EP25 銀色
北極。かつて人類の約半分が死滅した過去最大級の大厄災「セカンド・インパクト」の爆心地である南極の対に位置する不定の氷の大地。そんな場所の海上に、ベタニアベースは存在した。
ユーロとロシアが合同で活動を行なっているその基地の活動内容。それは研究だ。
人類と対を成す敵とも言える存在、「使徒」。既に極東の日本では三度襲撃を受けている存在を、ベタニアベースでは、過去に未だ休眠状態にあった第三使徒を回収・利用し研究を進めていた。
しかし、ベタニアベースは現在それどころではない、重大な問題に目下直面中だった。
カラカラカラカラカラカラカラカラ……
施設の大部分が地下、つまり氷の中に存在するベタニアベース内を、蛇に近く、しかし決定的に違うシルエットの巨体が、乾いた音を響かせながら徘徊していた。
大半が骨で構成された体。しかし胴体部分と脊椎部分は明らかな人工物であり、胴体に付けられた脚は多く短く非常に不自然で、忙しなく動いている。
ドォォォォン……!
非常に重厚な扉が、第三使徒によって融解、爆発する。例え肉体を好き勝手弄られたとしても、その力は健在だった。
ア─────……
第三使徒によって、ベタニアベースの天井に丸い穴が発生する。第三使徒はその穴を、ATフィールドによって自身を浮遊させ通過する。
通過した先は、異様な雰囲気の場所だった。円状の大きな足場に、それを囲むように設置されている、赤い模様が動き続ける多くの黒い柱。
冥府と現世を結び、断絶する扉の名を冠する最終関門「アケロン」。第三使徒は尚も上昇を続け、逃走を完了させようとする。
ゴォォォォォォ……!!
その下から、爆音。その音源は、このベタニアベースにおいて唯一、第三使徒に対抗できる存在。
『逃げんなァァァァァァオラァァァァァァァ!!』
それは、異形のエヴァンゲリオン。
本来のエヴァよりも機械パーツが多く、マジックハンド式の義手に四本の脚。
エヴァンゲリオン仮設五号機、そしてそのパイロットの真希波・マリ・イラストリアスが、スピーカー越しに絶叫を響渡らせながら登場する。
仮設五号機は右手の「擬似ロンギヌス」を大きく後ろに引き、第三使徒に突き出す予備動作を繰り出す。
ピキーン!
『やばっ!』
第三使徒はそれを認識していた。頭部の目が光り、それを見たマリは仮設五号機の左腕で防御姿勢を取る。
ドォォォォォォォン!!
『ぐぅぅぅぅう……!』
網膜を塗りつぶす程の閃光、鼓膜を貫く爆音、体中に響き渡る衝撃が、仮設五号機とマリに襲いかかる。
直撃、そして落下。第三使徒を目前にして、仮設五号機はアケロンの足場に不時着する。
『ぐぇぇっ……!いったぁ……!』
マリは落下した衝撃で肺のLCLが吐き出され、痛みに顔を歪めて声を上げる。
仮設五号機の状況は酷かった。パンタグラフは完全に消し飛び、左腕は完全に融解。脚も一本どっかに行ってしまい、脚先のブースターもお釈迦になっていた。
「
ベタニアベースの普段使われない作戦基地にて、ベタニアベース司令官は悪態を吐いた。
被害は甚大、このまま逃せば今後への影響も計り知れない。正に絶体絶命の状況に、悪態の一つや二つ吐かずにはいられなかった。
そんな時に、オペレーターから予想外の報告が入る。
「
「
「
その報告に、作戦室にどよめきが起こる。全員が、映し出されたモニターの映像に目を向けた。
それは、北極の厚い雲の中を、音の3倍の速度で突き進む。そして、ベタニアベースの近くまで来ると、厚い雲を切り抜ける。
グングンと、ベタニアベースにあっという間に到着したそれは、予想外の行動を見せる。
「シュアッ!!」
「キュアァァァァァァァァァァァッ!!?」
音速を超えた速度でそれと接触した第三使徒は大きく吹き飛ばされる。
ドォォォォォォォン……
『えっ!?何々!?』
封印柱にその勢いのまま叩きつけられ、そのままアケロンの足場まで落ちた第三使徒に、マリは困惑の声を一切包み隠さずにリアクションを取る。
