【リレー】今日もカオスなもんじゃ焼き 作:リレー小説実行委員会
当作品は【番外編スピンオフ】です♪
この素晴らしいキャラクターを産み出してくれた、砂原さまに捧ぐっ!
※時系列 学際に向けての準備:序(Mr.エメト 作)の後。
「小雪! 元気してるかっ!」
病院のベッドの上。
綺麗な押し花の栞を挟み、読んでいた本をパタンと閉じて、お兄ちゃんに向き直る。
「今日な? 奮発して、お地蔵さまに味噌カツをお供えしたんだ!
もうカツが味噌で浸っちゃうくらい、ドロドロにかけてやったぞ!」
窓から差し込む光が、夕暮れの色に染まる頃。こうして毎日のように、流お兄ちゃんは私の病室を訪れる。
まぁいつも、開口一番になんか不穏な事を言われちゃうんだけど……。
「お兄ちゃん……みそカツってアレ? あの名古屋名物の?」
「そうだ! 佐々木ちゃん知ってるだろ? 俺が働いてる新聞配達所の。
佐々木ちゃん最近、名古屋に旅行に行ってきたらしくてさ?
味噌カツ用のソースを、おみやげにくれたんだよ!」
「そっか。またお礼をいわなきゃね。……でもお兄ちゃん?
たしかみそカツって、すごくかわった味だって、きいたことあるんだけど……。
名古屋の人とかの、なれてる人じゃないと、とてもたべられないってくらい。
ビックリするくらい甘くて、すぐ胸やけしちゃうって……」
「心配すんな小雪! お地蔵様だったら、きっと大丈夫だ!
せっかくだから、もう全部ソースかけてやったよ!」
「えっ。ぜんぶ? ……カツいちまいに、ボトル一本分のおみそを?」
「おう! 沢山かけた方が、ぜったい旨いに決まってるもんな!
カツ1に対して、味噌7くらいあったよ!
あれはもう味噌カツというより、“味噌に浮かんでるカツ”だろうな!」
「あはは……」
目をキラキラさせるお兄ちゃんを余所に、私は笑ってお茶を濁す。
きっとあのお地蔵様は、今日も四苦八苦しながら、お兄ちゃんのお供え物を食べたことだろう。
いつもごめんなさいと、心の中で謝っておく。
そしていつもありがとう御座います。お兄ちゃんを温かく見守ってくれて。
「身体の調子はどうだ小雪? どっか痛んだりしてないか?
今日はずいぶん顔色が良いみたいだけど」
「うん、げんきだよ?
今日はひさしぶりに、看護師さんといっしょに、お外をさんぽしてきた。
車椅子でだけどね」
「おおっ、いいじゃないか小雪! お日様サイコーだよなっ!
やっぱたまには外に出ないと、気分も沈んで来ちまうよ」
「うん。まえに手術してから、ひさしぶりのお外だったし、うれしかった。
ほらみて? これ中庭のお花でつくったの」
「おおっ! すっげぇなこれ! 綺麗じゃんか!」
今日作った押し花を見せると、またお兄ちゃんは目をキラキラさせて喜んでくれる。
ちなみにだけど、さっき本に挟んだ栞は、前にお兄ちゃんと散歩した時に作った押し花だ。私の一番のお気に入り。
「美星祭はどう? 準備はすすんでる?」
「あぁ、いま頑張ってるよ! 映画作ったりとか、喫茶店やったりとかさ。
みんなですげぇ文化祭にしようって、めっちゃ張り切ってるぞ!」
「開催まで……あとどのくらいだったっけ?
なんかお兄ちゃん、いつきいても『いま準備中』って、ゆってるような……」
「うぐっ?! ……いやまぁ、色々あるというか。
ぜんぜん関係ないエピソードやったり、時間が巻き戻ったりして、なかなか美星祭まで進まねぇっていうか……」
「?」
お兄ちゃんはポリポリとほっぺをかいて、気まずそうに目を逸らす。
きっと私には分からない事情があるんだと思う。よく知らないけど。
「でも、いいな……たのしそうだなぁ。
みんなで文化祭のじゅんびするの、きっとすごく、たのしいだろうなぁ」
「……」
小さな頃から、ずっと入院してばかりの私には、お兄ちゃんのような学校生活の思い出は無い。
いつも見ているのは、この代り映えのしない病室の壁。そして季節で移り変わる、窓の外の景色くらい。
だから私には、仲間達と何かを作り上げる楽しさっていうのは、想像することしか出来ないんだけど……。
「小雪……美星祭いこうな。
お兄ちゃん、頑張って準備すっからさ。
お前のためにも、きっと一生忘れられないくらい、すげぇ学園祭にすっから」
あたたかな、でもとても真剣な瞳で、お兄ちゃんが私を見ている。
安心させるように、何かを強く訴えるみたいに、ギュッと私の手を握って。
「うん。わたし楽しみにしてる。
やくそくね、お兄ちゃん――――」
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「うわぁ! 目が覚めたら、身体が女になってるでござるぅーー!!」
朝の児童公園に、ワーキングプア侍の叫びが響き渡った。
「なんという……! なんという仕打ちで御座るかっ!!
主に捨てられたばかりか、身体がおなごになってしまうとはッ!
おお神よ! 拙者はこれから、どうやって生きて行けばよいのかっ!!」
主からの命により、したたるウーマンの捕獲or抹殺を請け負っていた、ワーキングプア侍。
だが彼が手をこまねいている内に、何故か標的であるしたたるウーマンも、主であるハセ・ガワ氏も、突然“みっつめの世界”とやらに飛ばされてしまった。
彼には詳しい事は分からないが、どこにも姿が見えなくなってしまったのだ。
それにより、この度ワーキングプア侍は、めでたくホームレスへと逆戻りを果たした。
主を失い、食べる物にも住む所にも事欠き、こうして公園の遊具(おっきな滑り台)の中で寝泊りをしていた次第である。
「まぁ、身体がおなごになったのは、昨日からだったりするんでゴザルけど。
これって、自分でやった事だったりするんでゴザルけど」
よくある二次小説の設定みたく、とりあえず朝っぱらから叫んではみたものの、彼が女の身体になったのは自業自得だったりする。
有り体に言うと、彼は昨日、そのあまりのひもじさから、自ら進んで女の身体になったのであった。
「“1200円もらえるけど身体が女になるボタン”を押し、町の中華屋で近年まれに見る豪遊をしたは良いが、まさか朝起きても治っておらんとは……。
このままでは、侍としての任務に支障をきたしてしまうで御座る」
チャーハン食いたさに、餃子食いたさに、彼は親からもらった大切な身体を捨て去り、女として転生を果たした。
たった千円ほどの為だが、背に腹は代えられなかった。もう4日も何も食べていなかったのだし。
「まぁきっと、ほっときゃ元に戻るでござるよ。
もしくはお湯でも被れば、男の身体に戻れるハズでござる。
昔そういう漫画を読んだことあるし」
意外とポジティブに物事をとらえたワーキングプア侍は、背筋を伸ばして「ふぁ~っ」と欠伸をひとつ。
現在、絶賛無職の身であるが、彼の新しい一日が始まる。朝日が心地よい。
「さて……とりあえず、朝ごはんどうするで御座るかな?
