仮面ライダーW 『Hの正義』   作:はちコウP

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仮面ライダーWの時系列はTV本編終了後~仮面ライダードライブ・アクセル客演以前

風都探偵以前orパラレルを想定しています。



『Hの正義(前編)/ダブルアイドル&ヒーローズ』⑥

 

「誰なんだ、あの野郎は?」

 

 現れた黒い騎士の頭部はフルフェイスの兜に覆われて、その表情を見ることはできない。

 

 だが右手に持った大剣を肩に担いでこっちを値踏みするように小首を傾げて眺める様子から、ニヤついた顔が兜に張り付いてるような気配を感じる。

 

 まるで街にたむろするタチの悪いチンピラみてえな印象だ。

 

「アイツの名はギャックアー。ヘルダークネス四天王の一人。そして私の……」

 

「オヤジをぶち殺してやった、まあ腐れ縁ってやつよ」

 

「貴様っ……!」

 

「いやぁ、いつ思い出しても爽快だぜ。お前のオヤジと一緒に消し飛んだガキどもの悲鳴はよお」

 

「黙れっ……!」

 

 拳を振りかざして飛び出そうとするジャステリオン。その肩を俺は掴んで引き止める。

 

「仮面ライダー! 何をする!」

 

「待ちなジャステリオン。クールになれ。見え見えの挑発に乗ったら敵の思う壺だ。でなきゃ勝てる戦いも勝てないぜ」

 

「……ああ、ありがとう。君の言う通りだ……少し頭が冷えたよ」

 

「なあに、こういうのは慣れっこなもんでね。ともあれ雑魚は俺が引き受ける。アンタは思う存分あのいけ好かないトゲトゲ野郎をぶちのめしな」

 

「分かった!」

 

 力強く頷いたジャステリオンは再び構えをとって敵と相対する。その姿からはありありと闘志が滲み出ていた。そして冷静さもすっかりと取り戻しているように見える。

 

「ったく、余計なことしやがって。まあ、だとしても結果は変わらねえけどな」

 

 ギャックアーが気怠げな動きで剣を横向きにして構える。

 

「おい、ヤモリンゲ。あの半分こ野郎をキッチリ仕留めろよ。ドクロどもの補充も忘れんな、あんなんでも無いよりはマシだからな」

 

「ははっ! 仰せの通りに! ものども出逢え!」

 

 破裂音と煙が立ち込めて、ステージ上にガイコツ怪人達が数体その姿を現した。

 

 ギャックアーの野郎、自分でアイツらを消しとばしておいて何様だってんだ。

 

「行くぞ!」

 

 ジャステリオンの勇ましい掛け声が合図のように、第二ラウンドが始まった。

 

 ワラワラと襲いかかってくるガイコツ怪人達を俺は次々と殴り飛ばしていく。

 

「そらよっ!」

 

 ルナサイドの右腕を伸ばして、数体の怪人どもを纏めて絡めとると勢いをつけて放り投げる。

 

 頭から観客席に落っこちたヤツらは暫く身を痙攣させた後に、ピタリとその動きを止めて煙のように消え去った。

 

 そこで俺は横目でチラリともう一つの戦いの様子を伺う。

 

 

 

「オラオラオラァッ!」

 

 猛烈な勢いで上下左右、縦横無尽に剣を振るうギャックアーの攻撃を、ジャステリオンはギリギリでかわし続けていた。

 

「どうした! さっきの威勢はハッタリかぁ!?」

 

 ギャックアーの声に答えることなく、ジャステリオンはひたすらに回避をしていた。

 

「そんな逃げ腰じゃ俺様は倒せねえぞ! そんなんじゃオヤジみてえに無様な姿になっちまうぞ!」

 

「…………」

 

 ジリジリとジャステリオンが追い詰められていく。

 

 そして、崩壊したステージの部品が散らばる一角で、足を取られたのか手を着くようにしてしゃがみこんでしまう。

 

