【リレー】今日もカオスなもんじゃ焼き 作:リレー小説実行委員会
Hello, everyone! I'm Matsurino Daten Chocobanana!
I've been watched this novel series since it was started. So now, I'm so excited because I could join it finally.
I hope you'll read this and like my novel.
Nice to meet you, and please enjoy reading mine!
……えーっと、すみません、フザけちゃって。 私です。
とりあえず、ここで、注意事項をいくつか。
・『エントロピー』周りの解釈は、たかが高校生の持ち前の知識の考察です。 ガバガバだったらすみません。
・なんかもう好き勝手やっちゃってる挙句に、長すぎるなんて……時間がある時に、ぜってぇ見てくれよな!
【祭梨乃・堕天=チョコバナナ(アローラのすがた)】
※時間軸 継承(砂原石像 作)の数日後
____。
____。 ……。
冷たく、単調な電子音を出す、何かの機械。
その機械に映し出されるモニターには、青緑色で、ギザギザとした1本線が描かれていく。
「 ____! 」
「 ______!? 」
「 __? 」
「 __、__、__、__! 」
白衣を着た『オトナ』たちが、休む間もなく動き回り____見上げれば、
『オトナ』たちが手を尽くす、その命に目を移す。
……雪のように白く、滑らかで、フニフニとしてそうな肌の、赤ちゃんだった。
『凄いね、もうすぐ お兄ちゃんになるんだね』
『赤ちゃんを守ってあげてね』
『うん! できるよ!』
____だって僕、お兄ちゃんだもん!
……。
……その愛でるべき対象の命も、既に風前の灯火であった。
……。
あぁ、そういえば、前、こんな歌を習ったか……。
「____やだっ!!」
そんなのは嫌だ。
『死ぬ』って、まだよくわかんないけど、ずっと いなくなっちゃうのは嫌だ!
お兄ちゃんだから。
守ってあげなきゃ、いけないから。
____守りたい、から。
だから。
********************
「____父さん、母さん……」
お地蔵様にお供えに行く前に、俺は必ず、両親の仏壇の前に正座して、挨拶をする。
俺の両親は、俺が幼稚園生の頃、交通事故で亡くなった。
車が見るも無残にひしゃげた中で、生き残ったのは……体が小さく、僅かな隙間に体を収めることができた俺と____当時、ご近所さんに預けられてて、事故に遭遇しなかった、妹の小雪だけだった。
「……よし。 お供え物、用意するか」
ろうそくの灯を消して、立ち上がり、台所に移動した俺は____とりあえず、冷蔵庫に何か残ってないか、探してみるのだった。
********************
「あと2週間____切ったぜーっ!!」
美星祭・残り13日、放課後。
カウントダウン・カレンダーを勢い良くめくりながら、流は叫ぶ。
……めくられたカレンダーは、『残り12日』を示した。
なお、流は昨日も上記のセリフを叫びながら引っぺがしている。 うっせぇわ。
いやぁ、今日はいい日だった。
一日中 晴れるし。
授業中に当たった問題が、昨日たまたま飯島に教わったヤツだし。
なにより____昨夕はスーパーがポイント10倍で 新しいパスタを沢山買えたから、楽しみにとっておいた古い分 を今日の朝食とお弁当で食べられたし!!*1
「夕飯は何パスタにしよっかなぁ~。
冷蔵庫に、『4割引だったから衝動買いしたけど、結局使わずに賞味期限が1ヶ月近く切れてる生クリーム』があるから*2、明太クリームパスタとか良いかもなぁ!」
「……お腹、壊さないかな? それ」*3
呆れ返った声音____振り向くと。
「いろは!」
「また来ちゃった____と いうのもね……」
浮かべていた微笑を一転。
いろはは、真剣な表情にて流を見つめる。
「不穏な噂を聞いて、あなたのことが気にかかっちゃって。」
「噂……?」
「____ねぇ、流くん。 あなたのところに、『キュゥべえ』来てない?」
キュゥべえ? と、流は首を傾げる。
「うん。 猫っぽい見た目の、白い毛で、赤い目をした____よかった、来てないんだ」
「そのキュゥべえが、一体どうしたんだ?」
「! ……ううん! 何でもないの!」
「遠慮しなくたっていいんだぜ! ほら、カモン!」
「ホント ホント、ナンデモ ナイカラ、キニシナイデ?」
「? ……そっか、わかった」
流は、頭上に『?』を浮かべながら頷いたため、小首を傾げる動作と首肯する動作が
「おっ、流」
「流、ヤッホー!」
そこへ、アルトとナミが通りすがる。
流は、「おぉ牧場は緑!」と謎の返答を返してくるが……とにかく本日の彼はご機嫌なのである。
「やたらハイテンションだけど……今日の地理、やらかして先生に呼ばれたの、もう忘れたの?」
「____うぐっ!?」
全身が石化したかの如く、あからさまに硬直する彼。
「な、流くん……何があったの?」
「……。 いや、な? 小テストの『各国の首都』書くヤツでさぁ、俺____
『
「「そりゃ呼ばれるわ」」
「そりゃ怒られるよ……」
「し、仕方ねーだろ!? なんか似てるじゃん!!」
「っていうか、お前、英語でも、今日呼ばれてなかったか?」
「____うぐっ!!??」
アルトの発言に、またまた石化する流。 今度は、ひびまで入っちゃっている。
「しょ、小テストで、『button』の意味を『
「『ボタン』だろ……」
呆れかえるアルトに、「まぁ、アレは私も頭が回らなくて正解できなかったし……」と、ナミが珍しくフォローに入る。
「でも流、つまり他にやらかした問題があるんじゃないの?」
「あぁ……『open』の意味を『オーペン』って書いちゃってだな……*4」
「……アンタ、ローマ字読みすればいいとか思ってない?」
「それと、『
「「「 呼ばれた理由、絶対それだ!! 」」」*5
「……はぁ、相変わらず、平常運転の馬鹿ね……」
「でもナミさん、ここまで『やっちゃった』のに、すぐ立ち直れるのは やっぱり流くんの凄いところですよね!」
「おぅ! サンキューベルマッチョな、いろは!」
再びコロッと機嫌を直した流を眺めながら、アルトは、
「(本当に褒められていたのだろうか……)」
と思うが、そういうのは『言わぬが花』、『知らぬが仏』である。
「んじゃ、先生に反省文提出しなきゃなんねーし、そろそろ俺、帰るわ」
「あっ、じゃあ、私、護衛のためについていくよ!」
流といろはは、アルトとナミに見送られ 廊下を歩いていく。
窓の外を見れば、まだ十分に明るい。
やや黄色っぽい光が混じってきていて、夕刻の兆しを感じさせられるが____空は未だ真っ青で、気候は良好。 こちらまで清々しい気持ちになってくる。
学校を出るふたり。
帰路につく中、途中で流が「用事がある」と言うので、いろはは彼を病院まで送り、『みっつめのセカイ』へと帰っていった。
「……帰ってる途中も、何もなくて良かった____」
晩御飯を食べ終え、ベッドの中で、いろははホッと息をつくが……その表情には、未だ一抹の不安が含まれている。
「
いろはは、沈んでいく気持ちの中に 意識を包み、ゆっくりと眠りの中に落としていった……。
「____ヴァァア!!」
「____ヴァァア!!」
「____ヴァァア!!」
「____ヴァァア!!」
「____ヴァァア!!」
「……はっ!?」
いろはは、漆黒の空の下で目を覚ました。
空では、何か黄緑色のものが数多、「ヴァァア!!」と音をたてて、尾を引きながら地平線へ落ちて行っている。
「あれは____そうだ、流れ星だ!」
うんうん! と、いろははドヤ顔でうなずく。
だって、流星は「ヴァー」って言うものだもの。 流れ星で間違いないよね♪
「でも、『みかづき荘』の皆がここにいないの、残念だなぁ。 どうにか1つ、捕まえて、お土産にできないかなぁ?」
「いいものがあるぜっ!!」
非常に聞き覚えのある声がした方へ、彼女が体を向けると____
「流くんっ!」
「よぉ、いろは! 星用の虫取り網を、Amazonでポチって来たんだ!」
これでバッチリ、エビチリだぜ! と、相変わらず訳のわからないことを叫びながら、流は超巨大な網を構える。
「ヴァァア!!!!」
「おっ! ちょうど1匹、活きのいいのが来たな!」
流は鼻息を荒くして、流れ星に狙いを定めた。
「だぁーいせぇつざぁぁぁぁぁぁぁんッ!!!!」
某モデル*6の叫びを連想させるセリフを吐きながら____流は、しっかりと、対象を網でとらえた。
「捕まえたからには、しっかりアリナをアートにしてほしいワケ」
「ぉわぁっ!? 流れ星が喋った!?」
「どういう風にペイントして、コラージュしてくれるか、ベリーエキサイティングなんですケド」
黄緑色の光は、何故か『ルー語』をペラペラと喋くる。
「喋った、喋った」と馬鹿騒ぎする流の横で、いろはは哀れみを全面に出した表情で、流れ星に話しかけた。
その言葉を聞いて、「ヴァァア!!」と怒り狂う流れ星を、いろはは優しく、近くの池に放流してあげた。
思いっきりスプラッシュした水飛沫が、いろはの視界を真っ白に覆う____
「……はっ!?」
いろはが意識を取り戻すと、視界を覆う白いものは、タンポポの綿毛のようなものに変わっていた。
……いや、本当に、綿毛である。
空は依然として夜で、眩しかった流星群も消えてしまっているが____大地に広がるタンポポの絨毯は、真昼の太陽の下のように、燦々と輝いていた。
「わぁ……綺麗! 喋らないみたいだし、これなら、ういたちのお土産に____」
「あっ、お姉ちゃん!」
「____うい!?」
背後から聞こえた 大好きな人の声に、いろはは驚きつつも、嬉々として振り向く。
……が。
「むしゃむしゃむしゃ……タンポポって美味しいね、お姉ちゃん♪」
「 ……………… 」
我が愛しの妹は、現在、タンポポの黄色い花束を両手いっぱいに抱え、それはもうヤギの如く、むっしゃむっしゃとタンポポを食んでいる。
「お姉ちゃんも食べてみて♪ このタンポポ、やちよさんの料理みたいな味がするの!」
「 ……………… 」
「これがサーモンのサラダの味で~♪ うん♪」
……。
うい____お姉ちゃん、悲しいよ。
「これが卵スープ♪」
やっと、一緒に笑って過ごせる日々が帰ってきたはずなのに。
「こっちがポトフで~」
ねぇ、うい。
どうしてういは こんなに嬉しそうなのに____お姉ちゃん、無性に泣きたくなっちゃってるんだろう?