拙者、さっきから腹がグーグー鳴ってて、正直たまらんで御座るよ」
空腹を訴えるおなかをさすりながら、ワーキングプア侍はゴソゴソと荷物を漁る。
ちなみに今、彼は無一文である。財布の中にお金は入っていないので、朝食を買うことは出来ない。
「てれれれってれ~♪(BGM)
80円もらえるけど、口調が板東〇二みたいになるボタン~!」
そして鞄の中から、以前雇い主であるハセ・ガワ氏に「何かあった時に使ってね♪」と渡されていた秘密道具を取り出し、躊躇なく「えいっ!」とボタンを押してみせた。
「いや゛~ほんばぁ~。
ゆでたまごって言うんばぁ~、なんであんな旨いんやろうで?」
80円を手にし、早速コンビニで買って来たゆでたまごを、美味しそうに頬張るワーキングプア侍。
関係ないが、さっきから値段の設定が安すぎるような気がする。
性別とか口調とかの、正にアイデンティティというべき物を、あまりにも簡単に売り渡しているような気がする。
彼が困っている姿が面白いからなのか、ちょっとしたオチャメなのかは知らない。
だがハセ・ガワ氏は、なぜ値段設定を、せめて万の桁にしてやらなかったのだろうか。
「ぼぐねぇ゛! 昔プロ野球のピッチャーやっどっでねぇ゛!
お笑い芸人とちゃうねんがら゛! ぼんばにも゛~!」
ちなみに、ワーキングプア侍はこれと似たような各種ボタンを、彼から山のように受け取っており、いま現在もたくさん鞄に入っていたりする。
ハセ・ガワ氏は作家だが、同時に“オールインワンの長”という裏の顔がある。
なので組織の科学力を
無駄にSF要素の入った変なボタンではあるが、背に腹は代えられない。
プライドで飯は食えない。彼はいま無職なのである。
これで得た80円。たったひとつのゆでたまごのお蔭で、彼は今日も命を繋ぐことが出来たのだから。栄養価は抜群だ。
「あ、元に戻ったでござる。
さすがに80円ほどでは、効果は30分くらいとみえる。
なんかお得な感じで御座ったな」
とにもかくにも、ワーキングプア侍は現在、生きるのに必死だ。
突然雇い主を失い、請け負っていた任務も水泡に帰してしまった彼は、また収入という物が無くなってしまったのだから。
せっかくの体術も、戦闘技術も、使うべき場所が無いのなら意味がない。
世間一般から見れば、彼はボロボロの着物を着た、汚いオッサンでしかないのだ。
ハロワに通おうにも、履歴書を書こうにも、彼は“戸籍”という物を持っていないので、それもままならない。
今日も彼は、60円もらえるけど暫くアヒル口になるボタンとか、300円もらえるけど見た目が美輪〇宏みたいになるボタンとかを押して、なんとか食つなぐのだった。
侍として、果たすべき使命も持たずに。
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「おじさん……? その草は、たべられないよ?」
その少女に出会ったのは、ワーキングプア侍が男に戻り、板〇英二からも戻った後。
ふと「野草でも採るでござる」と思い立ち、病院の中庭に忍び込んだ時のことだった。
「おなか、こわしちゃうよ?
たしか図鑑で、たべられないヤツの欄に、のってた草だから」
まったく気配がしなかった。
彼は曲りなりにも暗殺者を生業とする侍。……まぁ今は自由を求めて組織から抜け出し、こうして浮浪者みたいな生活をしてはいるのだが、その五感は常人を遥かに凌駕する。
その自分が、まさか気付かぬ内に背後を取られるとは。
そして気配を消していたにも関わらず、存在に気付かれるとは。
「たべるんなら、こっち。
これたんぽぽだよ? ここから上の部分だったら、たべられる」
一瞬、斬ろうかと思った。
今は無職とはいえ、自分は暗殺者だ。顔を見られたからには生かしておけんと、刀に手をかけた。
「なんか、これでコーヒーも作れるんだって。
わたしはやったことないけど……おいしいらしいよ?」
しかし、そのあまりにも儚げで、か弱い少女の姿を見た途端、彼は動くことが出来なくなった。
生気を感じないほどの、病的に白い肌。
幽霊かなにかのように、ふわふわと薄い存在感。
そして、こんな怪しい格好の自分にも普通に声をかける、あまりの危機感の無さ。
まるで世の中のことを、何ひとつ知らずに育ってきたかのような、その純粋さ。
「ややっ! これはしたり~!
拙者、あやうくポンポン壊して死ぬところで御座ったな! わっはっは!」
刀から手を放し、まるでアホのように朗らかに笑い、ワーキングプア侍は少女に向き直る。
年齢のわりには小柄で、彼の背丈の半分ほどしかないようなその少女は、「かたじけないかたじけない」と笑うワーキングプア侍を、キョトンとした顔で見つめた。
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「ほう、美星祭とな?
兄上の学校で、学園祭があるので御座るか」
「うん」
中庭に咲く、彩りどりの季節の花。
それを二人で眺めながら、ベンチに腰かける。
「それはよう御座るなぁ~。
きっと焼きそばとか、たこ焼きとか、チョコバナナとか、たくさん店が出るで御座る。
おっと。想像しただけで、拙者よだれが……」
「ふふっ♪」
先ほど、300円もらえるけどマイク・タイ〇ンに腹を殴られるくらいの激痛が走るボタンを押し、二人分のジュースを買ってきたワーキングプア侍は、こうして少女との雑談に興じている。
彼は不審者&不法侵入者なので、本当は今すぐにでもこの場を離れた方が良いのだろうが、そこは腐っても暗殺者の彼。
ちゃんと他所からはこちらが見えないような工夫や、彼女以外の人間には気付かれないように気配を断つという、無駄に高度なスニーキング技術を駆使して、彼女とおしゃべりしていたりする。
この少女には全くといって良いほど警戒心というものが無く、こんな不審者そのものである自分とも、のほほんと接している。
そして、恐らくは身内の者以外とは、会うことも話すことも稀なのだろうという、そんな会話慣れしていない様子も伺えた。
「まぁ拙者、学び舎に通った事はござらぬから、ぜんぶ伝え聞いた知識に御座るが。
実際の学園祭とは、いったいどのような感じで御座ろうか? 楽しそうじゃなぁ~」
「そうなの? わたしも学校はあんまりだから、いったことないの。
小雪といっしょだね、おじさん」
聞く所によると、この少女は幼少の頃から、ずっと入退院を繰り返す生活を送って来たらしい。
だからろくに学校にも行けず、人生の大半を病院の中で過ごしてきた。
でもとても活発で、ちょっとバカだけど妹想いの兄がいるらしく、毎日お見舞いにも来てくれるので退屈はしない。
むしろ自分は幸せな、とても恵まれた娘なのだと、そう嬉しそうに話してくれた。
「おじさんもくる?