「ハッ! 運がねぇな! それじゃあそのまんま死ねや!」

 

 ギャックアーがジャステリオン目掛けて凄まじい勢いで剣を振り下ろした。

 

 その瞬間

 

「ハアッ!」

 

 ジャステリオンの右手がひらめいた。

 

 その手に握られていたのは鉄パイプ。

 

 横合いからそれを当てることで、振り下ろされる剣の軌道を微かにずらした。

 

 ギャックアーの剣は刃の半ばまで床に埋もれるように突き刺さった。

 

「何だとっ!?」

 

「ジャステリオンソバット!」

 

 横合いからジャステリオンの回し蹴りが炸裂した。

 

 突き刺さった剣ごと吹っ飛ばされたギャックアーの身体が、ステージの壁を突き破って転がっていった。

 

「ふぅ……」

 

 軽く吐くような息づかいをしたジャステリオンは、構えをとってギャックアーの飛んで行った方に向き直った。

 

「くっ……ああ……痛てぇ……なっ!」

 

 舞い上がる粉塵の向こうから声が聞こえてきたかと思うと、その中から何かが飛び出てきた。

 

「ふっ!」

 

 ジャステリオンは眼前に迫ったそれ、一本の投げナイフを片手で受け止める。

 

「あ? 何で今の受け止められんだよ?」

 

 姿を現したギャックアーが苛立ち混じりに声を漏らした。

 

「貴様の卑怯なやり口などお見通しだ。正々堂々と立ち向かう気概の無いような者に私は負けない」

 

「ほざきやがれっ!」

 

 激昂したギャックアーが剣を構えてジャステリオンへ飛び掛かっていく。

 

 

 

「意外とテクニシャンじゃねえの、ジャステリオン」

 

 戦いのペースは完全にジャステリオンに傾いているように見える。

 

 あの様子なら心配はいらないだろう。

 

「何処を見ている!? ケケーッ!」

 

 と、俺の左腕に巻き付いてくる物があった。

 

「っ、とと」

 

 そのまま引き込まれそうになるのを踏ん張って耐える。

 

 巻き付いていたのはヤモリンゲの伸ばした舌。

 

 ヤツはしたり顔で目を細めてこっちを見ていた。

 

《油断大敵だ翔太郎。確かにあまり強い相手ではないけれど、よそ見のし過ぎは禁物だ》

 

「わかったわかった。それじゃあこっからは本気で熱いのかましてやるとするか」

 

 俺は右サイドのメモリを素早く差し替えた。

 

《ヒート!》 《ヒート、ジョーカー!》

 

 激しい熱を帯びた真っ赤な右手で、左手に巻き付いている舌を掴み取った。

 

「あひゃっ! あひゃひゃひゃひゃ!」

 

 ヤモリンゲはその熱さに堪らず身悶えして舌を引っ込めようとする。

 

「そうはいかないぜ、っと!」

 

 それをグッと掴み取ったまま、綱引きの要領でヤツを引き寄せていく。

 

「あ、あああっ! あひゅいっ! や、やめひぇふりぇ! はなひひぇ!」

 

「はっ、しゃあねえな。ほらよっ」

 

 必死にもがくヤモリンゲの身体を人二人分くらいの距離まで引き寄せたところで、俺はパッと手を離す。

 

 たたらを踏んで尻餅をついたヤモリンゲ。その姿を見下ろすようにして俺は目の前に立つ。

 

「さーて、これ以上痛い目を見たくなかったらお前の知ってること洗いざらい話してもらおうか」

 

「いやっ、あのっ、そのっ、知ってることと言われても……」

 

 目をギョロギョロと回して困惑気味のヤモリンゲに相棒が質問を投げかける。

 

《君達の組織の規模はどのぐらいか、何故この風都に狙いを定めたのか、何故小宮果穂を襲撃したのか、何か一つくらい答えられるだろう?》

 

