ……!?」

 

「その通りだよP君♪ この子は私のパペット♪

 忠実に命令を実行するだけの、()()()()の化け物でしかない。

 私が作ったの」

 

 きっと、まともにケンカなどした事は無かった。Hitomiはとても優しい子だから。

 けれど今の彼女は、真の意味で“人が変わっている”。

 野生動物を思わせる鋭い踏み込み。そこから幾度も繰り出される拳、脚、膝、腕、肘。

 決して洗練された動きではないが、パワーと速度が桁違い。

 いくら北斗神拳を習得したP氏であろうとも、気を抜けば一瞬でやられる。それほどの戦闘力。

 

 スクール水着がはち切れんばかりの胸、剥き出しになった眩しい太もも、女性らしい丸みをおびたヒップ。

 だがそんな事に、気を取られている余裕は無い。

 色香で惑わすのは、クノイチの常套手段なのだろうが、P氏でなければ視界に留める事も困難なスピードなのだから。

 

 その速度が生み出す打撃の破壊力など、もう言わずもがな。

 ガードをしたハズの腕が削れ、鮮血が霧のように飛び散る。

 とてもじゃないが、いつまでも受けきれるような甘いレベルじゃない。

 伝え聞いていた通り、その見た目以上に――――Hitomiは強い!!!!

 

「ぐっ……!!」

 

 あまりの猛攻と、その驚異的な戦闘力に、思わず手が出そうになった。

 Hitomiの拳を躱した瞬間、そのがら空きの顎にカウンターを入れそうになった。

 けれどP氏は、すんでの所でその動きを止める。

 

 そして、無理のある動作をしたツケを、その場で支払う事となった。

 身体を硬直させたその隙を逃さず、Hitomiの蹴りが腹に叩き込まれる。

 耳を疑うような重い打撃音、そして骨が砕ける鈍い音。

 

「そうそう♪ 女の子には優しくしなきゃね♪

 ヒーローって、そういうモノでしょ? いえ、パパだったかな?」

 

 吹き飛び、壁に激突。

 倒れ伏すP氏に向かって、力石が楽し気に語り掛ける。

 

「安心してP君? 貴方をやっつけ終わったら、()()()()()()()()()()

 P君を傷付けた悪い子なんて、そのままにしておけないよ。

 ちゃんと私の手で、責任を以って潰すね? ――――憎悪を込めて殺すわ」

 

 自分がやらせた、これは命令した事。……きっとそんな事は、力石には関係ない。

 いや、()()()()()()()()()()。誰のせいだとか、誰が悪いとか。

 彼女にあるのは「自分にとって都合が良いかどうか?」という、それだけのシンプルな思考。判断基準。

 

 P君を傷付けたヤツは殺す――――

 私に嫌な想いをさせたヤツは、それだけで“悪”――――

 

 理由は必要ない。それ以外ない。

 かつては確かにあった筈の、倫理や、道理や、常識など、もはや彼女の中には存在しない。

 むしろ、それらは上手に()()()()()に使う、ただの道具や方便でしかなかった。

 

 長い長い時を経て、そう()()()()()()()()

 この女はもう――――狂っている。

 

「ぎっ……!!??」

 

 P氏の身体が持ち上がる。

 Hitomiが彼の首を両手で締めあげたまま、ゆっくりと頭上へ掲げる。

 この子の剛力、人形のように色の無い目、彼女らしからぬニタリとした嫌らしい笑み。

 その全てに驚愕し、受け入れがたい想いが胸をよぎる。どんどん顔がうっ血し、脳に酸素がまわらなくなる。

 もう物を考えることが、意思を保つことが、出来なくなっていく……。

 

「心肺蘇生はお手の物。

 これでもナースよ、安心してねP君。おだいじに」

 

 その言葉とは裏腹。今もP氏を攻撃しているヒトガタを、呪い殺さんばかりに睨んでいるという二律背反。決して自覚のないムジュン( 歪さ )よ。

 P氏の胸に、怒りよりも先に、()()()()()()()()が湧く。

 こいつは何なんだ? 一体どうしてこんな風に。あんなにも可愛い子なのに……と。

 

 そして、ついにP氏の視界がブラックアウトし、意識がだんだん遠くなっていく。

 これまで必死に抵抗を続けていた腕が、カクンと力なく落ちようとした……その時。

 

 

「――――やめてぇぇぇえええええっっ!!!!!!」

 

 

 暁だった。

 

「ふんぬっ!」ブチィ!