「わぁっ、ステーキだ♪」
お願い、戻って。
元のういに戻ってよ。
「帆立のフライ、美味しい~♪」
……あれ? そもそも、『元のうい』って何だろう?
「鰆のホイル焼きだ~、もう1回食べたかったの~♪」
時間は戻らないし、私たち、日々成長していっているはずなのに、過去の姿を求めるのって____それはとってもおこがましいことなんじゃないかな。
「あっ、デザートだ!」
そうだよ、いろは。
今のういを受け入れなきゃダメじゃない。
「うい、成長したね♪」って……笑って頭をなでてあげなきゃ……。*7
「美味し~い、ブルーベリーパイだぁ~♪*8」
「!? ……ういっ、駄目! 今すぐ口から出して!!」
「____え?」
全ては、手遅れだった……。
「わぁぁぁぁぁぁぁあ!?」
「ういっ、ういー!!」
ういの胴体は、今 味わっていたブルーベリーのように膨張していき……いろはの耳を、妹の怯え声が貫い____
「わ~い、なにこれ楽し~い♪」
____てはこなかった。
なんと うい、普通に現状を楽しんでしまっている。
「ボールみた~い♪」と体をバウンドさせ、可愛らしい声をたてて笑っていた。
「うい……凄いね、成長したね。
いつの間に、お姉ちゃんの理解を超えたところへ行きついちゃったんだろう……」
半分くらい魂が抜けたような声で呟くいろは。
妹が幸せなら、まぁいいかな____諦めきってしまったあまり、そんなことまで思ってしまうが……。
当然。
こ こ で 終 わ っ て は く れ な か っ た 。
「____ヴァァア!!!!」
「! ……まさか!?」
上を見やれば、あの黄緑色の流れ星が、「ヴァァア!!!!」と中空に浮かんでいた。
「エクセレントなアートになりそうだヨネ、あのブルーベリー。
アリナが有効利用してアゲル____死んだら感謝してヨネ!!!!」
流れ星は、よくわからない怪物【参照】 を、ういに向かって放つ。
怪物は、大口を開けて ういを丸ごと腹の中に収め____
「!! ……」
「うい────────ッ!!!!!!」
ガバッ!! と派手に音をたて、いろはは起き上がる。
……いろはは今度こそ、目を覚ました……。
「はぁ……はぁ……変な夢……」
寝汗をぐっしょりと かいてしまった。
現在・午前7時。 日はすでに昇りきっている。
朝シャワーを終え、朝食を食べ、支度し____今日も いろはは、流の護衛のため、世界を越える。
「うい、やちよさん、フェリシアちゃん、さなちゃん、行ってきます!」
「行ってらっしゃーい♪」
「行ってらっしゃい、気を付けてね」
「おー! 帰ったら、絶対、一緒にゲームだぞー!」
「いろはさん、頑張ってください!」
____世界を越えた、その先。
「いろは」
「あっ、流くん! おはよう!」
「ずっと、待ってた」
「……流、くん?」
「あのさ______」
次に、流くんが口にした言葉は。
「……流くんには、知ってほしくなかったのに……」
____私を再び、悪い夜夢のどん底に突き落とした。
********************
********************
「小雪! 元気してるかっ!」
柔らかなオレンジ色の光が、妹・小雪の病室の窓から差し込む。
きっと明日も晴れだろう。
「って、んんッ!?」
その窓から、何か影のようなものが、外へ飛び出していくのを見たような気がするが____うん、まぁ、気のせいだろう。
「あっ、お兄ちゃん! お帰り~」
……『お帰り』。
生まれてこの方、ずっと病院で暮らしてきた小雪にとって、当然、ここは家同然になっていた。
いや____彼女の辞書に、『家庭』なんてない。
病院は、病院だ。
ただ、『病院』に対する認識が、一般人と違うだけ____
「あのな、小雪っ。
今日さぁ、逆転の発想で、『
「……それって、山盛りの高菜の中に、お米が入ってるってこと……?」
「おぅ! 形が まとまんなかったから、ラップに包んだまま置いてったぜ!」
絶 対 し ょ っ ぱ い 。
今日もごめんね、お地蔵様____と、小雪は心の中で手を合わせる。
「ところで お兄ちゃん、今日は何があったの?」
愛する妹の質問に、流は包み隠さず全てを答える。
「____うふふっ、すごいよねぇ、倉田てつをさん。 わかいころから、あんな しぶい声なんだもんね♪」
「ク"ラ"イ"シ"ス"ッ!!」
流の(あんまり似てない)声真似に、ふたりして おかしげに笑う。
「……そうだ、俺、そろそろ帰るな?」
反省文書かなきゃいけないし。 と、パイプ椅子から立ち上がりかけた流の筋肉質な腕を……
「っ……」
「小雪……?」
ほぼ骨と皮のみのような細腕で、小雪は掴む。
「……いかないで……」
少女の瞳ににじむのは、『不安』と『恐怖』。
「どうした? 小雪」
流はかがんで、妹と目線の高さを合わせる。
「……昨日の夜、しゃべるネコちゃんが やって来て、
それに、あの猫ちゃん、よくわからないけど何だか怖くて____お願い、一緒にいて?」
「! ……おぅ、任せろ!」
流が胸を張った、その時。
《____やぁ、小雪》
「「 ! …… 」」
アニメのマスコットキャラを感じさせるような、子供っぽい声が、どこからか響く。
《そして、初めましてだね、秋月流》
ゆらり、と、ふさふさの尻尾を揺らしながら、声の主は姿を現す。
そいつは、白い毛をしていて……「猫か」と問われると疑問符が付くような、何とも形容し難い、小動物の姿をとっている。
「お前は……!」
そして、無機質な瞳からは、微塵も『感情』というものを感じさせない。
《僕はキュゥべえ! ところで、秋月小雪____》
____僕と契約して、魔法少女になってよ!
……。
「ぅ……あぁぁぁあっ!!」
どこかの町。
冷たい街灯の下。
魔法少女が1人、苦悶に頭を抱え、地面に倒れ伏した。
彼女の手首から、濁りきったソウルジェムが外れ、浮き上がる。
闇色の光を纏ってソウルジェムから現れたソレは、真っ黒い『種』。
『種』は、少女の頭上で、瘴気をまき散らしながら、グシュゥッ! と潰れる。
「ふふ……」
その側で。
銀髪の 小学生ほどの少女が、花嫁衣裳を思わせる ゴスロリに身を包んで、邪悪な笑みをたたえている。
きっと、彼女も魔法少女なのだろう。
____ジャラリ。
少女は、武器である『モーニングスター』を構え、現在瘴気で包まれている辺りを、その表情のまま、澱んだ瞳で見つめた。
「……サヨナラ勝ちね。」
少女の名は、『
虚構の中で生まれた彼女は、今なお、偽りの幸せに生き、世界を歪ませていく____
********************
「魔法……少女……?」
小雪が小さくこぼした疑問の言葉に、キュゥべえは、再び尻尾をゆらりとさせ、説明を始める。
| BGM『 |
| 詐希望を |
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…………。
…………。
…………。
…………。
…………。
…………。
《____さぁ、秋月小雪、どうかな? 僕と契約して、魔法少女にならないかい?》
「……待て、キュゥべえ」
《なんだい、秋月流。 だいぶ説明したけど、気になったことでもあるのかい?》
「ありありの有田焼だっ」と、謎の発言をして、流は額にしわを寄せ、聞いた。
「お前____
《……。 何が言いたいんだい?》
「この間の、いろはの言葉____」
____魔法を使うとか、色々な要因で、ソウルジェムが濁ってしまうんだけど
____これが完全に濁りきってしまうと、私たち魔法少女は、死んだも同然になってしまうの
「アレから察するに、お前、嘘はついていなくても……不都合なことは隠して喋ってるだろ?」
《……君の知能は、もう少し低いと思っていたんだけどな》
「大事な妹の安全のためだ、少しは頭も回るよ」
《やれやれ。 まぁ、聞かれさえすれば、言わない道理はないからね》
キュゥべえは、説明を始める合図をするかのように、また尻尾を大きく揺らした。
| 悪 |
| やっちゃん……みっふ……。 そう遠くない昔、とある町で『Yさん』『Mさん』が仲良く過ごしていました。
ふたりは魔法少女です。 歴・何年も経っていて、ベテランと呼んでも差し支えない熟練度でした。
そんな ある日、ひょんなことから、新しい仲間『Kさん』が加わりました。 次第に、チームとして結束を強めて行きますが____ ある時、3人は魔女とエンカウント。 ソレは途轍もない強さで、3人は苦戦します。
大切なチームメイトを傷つけさせないため、Kさんは、全力を振り絞って魔女を倒します。
しかしそれは____相打ちに終わってしまいました。