「あっ、はい。ええと、頭を整理するので少々お待ちいただければ」

 

 そうしてヤモリンゲは頭を抱えて俯きながら、うんうんと唸り出す。

 

 程なくして何かぶつぶつと呟く声が聞こえてくる。

 

「あ? どうしたんだよ」

 

「……め………だ」

 

「聞こえねえって、もっとハッキリ」

 

「バカめ! 隙ありだ!」

 

 その瞬間、大きく開かれたヤモリンゲの口から猛烈な勢いの炎が飛び出してきた。

 

「ハハハハハ! ハヒャめ!」

 

 炎を吐きながら、勝ち誇ったように笑うヤモリンゲ。だが……

 

「お前だよ、呆れるくらいに馬鹿なのはよ!」

 

 眼前にかざした右腕を伸ばして、爬虫類野郎の首を引っ掴んで持ち上げる。

 

「んなっ!? な、な、何故だ!? どうして平気でいられる!?」

 

「どうしても何も見りゃわかんだろ。ヒートの力は炎に耐性を持ってるってことがよ」

 

 ヤツが口を開く瞬間、俺はヒートの側が正面に来るように立って手をかざしていた。そのおかげでダメージはほぼ無効化されていた。

 

「けどお前は耐えられるかな? 俺の熱い拳によ! うおらっ!」

 

 ヤモリンゲの首から手を離すと同時に炎の力を纏った拳でその頬を思いっきり殴りつけた。

 

「ギャアッ!」

 

 悲鳴と共に吹っ飛ばされたヤモリンゲが、観客席のパイプ椅子を薙ぎ倒しながら転がっていく。

 

 俺はすかさずジャンプしてステージ下に降り立つと、立ち上がったばかりのヤモリンゲに拳の連撃を当てていく。

 

 数十発の小刻みな攻撃を打ち込んで、フィニッシュに渾身の右ストレートを叩き込む。

 

 ヤモリンゲの身体は十数メートル程吹っ飛んだ。

 

「ふぅ、決まったな」

 

 振り抜いた拳を軽く振るうと、熱で目の前の空気が少し揺らめいた。

 

「……こ、こんな、ハズ……では……」

 

 うつ伏せの状態からヨロヨロと立ち上がるヤモリンゲ。その口が再び俺らに向けて開かれる。

 

「やめとけって、意味無いのわかってんだろ」

 

「うるさい! 俺様の真の力を見るがいい!」

 

「うるせぇのはおめぇだ、グズが」

 

「何だ?」

 

 物陰から伸びてきた黒い右腕がヤモリンゲの頭を掴み取る。

 

「んぎゃぁっ!? ギャ、ギャックアー様ッ!」

 

「なっ? いつの間に?」

 

 ジャステリオンと戦っていたはずのヤツがヤモリンゲの背後に立っていた。

 

「役立たずがよぉ。てめぇはアイツと遊んでやがれ!」

 

 驚く俺の目の前でギャックアーがヤモリンゲの身体を力いっぱいに放り投げた。

 

「あぎゃーっ!」

 

 宙を舞ったヤモリンゲが地面にベシャリと叩きつけられる。

 

 フラフラとよろめきながら立ち上がったヤツの目の前には……

 

「ゲゲゲッ!?」

 

 悠然と佇むジャステリオンの姿があった。

 

 だがジャステリオンはヤモリンゲではなく、こちらの方に向け声を張り上げる。

 

「どういうつもりだギャックアー!」

 

「気が変わった。噂の仮面ライダーと遊んでみたくなった。折角こうしてご対面出来たんだからなあ」

 

「とかなんとか言って、ジャステリオンにコテンパンにされて逃げて来たんじゃねえのか?」

 

「この俺様が? ……ははははは……ほざきやがれぇ!」

 

 俺の挑発に激高したギャックアーが大剣で斬撃を浴びせかけてくる。

 