 

 縄を引きちぎる。瞬間的に艦娘の力を引き出して。

 海ならいざしらず、陸でそんな事をすれば、身体へ負荷がかかる事は免れない。

 だがそんな事も気にせず、一気に拘束を逃れ、括られていた巨大な笹から降り立つ。

 苦し気にハァハァと吐息を漏らしながら。

 

「どうしてHitomiさん……? なんでっ……?!」

 

 いま眼前にあるのは、HitomiがP氏の首を締めあげている姿。

 たとえ目にしていようとも、それがどうしても理解出来ず、彼女は狼狽えながら声を漏らす。

 

「あら、お目覚めねおチビちゃん。

 無駄よ、その子はもう、貴方の知っているHitomiじゃないの。

 ただのキリング・ゴリラよ」

 

 ゴリラはともかくとして(まじめな雰囲気なのでスルー)、まだ幼い暁は、力石の冷たい声にも全く反応をみせず、P氏を殺そうとしているHitomiの方を、ただただ見つめ続ける。

 

「う゛っ……! うぅぅぅうううーーッッ!!!!」

 

 チラリと暁の方を一瞥。だがHitomiはすぐに、腕に力を込め直す。

 ギリギリと音が鳴るほど。P氏の首をへし折らんばかりの力で。

 

「やめてッ!! どうしてそんな事するのッ……!?」

 

「っ!!??」

 

 だが、再びこの場に響く、大切な子()の悲痛な声。

 

 

「――――よく見てよッッ!! 私をッッ!!!! Hitomiお姉ちゃん!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Hitomiの動きが、止まる。

 暁の顔を見つめ、時が止まったみたいに……。

 

 

「……パパなんだよ……!? お姉ちゃんのパパっ!!

 忘れちゃったのッッ……!!!???」

 

 

 暁が目を潤ませ、ポロポロと涙を流している。

 声が掠れるほどの絶叫。だがまっすぐにこちらを見つめ、語り掛けている――――

 

 

 

「……っ!」

 

 その途端、Hitomiの脳裏によぎる、()()

 

 一緒にお風呂に入った。

 オムライスを作って貰った。

 アバラ折れてるのに、抱きしめてくれた。

 

 心にある後ろめたい物を、訊かないでいてくれた。

 言いたくなったら言えと、待っていると、強く信頼してくれた。

 

 キスをした。攫おうとした。たくさん悪い事をした。

 でもいつも「ガハハ!」と笑ってた。

 その海みたいにおっきな心で、器で、あたしの居場所を作ってくれた。

 

 抱えきれないくらいの愛で……あったかく、包んでくれた。

 

 

 

 

 

 

「――――パパ???」

 

 Hitomiの目が、

 

「……っっっ!! パパァァーーーーーッッ!!!!」

 

 今、()()()()()()

 

「まさかッ! ……そんなッ!?!?」

 

 力石の驚愕の顔。

 だがそんなモノに、Hitomiは見向きもしない。

 

「パパッ……! パパァーーッッ!! ああああああッッ!!!!」

 

 泣く事に、抱きしめる事に、夢中だったから。

 力いっぱい、パパの胸に縋りつくのに、とても忙しかったから。

 

 ようやく会えた。寂しかった。辛かった。

 でもここに居てくれた。あたしを迎えに来てくれたんだと、子供のように泣きじゃくる。

 

 それに答えるように、P氏も力なく片目を瞑りながらではあるが……そっと抱き返す。

 この子を安心させてやるように、そっと包み込むようにして。

 

 

 乗り切った、……いや“打ち破った”のだ。力石のコントロールを。

 Hitomiが今、失われたはずの自我を取り戻し、泣き顔ではあるけれど、元の愛らしい顔を見せている。

 だが……。

 

 

『――――ひぃぃぃとぉぉぉみぃぃぃいいいい゛ーーッッッッ!!!!!!』

 

 吹き飛ばされる。二人諸共。

 突然、二人を切り裂かんばかりの勢いで力石が突進。

 その振りかぶった拳でHitomiを殴りつけ、まるでボールのように何メートルも飛ばす。

 轟音を立てて壁に衝突し、そこに生々しいヒビを入れた後、ぐったりと床に倒れ込む。

 

『 逆らうのかッ!! ヒトガタの分際でッ!!!!

