仮面ライダーW 『Hの正義』   作:はちコウP

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仮面ライダーWの時系列はTV本編終了後~仮面ライダードライブ・アクセル客演以前

風都探偵以前orパラレルを想定しています。


『Hの正義(後編)/夢のHERO・誰かのHERO』②

 

 翌朝、事務所で寝ていた俺の携帯に、いつの間にか風都の仲間たちのメッセージが大量に届いていた。

 

 どれもこれも動画サイトへのリンクが付いていて、それを見た俺は思わず呟いていた。

 

「おい……何だよこいつは!?」

 

 果穂を人質にとったヤモリンゲへ向けて銃を放つダブルの姿が収められた動画。

 

 真横から捉えたと思われるアングルから見える光景。それは言い逃れの余地がないくらいダブルに非があるように見えるものだった。

 

 

 

「動画は瞬く間に視聴、拡散されて騒動に便乗した新たなものもアップロードされつつある。仮面ライダーを批判するものが大半だ」

 

「子供ごと撃とうとするなんてサイテー、最悪のヒーロー、さっさと警察は逮捕しろ、バケモノと同類のクズ、風都の面汚し……酷い! いくら何でもあんまりよ!」

 

 動画のコメントにつけられた仮面ライダーに対する批判、罵詈雑言、それらを目にして俺は思わず歯噛みする。

 

 そんな俺の傍で怒気を帯びた声が亜樹子の口から零れていく。

 

「前に俺もこいつに殺されそうになった実際はただの殺人狂、人とか嬲り殺しにて楽しんでるって噂ってマジ? ……はぁ!? 仮面ライダーがそんな事するわけないやろ! 何処のどいつじゃ! こんなしょーもないデマ書き込んどるのは!? いてまうぞ!!」

 

「炎上騒動に便乗して騒ぎ立てる愉快犯の典型だね。まさか僕らがその当事者になるとは思わなかったけど……っと、亜樹ちゃんやめておきたまえ、下手に擁護コメントを書き込むのは。火に油を注ぐようなものだ」

 

「っ! だって! こんなの黙ってらんないよ! そうでしょ、翔太郎君!」

 

「…………フィリップの言う通りだ、落ち着け」

 

「でも! こんな風に好き勝手言われるなんて我慢出来ない!」

 

「落ち着けって言ってるんだ!」

 

 強く握りしめた拳が壁を打ち、大きな音が響き渡る。

 

 ガレージはシンと静まり返り、遅れて拳に鈍い痛みが広がってくる。

 

「……ごめん……本当に悔しいのは翔太郎君やフィリップ君の方だよね、なのに私……」

 

「いや、いい。お前が代わりに怒ってくれたおかげでこっちは冷静になれた。ありがとな」

 

「翔太郎君……」

 

「二人とも、こっちの動画も見てもらえるかな? 同じく不愉快になるものかもしれないけど」

 

 フィリップに促されて覗き込んだパソコンのディスプレイで再生された動画。それは……

 

「ジャステリオンの……もしかしてこの間の動画と同じ」

 

「ああ、同じアカウントだ。ヘルダークネスのヤツらをぶちのめす姿だけじゃなく、ご丁寧にダブルを叩きのめしたシーンまでド派手に演出してやがる」

 

 動画と併せてコメント欄にも目を向けてみる。

 

 カッコいい!

 

 これが真のヒーローだろ!

 

 仮面ライダーを倒すとこマジでアガる!

 

 天罰だ!