 それを後ろ飛びに避けて拳を構える。

 

「仮面ライダー!」

 

「お、お……オレ様を無視するなあーーーーーっ!」

 

 ヤモリンゲもまた怒りに任せてジャステリオンに攻撃を仕掛ける。

 

「はっ!」

 

 だが難なく身体を逸らして避けられ、ヤモリンゲはその勢いのまま、たたらを踏んでよろけてしまう。

 

 と、あっちは任せて俺は目の前の戦いに集中だ。

 

「オラ! オラァ! 喰らいやがれ! オラッ!」

 

「おいおい、語彙力までチンピラ並みか? 少しは気の利いた台詞の一つ、ウィットに富んだジョークでも喋ってみたらどうだ?」

 

「ほざけぇっ!」

 

 俺は挑発を交えつつも、繰り出されるギャックアーの大剣による連続攻撃を的確に見極めて、身体を逸らして最小限の動きで避けていく。

 

(一撃一撃は結構重そうだが……)

 

 横薙ぎの一撃を後方へと飛び退って回避。

 

(どれもこれも大振りで隙がでかい。これなら……!)

 

 俺は足に力を込めてダッシュを仕掛け、ギャックアーに向けて突進する。

 

 「俺様の剣を喰らいやがれ!」

 

 吼えるギャックアーが袈裟切りに大剣を振り下ろしてくる。

 

「ふっ!」

 

 俺はその直前に姿勢を低くして更に足に力を込めて加速する。

 

 最初のダッシュは力をセーブした見せかけ、本命はこの低姿勢の突撃だ!

 

「うぉらっ!」

 

 ヤツが剣を振り下ろし切る直前に懐に潜り込んだ俺は、燃える右ストレートを腹に向かって叩き込んだ。

 

「ぐぅっ!」

 

 苦悶の声をあげるギャックアーを俺はそのまま勢いに任せて殴り抜けた。

 

 敵の身体が地面を転げ、倒れ伏す。

 

 だが程なくしてヤツは剣を地面に突き立てるようにしながら立ち上がる。

 

「クソッたれ!」

 

「はっ、お喋りと同じで攻めもバリエーションに乏しいみたいだな」

 

「ほざきやがれぇ! 死ねぇ!」

 

 またも激高しながらヤツは剣を構えて突撃してくる。

 

 そんな単調な攻撃、いくらやってこようが結果は一緒だ!

 

 振り下ろされてくる大剣。

 

 俺は再び懐に潜り込むようにして拳を振り抜いた。

 

「っ! とっ……!」

 

 だがそれは敵の身体を捉えることなく空を切った。

 

 勢いのまま前のめりに倒れそうになるのを、どうにか踏みとどまる。

 

「何だ!?」

 

 突然のことに困惑しつつも構えをとり、周囲を見渡す。

 

 今まで目の前にいたギャックアーの姿は忽然と消えてしまっていた。

 

「どこに行きやがった!? ……うぉっ!?」

 

 困惑する俺の足に妙な感覚が走ると同時に視界がグルリと回る。

 

 背中に走る衝撃、目の前に広がる空、俺の身体が地面に倒れた。いや、引き倒されたのだと瞬時に察する。

 

「死ねっ!」

 

 突如視界の端に現れた黒い影が大剣を突き立ててくる。

 

「ぐっ!」

 

 咄嗟に身を捻る。今まで頭のあった位置に大剣が突き刺さる。

 

「おらぁっ!」

 

「がっ!」

 

 脇腹が蹴り上げられる。その勢いで俺の身体はゴロゴロと地面を転がっていく。

 

 その回転を腕を伸ばして強引に止めて、全身のバネを使って身体を跳ね起きさせる。

 

「一体何が起きた!? 分かるかフィリップ!?」

 

《いや、僕も突然のことで面食らっている。瞬間移動能力の類? それとも……》

 

「ともあれ前言撤回だ。とんだ切り札を持っていやがった!」

 

 敵への認識を即座に改めて拳を構えなおす。

 

「おらぁっ! 死にやがれ!」

 

 見ればギャックアーが再びこちらに向けて突撃を仕掛けてきていた。

 

 さっきと同じ対応をすればまた攻撃を喰らってしまう。今度は様子見だ!