お兄ちゃんにタダ券もらえるから、おいしい物いっぱいたべられるよ?」
「あ~いや……拙者はハロワに行ったり、異世界に行った主を探したりせねばならぬゆえ。
お心遣いだけ、有難く頂戴いたすで御座る」
「?」
本当にこの少女には、警戒心という物が無い。
こんな小汚い身なりの男を簡単に信用し、挙句の果てに学園祭に誘うなどと……、物を知らないにも程がある。
自身の憐れむべき現状すらも棚に上げ、ちょっと彼女のことが心配になるワーキングプア侍である。
「いけたら……いいな。
先生、その日だけでも、外出許可をくれたらいいけど。
美星祭、いきたいなぁ……」
「……」
ふいに、少女がどこか遠くを見つめながら、ぼそりと呟く。
その顔は、楽しさに想いを馳せているようにも見え、またどこか“諦め”の感情が滲んでいるようにも見えた。
この少女は、つい先日にも手術を受けたばかりで、いまは経過観察の時期であるという。
きっとこれまでの人生の中で、いくつもの「やりたい」を我慢し、その度にこの寂しい笑顔を浮かべてきたんだろう。
今日あったばかりなのに、ワーキングプア侍にもそれが容易に見て取れるほど、あまりに儚げな表情。
「心配はござらぬ!
もしお医者さまが意地悪を言っても、拙者がここから連れ出してやるで御座るよ!
必ず美星祭に連れて行ってやるで御座るっ!」
思わず、そう叫んでいた。
少女はキョトンと、びっくりした顔。
いまドンと自分の胸を叩き、ちょっとウザいくらいに輝かんばかりの笑みを浮かべるワーキングプア侍を、目をまんまるにして見つめている。
「……ほんと? ほんとにつれてってくれる?
わたし、美星祭にいっても……いいの?」
「もちろん! なにゆえ駄目な事があろうっ!
その為にこそ、兄上もいま頑張っているので御座ろう?
ならば其方は、是が非でも美星祭に行かねばっ!」
「おこられる……よ?
先生や看護師さんに、おこられちゃうよ?
身体よわいくせに、バカをゆうなって……」
「そん時は! 拙者もいっしょに怒られてやるで御座るッ!
むしろ拙者が怒ってやるで御座るっ! なぜ兄上の文化祭に行ってはならんのか!!
そのような
拙者に任せておくが良いッ!!」
ベンチから立ち上がり、胸を張って「わっはっは!」と笑う。
少女は、その姿をただポカンと見つめる。……だが次第に、その瞳に“希望”という光が宿っていく。
少女が嬉しそうに、もう見惚れるほどの美しい笑みを浮かべる。
「――――ちょっとぉ! 誰ですか貴方はッッ!!」
「うひぃ?!?!」
だが突然響いてきた声によって、ワーキングプア侍は即座にこの場を駆け出す。
「不審者ッ!! 小汚いおっさんが入って来てるわよッ!!
誰かぁぁーーッ!! 誰かぁぁーーーーッッ!!」
「ひぃぃ~~ッッ!!」
恐らくは、少女を担当している看護師なのだろう。
彼女はすぐさま少女に駆け寄り、もう割れんばかりの声で悲鳴を上げた。
脱兎の如く逃げ出すワーキングプア侍。
「
あのオッサンに、変なことされなかった?! おっぱい触られなかった?!」
おっぱいの事はともかくとして……、もうワーキングプア侍は必死こいて逃走しつつも、その名前をしっかりと聞き取った。
――――秋月。
これは以前、主であった人から“この町の重要人物”として、任務の為に教えられていた名前のひとつ。
いずれ何らかの形で、この男と関わるかもしれないからと、事前に渡された資料の中に乗っていた名前だった。
「秋月……だと?
ではあの小雪という少女は……秋月 流の?」
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後日。夕暮れ時の病室。
「んでな? どーやってランカ達のステージを実現させるかって、直樹と話し合ってんだけどさ?」
「ふふっ。でも水着はダメだよ、お兄ちゃん」
流と小雪が楽しそうに会話する姿を、中庭の木に張り付いているワーキングプア侍が、遠くからそっと観察する。
「あの少年は……やはり秋月 流。
やはり小雪どのは、とんでもない重要人物の身内で御座ったか。ぎょぎょ~!」
さっき“150円もらえるけど、さかな君みたいな声になるボタン”を押し、そのお金で買ったパンを齧りながら、たらりと冷や汗を流す。
まぁ150円だし、そろそろ効果も切れる頃だとは思うが。
(あの屈託のない笑み。嬉しそうな表情……。
小雪どのは、心から兄上を好いておるので御座るな)
自分と共にいた時の、どこか色の無い表情とは違う。いま彼女はとてもリラックスし、心から楽しそうにしている。
恐らくは幼い頃から、こうして二人で支え合って生きてきたのだろう。小雪にとって流は、そんな掛け替えのない存在なのだろう。
遠くから見守っているワーキングプア侍にも、それがひしひしと分かる。
(だが……あの少年は……)
もしかしたら……、あの少年が美星祭に情熱を懸ける理由、そして世界征服などとのたまう理由のひとつには、“妹の為に”というのが、あるのかもしれない。
妹に思い出を。そして妹がより良く生きていける世界の為に、彼はいま必死に頑張っているのだろう。
だが……彼が持つ力は、この町に潜む“闇の組織”の者達にとって、あまりにも魅力的過ぎる。
この先、あの美しい兄妹が
そうワーキングプア侍が眉をしかめたのも、つかの間。
「――――ッ!? 何奴ッ!!」
懐から
たったいま感じ取った、この場にいる
「逃がさぬぞッ! 待てェッ!!」
200メートルはあろうかという距離を、正確に当ててみせた。
彼の鷹のような眼は、いま肩口を押えながら逃げ出していく何者かの姿を捉える。そして解き放たれた矢のような速さで、即座に後を追う。
木を飛び移り、屋上に登り、全力で疾走する。
「……ぐぎゃッ?!」
逃走していた何者かが、短い悲鳴を上げて、その場に倒れる。
即座に追いつき、彼が再び投げはなった苦無が、その大腿部に突き刺さったのだ。
「言えッ! 貴様何者ぞ?!
どこの組織の者かッ!! 答えぃ!!」
「……ッ?!」
組み伏せられ、喉元に苦無を押しあてられた何者かが、目を見開いてワーキングプア侍を見る。
その表情は憤怒、そして暗殺者としての冷酷さが声に滲む。
「なぜ
誰の指示かッ! 言わぬかッ!!」
そう。こいつは秋月兄妹の病室の方を見ていた。
いや、明らかに秋月兄妹を“狙っていた”。
組み伏せたコイツの傍に、狙撃銃らしき物が落ちているのが見える。
「おっ、お前こそ何だッ! なぜ邪魔をしたッ!