戦場だった場所には、Kさんの冷たくなった体が、1つ。 先立たれた ふたりは、大いに悲しみました。
ただ、不審な点があるのです。 Kさんの遺体は、
いつもと違うのは、傍にKさんの
ふたりはキュゥべえを問いただしました。 そして、帰ってきた答えは……。
だというもの。 ならば当然、割れれば死んでしまいます。
どうして、そんな仕組みに?
簡単です。 『戦いやすく、痛覚等を調整できるように』と、契約時に 魂を抽出して外部化していたのです。 キュゥべえの、素晴らしい、
それなのに、ふたりは怒るのです。
「それでは 体はただの抜け殻。 ゾンビと同じじゃないか」 「何故、契約の時に言わなかったのか」
と、訴えながら。
____だって、聞かなかったじゃないか?
当たり前の話です。 いつも、誰もが、全てをペラペラと教えてくれるわけ、ありません。 むしろ、そんなこと、ほぼ皆無です。
伝える側は、 情報を取捨選択して、いつも伝えているのですから。
……YさんとMさんは、ショックを受けながらも、少しずつ立ち直っていき、 そのうち、仲間も 沢山 増えました。
その仲間の1人に、『Uさん*10』がいました。
わざわざ名前を付けた時点で察せられると思いますが、 彼女も
きっかけは、Yさんらのテリトリーである『神浜市・新西区』に、 ほかの地区では倒しきれなかった 強力な魔女が流れ込んできたことです。
当然、そのような魔女ですから、元が強いうえに、 移動する中で 多くの人を食ったりなどしていますので、 とてつもなく頑丈になってしまっています。
いくらベテランのYさんとMさんがいるといえど、中々 渡りあえるものでもありません。 チーム一丸となって*11戦ったものの、とあるタイミングでYさんが窮地に陥ってしまいました。
間一髪のところで助けたのは、Uさんです。 ソウルジェムに籠った魔力を総動員し、Yさんをかばいました。
……結局、魔女は仕留めきれませんでした。
更に、悪い事態は重なり____ ソウルジェムの濁り切った Uさんが、それによる苦痛で倒れてしまったのです。
____すぐに回復させなければ……。 チームメイトは彼女にグリーフシードを使おうとしますが、 先ほどの戦いで、ストックは全て無くなっていたのです。
為す術もないまま、Uさんのソウルジェムは____ グリーフシードへと変質し その『
そう____魔女は魔法少女のなれの果て。
希望の 魔法『少女』は魔女へと『成人』するのです……。 「この国では、成長途中の女性のことを『少女』って呼ぶんだろう?」 「だったらやがて魔女になる君たちのことは、『魔法少女』と呼ぶべきだよね」 |
「っ……お前、どうしてそんなこと……!!」
説明が終わるやいなや、流はいきり立って、キュゥべえに怒鳴った。
キュゥべえは、その剣幕にも動じず、涼しい顔で答える。
《宇宙の存続のためだよ。
地球人だって、いずれ
その時に、宇宙が終わりかけだと、困るじゃないか》
「キュ、キュゥべえ、宇宙人だったの!?」
小雪が思わず、キュゥべえの発言にツッコみを入れる。
流も流で 何か言いたいようだが、小雪のソレとは違うようだ。
「っていうか、お前、宇宙のためなら 誰かの命が犠牲になってもいいのかよ!?」
《? ……いいに決まっているだろう?》
……この回答が返ってきたとき、流は、キュゥべえとの圧倒的な倫理観のギャップを感じた。
「……お前」
掴みかかられる直前に、キュゥべえは再び長話を始めた。
《やれやれ。 じゃあ、できるだけ かみ砕いて説明するよ。
そうすれば君たちも、僕のことを理解してくれるんじゃないかな》
| てめぇ作中でも もっとわかりやすく言えよ…… 女の子が僕と契約するとき、『願いがエントロピーを凌駕』するんだ。 『エントロピー』とは『乱雑さ』のことなんだけど、 『願いが乱雑さを超える』って、 当たり前だ てめぇ。 これは、ちょっと僕が要旨を端折りすぎたから、こうなっちゃってるんだけど……。 この解釈のために、私がどれだけ知識をフル動員させたと思ってんだ。 まず、物質の変化は、『エントロピーの増大』と『発熱反応の方向』に従って行われてるんだ。 その2要素があるから『可逆反応』があるんだよね 最初に、発熱反応について説明するけど____ 部屋の中で、熱々のスープを放っておくと、やがて冷めるだろう?
基本的に 物質は高エネルギー状態だと不安定だから、エネルギーを熱として放出しようとする。 だから、発熱……熱を発する方へと、自然上では変化していくんだ。
そして、エントロピーの増大。
地球人は、既に『エントロピー増大の法則』に気付いているようだけど……
コーヒーにミルクを入れると勝手に広がるし、 木の葉を箒で集めたまま放っておくと 風か何かで散らばるし、 お昼時になると、高校の食堂から食物の匂い物質が分散して、漂ってくるよね。
……うん、流、涎を垂らさなくていいから、続きを聞いてくれるかい?
つまり、外から何かの力が加わらない限りは、 全ての物は、散らばる方向へ、散らばる方向へと動いていくんだ。
これは、宇宙だって然りだよ。 君たちは、宇宙がどんどん広がっていってるって、知ってるよね?
……知らないのかい、流? ……えぇ~っ……。 あぁ、小雪はちゃんと知ってるんだね。
うん、まぁ、そういうものなんだよ。 宇宙は膨張していってるんだ。
それが過度になると、外の『無』や、理論上存在する 他の宇宙とのバランスが取れなくなる。
宇宙の誕生というのは、無の中で有が生まれる、それだけで特異で奇跡的な存在だ。 平衡が保てなくなると、容易く崩壊してしまうだろうね。
そこで、僕たちが着目したのが、『感情エネルギー』。 『感情』というものは、他のエネルギーから独立した存在で、扱いが簡単なんだ。
ただ、『感情』は、僕たちインキュベーターの星では、発生するのも稀な『
……納得いかないって顔をしているね。 そうだろうね。 人間にとっては、『異物』どころか、その真逆なんだろうからね。
まぁ、どちらにせよ、僕らにとっては 精神疾患に変わりはない。
そして、偶に 僕たちの星で その患者が現れたところで、抽出可能なエネルギーはごく微量。 まるで話にならなかったよ。
大きなエネルギーを求め、僕たちがたどり着いたのが、そう____地球。 それも、『第2次性徴を迎えた 人間の女性』が、理想的な抽出源だったんだ。
この地球の特徴に合わせ、魔法少女システムを導入し、 人が願望を抱く際に付随する、強力な感情エネルギーを熱エネルギーに変換して、 エントロピー増大より大きい力を逆向きにかければ____
宇宙の膨張を止める、ないしは縮小させることができる。
これが、 『願い(とともに発生するエネルギーの大きさ)がエントロピー(増大時の するということなんだ。*12
全ては、この宇宙に生きる民のため。
地球の少女たちは、言うなれば、宇宙を生かす『心臓』。 絶対に必要な生贄なんだよ。
|
********************
____空はまだ 漆塗りの器のように黒く、数えるのも億劫になるほどの星が、依然として輝いている。
ただ、東の空の地平線だけが、朝を予告するかの如く、ほの明るく、濃青色に染まっていた。
……流はただ、走る。
清々しい夜明け前の空気だが、その清らかで柔らかな空気は、彼の鬼気迫った表情の その異質さを より際立たせている。
昨夕、
記憶を頼りに探し、走り、
いつの間にやら、彼の背後で朝日が昇っていた。
朝の煌めきは、陰のかかった彼の姿と、周囲の瑞々しい景色とを隔てた。
……数時間の後、世界に穴が開き、見慣れつつある 淡い桃色の髪が、彼の視界に移る。
「いろは」
声をかけると、世界を越えてきた当人である いろはが、柔和な笑みを返してくれた。
「あっ、流くん! おはよう!」
「……ずっと、待ってた」
流石に、いろはは彼の様子のおかしさに気付いたようだ。
「……流、くん?」
……。
「あのさ____
昨日、インキュベーターが来て、魔法少女について、全部話してくれたんだ」
「! ……流くん……!」
サッと、いろはの顔色が変わる。
「そして、聞いたんだ。
妹が……小雪が、この宇宙の命を 歪め続けていることも」
……流の表情を、いろはは これ以上直視できなかった……。
「……流くんには、知ってほしくなかったのに……」
いろはは、力が抜けて、崩れ落ちそうになるのを……地面を踏みしめ、歯を食いしばり、とどまった。
話は、再び昨夜に戻る____
********************
「そもそもなんで、小雪なんだ?