 

 と言った具合に案の定ダブルがヒール役に成り下がっていた。

 

「うぐぐぐぐ……」

 

 歯ぎしりをしながら呻く亜樹子を前にして俺は大きく深呼吸をする。

 

 ……実際にダブルが果穂を危険に晒したのは紛れもない事実、俺の落ち度だ。

 

 だからある意味これは罰みたいなもんだ。甘んじて受け入れよう。

 

 だがそれが街を泣かすヤツらを追わない理由にはならない。

 

 溢れ出そうな感情を押し留めて、俺は街に調査に出ようと足を踏み出す。と、その時だった。胸元のスタッグフォンが鳴り出したのは。

 

「翔ちゃん!? 大変なの! すぐに来て!」

 

 情報通の女子大生二人組【クイーン&エリザベス】のエリザベスの声が耳に響いてくる。

 

「エリザベスか!? どうしたんだ!?」

 

「動画の撮影でオフィス街に来てて、キャアッ!」

 

「おい! 大丈夫か!?」

 

 電話口の向こうからは何がか壊れるような音と人々の悲鳴、それに混ざって

 

「エリザベス早く! 逃げなきゃ!」

 

 と同じく危機感に溢れたクイーンの声が聞こえてくる。

 

「ガイコツみたいな怪物がたくさん! あっ」

 

 そこで電話は途切れてしまった。

 

「どうしたんだい翔太郎」

 

「ヘルダークネスのヤツらだ! オフィス街で暴れてるらしい!」

 

「もう! アイツらときたら……!」

 

「フィリップ、亜樹子、先に行く! お前達は後から」

 

「待ちたまえ翔太郎」

 

「何だよフィリップ! 早くしねえと犠牲者が」

 

「僕に考えがある。ここは任せてくれないか」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「ガハハハハ! 我こそはヘルダークネス獣戦士隊長ライオング! 偉大なる我らが首領様のため、この風都は要塞都市として貰い受ける! 命が惜しくばおとなしく投降するがいい!」

 

「そこまでだヘルダークネス!」

 

「この声は!? ジャステリオン! ええい! 姿を現せえ!」

 

「私はここだ! トウッ!」

 

 俺の耳にヘルダークネスの新たな怪物らしいヤツの声と駆けつけたジャステリオンの声が聞こえてくる。

 

「そこかしこでガイコツ怪人達が暴れ回っているようだ。逃げ遅れた人も少なくは無いようだね」

 

《急いで逃がさねえと……》

 

「ああ」

 

「キャーッ!」

 

 絹を裂くような悲鳴が聞こえてくる。

 

《あの声は!? フィリップ!》

 

「わかっている! 行け! ファング!」

 

 フィリップが声を上げると共に電子音声の咆哮音が聞こえてきた。

 

 自立行動可能な恐竜型ガイアメモリ、ファングメモリ。それの駆けて行った先から暴れるような音、激しい切創音などが響いてくる。

 

 相棒の走る気配が伝わってくる。

 

 程なくして

 

「助かった……って、フィリップくん!?」

 

「ありがとう! 怖かったー……ガイコツだらけでもうヤダよー! 映えスポットのカフェに来たらこんな目に遭うなんてー、最悪だよー!」

 

 クイーンとエリザベスの驚きと安堵の入り混じった声がした。

 

「翔ちゃんはどうしたの?」

 

「彼は別の場所で行動中だ。ともあれ早く逃げるんだ。向こうの方は怪物の姿が見えない、素早く駆け抜ければ襲われることは無いだろう」

 

「わかった。ありがとねフィリップくん」

 

「ありがとー」

 

「ああ、用心したまえ」

 

 クイーンとエリザベスがその場を走り去っていく気配がした。

 

「フィリップくんが来てくれるなんてレアじゃん? なんかラッキーって感じ」

 

「何言ってるのよ。まあ、気持ちはわかるけどね」

 

 聞こえてんぞ! ったく、アイツらときたら……こっちにも事情ってもんがあるんだっての。

 

「どういうことなんだろう? 助けを呼んだはずの翔太郎ではなく僕が来たというのに……望んだ状況と異なる状況に歓喜するとは、不可解だと思わないか翔太郎?」

 

《さあな! 知らねーよ! んなことよりさっさと行くぞ!》

 

「ああ、了解した。来いファング!」

 