こんな真似を……我ら
「ッ!?」
咄嗟に当て身を喰らわせ、男を失神させる。
口から胃液を垂れ流し、グッタリとのびた男を余所に、ワーキングプア侍はただただ硬直し、たらりと汗を流す。
「裏秋月……だと?」
知っている。これも主からの資料にあった名前だ。
この町で仕事をする以上、必ず知っておかなければならない名前……勢力のひとつだ。
まぁ聞く所によれば、ひどく貧乏だったり、ひどく不幸だったりする家系もあるらしいのだが……とりあえず裏秋月とは、この町を牛耳っている勢力のひとつである事は間違いない。
そして主いわく、「自分が指示を出すまでは、けしてやり合うな」とも。
「増援が来る……。すぐこの場を離れねば」
この倒れ伏した男の処遇など、考えている余裕は無い。
本来は口封じの為、殺してしまうのが最上。だが自分が殺生を犯すのは、仕えるべき主の命によってのみと決めている。
ワーキングプア侍は即座にこの場を離れ、すぐにその姿は、夕日の彼方へと消えた。
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「とほほ……苦無を失ってしもうた。
もうあの2本しか残ってなかったというに……」
頑張ったらダンボールとかで作れないかな? 殺傷力とかもう我慢するから。
そんな侍にあるまじき情けない事を考えながらも、ワーキングプア侍は“500円もらえるけど、後頭部に10円ハゲが出来るボタン”を押して購入したシュークリームを手に、再び病院へと向かった。
「というか……拙者はいま、何をしているので御座ろうか?
職もなく、主もない身の上だというに。シュークリームなど買って……」
この2日、食べたのは先のアンパンと、何本かのタンポポだけ。今も彼のお腹はストライキを起こすかの如く、グーグー音が鳴っている。
こんな物を買う余裕があるなら、すぐに牛丼屋にでも駆け込むべきなのである。
「まぁ拙者、なにもしてないでござるし?
いま何の任務もなくて暇でござるし? いいっちゃーいいんで御座るが」
任務の標的も、仕えていた主すらも、異世界へと消えた。自分ひとりをこの世界に残して。
ならば今なにをしようと、彼の勝手ではあるのだが……。しかし自身の“不可解な行動”の意味を、彼は未だに理解出来ずにいる。
「相手は……あの裏秋月ぞ?
主の指示ならばともかく、単独でやりあえる規模の相手では御座らぬ」
いったい自分は、何をしている?
何を好き好んで、裏秋月を敵にまわすような真似をする?
なぜ自分は、
「馬鹿な……。他人のことよりも、まずは自分のことを何とかせいと言うのだ。
住む家も無く、明日も知れぬ身だというに」
だが、あの日交わした約束が、彼の胸を離れない。
あの少女が寂し気に呟いた「美星祭にいきたい」という言葉。それを聞いて思わずしてしまった約束が、どうしても頭をちらつくのだ。
そして今、自分はなぜか見舞いの品なんぞを手に、もう夜だというのにあの病院に向かっている。
様子を見るだけ、敵の動向を探る為と言い訳をしながら、「ひと目あの子の顔が見たい」と病室に向かっているのだ。
そのワケが、どうしても彼には分からずにいる。
「まぁ……これを渡したらすぐ帰るで御座る。
タンポポが食えると教えてもらった礼よ。
これも仁義でござる」
もうすっかり暗くなった中庭だが、5階建ての病院の窓から、たくさんの明りがこの場を照らしている。進むのに支障は無い。
まぁ本当は面会時間中に、ちゃんと建物の中から会いに行くのが筋なのだろうが、自分はまごう事無く不審者である。
あんまり頻繁には風呂にも入れないので、衛生上の観点からも、医療施設に入ることは躊躇われた。
よってワーキングプア侍は手早く木に登り、ひょいひょいっと枝を飛び移って、ちょうど秋月小雪の病室の前までやってくる。
窓からは明りが差し込んでおり、まだ消灯時間にはなっていないことが伺える。
寝る前にシュークリームを食べるというのは暴挙かもしれないが、きっとこれを手渡せば、彼女は喜んでくれるんじゃないかという気もしている。
「顔を見るだけ……見るだけじゃ。
その後は、町を去るなりなんなり、すれば良い」
いくらなんでも、タンポポの恩で裏秋月とやり合うのは、流石にごめんこうむる。
あんな、つい口から出たような“約束”など、このような汚いおっさんの事など、もうあの子もとっくに忘れてる……ハズだ。
いくら自分が、明日とも知れぬ身とはいえ。
職もなく目的もなく、ただ生きているだけのツマラナイ男とはいえ。
無駄死にをするのは、御免だ。
しかし、自分にそんな言い訳をしながら、そっと部屋の様子をうかがったワーキングプア侍の表情が、一瞬にして強張る。
「……ッ!?!?」
見えたのは、ベッドの下に倒れ、苦しそうに吐息を漏らしている小雪の姿。
ギュッと目を瞑り、息も絶え絶えに、ただ襲い来る痛みに耐えている、悲痛な顔。
「小雪どのッ!! 小雪どのぉぉーーッッ!!」
せっかく買ったシュークリームが、中庭の地面に叩きつけられた。
ワーキングプア侍は、“窓を開ける”という単純な行為すら思い至らず、叫び声を上げながら部屋に飛び込んだ。
「しっかりせぃ! 目を開けぬかッ!! 小雪どのッ!!
小雪どのぉぉーーーッッ!!」
あの愛らしかった顔が、激痛によって歪んでいる。
ただでさえ白かった顔色が、今はもう蝋のように白い。そして滝のような汗を流して苦しんでいる。
彼は小雪を抱き起しながら、必死にナースコールを押し続ける。
暗殺者であり、人の死を見慣れているハズの彼は、縋るような声で叫び、ただ助けを呼び続けた。
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ちょっとした侵入者騒ぎはあったものの、小雪は即座に駆けつけてきた医師たちによって、救急治療室へと運ばれて行った。
おそらく小雪は、たまたまベッドから離れていた時に発作を起こし、その場で倒れてしまったがゆえに、ナースコールのボタンを押すことが出来なかったのだろう。
もし彼が見舞いにやって来なかったら、もしあと少しでも発見が遅れていたら、彼女がいったいどうなっていたかなど、考えるまでもなかった。
「………」
ワーキングプア侍は、いま屋上にいた。
ここは、ちょうど小雪の処置がおこなわれている部屋の、真上にあたる。
もちろん彼の暗殺者としての技術を駆使し、気配と姿を決して、誰にも見つからないようにしながら。
「………」
本当は、こんな所にいる意味などない。
医療の心得がなく、そして小雪の血縁でもない、全くの赤の他人でしかない彼がここに居ても、きっと出来ることは何もない。
だから、これはなんの意味も無いことなんだろう。
「小雪……どの」
けれど、この場を動く気にはなれない。
少しでも良い。たとえ僅かでもいい。彼女の傍にいてやりたかった。
先ほど、息を切らせて病院に駆け込んでくる流の姿を見た。
目を充血させ、学校も文化祭の準備も全てを捨ておいて、なりふり構わずに妹のもとへと駆けつけていた。
あの妹想いの彼ならば、彼さえ傍にいれば、きっとそれで良いのだろう。
こんな住所不定、無職の男が傍にいようとも、彼女にとってなんの足しにもならない。
『その草、たべられないよ?』
『これタンポポだよ? ここから上の部分なら、たべられるから』
けれど……どうしても彼女の顔が、頭に浮かぶのだ。
『いきたいな、美星祭。
いけたら、いいなぁ――――』
「――――ッッッッ!!!!!!!!!」
気が付けば、力の限りに地面を殴りつけていた。
コンクリートが陥没するほどの、凄まじい轟音が、夜の病院に響いた。
「はぁっ……! はぁっ……! はぁっ……!!」
肩で息をし、地面に蹲る。
目を見開きながら、ここではないどこかを見て、睨みつける。
「――――おいおい。そんな事をしたら、また見つかってしまうよ?
