其の神話は、絆を繋いだ   作:風峰 虹晴

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ささっと書こうと思ったらかなり量が多くなって前後に分かれたので初投稿です。


幕間-1 見学

 某日、とある駅にて鈴原トウジと相田ケンスケの2人は、制服姿にて待ち人を待って10分が経とうとしているところだった。

 

「ミサトさん、遅いなぁ〜……。なんかあったんやろか」

 

「嗚呼、もう待ちきれないよ!楽しみで体が震えてきた……!」

 

「あーもううるさいやっちゃなー!あともうちょっとなんやから我慢しいや!」

 

 2人が待っている人物は、会話から分かる通り、葛城ミサトである。しかし待ち合わせ時間より時間が経っているにも関わらず来ないミサトに、2人はそわそわしていた。

 

「お待たせ〜!いやぁ、遅れちゃってごめんね〜!」

 

 そんな2人の元に、満を辞してミサトが到着した。

 

「いえいえ、そんな!」

 

「ワシらも今きたところですさかい、お気になさらず!」

 

 遅れてきたミサトに対し、鈴原と相田は謙虚な態度を取る2人。遅刻した時間は実に約束から20分。ミサトは集合時間を少し早めにしておいたことに、少し安心を覚えた。

 ミサトは女性服の上に赤い上着、つまりNERV職員としてのミサトの制服を羽織っている。

 

「じゃあ2人共、今日一日よろしくね♡」

 

「「よろしくお願いしまーす!!」」

 

 ミサトの声に、2人は大きく返事をする。その声に含まれる感情には、大きな楽しみが含まれていた。これから行う、NERV本部への職場見学に対する楽しみが。

 

 

 

 

 

 ことの発端は数週間前。

 

「え?NERVに職場見学に行きたい?」

 

「「お願いします!!」」

 

 2人が碇シンジに対し、無茶振りして額が摩擦で擦り切れる程の土下座を披露して押し切ろうとしているところから始まった。

 

「頼むよ碇〜!ど〜しても行きたいんだ!一生のお願いだよ!」

 

「こいつがどぉ〜しても行きたいゆうてしゃあないんや!やから頼むシンジ!こいつと、ついでにワシもNERVに職場見学させてくれんか?」

 

「えぇ〜……」

 

 シンジは非常に困っていた。

 確かにシンジはNERVの関係者であるが、エヴァのパイロットというだけであり、約束しても絶対と断言することはできないのだ。

 それに、シンジは職場見学の行き先が既に決まっているのだ。行き先は花屋、故にこれを承諾して是非がどうなろうとシンジには全く関係がないのだ。ちなみに同じエヴァパイロットである綾波レイが選んだ職場見学の行き先はラーメン屋である。

 

 バァン!(大破)

 

「話は聞いた!その頼みはこの私が引き受けた!」

 

「「「ナ、ナンダッテー!?」」」

 

 鈴原と相田はともかく、シンジも割とノリが良かった。

 3人の元に現れたのは右手にプラスドライバー、左手にマイナスドライバーを持っている響マキだった。

 

「ハァッ!」

 

 ブッピッガァン!

 

 マキはプラスドライバーとマイナスドライバーを十字に合体させた。

 合体させたドライバーを自分の机の中に放り込んだ後、マキは鈴原と相田の2人に近寄る。

 

「ほ、ホンマか!?」

 

「う、嘘じゃないよね!?」

 

「ああ!私に任せてもらえれば明日にでも快い返事を貴様らに贈ろうではないか。平伏してください」

 

「「ははーっ!!」」

 

 マキの言葉に、2人は簡単に平伏する。そろそろ額が展性によって広がりそうだ。

 

「……マキ、本当にできるの?」

 

「んぁ?大丈夫大丈夫、既に策は練ってある」

 

 シンジの不安そうな声に、マキは平伏する鈴原と相田の間をジャンプで乗り越えつつ軽く答えた。

 

「ただ君のお父さんが泣かされるだけだよ」

 

「?何か言った?」

 

「いいや?別に何も?あっ」

 

「「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!?」」

 

 

 

 翌日マキは、無事問題なく2人のみ特別にNERVへの職場体験の許可を取ってきた。

 余談だが、この背景には麻雀の卓にて1人の人間が他2人に点棒を捧げ続けたが、それは対した問題ではない。

 

 

 

 

 