 フィリップの呼び声に応えて咆哮したファングの声が聞こえると同時に、俺はドライバーのスロットにジョーカーメモリを挿入した。

 

 ファングメモリの変形する音と共に

 

《ファング!》

 

 ガイダンスボイスが響き、ファングメモリがフィリップのドライバーに挿入された。

 

「「変身!」」

 

 その瞬間、ガレージのソファーに座っていた俺の意識が遠のいた。

 

 一瞬暗くなった俺の視界がパッと明るくなる。目の前には破壊の跡が点在する風都のオフィス街の光景が広がっていた。

 

《ひでぇことしやがる、ヘルダークネスのヤツら……》

 

「さて、まずはジャステリオンと合流だ。こちらの意思を伝えておくに越したことはないだろう」

 

《ああ、そうだな》

 

 そうしてフィリップの身体に俺の意識が融合した白と黒のボディを持つダブルのフォーム、ファングジョーカーは街中を疾走する。

 

 

 

 

「ガハハハハ、やるではないかジャステリオン! それでこそ張り合いがあるというもの」

 

「これしきの攻撃で私は倒せないぞ! ライオング!」

 

「ならば数で押し通すまで! 出でよ! しもべ共!」

 

 ライオングが手を掲げたその時、煙と共に戦闘員ドクロボンの集団が私を囲むように現れた。

 

 その数は五体といったところ。いずれも通常のそれらとは異なり頭部に獣の角ような物を付けていた。

 

 間髪入れず飛びかかってくるそれらを私は格闘術で捌いていく。

 

「コンビネーションAを実行せよ!」

 

 ライオングが号令をかけると、がむしゃらに飛びかかってきていたドクロボンらが距離をとり、私の周囲をグルグルと走り回り始めた。

 

 その回転の輪が徐々に縮まっていく、私を押し潰すようにして攻撃する算段か。

 

 だがそうはいかない!

 

「ジャステリオンタイフーン!」

 

 身体の回転力で巻き起こした竜巻が迫る敵を吸い込んで跳ね飛ばす。

 

 宙を舞ったドクロボンが地面に落下すると共に煙のように掻き消える。

 

「まだまだこんなものでは終わらんぞ! 出でよ!」

 

 ライオングが新たに呼び出したドクロボンが再び私の周囲を回転する。

 

「くっ!」

 

「隊長たる私の力を持ってすれば兵の補充など朝飯前! 貴様の体力が尽きるまで何度でも繰り返そう!」

 

「兵士を捨て駒にするとは何と卑劣な!」

 

「ガハハハハ! これは戦略というものだ!」

 

 私は再びジャステリオンタイフーンにて敵を跳ね飛ばす。

 

「さあ行け! ジャステリオンを限界まで追い詰めろ!」

 

 三度出現したドクロボンが走り出す。

 

 このままではマズい。

 

 この状況を打開するには……

 

《アームファング!》

 

「ハアァァァァッ!」

 

 雄叫びと共に高速で現れた人影がドクロボンらとすれ違う。

 

 そして倒れ伏し霧散していく。

 

「大丈夫かな? ジャステリオン」

 

「君は……仮面ライダー!?」

 

 以前とは異なる白と黒の二色のボディになってはいるが、彼は紛れもなく仮面ライダーだった。

 

 危機を救ってもらった感謝の気持ちと共に、怒りに似た感情が私の胸に湧き上がってくる。

 

「助けてもらったことは感謝する。だがこれ以上の助力は不要だ! 子供を手にかけるような者と私は協力しない!」

 

「昨日の件に関しては僕も反省している。小宮果穂を危険に晒してしまったこと、それは紛れもない事実だ。そして君を傷つけてしまったことも謝罪したい。すまなかった」

 

「……仮面ライダー」

 

「そして昨日の状況において一つ気になる点がある。その事について君と話と情報共有がしたい。構わないかい?」

 

「……了解した。君の誠意を信じよう」

 

「感謝する、ジャステリオン」

 