それでもいいのかい、ワーキングプアくん?」
「ッ?!?!」
咄嗟に立ち上がり、構えを取る。
いま突然耳元で聞えた、声のほうに向かって。
「ようやく時間が出来て、迎えに来てみれば……まさか病院に不法侵入とは。
君ね? 一応は私の部下って事になってるんだから。
こういった真似は、控えて欲しいんだけども」
「と……殿ッ!!
そこにあったのは、以前仕えていたハセ・ガワ氏の姿。
恐らくは立体映像か何かなのだろう。心なしかその姿は、少し透けているように見えた。
「うん、私だよプアくん。……殿とかじゃないけど。
仕事がひと段落ついたから、迎えに来たよ♪」
「…………」
「あ、もしかして怒ってる?
ごめんね……決して君のこと、忘れてたワケじゃないのよ。
私も組織も、したたるウーマンですらも、みんな向こうに飛ばされたのに……、まさか君だけピンポイントでとり残されるだなんて、思ってもみなかったのよ。
それにしてもさ……? 君はいったい、どういう存在なの?
なんで君だけ残ったの? いったい君の何が、この世界に必要とされたの……?」
何故かオネエ言葉のその男は、「まったく理解できないよ」と言わんばかりの表情で、不思議そうに彼を見つめる。
恐らくは、なんらかの作業を速攻でかたずけてきた所なのだろう。立体映像のハセ・ガワ氏は黒い地味なジャージ姿であり、その目元には強い疲労の色が浮かんでいる。
どうせまた、徹夜でもして小説を書いてたんだろう。
「彼女は……」
「ん? なになにプアくん?」
「小雪どのは…………どうなるので御座るか?」
「えっ」
きっと、置いていったことを文句言われる。あと給料上げろとか、なんか食わせろとか言ってたかられる。
そう高をくくっていたハセ・ガワ氏は、とつぜん彼の口をついて出た言葉に、少し面を喰らった。
「小雪さん、かい?
いまここに入院してるっていう、女の子でしょう?
なになに? 君、彼女と知り合いなの?」
「…………」
そうのほほんと問いかけてみるが、彼の眼は真剣そのもの。いまは無駄口を叩くような場面では無いことを、ハセ・ガワ氏は悟る。
「どうなる……か。
治るのかでも、病名でもなく、
なんか変な訊き方だけど……プアくんもある程度は、事情を察してるみたいだね」
「……」
迎えに来るのが遅れたお詫びに、適当にラーメン屋にでも連れて行けば、それで事足りる。
そうとばかり思っていたハセ・ガワ氏は、まためんどくさい事になりそうだという予感を感じつつも、内心で覚悟を決める。
今日もきっと、ロクに睡眠時間は取れない。
「じゃあもう、サラッと一気に説明しちゃうから、しばらく黙って聴いててね?
分からない事とか、質問とかは、ぜんぶ後で受け付けるから。
頑張って聴いててよ?」
「……」
無言のまま、コクリと頷きを返す。
それを見て、ハセ・ガワ氏が再び口を開いた。
「結論から言うと、
この先、あと何年生きられるのかは、知らない。
けれど、彼女の病気が完治する可能性は、まったくのゼロだよ」
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君も、流くんのことは知ってるよね?
ほら、前に資料として渡した、あの膨大な“徳”を持った少年だ。
苗字も一緒だし、もう彼女が流くんの妹だって事は、知ってるんだよね?
ちなみに君は、あの資料を読んだ時に、何か違和感を感じなかったかい?
もう
幸福な人生を約束された、世界を握れるほどの不思議な力を授かった少年。それが流くんだ。
でもさ……? なんでそんな彼が、
なんで流くんは、普通の苦学生みたいに、自分で生活費を稼がなくちゃいけないんだろう?
ここ、なんかおかしいと思わなかったかい?
結論から言うとね……? 今の流くんて、もう
彼を守護してるどこかのおっきな存在が、今も彼の健康を願ったり、優しく見守ったりは、してるみたいなんだけど……。
トラックが家に突っ込むとかの妨害工作を、全て無効化したり。なんか面白いことが沢山おきる~っていう、愉快な人生を歩んではいるけれど。
……でも流くんが本来受け継いでいるハズの、先祖代々の“徳”。それは本来、あんなちゃちなモンじゃないんだよ。
その力の大部分は、いま妹さんの方に使われているんだ。
秋月流には、両親が居ない――――
まだ彼が幼かった頃……正確に言うと、妹さんが産まれたその年に、両親ともが事故で亡くなってるんだ。
親から相続したそこそこの遺産はあったけれど……、それも秋月家を憎む誰かの悪意によって、すでにほとんどが溶かされてしまった。
だから彼は、妹さんと二人で生きていくための生活費を、アルバイトで稼がなくちゃいけない。
流くんがどう思ってるかは知らないけれど……でも世間一般の目から見たら、彼はまごう事なく“不憫な青年”だと思うよ?
で、なぜそんな事態になっているかと言うと……それは全て、妹である小雪ちゃんのせいだったりする。
彼が受け継いだ“徳”が、彼に豊かな生活をさせず、両親すらも事故で失わせてしまったその原因には、小雪ちゃんが関係してるんだ。
あ……別に小雪ちゃんが悪いとかじゃないから、その拳から力を抜いてくれる?
頼むよ、プアくん……。
え~っと……おほん!
じゃあ、なぜ流くんの徳が、小雪ちゃんの方に行っちゃってるのかと言うと……きっとそれが、幼き日の彼の願いだったから、なんだろうね。
小さかった頃の彼が、「ぼくの事はいい。妹を助けてあげてくれ」って……、そう無意識にでも願ったんじゃないかなぁ?
小雪ちゃんはね? 本来はもう
とっくの昔に……きっと産まれてすぐ位に、死んでしまう運命の子だったんだよ。
それをいま、流くんは自らの“徳”を総動員して、無理やり生かしている――――
運命とか、道理とか、神様が決めたルールとか……そんな全ての物に抗って、無理やり生かされているのが、今の小雪ちゃんという女の子なんだよ。
たとえば世界征服とか、世界を意のままに操るとか、滅ぼすとかさ?
そういった“この世の内側の事”って、意外と簡単なんだよ?
もう流くんが受け継いだ力があれば、きっとすぐにどうとでもなる位の、そんな簡単な事でしかないんだと思う。
でもね……?
例えば人の生き死にとか、運命とか、神様が決めたルールっていう“外側の事”はね?
本来は徳とか幸運とか、そんなのでどうにかなるような物じゃ、決して無いんだよ。
たとえ、世界を握れるほどの力が、あったとしても……。
たった一人の女の子を生かす。ただそれだけの事が……出来ない。
人の作った物はどうとでも出来ても、世界が定めたルールには、抗えない――――
……まぁ流くんの家系って、もうどっか
しかし、それでも今の小雪ちゃんの状態が精一杯。……これが限界なんだ。
今ですら、奇跡みたいな状態なのにさ? これ以上身体を良くするなんて事、たとえ神様でも出来はしないんだよ。
彼女は本来、死ぬべくして生まれ堕ちた子――――
そして、流くんの受け継いだ“徳”の力、そのほとんどを吸い取っている存在なんだ。
……君が理解出来てるかも、納得出来てるのかも、知らない。
でももう少しだけ、我慢して聞いてね?