お前の理論でいえば、俺も喜怒哀楽は激しいほうだし……
少女じゃないけど、俺でも行けるんじゃないか?」
『魔法少女講義』の後、流から質問が入る。
《……なるほど、
もう1つ、言い忘れていた要素があるんだ____因果だよ。》
「「 因果……? 」」
《うん。 世界を動かすほどの『
それだけ、得られるエネルギーに上乗せがされる。
まぁ、流も、こうして僕が見えてるんだから、基準は越えてるけど、因果は中の下。
あまり適材じゃないんだよね。》
キュゥべえ、もといインキュベーターは、ご丁寧に説明してくれたが……小雪の中では、益々 謎が深まったようだ。
「……因果っていうのが、まだイマイチわかってないんだけど……
でも、お地蔵様のお供えに行ったり、色んな活動をしているのは、お兄ちゃんだよ。
普通は、お兄ちゃんのほうが、そういうのは多いものじゃないの?」
《……やれやれ、勘がいいね。 さっきも言ったけれど、聞かれれば言わない道理はないさ。
でも……いや、なんでもないや。
僕としては、小雪が契約してくれれば、それでいいんだからね》
| 流石に頭を使いすぎて頭痛がしてきた……。 僕たちだって、最初は、流が強い因果を秘めているように見えていたさ。
……最初に確認しておくけど、 因果というのは、流たちの言う『徳』と同じだと思ってくれていいよ。
うん、それで、流の因果を利用しようと思って、調査を進めていたら____
流、君の徳はね____ 君自身の強い思いによって、ほぼ 小雪に譲渡されてしまってるんだよ。
わけがわからない? いいや、わかるはずだよ、思い返してごらん。
____『秋月小雪』が生まれ落ちた その日。
小雪は生まれつき呼吸器系が弱かった上に、『胎便吸引症候群*13』というものになっていた。
その病気は、普通に助かる*14こともあれば、深刻な合併症を引き起こすこともあるし、 ……まぁ、必ず死ぬような病気ではない。
だけど、本来なら、小雪の運命は____ ストレートに言うと、絶対死ぬってことだ。
じゃあ、何故、今こうして、小雪は生きているんだと思う?
……答えを出す前に、1つ____ どういう結果を、どういう未来を、どういう
生 き て 、 と。
君は、小雪の命を、『運命』という絶対的存在から、
……本当に、凄いよ君は。 その『絶対』を捻じ曲げてまで、ここに至ってるんだもんね。
だけど流、
僕たちの 魔法少女システム然り。 勉強やスポーツや芸術で、何か成果を収めようと思っても、努力という労、その時間。 全ての『欲しい結果』は、何かの犠牲の上に、成り立っているんだ。
秋月小雪____君は、今までに、何人の魂を糧にしてきたんだい? 『君が生きる』____そのことのために、いくつの命が縮められ、消されたんだい?
出鱈目を言っていると思われたくないから、例を出そう。
____君の両親。 彼や彼女は、元々、普通に老いて死ぬ運命にあった。 だけどそれが、どうなってしまっている?
君が退院して間もなく、 車内の両親と流は、橋から落下____流は
これだけじゃないよ。 君が、肺の病気で病院暮らしをしている間、いくつの惨いことが起こったかな?
そして、これから、どんな悲劇が起こり続けるんだろうね? 君は、いくつの国の、いくつの星の、いくつの銀河の命を歪めていくのかな? この宇宙の中の、どれほどの魂を、血肉にしていくのかな?
君の存在は、魔法少女が討伐している魔女と、さして変わりない。 むしろ、それ以上だね。
小雪、君は、世界の法則に逆らって
……流、僕に殴りかかる前に、もう少し話を聞いてほしい。 打開策は、ちゃんとあるんだ。
そう、因果を開花させ、解き放つこと! つまり、小雪が魔法少女になる、ということなんだ。
魔法少女になれば、不本意ながら周りを不幸にさせてしまう 因果から逃れられるし、 肉体と魂を切り離すことで、身体能力が強化された、健康な体を手に入れられる! ついでに、願いも1つ、叶っちゃうんだ。
どうだい、悪い話じゃあないだろう? 明日までに、どうするか考えておいてね。
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********************
「ごめん……いろは」
「ううん、流くんのせいじゃない、絶対……」
頭が、くらくらする。
いろはは、軽く眩暈を覚えながらも、何とか正気を保って、流と会話を続けていた。
流も流で、
小雪を悲しませた、傷つけた。 何だか大変なことになっている。
それだけは感じ取ったので、とりあえず、謝らずにはいられなかった。
「一先ず、病院に戻ろう、ね?」
「……あぁ」
脳が ぐゎんぐゎんと、くぐもった音で鳴る。
心臓がギュゥウッと冷たく締め付けられるようで、言いようもなく苦しい。
何かを考えるという余裕もなく、なんとなくの判断で、ふたりは病院に向かっていった。
********************
____死ねない。
何を試してみても、死ぬことができない。
窓から身投げするとか、点滴のチューブで首を絞めるとか。
やろうとしても、絶妙なタイミングで、邪魔が入ってしまう。
わたしは、どうやっても
……。
……小雪は、昨夜から、そんな苦痛と絶望に苛まれていた。
だけど、これなら……。
ベッドの中で、小雪は、瞳に絶望色の希望を宿す。
いつも、お兄ちゃんが果物をむくときに使っている、小型のナイフ(ステンレス製)。
きっと。
これで、わたしは____
「____小雪ッ、起きてるかー?」
「! ……」
あぁ、だめだよ、わたし……。
お兄ちゃんの悲しむ顔を、見られるわけ、ない……!
でも、そんなワガママのせいで、私は また……!!
「……起きてるよ♪」
ナイフをこっそり片付けて、心の内では泣きながら。
小雪は、
お姉さんは、ベッドに近寄って、自己紹介してくれる。
「初めまして、小雪ちゃん。
私は 環いろは____魔法少女だよ」
「!! ……」
まほう、しょうじょ。
……その1単語で、昨日の話が思い起こされる。
「! ……小雪!?」
「小雪ちゃん!?」
……途端に慌てだす 流といろはを数秒、呆然と見つめ____小雪は、気づいてしまった。
____わたし、泣いてる……?
なんで? なんで、なんで、ねぇ。
だめだよ、わたし。 こまらせちゃ……。
だって、だって わたしは、わるい人で……!
わたし、わたしは……。
わ……た、し……。
「ゃ、だ……」
「小雪……」
「小雪ちゃん……」
「いやだ、いやだいやだ、いやだよ……!」
きのうのことが、なかったらいいのに。
今までが、ないことになったら、いいのに。
このままだったら、わたしはもっと、わるい子になる。
魔法少女になるのもいいけど、でも、まだ
でも、おかしいよ。
なんで、こんなに なやまなきゃいけないの?
だって……。
「わたし、生きたいのに……!」
それだけ、なんだよ?