 

 ギリギリまでヤツの動きを見定める。

 

 下段に構えられていた剣の動きから、次の攻撃は振り上げと判断した。だが敵は途中で予想とは違う動きに出た。大きくジャンプしての兜割りを仕掛けてきた。

 

(避ける? いや、この起動なら出来る!)

 

 頭目がけて振り下ろされてくる剣をタイミングを読んで両手で挟み止めた。いわゆる真剣白刃取りってやつだ!

 

 だが、手にした刃の感触が一瞬にして消え去った。

 

 いや、剣だけじゃなくギャックアーの姿もろとも霞のように掻き消えてしまった。

 

「消えた!?」

 

 周囲を見渡してヤツの姿を探る……よりも先に俺は直感的に一つのメモリを取り出して起動した。

 

《メタル!》 《ヒート、メタル!》

 

ヒートメタルにチェンジするとほぼ同時に、背中に衝撃と金属の衝突音が響き渡った。

 

「何だと!?」

 

「おりゃっ!」

 

 振り向きざまに裏拳を叩き込み、反対の手で背中のメタルシャフトを引き抜いて降り抜いた。

 

 敵の剣とシャフトがぶつかり合い、金属音が響き渡る。

 

「どうして俺様の攻撃が分かった!?」

 

「勘だよ、勘。まあ、お前は正々堂々ってタイプって感じじゃ無さそうだからな。闇討ち影討ち何でもござれ。そういう奴には防御を固めるのが手ってな」

 

「小癪な! 死ねぇ!」

 

 繰り出される剣の乱れ打ちをメタルシャフトで捌いていく。

 

 戦っているうちに分かってきた、コイツの剣の腕とパワーは飛びぬけて高いわけじゃない。

 

 大剣を持っているという第一印象からはパワータイプの剣士かと思ったんだが、とんだ見掛け倒しだ。

 

「正面切っての堂々とした立ち会いじゃ、まともに戦えねえみたいだな」

 

「ほざけ!」

 

 戦い初めた時に比べて相手の余裕が無くなってきているのを感じる。

 

 折を見て一気にキメてやる!

 

「くっ……てめぇら! こっち来やがれ!」

 

 ギャックアーが声を張り上げる。

 

 それを受けていつの間にか湧き出てきたガイコツ怪人どもが数体こっちの方に集まってきた。

 

 やぶれかぶれと言った具合に飛びかかってくるヤツらをシャフトで殴り飛ばしていく。

 

「くそっ、うっとおしいな!」

 

「はははははっ! 雑魚どもの遊び相手は頼んだぜ、仮面ライダー!」

 

 高笑いを聞いて周囲を見渡す。声の主、ギャックアーの姿は忽然と消え去っていた。

 

 大口叩いて手下に任せて逃げるなんてな、とんだ小物だ。幹部が聞いて呆れるぜ。

 

 だがヤツの言う通り雑魚は雑魚、全てのガイコツ怪人を倒すのに大した時間はかからなかった。

 

「よしっ! 全滅だ! ヤツはどこだ!?」

 

《翔太郎、向こうだ》

 

「ん? あの野郎、あんな所に」

 

 見れば数十メートル離れた場所に逃げるヤツの背中があった。

 

 いつの間にあんな所まで移動しやがったんだ。

 

「こうなりゃ、一気にケリを付けてやる!」

 

 俺は水色のメモリを手にした。

 

《トリガー!》 《ヒート、トリガー!》

 