  お前は私が作ったのッ!! なぜ逆らうッ!!

  ――――忘れてしまえッ!! そんなクダラナイ記憶などッ!! また消してやるッ!!!!! 』 

 

 胸元から機械を取り出し、怒りに任せてスイッチを押し込む。

 その途端、この場の者達にも見ることが可能なほどの強烈な電撃が、Hitomiの身体を襲う。

 身体が仰け反るほどの激痛、身体がバラバラに砕けそうな程の衝撃。

 喉が破れんばかりに叫ぶHitomiの悲鳴が、何秒も何秒も、あたりに木霊する……。

 

「……そうそう、いい子ねHitomi。それで良いのよ♪」

 

 やがて雷撃は止み、糸が切れたように倒れ伏す。

 だがHitomiは即座に、何事も無かったみたいにムクりと起き上がり、生気を感じない機械的な仕草で、力石に向き直った。

 未だカクンと首をうなだれたまま、まるで繰り人形の如く。

 

「さぁ、P君を捕らえなさい。

 いえ、それよりも、あの生意気なガキを先に殺……」

 

 それを言い終わる前に、衝撃――――

 

「……ッ!!?? ……ッ?!?!?!?!」

 

 ()()()()()()

 一息に飛び込み、野球のピッチャーのように振りかぶった腕が、袈裟斬りに力石の胴体を切り裂く。

 

「ひっ……Hitomiぃ! お前ぇぇぇええええええええええッッ!!!!!!!」

 

 絶叫。今日聞いた誰の物よりも大きな、怒りと憎悪に満ちた。

 けれど……。

 

 

「貴方は貴方、あたしはあたし……()()()()

 

 

 その狂気に満ちた、おどろおどろしい声を、まったく意に介す事も無く、Hitomiが静かな顔で告げる。

 

 

「ごめんね? “ちいさな織姫さん”。

 あたし、パパと居たい……。ずっとこのままでいたいの」

 

「みんなと暮らす。また美星町のみんなで、バーベキューをしたい。

 ハロウィンをして、お正月を祝って、桜を見て――――短冊にあたしの願いを書きたい」

 

 

「だから、貴方の言うことは聞けないよ。

 ここには居られないの――――」

 

 

 

 こんなひとりっきりの、真っ暗なセカイじゃなく、お日様みたいにあたたかな美星町に。

 

 あたしの居場所はココ。パパの隣わよ。

 そうHitomiは、ニコッと微笑んだ。

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 

「ひっ……Hitomiッ!? Hitomiィィィイイイーーッッ!!!!」

 

「お姉ちゃんッッ!!??」

 

 P氏の叫び。そして暁の。

 感情の窺えない無機質な顔をした力石が、手元にあるボタンをおもむろに押し込んだ途端……Hitomiがバタリと倒れた。

 こちらにも聞こえるほどの爆発音が、ちょうどHitomiの()()()()()()から、大きく轟いてから。

 

「バカが。この出来損ないめ……」

 

 つまらなさそうに一瞥した後、背を向ける力石。

 あたかも、踏み潰した汚らしい虫の死骸から、目を背けるみたいに。

 

 

「…………パパ?」

 

 仰向けに倒れたHitomiのもとに、マスターPと暁が駆け寄る。

 ボロボロと涙をこぼしながら、この子の顔を覗き込み、必死に名前を呼ぶ。

 いま、力なく身体を床に横たえ、今にも命の灯が消えそうなのが見て取れるほど、弱々しい姿の彼女を。

 

「パパ……ごめんネ、あたしひどい事しテ……」

 

「な、何言ってやがる! わいは全然ヘッチャラですしおすし!? ダイジョブですねェ!

 ほら見ろよ見ろよッ! 笑顔ウルトラZやろわいは! 今日もアイアイアイやぞッ!!」

 

 いつものキレが無く、もう泣いているのがバレバレな、酷く震えた声。

 それでも必死に、愛娘に語り掛ける。声をかけ続ける。

 

「あたし……わるい子だったネ。

 みんなを傷付けテ、なのに知らん顔しテ……。

 だからあの人は怒っタ。いっぱいいっぱい泣いてタ……。

 ちゃんと謝るよあたし? たくさんゴメンナサイして、それで……」

 

「Hitomiッ! もう喋んなって……! お口チャックマンやッ!!」

 

「Hitomiお姉ちゃんッッ……!!!!」

 

 Hitomiの瞼が、閉じていく。

 ゆっくり……ゆっくり。でもとても柔らかく、優しい顔で。

 

 

「アカツキちゃん……またバーベキューしようネ?