今日も、ちゃんと生きられてる。
……それが、わたしの一番の幸せのはず、だったのに。
「……ねぇ、お兄ちゃん____」
いつものように、笑いかける。
「____『幸せ』って、何なんだろうね」
「……」
お兄ちゃんは、わたしに何も言ってはくれない。
「わかんなくなっちゃったよ。
わたしの生きる幸せが、わたしの だいじな時間が、うそだったんだもん。
今のわたしだって、本当はなかった、うそなんだもん。 わたしは、ぜんぶ……!」
**********
____違う。
と、流は声を大にして言いたかった。
元はと言えば、俺が運命を捻じ曲げたせいなんだ、と。
流は、小雪の表情を、これ以上見ていられなかった。
____なんでだよ、なんでこんな……!
どうしようもなくて。
何とかする術も、現実から逃れる術も。
流は、暫く愕然とした後、涙を流しながら、自然と笑みを浮かべていた。
あんまりだよ、こんなの。
どうしてくれるんだよ。
どうすれば、いいんだよ____
……ある種の乾いた笑いとともに、流は生徒会メンバーに問いかけていた。
あの日は、絶望を振り払いたかったのか、何なのか。
その後、1人で屋台をやったっけか。
……小雪に、何か言葉をかけてやりたい。
多分、小雪もそれを望んでいる。
とは言っても、経験上、こうまで精神がやられると、以外と どんな言葉も頭にはいらないものだ。
どうすれば……。
「____生きよう、小雪ちゃん!」
「「 ! …… 」」
兄妹は、一斉にいろはを見た。
いろはは、小雪の手を包み込むように握り、彼女の目をしっかりと見つめている。
「あなたも、あなたのお兄ちゃんも、悪くない!」
「だ、だけど わたし……」
「小雪ちゃんの、せいじゃないよ! 大丈夫、生きよう!
あなたが一番『幸せ』だと思える生き方を、考えてみようよ!」
いろはの言葉に数秒、小雪はフリーズしていたが……。
「……いいの……?」
「いいに決まってるだろ!」
未だ迷いを見せる小雪に、大好きな兄からの声が。
「それに、可愛い妹を守るのが、『お兄ちゃん』だからな!
小雪のためなら、いくらでも頑張るぜ!」
「だったら!」
思わず、小雪は声を張り上げた。
「だったら、お兄ちゃん……
もし わたしが魔法少女になって、そして魔女になってしまったら……」
「! ……小雪……」
「そうなったら、お兄ちゃんは、わたしのために、なにをしてくれる?」
「俺は____」
即答、だった。
あまりにも早い反応に、小雪は少し戸惑う。
「さっきのインキュベーターの話で『魔女は人を食う』ってあったけど……
まず絶対、そんなことは全力で止める。
そんでもって、魔女から元に戻れる方法がないか探しまくって、それでも駄目なら……」
かがんで顔の位置を合わせた上で、流は、小雪をまっすぐに見つめた。
「俺が、小雪を
(意訳)「俺が、小雪の命を終わらせる」
その言葉を聞いて、安心のためか、小雪は ふにゃっと気の抜けたように笑う。
↑自分が『自分』のまま死ねるため。
「わかった、任せて、お兄ちゃん、いろはさん。
これ以上なにも失わないように____わたし、がんばるから」
一拍おいて、小雪は続ける。
「お兄ちゃんの『夢』と同じように、
わたしも、みんなで一緒に、幸せになるの!」
そして、涙を拭い、心からの笑みを見せた。
「____約束ね!」
・
・
・
・
・
《やぁ、やっと契約する気になってくれたかな?》
その笑顔を脅かすかの如く、窓には1匹の白い悪魔が、ちょこんと座っていた。
「お前、どの面下げて……っ!」
「流くん、駄目、どれだけ言っても通じないよ」
普通のキュゥべえには、感情なんてないから……。
いろはが言う、そのセリフは文面のみなら冷静に思われるが、実際の言い方には昂った気持ちが滲み出ている。
何かしらの負の感情を必死に抑え込んでいる様子である。
「……うん、今すぐ、あなたと契約する。
なんでも思ったとおりに、かなえてくれるんでしょ?」
《そうだよ、小雪。 なんだっていいんだ》
キュゥべえは、仮面じみた笑みを、顔面に張り付けた。
「……それなら、わたしは……!」
小雪は一度、瞬きをし、そして、力強い声で、願いを述べた。
「 わたしは、みんなの本当の『幸せ』の解の
もうこれ以上、不幸せにさせない! ぜんぶ! ぜんぶ、わたしの願いで!! 」
インキュベーターは、すぐさま、この願いの結果を演算した。
この願い方からして、『兄の幸せ』が一番大きな影響を持って実現しやすい。
そして、その流の願いは……。
《なッ!? そんな話、前代未聞だよ!
本当に、そういうことして上手くいくとでも思っているのかい……!?》
感情がないはずのインキュベーターをも、狼狽させる。
「叶うさ」
流が、すぐに断言した。
「どんな願いでも、叶うんだろ?
なら、これが成功しない道理はないね」
「____そんな、無茶苦茶な願いでも」
《本当に無茶苦茶だ、君たちは世界をどこまで歪める気なんだい?》
ソイツの問いに、いろはが、流の肩に手を置いて、答えた。
「違うよ、キュゥべえ。 私たちは『歪める』ことなんてしない」
「あぁ____創るんだ。 みんなの理想郷を。
それを邪魔する『お決まり』や『しがらみ』は、打ち割ってしまえばいい!」
強気な流、そして、彼に並び立ち、唇を一文字に結ぶ いろは。
《……そうやって自信を持っていられるのも、今のうちだよ。
そんなに上手く行くわけがないんだ。 小雪1人の力で……》
インキュベーターは、そう呟いて、小雪に目を移す。
その双眸には____因果を使用しなかったことによって、ソウルジェムの生成に難航し、苦痛の声を漏らしている、小雪がいた。
**********
……。
____そうだね、無理かもしれない。
そんな優しい声音が頭に響き、小雪は、夢心地の中 目を覚ました。
「だ、れ……?」
小雪は寝ぼけた声で そう聞くが、声の主は静かに笑うばかり。
____大丈夫、あなたの思い、無駄になんてさせないよ。
____私は直接そっちには行けないけど、どうか頑張って。
……。
ふわり、と。
心の中に、柔らかな桃色の羽が舞い降りてくる。
そんな幻が、小雪の
**********
「ぁぁぁあああああああああっ!! ……」
気合いを込めて、小雪はソウルジェム生成の苦痛を乗り切る。
《本当に、こんなことが……!》
「「やった!」」
いよいよ狼狽えるインキュベーターと、歓喜する 流といろは。
少し荒い呼吸をしている小雪の手のひらの内には、しっかりとソウルジェムがあった。
その色は、水色に透き通っていて、内側では、桃色の光が とろとろと渦巻き、淡い光を放っている。
《いや、起こりうるはずがない!》
インキュベーターは、混乱しているようだ。
《不可解なことが多すぎる、なんで
そもそも、こんな大規模な願いを叶えれば、
ソウルジェムが即 穢れを吸い込んで、無事ではいられないはず、そのはずなのに……!》
「さいごの疑問には、答えられるよ」
そんなインキュベーターに、小雪が声をかける。
ところで、魔法少女には、自分の願いに対応して付随する『固有魔法』を、最初から自然と把握している者と、そうでない者がいるのだが……。
「それは、わたしの固有魔法が、『希望への転移』だから。
その魔法の効果で、わたしのジェムは、
小雪は、前者であった。
「ってことは!」
流が、さらなる喜びの声を上げる。
「うん____わたしは、
なんでも、あなたの思い通りにはさせないよ、キュゥべえ」
《!! ……こんな、こんなことが……!》
あまりの衝撃に、インキュベーターは、人形のような紅い瞳で、ただただ小雪を凝視していた。
********************
「……何が起こっているのかな?」
そして ここにも、衝撃を受けている人が、1人。
ミスター慧眼人____組織・ComeTrueが首領。
彼は、モニターを見つめながら、高速で頭を回転させる。
何しろ、今の一連の流れは、疑問点だらけなのだ。
「ね、何なんだろうね? この『繋がらない』感じ____」
ミスター慧眼人は、『本来の世界の姿』を再生する……。
「……やっぱり、おかしいな……おい、ボタン!」
「ん~、何か用かな……☆」
どこからともなく出現した、テンジクボタン。
彼は、先程の動画をボタンに見せる。
「……。 違和感の正体はわからないけど、わかったことが、あるよ……☆」
「それは、どういうことなのかな?」
「____断言しちゃうけど、コレ、他の組織やアカシックの奴らの所業じゃないね……☆」
全く別次元の連中が、巧妙に誤魔化してるね……ボタンは続けた。
「だから、ボタンたちのような高次元の存在にも、ぜぇんぜん わっかんな~い……☆」
「……まぁ、仕掛け人が多少絞り込めたと考えれば、収穫かな……」
ただ、母数が把握できていないんじゃあね……ミスター慧眼人は密かに嘆いた。
「とりあえず、『アイツ』に伝えておこう」
____憎むべき敵が増えた、ってね。
********************
「……いやぁ、本当に何が起こっているんでしょうねぇ……」
一方、ハセ・ガワ氏も、PCの画面を見つめながら、頭を抱えた。
もう何もかもが、矛盾だらけなのだ。
「だって、裏秋がアカシックにいたという記録自体が、捏造クサいんですもんねぇ……」
テンジクボタンと裏流月 裏秋を とっちめるため、アカシックの者たちと連携して、ふたりの経歴を洗っていたところ、ボタンはともかくとして、裏秋の経歴に、様々なヌケや穴が見られたのだ。
アカシックの世界の時間は、『円環的』な時間。
少々 小細工をしたところで、アカシックの人々の目を欺くことはできない。
____裏秋は、
第1捜査の結果は、そうだった。
しかし、その綻びだらけの記録すらも全て、更なる嘘で塗り固められてあったのだ。
____『裏秋』と名乗る彼は、最初っから、アカシックで暮らしていたことなど、なかった。
何者かが、アカシックの人々全員の記憶を____ボタンのソレすらも____改竄し、彼の幻影をアカシックの世界の中に投影した。
これが、氏やアカシックの人々が、最終的に出した結論。
「……と、しても、いったい誰が?