「ええい! 何をゴチャゴチャと話している! 貴様ら諸共に殺してくれるわ!」

 

 怒声を上げるライオングが戦闘員をまたも呼び出す。

 

「ジャステリオン、僕は雑魚を散らして周囲の逃げ遅れた人々を救助に走る。あの怪人の相手をお願い出来るかい?」

 

「元よりそのつもりだ」

 

「じゃあ行くよ!」

 

 駆け出した仮面ライダーがドクロボンを腕の刃で斬り、頭を手で掴んで叩きつけ、蹴り倒して踏みつける。

 

 紳士的な口調とは対照的に、まるで獣を思わせる荒々しい戦闘スタイルで瞬く間にドクロボンを蹴散らして駆け抜けていった。

 

 後に続き駆け出した私はライオングへと手刀を見舞う。

 

「ぬうっ!」

 

「これ以上好きにはさせんぞ!」

 

 

 

 

《ふう、物分かりのいいヤツで助かったな》

 

「ああ、あちらは彼に任せておいて問題ないだろう。おかげで僕らもやるべき事に専念できる」

 

 ファングジョーカーは破壊の跡が点在する街中を駆け抜けて、逃げ遅れた人々を救出していく。

 

 幸いなことに大した怪我人はいなく、皆自力でその場から逃げることができた。

 

「これで調査に集中できる」

 

《調査? ジャステリオンに加勢しなくていいのか?》

 

「僕らが戦うべき相手は他にいるはずさ」

 

 すると足元から電子音のようなものが聞こえてきた。

 

 相棒がその方へと手を伸ばして掴み上げたそれは

 

《デンデンセンサーか》

 

 カタツムリ型のメモリガジェット、デンデンセンサーだった。

 

「これで周囲を探れば……」

 

 ゴーグル型へと変型したデンデンセンサーを通して見た視界、その端々に小さな反応が複数あるのが、感覚を共有する俺の目にも入ってきた。

 

《この反応は、何だ?》

 

「恐らく僕の推測通りのものさ」

 

 反応があった箇所に行き、ファングジョーカーの手が拳大の瓦礫を拾い上げる。

 

「やはりそうか」

 

《これは……隠しカメラか!》

 

 砕けたブロック片、それは質感をそれらしく偽装したプラスチックで出来ていた。その中央付近には1センチにも満たない小さな穴が空いている。

 

 軽く力を入れて割ってみれば、中から大きめのコイン程度の大きさのカメラが出てきた。

 

「その通り、もう一人の敵がコレをそこかしこに設置した」

 

《もう一人の敵?》

 

「ああ、そしてそいつは今もこの周辺にいるはず」

 

 再びデンデンセンサーで周囲を探り出すフィリップ。

 

 だが瓦礫にカモフラージュした隠しカメラ以外の反応は目に入ってこない。

 

「ふむ、これは想定外だ。センサーをも潜り抜ける隠密能力を持っているとは……」

 

 フィリップは暫く考えるような仕草をすると、視線を遠くの方へと向ける。

 

 その方向ではジャステリオンが例のライオン野郎とバトルを繰り広げていた。

 

 遠目に見てジャステリオンがやや優勢であるように見える。

 

「昨日の、そして今朝の画角から推察するに……うん、間違いない」

 

 何やら合点がいった様子のフィリップはファングメモリのレバーを二度軽く弾いた。

 

《ショルダーファング!》

 

 ファングジョーカーの右肩に刃が出現、それをすかさずブーメランのように投擲する。

 

 飛んでいった場所は何もない、誰もいない空間だった、しかし……

 

「ぐわっ!?」

 

 何かを切り裂く音と驚きにも似た悲鳴が聞こえてきた。

 

《何だ!?》

 

 ショルダーセイバーの通り過ぎた後には全身黒ずくめの人影がうずくまっていた。

 

《アイツは……ドーパントか!》

 

「ああ、恐らくは以前照井竜が遭遇したやつだ」

 