 今度は、艦娘のみんなも。あのハゲた人も、強い人も、ホリコンさんも。

 あたしみんなと――――――――ずっと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 眩しく、強い光が、Hitomiを包み込む。

 それはこの子の内側から。まるで彼女を構成していた力が、全て外に漏れ出しているみたいに。

 

 

 何度も彼女の名を叫び、縋り付こうとする暁。

 それを押しとどめ、悔しそうに瞼を閉じたまま、ギュッと抱きしめてやるマスターP

 

 この美しいHitomiの最後を、邪魔してはいけない。ちゃんと受け止めなければならない。

 そう無理やりにでも自分に言い聞かせているような姿。

 堪え切れず、P氏が零した涙が、ポタリと床に吸い込まれて、消える。

 

 

 それと同じようにHitomiの身体が消失――――まるで最初から何もなかったみたいに。

 

 あの七夕の日に見た“蛍”を思わせる、沢山の光が天に昇っていき……やがて消えた。

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「よぉ、ノースカロライナ徹子ォ。……命を弄んで、楽しいスか?」

 

 確かにここにあった、命の輝き。

 Hitomiのそれを思わせる“赤い宝石”のような物が、ポツンとその場に残っていた。

 詳しいことは分からない。……だがきっとこれが、Hitomiにとっての心臓にあたる“核”のような物なのだろう。

 

 音も立てず、厳かに地面に膝を付き、それをそっと慈しむように拾い上げながら、マスターPは問う。

 

「命……? おかしなこと言うなぁP君。あれはただのヒトガタだよ。

 貴方も見てたでしょう? 人間はあんな風に死なない。跡形もなく消失したりはしない。

 ばっちぃ血と、不愉快なくらい生暖かい臓物と、バカみたいにモロい骨で出来てるんだもん。

 私は沢山たくさん見てきたから、知ってる♪」

 

 少し離れた場所で背を向けていた力石。

 茶目っ気のある顔でこちらへ向き直り、ふふっと笑う。

 さも当然、何を当たり前の事をと、悪びれもせず。

 

「あの子は……生きとったやろぅがよ」

 

「生きてた? 科学と魔力で動いてただけの、()()()()()

 クダラナイよ。P君って結構、感受性が豊かなんだね」

 

「ざんねん(不合格)

 くだらなくねェさ――――Hitomiは()()()()()()()なんやろ?」

 

 力石の表情が歪む。

 余裕を浮かべていた顔が、はっきり見て取れる程に。

 誰にも見せなかった心の真ん中を、トンとノックされたみたいに……。

 

 

「やってしまいましたねェ(クソデカため息)

 お前さんは、“自分の半分”を殺したやで――――大丈夫か大丈夫か?」

 

 

 怒るでも、突き付けるでもなく、事実を語る。

 見たまま、ありのままの事を、そのまま告げた。

 

「おるのよ、人の痛みが分からんとか、他人の気持ちに共感できんとか……そういうヤツ。

 わいはなんとも思わん、ただ“そうなんだな”って。

 そういうヤツもいるんだな~って、ただ受け入れとるつもりスわ」

 

「漫画の主人公みたく、正論パンチかましたり、無理やり正義を示したり……しとぉない。

 ……ただただ、事実として、()()()()()()()()()()()

 生まれつきとか、疾患とか、トラウマとか、生い立ちとかの理由で」

 

「悪とかじゃねェんスよ。

 そういうレッテルみたいのとは、また別なんじゃねーかな?」

 

 Hitomiの残滓ともいえる赤い宝石を、そっとポケットにしまい、前に向き直る、

 

「ただ……わいは見てて“可哀想”だなって、思う」

 

「知らん間に失ってく……。

 大切なことを学べず、大事だとも理解できない。()()()()()()()()()()

 

「他人の気持ちを考えず、尊重する事が出来ない以上、誰もかれもがソイツから離れていく。

 ソイツの世界っちゅーんは、いつも自分一人だけ。隣に誰もおらん寂しいモンに見える」

 

 あるのは他人に勝つとか、押しのけるとか、利用するとか、欲望とか……そういうのだけ。

 自分では平気に思っとるかもしれんけど、わいから見たらそれ、めっちゃ悲しいヤツっスわ。

 ……そう静かな声で、語り掛ける。

 

 

「ほんでお前さん……、ついには()()()()()()()()()ってワケですねェ。

 わいが今、アンタをどんな風に見とるか……分かるか?