 鈴原、相田、ミサトの3人はNERV本部行きのモノレールに揺られ続ける。

 景色は地上から下に、そして少し経った後、電車の景色はジオフロントへと移り変わった。

 

「そうだ、2人にコレ」

 

「これ、なんです?」

 

「僕達の顔写真……証明書?」

 

 モノレールに乗っている間に、ミサトは2人にカードを渡す。それには鈴原と相田それぞれの顔写真が載っていた。

 

「それは本日限りの君達のNERV職員としての証明書よ。それでNERV本部内に入れるわ」

 

「「おぉ〜!」」

 

 2人はミサトから受け取った1日限りのNERV職員の証明書を、まじまじと見つめる。

 ジオフロント内のピラミッドに入ったモノレールは、ゆっくりと減速し、停車する。扉が開き、その先にNERV本部が広がる。

 

「さて2人とも。ようこそNERV本部へ。歓迎するわ、盛大にねッ!」

 

「「!! よろしくお願いします!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────────

 

「ほえ〜……ここがNERV本部なんか〜……」

 

「地上の施設に比べても、ここまで広くて最先端の技術が使われている施設は他にはないよ」

 

 鈴原と相田は、NERV本部内をミサトに連れられて歩きながら、物珍しそうに見渡してお互いに感想を述べ合っている。この調子ならば、職場見学の感想を紙に書いて提出するとしても、最早スペースが足りない程だろう。

 

「さて2人とも。まずはこのNERV本部の司令と副司令に挨拶してもらうわ。そして……」

 

 ミサト達は通路の奥にある大きな扉の元に到着する。

 

「ここが、司令室よ」

 

「と、扉でっかいなぁ〜……」

 

「今まで見てきたものより一番大きい……。それに部屋の感じを見てみると、中もかなり広そうだよ」

 

 鈴原と相田は、その扉から感じられる威圧感に少し気圧されているようだった。

 実際、司令室の扉はかなり大きい。それは2人の友人であるマキが、

 

『これ開け辛くね?』

 

 と言いつつ蹴り破る形で毎度入室していることからその大きさが窺えるだろう。

 

 コンコンコン

 

 ミサトが、司令室の扉を三度ノックする。

 

「葛城です」

 

『入りたまえ』

 

「失礼します。ほら、2人とも行くわよ」

 

「「は、はいッ」」

 

 ミサトは扉を開けて中に入る。鈴原と相田の2人もミサトの後に続いて中に入る。

 

 司令室は、異様な雰囲気を放っていた。薄暗い天井に妙に青み掛かり不思議な模様が描かれている天井や床に、ガラス張りの壁。それは静かな不気味さを放ち、鈴原と相田を緊張させる。

 そんな中、最も異彩な雰囲気を放つものが、司令室の中央に一つ。

 

「…………あそれロン!Foooooo↑!綺麗に跳ねたでさぁ!やはり(自明の理)、ドラを集めて上がるのがさいつよだってハッキリわかんだね!」

 

「腕を上げたな響君。さて碇、これで君の点数は残り800となったが大丈夫かね?」

 

「……………………問題ない」

 

 問題でしかない。

 司令、副司令、そしてマキが中央にて卓を囲み、麻雀をしているその光景は、明らかな異物に近かった。

 

「「「……………………」」」

 

 3人はその光景に沈黙せざるを得なかった。

 それもそうだろう。鈴原と相田の2人からしてみれば、NERVのお偉いさんが同級生と麻雀をしているのである。

 そしてミサトから見れば、上司が部下をこんな日にこんなタイミングでしているのだ。頭痛と胃痛が併発するのも無理はない。

 

「君達が、職場見学に来た中学生かね」

 

 副司令である冬月コウゾウが、3人の存在に目を向ける。その言葉は、明らかに鈴原と相田の2人に向けられたものだった。

 

「こ、こんにちは!鈴原トウジっていいます!」

 

「あ、相田ケンスケです!ほ、本日はお日柄も良く……!」

 

「ハハハ、緊張することはないよ。私達に構うより、このNERVを1日ゆっくりと見学していくといい」

 

「「あ、ありがとうございます!」」

 

 冬月副司令の言葉に、2人は感謝の言葉を伝える。2人の言葉に乗っかっていた緊張は、少し軽くなったようだった。

 

「葛城大佐。後はよしなにしたまえ」

 

「ありがとう、ございます」

 

 ミサトは、深々と頭を下げつつ、微妙に歯切れ悪く言葉を連ねる。それは上司が職務中にも関わらず遊んでいることに対する感情ゆえか、それとも頭痛と腹痛に堪えているが故か。それはミサトにしかわからない。