「ど、どうして俺の居場所が分かったんだ?」

 

 くぐもったような声で喋るドーパント。

 

 切り裂かれた場所を手で押さえている。そこからは破れた黒い布のようなものが垂れ下がっていた。

 

「昨日と今日、それぞれにアップロードされた動画を検証した。アングル、被写体との距離感、そのクセを掴むのはさほど難しくは無かった」

 

《なるほど、それで潜んだ場所のアタリを付けたってわけか。てことはあの動画を作ったのは》

 

「そこの真っ黒なドーパントというわけだ」

 

 やたらと臨場感と迫力のある動画、そのカラクリはヤツが姿を隠しながら近距離で撮影をしていたから。なるほど納得だぜ。

 

「クソっ!」

 

 ドーパントが腕を伸ばすと黒い触手のようなものが伸びてきた。

 

 ファングジョーカーが防御のためにかざした左腕にそれが巻き付いた。

 

《アームファング!》

 

 だが、すかさずファングメモリのレバーを弾いて出現させた腕の刃がそれを切り裂いた。

 

 切り裂かれた黒く平たい紐状のものがバラバラと散らばっていく。

 

「た、助けてくれー!」

 

 ドーパントは踵を返して逃げ出していく。

 

《逃すかこの野郎!》

 

 これ以上舐めたマネされてたまるか!

 

 そんな俺と同様の心情であろうフィリップも即座にドーパントを追いかける。

 

 その瞬間、周囲から何かが弾けるような音と煙が立ち込めた。

 

「っ!?」

 

《こいつは……!?》

 

 例のガイコツ怪人どもが数体突如として出現してダブルを囲むようにして立ちはだかった。

 

 そいつらは次々と俺らへと飛びかかってくる。

 

《クソッ! こんな時に!》

 

「邪魔を、するな!」

 

 ガイコツ怪人を次々と切り伏せる。

 

 一体一体は大したことはないが、一気に不意打ちで襲われれば流石にダブルといえども手こずってしまう。

 

 矢継ぎ早に現れる全ての敵を倒し切った頃、ドーパントはその姿を完全に消してしまっていた。

 

《逃げられちまった……》

 

「不覚だったね」

 

《ヘルダークネスのヤツらめ、面倒なことしやがって》

 

「……翔太郎、今のは恐らく」

 

《ああ、偶然にしちゃタイミングが良すぎる。明らかにドーパントを助けに来たって感じだ》

 

「やはり彼らには繋がりがあるようだね」

 

《ともあれ、どうにか一歩前進したな》

 

 そうして俺達が新たな手がかりを掴んだ時

 

「これでも喰らうがいい! 爆炎一刀斬!」

 

 咆哮にも似た叫びと熱風が広がってきた。

 

 咄嗟に目を向ければライオン野郎が振りかざした剣から炎が巻き起こり、ジャステリオンへと一直線に向かっていくのが見えた。

 

《危ねえ!》

 

 そう俺が声に出すのと同時

 

「ジャステリオンオーラ!」

 

 淡い光が溢れ出してジャステリオンの身体を包み込む。

 

 炎が掻き消えた後には平然と佇むジャステリオンの姿があった。

 

「終わりだライオング! ジャステリオンオーラナックル!」

 

 拳を握りしめて構えを取るジャステリオン。

 

 その右手に身体中のオーラが集まって輝き出し、突き出された拳から放たれた光がライオン野郎の腹を撃ち抜いた。

 

「グハァッ! み、見事だジャステリオン……貴様と相見えたこと、誇りに思うぞ……」

 

 そう言い残して倒れ込んだライオン野郎の身体は、激しい音を立てて霧散。その後には何も残らなかった。

 

「私の……勝ちだ」

 

「ジャステリオン」

 

 静かに言葉を吐いたジャステリオンへと歩み寄ったファングジョーカー、フィリップが声をかける。

 

「仮面ライダー……街の人々の方は?」

 