きっとここからが、君にとって、一番大事な所だと思うから。
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ジュポっと音を立てて、ジッポを着火する。
ハセ・ガワ氏はいったん一息入れるように、気だるそうにタバコを吹かす。
「裏秋月……知ってるよね?
なんたって今日、君はその手の者と交戦したんだから」
そう報告を受けてるよと、ハセ・ガワ氏は片方の眉だけを上げる。
「裏秋月は……小雪ちゃんの命を狙ってる。
彼らにとって小雪ちゃんは、必ず排除しなくてはならない、盗人みたいな存在だから」
きっと、激高して掴みかかりたいような場面だろうに、彼は今もじっとその場に佇み、真剣な目で聞いてくれている。
バカだし、使えないし、その能力だってちょっと疑ってたけど……ハセ・ガワ氏は彼に対する評価を、ほんのちょっとだけ改める。
「困るんだよ、小雪ちゃんに生きてられちゃ。
彼らが秋月家から奪うべき、強大な力である“徳”、そのほとんどが
……彼女が生きてたら、彼らはいつまで経っても、世界征服なんて出来ない。
一族の宿願を果たすことも、不幸なさだめを打ち破ることも、出来ないんだ」
心底軽蔑するように、口に出すのも汚らわしいというように、ハセ・ガワ氏は言い捨てる。
「裏秋月だけじゃないよ?
なんだったら他の悪~い組織の人達も、みんな小雪ちゃんを狙ってる。
小雪ちゃんを殺し、秋月の力をなんとかしようって、そう目論んでるんだ」
「あわよくば、小雪ちゃんを手に入れて、ホルマリン漬けみたいにしてずっと生かし続けたまま、その徳だけをそっくり頂こう! 利用してやるぜウッシッシ♪
……とか考えてる馬鹿も、ぶっちゃけ居るんじゃないかな?」
そして、しっかり持ち歩いている携帯灰皿の中に、グイグイやってからタバコを仕舞う。
ここは病院だし、きっと敷地内は全部禁煙だろけど、彼はいま立体映像なので問題はないハズだ。きっと。
「君は、小雪ちゃんはどうなるのかって、私に訊いたね?
――――病気は治らない。明日も知れない命だ。
――――――そしてあらゆる組織、あらゆる悪意から、命を狙われる存在でもある」
ふぅと、ひとつため息を、ついてから。
「言うなれば、
これが君の質問への答えだよ? ワーキングプア侍くん――――」
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「おっしいなぁ~……。
あぁ~。残念だわ~……」
立体映像のスイッチを切り、自宅の座椅子に腰かけたハセ・ガワ氏が、そう何度も呟く。
「ありゃもう、私のもとへは戻ってこんぞ……。
せっかく面白そうなヤツだったのに……。
充分戦力になったし、小説のネタにもなりそうなヤツだったのに。
はぁ~もう……。結構な損失だよぉ~」
ぐてぇ~っと背もたれにもたれかかり、天井を仰ぐ。
この徹夜ばかりの疲れ目には、蛍光灯の光が眩しくて仕方ない。
「まっ! “西の宵明”の続編は、もう大体の構想は決まってるけどさ?
肘を壊してプロ野球選手を引退した男が、野球解説者やタレント業をやりながらも、沢山しょーもないサイドビジネスに手を出して、破滅してくお話にしよ♪
物語の始まりは、主人公の男が、電車の中で飲食物を食べているシーンだよ♪
いや゛~ほんばぁ~。ゆでたまごって言うんばぁ~、なんであんな旨いんやろうで?」
そう呟きつつ、いそいそとパソコンの電源を入れて、愛用のテキストエディタを立ち上げる。
音楽もラジオも流さない。ただひたすらに、己と向かい合う。
この時間を、ハセ・ガワ氏はなによりも愛している。
「はぁ~……でもやっちゃったなー。
私はこう、言葉をオブラートで包むという行為がだね? 苦手なのよ……。
相手の気持ちも考えずにさ? ハッキリ言ってやるのが誠意だ! それが思いやりだ! 友人ならば一歩踏み込む覚悟を! ……とか思っちゃう馬鹿野郎なのよ。
この頭でっかちのせいで、これまで何人の友達が、私から去って行ったことか……」
ただ今日この日に限っては、なかなか小説に打ち込むことは、出来ないようだった。
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「報告にあったんは、ここやな?
かまへんかまへん! ワイひとりで充分やさかい! 援護はいらんわいッ!
お前らもうええから、家帰ってマスでもかいとけッ!」
小雪が発作を起こし、その緊急手術がおこなわれた日の、次の夜――――
面会時間も、消灯時間も過ぎた夜の病院の廊下を、機嫌よさげに我が物顔で歩く、一人の男がいた。
「確か、小雪とか言うとったかな~?