裏秋1人で、ここまで大掛かりなことができるとは、到底思えない。
何か、別の大きな存在が____でも、まるで見当がつきませんねぇ。 困った、困った」
そして、ここまで結論が出たときに、生じる新たな疑問。
……テンジクボタンは、絶対に悪意をもって行動している。
だが、
「彼の目的は、何なんでしょうねぇ……。
それがわからない限りは、こちらも大きく動くことはできない。
神様がいらっしゃるなら、こう、パァ~ッ☆と都合よく現れて、教えてくれませんかね?」
____待つこと、3分。
「……駄目みたいですねぇ。
やれやれ、ここ最近は、心身ともに休まる暇もない。
こうして時間を無駄にするくらいなら、即席麺でも作っておけばよかった。
……いや、そもそもここに、そんなものはなかったか……」
こう口にした後、本当にお腹が空いてしまったのか……彼はゆっくり立ち上がって、隣室の冷蔵庫から、昨日買った『納豆餃子(12個入り)』を取り出した。
********************
____神浜市の境界付近
「……おい、あすみよォ。 どうした? そんなしかめっ面して」
スマホを苦い顔して見つめる 神名あすみに、近づいて声をかけたのは____
「……トラゴロー」
____虎、だった。
筋肉隆々で、デカくて、二足歩行で、しかも(しっぶい声で)喋る、虎だった。
名は『トラゴロー』というらしい。
どこぞの『しましま虎の なんとかじろう』を 思い起こさせる名前である。
変な虎がいることはさて置き、あすみは彼に、不機嫌そうに返答した。
「また、いけ好かない奴が現れたのよ。 私の
「フン、どこの偽善者サマなんだかねェ、ソイツぁ____ちょっと見せてみな」
あすみが素直にスマホを貸すと、メッセージを一読したトラゴローは、まだ見ぬ『偽善者サマ』を嘲笑うかのように、再び鼻を鳴らした。
「『みんなの幸せ』って抜かしやがるたァ 笑わせてくれるぜ。
なァーにが
そういう類の『みんな』っつーのは、『大多数』か『発言者のお仲間』だけが対象内なんだ」
思考回路は、『都合のいい身近な奴だけを
「どうする、あすみサンよ……つっても、やるこた決まってるわな」
「えぇ」
トラゴローからスマホを受け取り、ソレを握る手に力を籠めると……あすみは、凄みのある声で言い放った。
「____潰して、私たちの幸せの糧になってもらう」
サヨナラ勝ち、決めるわよ____と、彼女はトラゴローに頷いた。
********************
____みっつめのセカイ・希望が花 *18
「つぼみちゃ~ん! えりか~! いつきちゃ~ん! ゆりさ~ん!」
聞き馴染んだ声に、『花咲つぼみ(キュアブロッサム)』、『来海えりか(キュアマリン)』、『明堂院いつき(キュアサンシャイン)』、『月影ゆり(キュアムーンライト)』が振り向く。
「あっ、来ましたね!」
「なぎささ~ん、ほのかさ~ん、ひかりぃ~!」
順に、つぼみ、えりかの声が、嬉しげに響く。
「やっほー!」
先程4人の名前を呼んだ少女・美墨なぎさが、大きく手を振る えりかに、負けないぐらい振り返す。
……そして、合流した4人と3人は、街路樹の花が咲き乱れるのをバックにして、きゃいきゃいとはしゃいだ。
なぎさたちは、一部の読者様方のお察しの通り、プリキュア____それも、初代の『ふたりはプリキュア』、『ふたりはプリキュアMaxHeart』のメンバーである。*19
『美墨なぎさ(キュアブラック)』、『雪城ほのか(キュアホワイト)』、『九条ひかり(シャイニールミナス)』の3人は、この地・希望が花にて大きな祭りがあると聞き、その日に合わせて、つぼみらと待ち合わせをしていたのだ。
「じゃあ、どこから行こうか?」
花吹雪の中、ゆっくり歩道を進む途中で、いつきが聞くと。
「そりゃー、もっちろん、私んちの『フェアリードロップ』*20でしょ~!」
「植物園でも、おばあちゃん*21が準備して待ってますよ!」
えりかとつぼみが、口々に身内関係の場所をお勧めしだすと、ゆりがそれを窘める。
「落ち着きなさい。
そもそもこういう時は、遊びに来てくれた なぎさたちの意見を最初に聞くものよ」
「あ、あぁ、いや……あたしとしては、勝手に連れまわしてくれても問題ないんだけど……。
じゃあ、ほのかとひかりはどこ行きたい?」
恐れ入りつつ、なぎさが聞けば、ほのかが口を開く。
「そうね、私は____」
「……あの……!」
答えようとしたその時、すぐ背後から、鈴を鳴らしたような可愛らしい声が響いた。
その声の主は……。
「「「「 ? ……さな (ちゃん/さん)!? 」」」」
何時ぞやの番外編・『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』でも少し触れた、『チームみかづき荘』の防御担当・二葉さな である。
「さなさん、どうしたんですか? 変身した姿で……」
心配して ひかりが問うと、さなは、目じりに少し涙を滲ませながら訴えた。
「大変なんです!
『神名あすみ』って魔法少女が現れて、神浜が……いろはさんも、みんなも……!」
焦りのあまりか、内容がかなりアバウトになってしまっているが、それでも十分、なぎさたちや つぼみたちには伝わった。
「わかった、あたしたちもすぐ向かうよ!」
「神浜の、どこですか?」
「えっと……北養区の山中の、開けて野原になっているところですが____
相手がかなり派手に暴れてしまっているので、すぐわかると思います」
それを聞いて、ほのかとゆりが彼女に短く言葉をかけた。
「わかったわ、ありがとう」
「はい! 見滝原の魔法少女も誘って、すぐに戻ります!」
そう言うなり駆けだし、あっという間に地平線の向こうに消える さな。
「……あーもぅ、よりによってこんな日にぃ!」
「そうね……終わったら、いろはさんたちも誘って、お祭り楽しみましょう?」
頭をわしゃわしゃと掻きむしる えりかに、苦笑混じりのほのか。
____絶対、お祭りを堪能できるように、間に合わせてやるんだから……と、なぎさやつぼみたちは、戦地に赴くべく、キリッと表情を引き締めた。
*******************
____高校・2年某クラス・朝会前
「……めっずらしいなぁ、流がまだ学校来てないとか」
飯島の呟きに、たまたま近くにいたナミが、スマホ画面を指し示しながら答える。
「さっき、クラスLIME*26来てたけど、『野暮用で妹のとこ行ってる』……んだって」
「妹さんのとこ……病院か? ……なにかあったんだろうか……」
腕を組んで、そう心配する(たまたま近くにいた)アルト。
「____うっし! いっちょ、学校抜け出して様子見に行くかっ!」
「「 !? …… 」」
「確かに心配ではあるけど、正気!?」
少し離れたところで聞いていた のどかが、
「いやぁ、だってなんか様子が妙じゃん?
あくまで俺の勘だけど、どっか嫌な感じがするから、
VUMメンバーみんな誘い合わせて行ってみてもいいかな____なんて」
彼がここまで言った時、教室のドアが勢いよく開けられる。
入室してきたのは……。
「皆さんっ! 流の妹さんのこと、もう聞かれましたか!?」
「やー、悪いな。
生徒会用LIME見てから、虚が居ても立っても居られなくなっちゃったみたいで」
「「「「 ! …… 」」」」
虚と、摩利だった。
「……飯島たちも、丁度そのことを話してたところです」
今まで静観していた室斑が、立ち上がり、3年生2人に言う。
「タイミングいいな。
まぁ、別に私は反対じゃないし あと学校抜けるの楽しそうだし(不謹慎)、
あとは、
「せぇんぱ~い! 会長の妹さんが~~~!」
「妹さん! 流の妹さんが気になるんじゃぁ~!!」*27
「____ははっ、奇遇にもほどがある」
噂をすれば……で、呼びに行こうとしていたメンバーが集まってくるのを見て、摩利は呆れつつ、おかしげに笑った。
……。
「はぁ~るぅ~こ~ぉろ~ぉの~はぁ~なぁ~のぉ~え~ん~♪」
「あー、それ、去年、中学の頃、音楽の授業でやりました!」
病院への道中、のんびりとした会話が交わされる。
「……学校に戻ったら、どうしようか」
「そんなのどうだっていいじゃない、なんにしたって怒られるんだから……」
「言い訳せずに、素直に謝ったほうがいいかもね____ん?」
のどかが何かに気づいたようで、一同も彼女の声に反応し、視線の先を追う。
「____小雪、体力は大丈夫か?」
「平気だよ、むしろ嘘みたいに動ける……!」
「ふたりとも、そろそろだよ!」
「「「「 あぁーっ!? 」」」」
なんと、今から会おうと思っていた流と小雪、そしていろはがいた!