 高火力の銃撃を得意とするフォーム、ヒートトリガーにチェンジした俺は、即座にトリガーマグナムにメモリを装填した。

 

《トリガー! マキシマムドライブ!》

 

 銃口へとエネルギーが収束していく。それをギャックアーの背中へと向けて狙いを定める。

 

 ヒートトリガーのマキシマムドライブの火力なら、多少狙いがズレてもエネルギーの余波で大ダメージは必至だろうが、倒すなら確実にだ。

 

 全ての準備が整ったところで、俺は相棒と息を合わせ、攻撃を成功させるために声を上げた。

 

「「トリガーエクスプロージョン!」」

 

「やめるんだ仮面ライダー!」

 

 その瞬間、聞こえてきた声はジャステリオンのもの。

 

《まずい! 攻撃は中止だ!》

 

 頭の中に響くのは相棒の声。

 

 けれどもその時、俺の指は既に引き金を引いていた。

 

 その瞬間、目に映ったのは……

 

「なっ!?」

 

 逃げるギャックアーの背中、その先あるのは……

 

 果穂を羽交い絞めにしているヤモリンゲの姿だった。

 

 彼女の名を口にするより先に、高熱のエネルギーがほと走り、目の前に立ちはだかる光景を真っ赤に染め上げた。

 

「果穂ーーーーっ!」

 

 爆風が周囲に吹き荒れて、周囲が煙に包まれる。

 

 もうもうと立ち込める煙の中、俺は必死に駆け出した。

 

 ほんの数十メートルの距離が長く、辿り着くまでの時間が無限にも感じる。

 

 実際は十秒も経っていないくらいなのだろうが……

 

「……っ!?」

 

 そして煙が晴れ、辿り着いた俺の目に映ったのは焼け焦げた影。そして……

 

「くっ……」

 

「ジャステリオン……」

 

 背中から蒸気を立ち込めさせて蹲っているジャステリオンの姿。その腕に抱かれた果穂の姿だった。

 

 間一髪で助けられていた果穂を見て、俺はホッと胸を撫で下ろす。

 

「悪い……助かった」

 

 俺の呟くような声をよそにジャステリオンは、ゆっくりと気を失っている果穂の身体を地面に横たえて、スッと立ち上がった。

 

「ふざけるなぁっ!」

 

 その振り向きざまに繰り出された拳が俺の頬を打ち据えた。

 

「っ!」

 

 突然の衝撃に頭の中が揺さぶられて思わず倒れそうになるのを、どうにか耐えて足を踏ん張った。

 

「ってえ……何しやがんだ!」

 

「それはこっちの台詞だ! いくら敵を倒すためとはいえ彼女を、子供を巻き添えにしようとはどういうつもりだ!」

 

「……巻き添えにするつもりなんて無かった。果穂が人質に取られていると知っていれば撃ったりなんかしない」

 

「ウソを吐くな! 私は見ていたぞ、彼女を腕に抱えたヤモリンゲを目にしようとも、躊躇なく銃を構える君の姿を!」

 

「は? ちょっと待て、果穂の姿なんて俺には全然見えなかったぞ」

 

 逃げるギャックアーに狙いを定めていた時、俺の目には確かにヤツの姿しか映っていなかった。

 

 俺が引き金を引いた瞬間、果穂とヤモリンゲが姿を現した。状況的にはそうとしか考えられない。

 

「この期に及んで尚も言い訳するか、仮面ライダー! 見損なったぞ!」

 

 激昂するジャステリオンが繰り出してきたパンチを、俺はギリギリのところでどうにか躱す。

 

 けれどもジャステリオンの攻撃はそれだけにとどまらない。素早いパンチとキックのコンビネーションが繰り出されてくる。

 

「ちょ、待ってくれ! 話を聞いてくれ!」

 

「問答無用!」

 

 ジャステリオンの拳が俺の胸元と腹部に突き刺さる。

 