 

「それでは失礼します。2人とも行くわよ」

 

 ミサトは司令室から退室しようと、扉の方向へと歩き始める。鈴原と相田の2人もミサトに続き扉の方へと歩き始める。

 

「鈴原ぁ相田ぁ」

 

「「!」」

 

 マキの言葉に、鈴原と相田は歩みを止める。

 いつもの制服ではなく、NERV職員の制服に身を包む見慣れないマキは、卓の上の牌を司令と副司令と一緒にジャラジャラとかき混ぜている。

 

「ここは殆どこんな感じだから、あんまし気ぃ張るなよ〜」

 

「……おう!」

 

「言われなくても!」

 

 そう言って2人は再び歩き始める。ミサトは先頭で2人を導きつつ、頭を痛めた。

 

 

 

 

 

 

 

 ──────────

 

「なんや、思ったよりも雰囲気やわっこいとこやな」

 

「そうだね。すれ違う人も挨拶すれば快く挨拶を返してくれる。人類を守る防衛基地ということもあって、礼儀正しさはピカイチだ」

 

 ミサトの後を追って歩く2人は、そんな感想をお互いに述べ合う。ミサトはその会話を聞き、ホッと胸を撫で下ろす。

 会話の内容であるNERVへの印象は悪くない。むしろ好印象とも言える。しかしこの礼儀正しさが先程上司と麻雀をしていたマキが、普段から無駄に陽気に挨拶を仕事場の各所で行っているが故に偶発的に生まれたものだと考えると、再び少し頭が痛む。恐らく二日酔いだろう。

 

 しかし、ミサトはまだ気が抜けない。この後なんらかの展開があってNERVへの印象が落ちる……ことも考えれるのだ。

 1日は長い。ミサトは再び気を引き締めて2人を先導する。

 

「2人とも着いたわ。ここが私の所轄の、NERVの作戦室よ」

 

「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」

 

 段構造になっている非常に大きな構造の中で多くの職員が座れるスペースがあり、そして目の前に部屋のどこからでも見れる巨大モニターに立体地図。

 鈴原と相田の2人はそんなロマンのある部屋を見て歓喜の声を上げる。その様子を見たミサトは、14歳の男子らしさを感じとり、少し微笑んだ。

 

「あったかいものどうぞ」

 

 ふと現れたNERV職員が、鈴原と相田に紙コップが多数載るお盆を差し出した。紙コップの中にはココアと思しき液体が入っており、その職員の言葉通り温かいらしく、湯気が出ている。

 常夏の国である日本は、冷房技術に非常に優れている。故に冷房の効きすぎで時に肌寒く感じる。NERV職員に長袖が多いのもそれが原因だろう。

 

「「あ、あったかいものどうも」」

 

 2人は突然の出来事に少し戸惑うも、素直にその職員から紙コップを受け取る。

 

「ん、美味いなあコレ!」

 

「うん!火傷しない程度の温かさとココアの甘味が体に染み渡るよ!」

 

 どうやら2人の口にあったらしく、ホットココアを絶賛する。それを渡したNERV職員もそれが嬉しかったらしく、微笑みを見せた。

 

「あい、ミサトさんもどうぞ」

 

「ありがとう……って、何してるのかしら?マキちゃん」

 

「「え゛っ」」

 

 ミサトの言葉に鈴原と相田の両名が勢いよくホットココアから目線を目の前のNERV職員に移動させる。

 赤い目に、白い肌、そしてポニーテールにしてあるが白く長い髪の毛は、完全に彼らの同級生である響マキの特徴と完全に一致した。

 

「あバレた。もうちょい流れてくと思ったんやが」

 

「ぜ、全然気づかんかったわ……」

 

「私の雰囲気変化を見破れると思うなよ!……まぁ声も若干変えてたんだけど」

 

「というよりさっき司令さん達と麻雀?してたんじゃないのかい?」

 

「あぁ。しかしゲンドウ=サンは冬月センセの嶺上開花の前には無力だった……アッケナイモノヨ……」

 

 鈴原と相田の質問をサラリと答えていくマキ。しかしその内容にミサトのみならずそれを聞いていた周りのNERV職員達も苦笑いを浮かべる。

 碇ゲンドウという人間はこの場の人間において逆らえるものがいない()の上司。それをいとも簡単に忖度無しで麻雀が出来るのは、比較的仲の良い副司令と、能天気でメンタルが黄金の鉄の塊で出来ているマキぐらいなのだ。