 わいの事が好きなんやったら、わいの気持ちを分かろう考えようって、してくれとるか?」

 

「もしわいが欲しいなら、お前いっぺん、それ当ててみィ。

 シンキングタイム、スタートです(制限時間2秒)」

 

 

 おれんよ、お前とは――――大事にし合えんよ。

 すまんけど、申し訳ないけど、()()()()()()()()()()()

 

 許してくれ、わい正義とかやない。口だけ優しい人にすらなれん。

 こちとら破天荒の、正直者で生きとるんじゃよ。冷たいヤツっすわマジで。

 

 もしわいに力っちゅーモンがあるなら……、それはわいの“大切な人”に使いたい。

 その為にこそ、捧げたい。

 

 お前やないんスわ――――力石よ。

 

 

 

 

 

「 うるさい!!!! うるさいうるさいうるさいッッ!!!!

  P君に何が分かるのっ!?!? ……普通の国で生まれた、普通の子のP君に!!!!!!! 」

 

 激高――――

 

「 言ってごらんよ! 知ったかぶりッ子のP君ッ!!

  眩しくて……、素敵で……、みんなに好かれてるP君ッ!! 」

 

 あ、これ駄目なヤツですね(笑)

 正論パンチせんとか言って、おもいっきりしとるがな……女の子泣かせとるがな。

 そうP氏は白目を剥く。うわぁ……やっちゃった~ってなモンだ。

 ついカッとなってやった。今は反省してる(少年P17才)

 

「 じゃあいらないッ! P君なんかいらないッ……!!!!

  誰もやさしく無い! いい人なんて居ない! 汚いよッッ!

  里の人も、みんなも、P君も、私もォォーッ!!!! 」

 

 “そら来た”……と思った。

 予想は付いていた。絶対こういう展開になると。

 駄々っ子ってゆーのはそういう物。道理も理屈も全てかなぐり捨てて、喚き散らすのがお仕事です(時給850円)

 

 ネット小説を書き続け、これまで散々()()()()()に粘着されてきたP氏は、ただただ全てを受け入れ、白目を剥くばかり。

 

 なんでいつも、上手い事やられへんねやろな……?

 ただ“なぁなぁ”で済ませて、最悪ブロックユーザーしたら良いだけなのに……。

 

 ぶっちゃけ、こんなんばっかりですよ?

 わい、よーお見掛けするんスわ。よー絡まれるんスわ。なんでか知らんが(類友の業)

 

 ハッキリ言うけど、わいが戦場にしてる場所なんてモンは、まぁ()()()()()ですわな。

 こんな闇の世界とか目じゃないってくらい、ドロドロした場所なんよ。

 なんか鬱屈あって物を書いてる人や、人にイチャモン付けてマウント取りたいだけの暇人とか、そんなん腐るほどおるからね?

 むしろ大半ちゃうかな? ちゃんと良識を持ってる人なんか()()()()()

 

 もちろん、これはわいも同じ。わいも含めての事や。フキダマリの住人よ。

 でも……そん中で必死こいて頑張っとるのよ。いつも血反吐はいとるし、身体壊しながら書いとる。

 人からみたらば、金にもならん、原作パクっただけの、ホンマ何の価値もないモンを。

 

 自分からしても、小説を書くことって、「これ排泄行為と何がちゃうんやろか?」って、そう思うからね?

 出すのがウ〇コなのか、それとも日々頭の中にポコポコ浮かんでくる、しょーもない妄想なのか。……違いはそれだけなんスわ。

 

 でも、なんとかちょっとでも輝けんもんかな~、誰が笑かしてやれんもんかな~って、そう思いながらやっとる。

 なんやかんや言うても、これ()()()()()()()()やし。好きでやっとる事よ。だからオールOK。

 

 たまにだけど、感想くれる人もおるし、読んでくれてるっぽい人もチラホラおる。

 そんだけでわいは、充分や。なら今日も頑張れる。

 失敗しても、ドえらい目に合わされても、なんだかんだあっても――――

 

 まぁ……無茶をしすぎて()()B()A()N()()()()()()()()やけども(目逸らし)

 

 

 

 

「 P君なんかッ……! P君なんかにッ……! 私のォォォ!!!! 」

 

 そして、P氏(?)が己の内側に現実逃避している内に、この状況に変化が現れた。

 なにやらハリウッド映画よろしく、この部屋の壁だの天上だのが、ガラガラと崩れだしたではないか。何このお約束? 絵に描いたようなラストバトル感?