ドンッ
「ヘェァ……!」
音速越えでブレていたその姿は、同じくアケロンの足場に降り立つことでより明確になる。
仮設五号機と同じぐらい、40メートル程のヒト型の巨人。赤と黒の肉体に、銀の鎧を身に纏う。胸のV字のコアは生命の如く煌々と輝き、淡い白い光を放つ双眸からは、強い「意志」を感じる。
エントリープラグ内のウィンドウに新しく、目の前の存在がパターン青、つまり使徒であることを示す警告ウィンドウが表示される。
『このタイミングで二体目の使徒……!?』
「キュアァァァァァァァァァァァッッ!!」
「!フッ!!」
マリが疑問を浮かべる間に、第三使徒は再起していた。大きく咆哮を上げ、新たに現れた使徒を威嚇し、威嚇された使徒は一切怯まずに走り出す。
「イィィイィィィィイイィ!!」
ピキーン!
「ゼアッ!!」
仮設五号機を墜落させたように、目から光を放つ。その直前に、ヒト型の使徒は第三使徒の顔部分を膝で蹴り上げる。
目は上を向き、光も上に向けて発射される。
ドォォォォォン……
上空で、光の十字架がアケロンを眩く照らす。それと同時にヒト型の使徒は第三使徒を捕まえた。
『うぅ〜〜〜っ、どっこいしょぉっと……』
マリは、大きく傷ついた仮設五号機の体を起こす。機械パーツが多めの第五使徒の各部から火花が散る。
マリは仮設五号機の稼働の感覚を確かめつつ、二体の使徒の争いを見つめる。
(さてさてさーて……どうしたもんかねぇ……)
チラリと、複数のウィンドウの内の一つである赤いタイマーのウィンドウを見つめる。26……24……23……と時間が減っていくそれは、仮設五号機の活動限界までのカウンドダウン。それが示すのは、あと少しでの稼働停止。
出来ることは、未だ健在である右手の槍を、壊れかけの脚で走破しつつ突き出してコアを貫くこと。しかも、制限時間を考慮に入れると唯の一度で。
しかし現在激しく動く二体の使徒相手に、たった一回で出来るかと言われると、答えはNoに近かった。
と、そんなことを非常に短い時間の中で考えていると……
『ん?』
「ヌゥゥ……オォォ……!」
マリの瞳に、二体の使徒の、特にヒト型の使徒の動きが特徴的に映った。
それは、ヒト型の使徒が、第三使徒の顔を、こじ開けている様子だった。
第三使徒の顔は、開閉する。それは先程2回の第三使徒の攻撃時にも証明されていた。
閉ざされた顔の中に存在するのは、赤く輝く使徒の核である球体のコア。
第三使徒は、体を大きく唸らせながら抵抗をするも、ヒト型の使徒はそれを一切介さず、ひたすら力を込め続ける。
(あっ)
「──────」
そんなヒト型の巨人と、仮設五号機越しのマリの目が、合った気がした。ヒト型の使徒が、まるでチャンスを作り出しているかのように、マリは感じ取った。
『─────まっかせろぉぉぉぉぉぉい!!』
そうマリが叫ぶと同時に、仮設五号機の四脚から三脚になった脚先のローラーが、火花を散らしながら駆動する。
「オォォォォォォォォォォォォォ!!」
シンクロ率は上昇し、仮設五号機の口部の拘束がバキンと外れ、大きな咆哮を上げながら前進する。
「グゥゥッ……シェアッ!!」
ついに、第三使徒の頭部が、完全に解放され、コアが丸見えになっていた。
仮設五号機は右腕の槍を大きく引く。車輪は回り続け、より加速する。
マリは剥き出しのコアに意識を集中する。そして、右手の槍を─────
『オリャアァ!!』
─────突き出した。
ATフィールドが、鉄の槍に対しての紙切れのように大した抵抗も出来ず突破される。
その刹那の直後、槍の先端からコアと接触し、深々と刺さった。パキリという音と共にヒビが入る。
活動限界まで、残り3秒。しかし、この活動限界までのタイマーは止まらない。
エヴァンゲリオン仮設五号機は、活動限界と共に自爆する。それをマリは知っているが故に、エントリープラグを自身で強制排出する。
ガコンッ!