 

「なにやら騒がしいわね」

 

 そんなマキ達の元に1人の女性が訪れた。女性服の上から白衣を羽織るミサトに近しいスタイルの金髪の女性、赤城リツコだ。

 

「あ、リツコさん。ココアいります?」

 

「あらマキちゃん、今はここにいたのね。そうね、頂くわ」

 

 そう言ってリツコはお盆から最後の紙コップを手に取り口につけた。1人の女性職員がその様子にジッ……と若干ぬめり気を持った視線を送っているのは恐らく気のせいだろう。

 

「この人は赤城リツコ。エヴァの開発とNERVの所有するスーパーコンピュータ『MAGI』の管理者よ」

 

「「こ、こんにちは!」」

 

 鈴原と相田は、ミサトの説明を聞いて大きく挨拶をした。

 エヴァの開発とスーパーコンピュータの管理、この2つはとてつもないことだということを、2人は14歳の男子ながらの思考にして理解していた。

 

「あら、貴方達は第五使徒の時の……」

 

 ドキリ、と鈴原と相田の心臓が高鳴る。自然と背筋がピンと引き伸ばされる。

 鈴原と相田の2人は、過去にNERVに迷惑を掛けている。第五使徒が第3新東京市に侵攻してきた際、避難所から抜け出して自らを戦闘中のエヴァ初号機共々危機に追いやった経緯があった。

 それがどれ程迷惑を掛けたのか。エヴァ初号機に乗って戦うシンジの様子を見、その後しこたま叱られた2人は知っていた。

 

「その節は、ほんまに迷惑をお掛けしました!……ほら、ケンスケも!」

 

「あっ、す、すみませんでした!」

 

 故に2人は、リツコの発言に対し深々と頭を下げた。自分に非があると理解している際には直ぐに頭を下げる。非常に優れたリスクマネジメント=ジツである。裏死海文書にもそう書かれている。

 

「いいのよ、2人とも」

 

 頭を下げている2人に、ミサトは声をかける。声を掛けられた2人は、頭を下げつつも、顔を上げる。

 

「市民を護るのが私達NERVの使命。……無事にこうしているのが何よりよ」

 

「「み、ミサトさぁ〜ん……!」」

 

 鈴原と相田には、優しく声を掛けるミサトが天使のように見えた。しかしその正体は日々酒に酔い、酒癖悪く隣人に突撃する堕天使なのだ。

 マキとリツコはその様子を見て、お互いに目を合わせる。鈴原と相田の2人は将来美人局に掛からないことを祈る。

 

「マキちゃんも将来あんな感じになるのかしら」

 

「えそれどういう意味ですかリツコさん?」

 

「さぁ、どうかしら」

 

 マキの言葉に、リツコは少し悪い笑みを浮かべながらその場を後にする。

 

「え?リツコさん?リツコさーん?リツコさーん!?」

 

 

 

 鈴原と相田の職場見学は、まだ続く。




鈴原:NERVに職場見学に来た人間その1。ケンスケの無茶振りに付き合っている形になっているが、その実自分もNERVに興味を持っていたので満更でもない。

相田:NERVに職場見学に来た人間その2。友人にNERV所属の人間がいるのならばこの機を逃す手はないと実行に踏み切った行動的オタク。今日も今日とてカメラのシャッターは鳴り止まない。

ミサトさん:職場見学の先導役。実はマキが先導役を立候補していたが、周りに止められ結局ミサトさんに任せられることに。1日頭と胃を痛める。

主人公:ミサトさん達の行く先々に現れる変なやつ。ほとんど偶然だが少しだけ先回りできたら面白いなと考えていたりする。

ゲンドウ=サン:哀れな人。マキに麻雀をして鈴原と相田の職場見学を許可するも再び麻雀でボコられる。決して弱いわけではない。

冬月センセ:頭のキレが相変わらずやべー人。やっぱりこの人が指揮すればいいんじゃないかなぁ。麻雀の腕前はとんでもなく高い。

リツコさん:鈴原と相田の前で第五使徒戦のことをポロリと漏らすという珍しいミスを犯しちゃった。マキの将来を案じている。

幕間は1話で終わらせるつもりだったんですが思った以上に時間掛かるわ文字数とんでもなくなりそうだから2話に分割しました……。続きは週末です。

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