 

 あ、これアカンやつですね(確信)

 ……とばかりに背を向けて駆け出し、急いで部屋を出る。

 道すがら、この部屋だけじゃなく、()()()()が崩れている事に気が付き、慌てて更に速度を上げていく。

 あの非モテクマさん共は、今どーしてんだろうな? とか思いつつも。

 

「うん……わいこーゆーの求めてなかったわァ(震え声)」

 

 なんとか城から抜け出すと同時に、建物が全壊。ガラガラドゴーン! ってなモンだ。

 そして……まるでその瓦礫の中から産まれるかのように、ガラガラと音を立てながら()()()()()が姿を現した。

 もうホント、さっきのお城なんて比べ物にならんくらい、物凄いデッカイ“ロボット”が。

 

 

『P君……エッチなの好きだよね? 大好物だよね?

 いつもおっぱいばっかり見てるもん』

 

 スピーカーから発せられる、力石の声。

 そのロボットは、まるで力石という女の子を模したかのように、ちゃんと女の子型のデザインをしている模様。

 

『なら……()()()()()()、好きって言える?

 触りたいんなら、おっぱい触ったらいいじゃん。お好きなだけどうぞ?(はぁと)』

 

 まぁ有り体に言えば……、()()()()()A()()()()()()()(顔面蒼白)

 ちょっとカラーを白に変えて、爆乳になっとる以外は、もうまんまですやんコレ。

 あ、一応頭部はAVのナースキャップみたいに、赤十字のマーク書いとる! 無駄に!(大発見)

 

『でもP君ちんまいし、触る前に踏み潰しちゃうかも。

 もしそうなったらゴメンね?』

 

 殺す気マンマンやないですかヤダー!

 あ、いま誰か“まんまん”って言いませんでした?(エロに食い付く能力)

 この後に及んで、またそんなしょーもない事を考えるP氏。これを現実逃避と言います。本日二度目の。

 

『そだね……いっそあの時、P君を殺しちゃえば良かった。

 そうしたら私、穏やかでいられた。

 殺戮のてぇ~んしーで、いられぇーたぁ~♪』

 

「 お前実は元気だろ!?!? そして古いッ!!!! 」

 

 せめてマジンガー歌ったれ、アフロダイAやろお前。

 そんな事を喚き散らしつつも、P氏は必死こいて逃げる。

 今もドゴンドゴン地響きを鳴らしながら、アフロダイAが「えいえい!」とこちらを踏んづけようとしてるから。容赦無しである。

 足の裏でもいいから、貴方と合体したい……ってやかましいわ。

 

「本日二度目になるが、生身でどーしろってんだボケェェェ!!」

 

『ここは私のセカイだよP君っ!

 なんでも好き勝手に出来る、私だけのセカイなの!

 往生せぇやぁPくんんんん~~ッッ!!!!(ヤンデレ感)』

 

 先ほどのシリアスなど無かったかのように、ただいま力石さん絶好調。嬉々としてP氏を追い回す。

 だが、しかし……。

 

 

「――――本当ですかぁ? なんでも好き勝手にできるとぉ? ()()()()()()?」

 

 

 突然、ゴゴゴゴッっと大気が振動する音と共に、この場に鳴り響いた声。

 

「闇の中にいるのはぁ、貴方だけじゃありませぇん♪

 そして闇の中でも――――()()()()()()()()!!!!!!!!!」

 

 ひゃっふー♪ 不幸き゛んもてぃー☆  ふ・こ・うっ! ふ・こ・うっ!(三三七拍子)

 そう言わんばかりに轟く、()()()()()()!!

 今ビニール袋をハサミで切るようにして、空を大きく縦に割り、その姿を現す!!