どんな乳臭い小娘か知らんけど、関係あらへんわ。
どうでもええねんそんなん。ぶっちゃけ」
彼は裏秋月・
なんか甘いものが好きそうな名前の、非常に柄の悪い男だ。
「その
それから流とかいう
ガキ二人殺すだけの、楽な仕事やないか。
今までどないなっとってん、ホンマ」
まるで蛇のような柄の、紫色のスーツ。
喧嘩にでも使うかのように、沢山指にはめられた指輪。
ひと目みた途端、人は彼のことを「その筋の人だ」と理解することだろう。
深夜の廊下に、彼が歩くコツコツという革靴の音が響く。
腐っても秋月の家。その組織力と、気配遮断の術式を持って、既に院内の人払いは済ませてある。
たとえ少女がナースコールを押そうとも、どれだけ悲鳴をあげようとも、この数時間ほどだけは、彼女のもとに人が駆けつけることは無いだろう。
ゆえに、ここは狩場だ。
今も何も知らぬまま寝息を立て、集中治療室ですやすや眠っているであろう子羊。
そして、それを狩る自分という獅子、二人だけの隔離された狩場。
いま男の頭には、どうやって少女を殴り殺そうか、どうやったら楽しく殺せるかという、そんな考えしか無い。
手早くではなく、必要に駆られてでもなく、ただ
「……おぉ? なんやねん、お前」
だが、ようやく彼女のいる集中治療室の扉、そのすぐ近くまでやってきた時、男の歩みが止まる。
「誰やお前? 消灯時間過ぎとんぞボケ。
患者は大人しく、部屋に引っ込まんかいワレ」
軽口を叩くも、いま目の前にいる人物が患者ではない事など、充分理解している。
けれどチョコ太郎はその会話を楽しむように、いやらしく口元を歪めながら、言葉を続けていく。
「おっ、アレか? お前って報告にあった、
なんやド汚い恰好しとるけど。えらいイメージとちゃうやんけ。
おうオッサン、どうやって入って来てんコラ。ウチの
腰に手をあて、ふてぶてしく睨むチョコ太郎。
対して目の前の男は、今も壁に背中を預けながら、じっとその場で俯いている。
こちらの言葉など、気にも止めていないかのように。
「なんのつもりじゃコラ? ワレ、俺が誰か知っててやっとんのか。
死にたいんやったら、そうしたるけど。
なんか言うたらどないや」
流石に我慢の限度なのか、チョコ太郎の口調が攻撃的な物に代わる。今にも襲い掛からんばかりの闘気を、直接ぶつけるように身体から発する。
「…………結局なぁ。
拙者には、分からんかったで御座るよ……」
そして、今ふとワーキングプア侍が、
「拙者は、何がしたいのか。
いったい何が、拙者の望みだったのか……」
静かに、その口を開いた。
「あの山を逃げ出し、人里に降り……人の世で生活をした。
だが明確な意思もなく、ただただ生きるだけの日々。
働けど働けど、暮らしは楽にならず……。
それどころか、挙句の果てに主を失うてしまう始末……。不甲斐のぅてたまらぬ」
「あぁ?」
どこか噛み合わない会話。
未だにこちらをみようとはせず、ただ彼方を見つめているような、男の瞳。
「生きる意味、成すべき使命、命を懸けた忠義……。
そんな物、もしかしたら夢物語の中にしか、無かったのやもしれぬ……。
組織の犬ではなく、ただの殺しではなく……、拙者が本当にしたかった事は、いったい何だったのであろうか?」
ただの殺しの機械として生まれ落ち、その為に生きてきた。生かされて来た。
だがふとした時に疑問を感じ、そのまま生まれ故郷であるあの山を、組織を裏切ってまで飛び出した。
けれど……そこから自分がやった事といえば、死体から髪の毛を取るとか、老婆の着物を剥いで売るとか、ワケの分からんフランクフルト女を追うとか……そんな意味の無いことばかり。
まったく意味の無い人生。意味の無い日々。
それを重ね、自分のやりたい事も分からずに、ただただ生きてきた。
「だが……こんなワーキングプアな、つまらん男でも、ひとつすべき事がある……」
いま、ようやく彼が、
「――――――ここは、通さぬ」
眼前の、倒すべき敵に、向き直った。
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例えばだけど……もしあの少女の呼吸が、一晩だけでも楽になり、安心して眠れる夜が来るのなら。
「おぉ! ええやんけワレ!! かかってこいやコラァッッ!!」
拙者はそれと引き換えに……、今すぐ自らの喉を、かっ切ろう。
「おんどれぇ! やっぱ侍かいッッ!!
今までどこで生きとったんじゃコラァ!!
もし……あの少女にたった1日だけでも、自由に街を歩きまわれる足を、あげられるのならば。
「ははっ! 楽しいのうオッサンッ!! 楽しいのうッ!!
こんなガチの殺し合いッ、やんの久っしぶりやわッッ!!!!」
拙者はそれと引き換えに……、躊躇なく自分の両足を、切り落とそう。
「なぁ! お前もそうやろオッサン!!
寝ても覚めても、殺しのことばっか、考えて来たんやろうがっ!?
……だから強いッ! こんなにも強いんやッ!!
ワイと一緒やお前はッッ!! ワイらは同族やッッ!! せやろうがいッ!!??」
所詮、拙者には
そこらの残飯にも劣るような、なんの価値も見出せない、つまらん存在でしか無いのだ。
「オイッ……! なに目ぇ瞑って戦っとんねんッ!! なんか言えやオッサンッッ!!
楽しいやろうが殺し合いはッ!! 力ぶつけあうんは、最高に滾るやろうがッッ!!
それ以外……なんも持ってへんやろうがッ!! 俺らはよぉッッ!!!!」
たとえ命を捧げようが、人生を賭けようが、あのたった一人の少女を救う事、叶わず。
出来ることといえば、このようなつまらない相手と、つまらない者同士で、殺し合うことだけ。
「何がッ……! 何が“徳”じゃボケェ!!
何が世界征服じゃッ!! 裏秋月の当主じゃッ!!
ワイそんなん……、いっこもいらんかったわッッ!!!!」
拙者が本当に欲しかったのは、願っていたのは、いったい何だったのだろう?
何が欲しくて、この美星町に来たんだろう?
そんなことを、ワーキングプア侍は剣撃を交わしながら、考え続ける。
「――――いらんねんッ! 金とか権力とかぁぁーッ!!
ワイが欲しかったんは、
一緒にサッカーやってくれる! 夏休みに遊んでくれる! そんな友達だけやッッ!!!!
なんでッ……! なんでワイの家だけっ……こんなワケのわからん呪いをッ……!!」
裏秋月は、それぞれが
理由は分からない。だが流が先祖からの“徳”を受け継ぐのとはまったくの逆で、それぞれの家が、何かしらの耐えがたい悲しみを背負わされているのだと、主から受け取った資料にあった。
壱の遺影は、“貧困”
参の遺影は、“不運”
そしてこの男の一族である弐の遺影は、“嫌悪”。
「なんでワイだけ独りぼっちやねんッ……!!
いつも隅っこおらなアカンねんッ!! あの子と遊んだらアカン言われんねん!!!
おかしいやろうがぁぁぁぁああああーーーーッッ!!!!」
この世に生まれ落ちた時より、ありとあらゆる人徳、好意、愛情、信頼を失い、この世の全ての者達からの嫌悪を浴びながら、彼は生きてきた。
彼にとっての人生とは、人から奪われ、人から奪い返すこと……それのみだった。
「ほんだら奪うしか無いやろがいッ!!
秋月のガキだろうが、組織だろうが、世界が相手だろうがッッ!!
奪って奪って……、奪いながら生きてくしか! あらへんやろがいッッ!!!!
強ぅなるしか、あらへんやろがッッ!!!! こんな風によぉぉぉーーッ!!」
彼の鋭利な拳が、ワーキングプア侍の腹に叩き込まれる。
その途端、身体は天井に打ち付けられ、何度もバウンドして廊下に倒れ伏す。
「終わりじゃオッサンッ!! お前からも奪ったらぁぁぁ!!!!
ワイは奪って奪って……この世の全てのモンから! 奪い倒してッッ!!!!
最後は絶対にッ、幸せになったるんじゃぁぁぁあああッッ!!!!」
――――違う、と。
白くなった視界。足元もおぼつかないような身体。
だが今、男の叫びを聞いた時、ワーキングプア侍の心に「違う」という想いが、ふと沸き上がった。
「死ねコラぁぁぁあああッッ!!!! オッサンんんんんッッッッ!!!!!!」
違う! それは違うッ!!