てっきり、容体が急変でもしたんじゃないかと冷や冷やしていたのに、まさかの真逆だったとは! めっちゃ速く走ってる……。
「……あっ、消えてく……?」
呆然と眺めていると、突如、流たちの前の空間が歪み、3人の姿が、その穴の中に吸い込まれていった。
「……追います! 追うしかないですっ!」
「OK!」
「了解」
誰かが そう声を上げると同時に、メンバーは一斉に駆け出す。
時空の穴はどんどん小さくなっていっているが、まだ余裕で飛び込めるサイズだ。
「「「「 とりゃぁぁぁぁあっ!! 」」」」
思いっきり助走をつけて飛び込み、全員、穴の中に消えていく……。
それから間もなく、穴は、何事もなかったかのように閉じ切った。
********************
____病院内・小雪の病室
あれから結局、キュゥべえは、「もう1度、調査しなおさなきゃな……」と、窓から帰っていったため、後には、流、小雪、いろはの3人が残された。
「……凄いことになったな……」
「うん……。
でも、これでわたし、もう病気に苦しまなくてもいいんだよね?
学校にも通えるし、美星祭にも……!」
小雪が、未だ実感がイマイチわかないながらも、幸せを夢見心地で味わっていると____
____テッレテレレン テレレレテッレ テッレッテレレン テレレレテッレ♪
「あっ、ごめんなさい、やちよさんから電話だ……」
「病院内では、電源を切るかマナーモードだよ、いろはさん」
小雪からの正論に、「ごめんね……」と重ねて誤った彼女は、罪悪感のためか、部屋の隅っこに移動しつつ、電話に出る。
「もしもし、やちよさん?」
『! ……いろは、出来れば今すぐ戻って!』
「な、なにがあったんですか!?」
スーパーで何かしらのお得情報があった、というわけではなさそうだ。 少なくとも。
『北養区、山の中腹の野原で、セイラムという組織が暴れ始めたわ!
向かえる人で応急処置にあたったけど、正直苦しい状況だから____』
『戦闘中に電話なんて、随分と余裕ね……?』
『っ!?』
電波越しに伝わる、金属音、発砲音、破壊音……。
「や、やちよさん!?」
『____お電話変わりまして、鶴乃だよ、いろはちゃんっ!』
「つ、鶴乃ちゃん!
……やちよさんは大丈夫!?」
『
一時的に集中放火されてるけど、
鶴乃の言葉に、いろははホッと息をつく。
『相手の神名あすみって子は、神浜の自動浄化システムと……
あと、アキツキコユキって人を狙ってるみたい!
いろはちゃん、こないだ、この人のこと話してなかったっけ?』
「! ……うん……でも、
『……いろはちゃん? どうし____うわぁぁあっ!?』
大きな爆撃音が、いろはをさらに焦らせる。
「鶴乃ちゃんっ!
待ってて、すぐ行くから!」
画面をタップして通話を切り、スマホを素早く仕舞って、いろはは流と小雪に、やや早口で言った。
「今、みっつめのセカイで、『セイラム』っていう組織が暴れてるみたい……!
向こうの戦力が足りないみたいだし、小雪ちゃんも魔法少女ではあるけど、
相手は小雪ちゃんも狙ってるようだから、危ないし私1人で……」
「ううん、わたし、行くよ」
いろはの言葉を遮る 小雪。
誰の言葉が挟まれる間もなく、小雪は次の言葉を紡ぐ。
「目当ての わたしが行けば、逆に少しでも神浜の被害が小さくなるかもしれないし____
それに、わたしには すごい固有魔法があるもん!
サポートぐらいなら、バッチリ役に立てるよ!」
この言葉を聞いて、いろはは考えた。
……神浜には、小雪の固有魔法と似たような機能があるが、
ジェムが濁る寸前の辺りは、心身に負荷がかかって、戦闘不能に近しい状態になることも多い。
それは断然、強い相手には致命的な欠点だ。
小雪の固有魔法は、まさに向こうで欲せられている物かもしれない。
____後ろのほうにいるだけなら、大丈夫かな……?
「……わかった。 よろしくね……!」
いろはが頷くと、流が挙手して彼女に聞く。
「俺も行っていいか?
何もしないで待ってるだけなのも、性に合わないし……」
迷惑はかけねぇから! と、彼はパチン!と手を合わせる。
「ふふっ、断っても、ついてくるつもりだったでしょ?
いいよ、一緒に行こう!」
「おぅ!」
3人は医療従事者の目をかいくぐって病室を抜け出し、人通りの少ない渡り廊下に移動する。
いろはが近くの窓を開け、見下ろすと……。
「うん、この高さなら大丈夫かな!」
「いやいやいや、十分高いぞ!? ってか何する気だ!」
流の間髪入れぬツッコみが入る。
「え? 勿論ここから……」
「やめとけ!
俺、前に似たようなことして、足の骨バッキバキのバッキンガム宮殿*28になったからな!?」
「大丈夫! 行くよっ!」
言うなり、いろはは流を抱え、窓から飛び降りていく。
「えーいっ!」
「ちょ、ちょ、ちょ、待て いろは____」
「あっ、いろはさん、待って~!」
流が空中であたふたしていると、小雪も続けて飛び降りるのを目視した。
「きゃーっ♡
「小雪ぃぃぃぃぃぃいっ!!??」
……。
…………スタッ。
「ね? 大丈夫だったでしょ?」
気づけば、特にこれといった事故もなく、いろはは流とともに、普通に着地していた。
「……凄ぇな、魔法少女……」
「わたしもヘーキだよ、お兄ちゃん♪」
「……本当に凄ぇな、魔法少女……!」
そのセリフには、『妹がやっと自由に動き回れるようになった喜び』と、『それにしても色々と極端な気が……という困惑』が配合されており、その割合・1:9。
今のシチュエーション下で、呑気に喜ぶ心の余裕など、勿論ほとんどないわけである。
「それはともかくとして、行こう、ふたりとも!」
「あぁ!」
「うん!」
3人は再び、医療従事者に目撃されないようにしながら、『みっつめのセカイ』への入り口に向けて走っていった……。
********************
____みっつめのセカイ・神浜市北養区
「神浜の『自動浄化システム』は、ワタシたちが独占しているわけではなく、
いずれ、地球中に広めようと思っているものです! もう攻撃はやめてください!」
「……だから、それが駄目なのよ。 ハァッ!」
「っ……!」
やちよと同時期に魔法少女になった、『梓みふゆ』が、三日月形の剣で攻撃をいなしながら、あすみに訴えかけるも……相手方の様子からして、平和的解決には向かってくれないようだ。
今現在、この場に集まっている味方の魔法少女は僅か。
『みかづき荘』で暮らす、『七海やちよ』、『環うい』、『深月フェリシア』、『二葉さな』。
みかづき荘に住んではいないが、『チームみかづき荘』に入っている、『由比鶴乃』。
そして、先程述べた、『梓みふゆ』。
……ただ、計6人とはいえ、大ベテランや『最強さん*29』もメンツにいるはずなのに、たった1人の相手・神名あすみとは、やっと渡り合える程度。
それは何故なのか……?