 あたかも、闇の住人である力石と、()()()()()()()()次元の壁を割っているかのように。

 

 

「裏秋月・参の遺影(いえ)秘伝――――【逆天の鬼札】」

 

 

 力石のロボに匹敵するほどの、巨大な漆黒の化け物が、発砲スチロールを叩き割るように“空”を破壊し、大気すら震わせるメリメリという音を立てながら、ここ“カノジョのセカイ”に侵入する。

 

 その肩に「アハハハ! ……げほっ! ゲホゲホ!」とか言いながら乗っているのは、眼帯のようにして顔の左半分に包帯を巻いている、東雲であった。

 

「すいませぇ~ん! もっと青汁持って来て下さぁ~い!

 おつむがクラクラしますぅ~!!」

 

「無理すんな東雲っ! お前さっきまで死にかけてたんだぞ!?!?」

 

 その隣に立つポン助に、栄養ドリンクやら青汁やらを渡され、グビグビいきながら術を継続。

 この【逆天の鬼札】という秘伝は、術者の身すら食い殺しかねないほどに危険な術。それはもうエゲツナイ程の身体的な負荷が、いま東雲の身体にも降りかかっている筈。

 けれど彼女は今、まさに絶 好 調 ☆ たいへんご機嫌な様子で、鼻血とか血涙とかを垂れ流しながら「ぐぎぎ……!」と頑張っているのだ。

 うんまじゅい! 青汁まじゅい! もう一杯っ!

 

「あ、この包帯のことなら、心配ご無用ですぅ。

 ()()()()()()()()()()()()()()、テンション上がってる位ですぅ♪」

 

「 不幸慣れも大概にしとけ!?!?

  ジブリのヒロインでも、もうちょっと凹むよ!! 」

 

 仲間であるポン助の苦労は、推し量るにあまりある。きっと苦労人属性に違いなかった。

 そして、とっても元気なかわいそうな子(ダークヒロイン)が、同じ闇の住人である力石の世界を蹂躙する! ここぞとばかりに壊す! 鬱憤を晴らすかのように!(やつあたり感)

 

「ますたーPぃー! こっちを向くポポー!」

 

「えっ……お前さんは、プリキュアさんトコの!?」

 

 あまりに唐突な出来事に ( ゚д゚)ポカーン… としていると、きっと東雲たちと共にやって来たのであろうポルン(※マスコットさん)が、嬉しそうにピョンピョン跳ねながら、マスターP氏のもとへ駆け寄ってくる。

 

「ではいくポポ☆ ――――光のパワーを、受け取れポポー!!」

 

「 やだよッッ!!!!(即答) 」

 

 ポルンの身体から発射された光線みたいなヤツを、スゥエーバックで必死こいて躱す。

 

「なっ……なんでポポ!? ()()()()()()()()()()()()()()()()!!」

 

「たくねーんスよ!! わいパイロットやらせてもーてますやで!?(必死)」

 

「これを避けた人を、はじめて見たポポ! 女の子の夢をなんだと思ってるポポ!」プンプン!

 

「それはすんまそん!! でも分かって下さいポルンさんっ……!!(土下座)

 けしてプリキュアさん達を、悪く言うつもりないんでッ!!

 わい17の男っス! キツイ!!(心の叫び)」

 

 プリプリと怒るポルン先輩に、頑張ってペコペコ。誠意を込めて謝罪。

 

 

「では私の出番ですね提督っ? キラキラッ☆

 ――――グレートマジンガー絶頂(Z)! はっしぃーんッ!!!!」

 

「ッ!!??」

 

 

 そしてまたしてもこの場に轟く、突然登場してきた女の子の声。

 明石ちゃんだ! 工作艦の艦娘であり、マジンガー絶頂のオペレーターも務める彼女が、()()()()()()()()()()()()()、このセカイに乗り込んで来たのだッ!!

 

 

「パイルダーをそちらに向かわせますっ!

 操作は身体で覚えて下さいね! うふ♡」

 

「いつも思うけど、マニュアルは? 訓練とかは?

 わい常にぶっつけ本番やが……ユーザーフレンドリーをプリーズ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここは闇の空間、カノジョのセカイ。

 

 今ここに「パイルダー・オン!(ずにゅ♪)」という、高らかなんだか気が抜けるんだか分からないマスターP氏の声が、雄々しく響いた。

 

 闇を払う日輪の如く――――

 

 

 

 

 

 

 

 


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