だって自分は、
いまワーキングプア侍の眼が、カッと限界まで見開き、猛然と迫って来る男を凝視する。
「 ガッッッ???????!!!!! …………あっ」
――――一閃。
ワーキングプア侍の居合の一刀が、すり抜けるように男の身体を切り裂く。
空気の流れや、音さえも追いつかない――――不可視の斬撃が、目の前の男に叩き込まれた。
「お゛ッ……?! おん、どれぇッ…………!!!!」
白目を剥き、床に倒れ伏す。
腹に
「……奪うのでは無い。
そうではないのだ……会ったばかりの友よ」
居合を放った態勢から、ゆっくりと向き直る。
「そうだ……欲しかったのでは無い。
別に、何かを得たかったワケでは無いのだ……」
刀を鞘に収め、視線の先を見つめる。
今も緑色のランプが光る、集中治療室。
今もあの少女が眠る、その場所の方を。
「拙者はただ――――“誰かの為”にありたかった。
その為にこそ、この町へ来たのだ」
男を肩に担ぎ、この場を後にする。
これにて、今宵の
万が一にも、あの子の眠りを妨げてしまわぬよう、静かに歩き去った。
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「考えてみれば、これは当然の事なので御座る♪
拙者、侍を生業とする者ゆえ」
夜が明けて、澄み渡る晴天の朝が来た。
ワーキングプア侍は、手元にあった“押せば5千円もらえるけど、頭髪が全て抜け落ちるボタン”をポチッと押して、そのお金で身支度を整えた。
ザンバラの、まるで落ち武者みたいな頭ではあったけど……これでもう二度と、彼は侍の魂であるマゲを結うことは出来ない。
けれど、それで構わないのだ。
武士道とは、その見た目ではなく、生き方なのだから。
「君主に仕え、主のために生きる――――
それが侍として、当然の生き方ではないか。
誰に恥じることのない、最高の生き方ではないか」
久しぶりに銭湯に行き、安物だけど小綺麗な服をしま〇らで買い、そして残ったお金でお見舞いのスイーツを買った。
これは、彼女へのちょっとした手土産だ。
これから臣下として、
ちなみにだが……「飯くらい食えボケ! ガリガリ君やないかワレ!」という罵詈雑言と共に、今日もあのチョコ太郎という男から、ちょっとした差し入れが届いていた。
なんでスマホ持ってへんねん! LINEやってへんねん! ふざけとんかワレ! ……と泣きそうな顔で言われて、すんごく困っちゃったりもした。だってお金ないもん。
「拙者は、しょーもない男に御座る。
しょーもない人生を、生きてきたで御座る。
たとえこの命を捧げようとも……彼女の爪の先ほどの価値も、あるとは思わぬ」
やがてそんな事を思いながら歩いていると、彼女の病室の前に到着した。
ワーキングプア侍はキュッと襟元をただし、禿げた頭に意味もなく手櫛を入れる。
「ならば――――七生を持って仕えよう。
地獄、輪廻が先、黄泉平坂を越え……。
この
ひとつで足りないなら、何度でも。
たとえ七度生まれ変わろうとも、不変の忠義をもって、貴方を護ろう。
そして、いつかそのお命尽きます時は……、さびしゅう無きよう、お供いたしまする。
貴方の隣には、流どのがおられる。
ならば拙者、影より御身の敵を討ち、お護り申す。
「必ず小雪どのを、美星祭にお連れ申します――――
まずはそれを目標に、頑張っていくで御座る」
今日はそのちょっとした、決意表明の日。
それと、手術が無事に成功して良かった。貴方がいてくれて嬉しい。その感謝を伝える日なのである。
つい先日までの、腐ったドブのような目ではない。
ワーキングプア侍は仕えるべき主を見つけ、まるで今日から小学校に入学する子供のようにキラキラした笑顔で、愛すべき主のいる、病室のドアを開けた。
「えっ! エクスキューズミー!!
先日は名乗りもせず、まことに申し訳ソーリー!
拙者、ワーキングプア侍と申す者にござる!
もう起きておられますかな、小雪どの?」
――おしまい――
………………………………
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~おまけ♪~
「――――うわーっ! うわぁぁぁあああっっ!!」
ワーキングプア侍の叫び声が、病室に響き渡った。
「うわぁーーっ!! 小雪どのぉぉぉおおおッッ!!」
そしてすぐさま彼は、小雪のもとへと駆け寄る。
せっかく買ってきたスイーツも、床に落としたまま。
「ちんちんぶらぶら、ソーセージ♪ ちんちんぶらぶら、ソーセージ♪」
「そうよ小雪ッ! もっとよッ!
もっとワテクシを崇め奉りなさぁい!!」
「うわぁぁぁぁぁあああああああッッッッッ!!??」
そこにはご機嫌な様子で「おっほっほ」と高笑いを上げる、したたるウーマンの姿。
そして股間にフランクフルトを挟み、楽しそうに「ちんちんぶらぶら♪」と歌う、愛すべき主の姿があった。
「なっ………何をやっとんで御座るかぁぁああーーッッ!!
貴様ぁぁぁぁああああッッッ!!!!」
「えっ。誰よアンタ? 新しい入信希望者かしらぁん?」
「うふふ♪ これたのしい♪ たのしいねお姉さん♪
ちんちんぶらぶら、ソーセージ♪」
いま小雪は、ワーキングプア侍のことも気にならないほど、おちんちんダンスに夢中だ。
きっと久々の運動が、楽しくて仕方ないのだと思う。
「えっとね? 聞く所によると~、流くんて妹さんがいるらしいじゃなぁ~い?
なら彼を悩殺する前に、妹さんをおちんちんの虜にしとこっかな~って、そう思ったのーん。
ほら、いわゆる“外堀を埋める”みたいな?
この子とってもラブリーで気に入ったし♪ その方が彼も、入信しやすいでしょーん♪」
「やかましいで御座るッッ!!
……そもそもお主、たしか“みっつめの世界”に飛ばされたハズじゃろうッ?!
なぜ貴様がここにいるッ!! そんな行ったり来たりしたら、駄目であろうがッ!!」
「えっ。
いやなんか……頑張ってちんちんブラブラやってたら、戻って来れたわよぉ~ん?
ほら、これってなんか、プロペラみたいでしょん?
きっと飛行機が空を飛ぶみたいに、もしくは次元の川をかき混ぜるみたいにして、戻って来れたんじゃな~い?」
「ちんちんぶらぶら、ソーセージ♪
ちんちんぶらぶら、ソーセージ♪」
「ぬわーーーーッッ!!!!」
とりあえず、事情も設定もよく分からんが、小雪ちゃんが楽しそうで何よりである。
彼女がとても良い子で、純真無垢なのは分かる。……でもお願いだから、もうちょっとだけ警戒心を持って欲しかった。
その人ってゴリゴリの変態で、しかもカルトな宗教家だよ?
しかしながら、きっとしたたるウーマンの催眠術とか、サイコキネシスとか、おちんちん信仰的なパワーのお蔭で、今後どんどん健康になれちゃうかもしれなかった!
スゴイ! おちんちんってスゴイ! やったね小雪ちゃん☆
「――――もう勘弁ならぬッ!!
ここで会ったが百年目ッ!! 斬り捨ててくれるッッ!!
ついでに報酬の5万GET☆
それで小雪どのに、メロン買うてきたるわぁぁぁあああッッ!!!!」
「上等よぉん! このハゲーーッ!!
なんかそこはかとなく、おちんちんみたいな頭しくさってからに!
――――燃焼せよ! ワテクシの
うおー! ちんちんちんちんッ……!!」ゴゴゴゴ…
「あっ、タンポポたべてたおじさんだ。
こんにちは、おじさん♪ たんぽぽコーヒー作った?」
――完ッ!!――