……。
「アイツの変な魔法のせいで、全然近づけねーじゃん!」
「でも、近づいたら、またジェムが濁って……」
「フェリシアちゃん、さなちゃん、頑張ろう! ねばって、お姉ちゃんを待とうよ!」
きっと、すぐ来てくれるから! と、ういが励ます……。
……そう、近接系の武器ばかり持つこのメンツでは、神名あすみの『精神攻撃』の固有魔法と、モーニングスター(鎖付き鉄球)のとの、相性が悪かったのだ。
元々 遠距離OKな鶴乃が炎を使って頑張ったり、やちよが槍を投げたり、みふゆが幻覚の固有魔法を使って撹乱したりなんだりしているが、なかなか勝負は決まらない。
他にも、ういが『ツバメさん』を飛ばしたり、フェリシアが相手の足場をハンマーで「ドーン!*30」と崩してみたり、さなが魔法で透明になってアレコレしたりしてみたが、結果は芳しくなかった。
……。
「____みんな、お待たせ!」
「! ……おー! おせーぞ、いろは!」
「「 いろはさん! 」」
「いろは!」
「いろはちゃん!」
「お姉ちゃん! ……その人たちは?」
ういが首を傾げながら、流と小雪に掌を向ける*31。
「あ、えっと、俺、秋月流! よろしくな!」
「妹の小雪だよ♪ さっき、魔法少女になりました!」
チームみかづき荘のメンバーと みふゆは、ふたりの自己紹介を聞いて、「あぁ」と、納得する。
「話には聞いているわ____そう、結局、魔法少女になることを選んだのね」
やちよが軽く頷きつつ、小雪に話しかけると、
「うん。 ちゃんと、わたしの意志で。
……できることを、せいいっぱいがんばるので、よろしくお願いします!」
「えぇ、よろしくね。 秋月君も」
「おぅ!」
流が片手を肩の高さに挙げて返事をすると、みふゆの緊張した声が飛ぶ。
「____やっちゃん*32、皆さん、来ますよ!」
「「「「 !! …… 」」」」
「環いろは、秋月小雪……!」
苦い顔をして、モーニングスターを振り回しつつ迫って来る あすみ。
彼女はまず、小雪をターゲットにしたようで、大きく跳躍すると、武器を彼女めがけて放ち、ブンッと鈍い音を鳴らす。
「わっ!?」
「小雪っ!」
流が慌てて小雪を抱きしめ、後方へ飛びのく。
狙いが外れても、あすみは鉄球の勢いを緩めず、そのまま いろはに向けて振るった。
「ハァッ!」
「きゃあっ!?」
いろはは咄嗟に避けつつも、クロスボウを構え……
「やァっ!!」
「っ……」
……反撃に、矢を数発放つ。
当たりはしなかったものの、敵を少し離すことができた。
「……でも、どうして小雪ちゃんと いろはちゃんを狙うんだろう?
いろはちゃんの方は、『神浜マギアユニオン』のリーダーだから、で一応説明がつくけど、
だとしたら、小雪ちゃんは? なんで小雪ちゃんも……」
距離的に余裕ができたことで、鶴乃が考え事を始めるが、いくら彼女の頭がいいとはいえ、まだ答えには辿り着けそうもなかった。
「小雪ちゃんの魔法少女化も今さっき初めて聞いたばかりだし、
考察のための材料が少なすぎるよ……」
彼女が、そう独りごちた時____
「! ……みんな!?」
流たちの後を追って『みっつめのセカイ』に来たVUMメンバーが、戦地に到着。
「また何か大掛かりなことをやろうとしてただろ」
「一度巻き込んだからには、きっちり最後まで、私たちに迷惑かけきりなさいよね!」
アルトとナミの言葉に、「それもそうだな、悪かった!」と、流は手を合わせる。
「単独行動
ファンキー爺さんが杖を振り回しながら言ったのに続いて、他のメンバーたちも、流に声をかける。
「本の中の話みたいで、ワクワクさせてくれるわよね!」
「先輩となら、火の中水の中、異世界への穴の中です!」
「ってか、流お前、私ら
「私たちが朝、どれだけ心配したと思ってるんですか?」
「面倒事に対処するには当然、手数が多い方がいい。
……さっさと片付けて、近辺の甘味処を物色するぞ」
「ねぇ、さっきから森の小鳥が俺の頭を巣と勘違いしてるみたいなんだけど、どうすればいい?」
ここ最近で状況が大きく変わり、新たな
しかし、彼の仲間は、いつもと変わらず彼を支えてくれている。
「みんな____サンキューベルマッチョ!!」
流のお礼に、「問題ない」「あ、小鳥が卵を産み((」「当然のことをしたまでです!」などと、いつもの調子で返答をするメンバー。
「まぁ何にしろ、お嬢ちゃん1人に負けるワシらじゃないからな! このまま____」
「……馬鹿ね、いつから
水を差すように、それこそ水の如く冷やりとした口調で、あすみが言葉を発する。
「哀れな勘違いをされないために、わざわざ最初に、神浜の魔法少女たちに……」
____瞬間、小雪を除く魔法少女たちは、強い熱源が接近しているのを察知した。
「! ……さなちゃんっ!」
「いろはさん!」
正直、ここの細かい調整は、文章書くより大変
いろはと さなは急いで手をつなぎ、『コネクト』をする。
ふたりの魔力が接続されると、途端に さなの固有武器である盾が10メートル以上にまで巨大化した。
「っ……!」
さなが、一同を覆い隠すように ソレを掲げると、直後、相当量の火炎と熱波が、盾____というよりは、本来なら、その下にいる一同____目がけて襲い掛かってきた。
「____チッ、防がれちまったかよ。 クソほども面白くねェ」
「! ……誰っ!」
どこからか響く、今の火炎を発したと思しき男性の声に、やちよは警戒して槍を構える。
「 は ン 、俺の顔なんざ、呼ばれなくとも これから嫌というほど拝ませてやんよ」
そのセリフとともに、木陰から出てきた彼は____
「よォ、俺は『トラゴロー・ザイツェコフ』。
「……虎だ」
「虎ね」
「虎、ですね」
「虎さんだー」
「象と張り合ってそう(魔法瓶並感)」
「てゆーか、本当にコイツがやったのか?」
各々の感想が述べられる中、摩利が疑わしげな目で、トラゴローの立派な筋肉を眺めると。
「だーっ!! るっせぇ!
テメェら、見た目が脳筋っぽいからって、ナメくさってんじゃねぇよ!
さっきのアレは、俺が持ち前の技術を駆使して手配した! 間違いなくだ!!」
「……まぁ、虎が人間の言葉使えてる時点で、IQはそこそこありそうだもんな……」
アルトの呆れ切った口調は、トラゴローの火に、油どころか爆鳴気*34を注いだようで*35……。
「……馬鹿にするのも、大概にしとけよ。
『博士』に愛された俺が阿呆なわけがねぇ、と俺は自負し……実際に並の研究者よか
……だのにそうやって、どいつもこいつも人間じゃねぇってだけで決めつけて____」
彼の目が 妖しげに輝き、1人1人を、その眼光を以って射抜いていく。
「人間サマっつぅのは そんなに偉いか、あァン!?
しかも最近は、フェミニズムだのマイノリティ尊重だの言って、
ネットのお祭り大好き野郎が中途半端に馬鹿騒ぎしやがって……真面目にやってる奴に謝れ!」
トラゴローは、本当に悔しそうに地団駄を踏む。
「結局、ほとんどの人間は、自分より弱い奴をどこかで見下さなきゃ、やってけねぇクズだ!
対等に扱おうとする人間が仮に現れても、白眼視して、内心でコケにして!
だから、俺は手始めに、
名付けて『タイガリティ』運動だ!
「虎にも権利が行ってしまえば、そりゃ、人間サマは驚いて面玉引ん剝くだろうさ。
もう人間の『障がい者』とか『LGBTQ』とか『少数民族』とかの物珍しさで、
遊び半分に揶揄する奴は、きっとほとんどいなくなる。」
世界を変えたきゃ、大胆な手を打つ!
そしたら、それよりも規模の小さい変更は、気にされにくくなる。
これこそ、真の平等な社会の始まりよ____
____と、トラゴローは熱弁を終えた。
「ってことで____邪魔モンは、消えてくんな」
彼は、赤外線操作で、数台の火炎放射器を一同に向ける。
「まぁ、山火事が起きないようには調整してやる。
狙いは人間野郎だけだからな。 感謝しやがれ」
ニヤリと笑うトラゴロー。
いろはは それを見て、うかうかしてはいられない、とばかりに、長い呪文を詠唱した後、クロスボウを天に向けた。
「イシュタル・グレイティアぁっ!!」
「いろは……」
「流くん、そしてVUMの皆も……
こんなことしかできなくて申し訳ないけど、どうかそれで身を守って! ……ぅ……」
そう言った直後、いろはは苦しげに膝から崩れ落ちる。
「いろはさんっ!
……あ、ソウルジェムが……ドッペルで戦うんですか?」
「うん、こうでもしないと……
さなちゃん、ドッペルが出てきたタイミングで、相手がこっちに気を取られてる隙に、
固有魔法で透明になって、ここを一旦離れて、増援を呼んできて!」
「……わかりました!」
「よろしくね、さなちゃん……きっとこれは、さなちゃんにしか できないと思うから……」
さなが「はい!」と頷くやいなや、いろはのソウルジェムから禍々しいものがあふれ出し、彼女の髪の毛を媒体に、形を成していく____
……。
********************
「いろはさん、みんな、待ってて……絶対、私が……!」
異形の存在が展開された 先程の戦地も、既に後方遠く。
さなは、助けを求めるため、知り合いの暮らす地、希望が花へと駆けていった……。
!TO BE CONTINUED!
____まさかの後編に続く、ガチのコンティニュード____
もう何も語ることはない____
という冗談はさておき。
後編の進捗度0%なんで、感想送って オラに元気を分けてくれ。
所々、隠し文字で後編への伏線を張っています。
見てみるのも楽しいかも?
(たまに、個人的な愚痴や、見栄えをよくするための意味のない文字が入っていますが)
さぁ皆様!
面白くなるのは、ここからですよ~!
【祭梨乃・堕天=チョコバナナ(アローラのすがた)】