「んえっ!?」
仮設五号機とのシンクロを断って排出直前のマリが、その異常事態に声を上げた。
本来のエヴァと違い、仮設五号機のエントリープラグの強制排出は、機械の補助に頼るもの。つまるところ、先の戦闘で
「やばっ─────」
第三使徒のコアが、完全に割れると同時に活動限界が訪れる。
マリは、第三使徒と、仮設五号機の爆発を聞き届けた。
その直前に音を超えている音を聞き、そして同時にその身に降りかかる強いGに意識を失いながら。
──────────
「あぁ〜〜〜……いったた……」
エントリープラグ内にて、マリは目を覚ました。それと同時に頭に痛みを感じ、シンクロ用のヘルメットを脱ぐ。
先の戦闘と爆発によって頭を打ったのか、出血し、血が頰を滴っていた。
「エヴァとのシンクロって思ってたよりキツイじゃん……」
そう言ってマリは頰の血を拭いながら思慮を巡らせる。
あの瞬間、エントリープラグは排出されなかったのに、どうしてまだ生きているのか。どうやって生き残ったのか。
「……まぁ、生きてりゃいいや……」
断続的にエントリープラグ全体に伝わる揺れの正体と現在位置を確かめるめるべく、マリはエントリープラグのハッチを開けて外に出る。
そこは、赤い海だった。吹いてくる海の風が、マリの茶髪を揺らす。
眼鏡のレンズ越しに、遠くで輝く2つの十字架が瞳に飛び込む。それは第三使徒と仮設五号機の墓標であり、目標の達成と同時に一時の相棒が役目を終えたという証拠だった。
「さよならエヴァ五号機、お役目ご苦労さん」
マリは大人びた表情で、その十字架を見つめながらそう呟いた。
ふとマリは気付いた。空が厚い雲で覆われているが故に全体的に暗いが、何故だか自分の周りだけほんの少し周りより暗いことに。まるで、巨大なものの影に自分が入っているかのように。
そのことに気付いたマリは後ろに振り向く。
「─────」
「うわぁっ!?さっきの使徒!?」
そこにいたのは、先程第三使徒と戦闘を繰り広げ、成り行き的に一時的な共闘状態だったヒト型の使徒だった。
ヒト型の使徒は、海の上にATフィールドを張り、その上に立っているようだった。
ふと、マリが気付く。銀色の装甲が、ほんの少し焦げているかのように黒くなっていた。
「……もしや、助けてくれちゃったり?」
「b」
「うおっ!」
マリの言葉に、ヒト型の使徒はサムズアップした。その行動にマリは驚いた。
サムズアップというのは、ローマ帝国にて生まれた良い行いをした際に行われる行為。詰まるところ、ヒトではない使徒が行うのは普通ならばありえないのだ。
「─────MAN、そう、貴方は
ヒトではない。しかし普通の使徒でもない。正に超人とも言えるようなその存在に、マリはそんな名前がふと浮かんだ。
その言葉を聞いたヒト型の使徒、「
「シュアッ!!」
「銀色の流星……ね」
マリ:ついに登場した芝3600mのヒロインレースにて某芦毛馬の如く突如として前に躍り出た仮設五号機パイロット。ヒト型の使徒に
幕間合わせ3週連続主人公視点がない……次回は主人公視点なので許してくださいなんd(ry
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