 よろめいたところに繰り出される連続攻撃。その衝撃に俺の身体は数メートル吹っ飛ばされる。

 

 それを追うようにして跳躍してくるジャステリオン。降下と共に繰り出される蹴りを地面を転げてギリギリのところで回避する。

 

 衝撃で砕けたコンクリートの破片がパラパラと周囲に降り注いだ。

 

「子供を犠牲にして戦おうなどというヒーローを私は決して許さない! その性根、叩き直してやる!」

 

 悠然と立つジャステリオンが指を突きつけて高らかに言い放った。

 

「ぐっ……」

 

 実際ヤツの攻撃は結構効いていた。致命的なダメージは負ってはいないものの、身体の底に響くような重い攻撃は鈍い痛みを刻みつける。

 

 片膝を着きながらゆっくりと身体を起こしていく。

 

《翔太郎、ここは狼狽えていても仕方がない。全力で迎撃して彼を一旦落ち着かせるべきだ》

 

「チッ! 気が進まねえが仕方ねえ」

 

 頭に響くフィリップの声を受けて、俺はトリガーマグナムを構えてジャステリオンに狙いを定める。

 

 狙うのは足元。急所への直撃は避けて一先ず怯ませる!

 

 引き金を引くと共に発射される火炎弾。

 

 それはジャステリオンの間近で突然、明後日の方向に飛んでいった。

 

「何っ!?」

 

「はぁぁぁぁぁっ!」

 

 胸元で腕を交差して、雄叫びを上げるジャステリオン。その身体が高速で回転していた。

 

 周囲の空気の流れが変わった。

 

 吹き荒ぶ風がヤツを中心にして渦を巻くように収束していく。

 

「グッ……!」

 

 気がつけばジャステリオンの立っている場所には巨大な竜巻が出現していた。それに吸い込まれそうになるのを足を踏ん張って必死に堪える。

 

「ヤベェな、こりゃ……!」

 

《翔太郎、メモリをサイクロンに変える! それで風の力を中和するんだ!》

 

「おう!」

 

 フィリップの声が頭に響き、同時にメモリが入れ替えられる。

 

「ジャステリオントルネード!」

 

 だが、ベルトを展開するより先に竜巻が猛スピードでこっちへと突っ込んできた。

 

 展開に要する時間はほんの一瞬。だがその一瞬が勝負を分けた。

 

 瞬く間に竜巻に飲み込まれた俺は、上下左右、全ての方向感覚が分からなくなるくらいに激しく掻き回された。

 

 風に巻き込まれた瓦礫、粉塵に遮られて視界も全く効かない。

 

「うおおおおっ!?」

 

 果てしなく長い間竜巻に弄ばれたように感じられた。けれどもそれは一瞬のことだったのだろう。

 

 突然視界が開けた。

 

 広がるのは晴れ渡る青空。

 

 感じる浮遊感は一瞬で消え去って、身体は重力に引っ張られていく。

 

 次に俺の目に映ったのは瞬く間に迫り来るコンクリートの地面だった。

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 仮面ライダーダブル!

 

「昔からヒーローが大好きで、いつか自分も憧れたヒーローになるんだって意気込んで、古碌プロの門戸を叩いたんですよ」

 

「僕に考えがある。ここは任せてくれないか」

 

「辛いものですな、自分の罪の記憶を語るのは」

 

「それに引き換え……私は全然ダメ。変わったつもりでも本物にはなれていない」

 

「果穂。お前は立派なヒーローだ。その気持ちは仮面ライダーにだって負けちゃいないぞ」

 

「我こそがヘルダークネス。地獄大帝ヘルダークネスなり……」

 

「頑張れーっ! ジャステリオン! 仮面ライダーッ!」

 

「ありがとう、仮面ライダー。この街の、世界の平和を……頼む」

 

 これで決まりだ!

 

 




ここまでで前半パートは終了です。

最後の部分は次回予告BGMと共にお楽しみください。
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