「怪我人が少々いるが皆軽傷だ。救急隊が駆けつければ問題なく処置できるだろう」

 

「そうか、この度の助力感謝する。それで、話と言うのは?」

 

「君はドーパント、というものを知っているかな?」

 

「ドーパント? いや、初めて聞く。それが何なのだ?」

 

「ドーパントはこの街に蠢く、怪人のようなもの、そう捉えてもらっていい。それがヘルダークネスと結託しているかもしれない」

 

「何だと?」

 

「加えて昨日の小宮果穂の件、それにも関係している可能性が出てきた」

 

「……詳しく聞かせてもらえるだろうか」

 

「ああ、では」

 

「おいおいおい、情けねえなライオングの野郎、俺様が来るまで持たねえとはなあ」

 

「その声は!」

 

 どこからともなく聞こえてきた声に身構えるジャステリオン。

 

 俺達も周囲を見渡して警戒する。

 

「こっちだ、どこ見てんだよ」

 

 声の方向へと目をやると、近くのビルの壁に取り付けられた看板の上にギャックアーの姿があった。

 

「ギャックアー!」

 

「ジャステリオン、お前もちょっと急ぎすぎだぜ。もっとじっくりと楽しもうぜ、戦いってもんをよ」

 

「黙れ! 今日こそ決着をつけてやる!」

 

「その前に一つ聞かせてもらおう。ヘルダークネスのギャックアー、キミはドーパントと共に何をしようとしている?」

 

 声の中に怒りを滲ませるジャステリオンの前に進み出るようにして、フィリップが問いを投げかける。

 

「はっ! 知らねえな。ていうか仮面ライダー、お前はお呼びじゃねえ。黙ってな」

 

《何だとコラ!》

 

 シッシと手を払いのけるような仕草をするギャックアーに俺は思わず腹を立てる。

 

「ジャステリオン、今日はタイマンといこうぜ、着いて来な!」

 

 ギャックアーは身を翻して街灯や街路樹の上を、見た目に反した身軽さで飛び移っていく。

 

「待て!」

 

「ジャステリオン! キミにもまだ話すべきことが」

 

 ギャックアーを追って駆け出すジャステリオンに向けて手を伸ばすファングジョーカー、だがその背は見るみる小さくなっていく。

 

「仮面ライダー! キミの言葉、その行動を信じよう! あの少女を頼む!」

 

 そう告げたジャステリオンは飛来したグライダーに飛び乗って、その姿を消してしまったのだった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 オフィス街での戦いの後、事務所に戻ってきたフィリップと入れ替わりに外へ出た俺はバイクで街を走る。

 

 ついこの間までのイベントに浮かれた空気はどこへやら、街は普段の様子を取り戻している。

 

 いや、賑わいが失われた分、心なしかいつもよりもの寂しさを感じてしまう。

 

 

 

 警察署へとやってきた俺は廊下を奥へ奥へと進んでいく。

 

 すれ違う警官や婦警達の反応は二種類だ。

 

 俺のことを特に気にも留めないか「またか……」とでも言いたげに一瞥するか。

 

 すっかりここの空気に馴染みつつあるのが、良いんだかどうだかわからなくなってくる。

 

 ともあれ俺は目的地の超常犯罪捜査課のある部屋の前までたどり着く。

 

 本来なら照井を交えて事務所で事件について話し合うところだが、どうやら照井は署から離れられないとのことで俺がわざわざ足を運ぶこととなったわけだ。

 

「邪魔するぜ」

 

 一声かけてドアを開ける。ノックは……まあいいだろう。

 

 部屋の奥、自分のデスクの傍に立ち、捜査資料を眺めている照井がこっちを一瞥して入ってくるように促してきた。

 

「お前ひとりか? 刃さんとマッキーは?」

 

「二人は聞き込みに向かわせた。だから遠慮なく話して構わん」

 

「用意のいいことで。んじゃ、差し当たっては……ドーパントについてだな」

 

「検索の方は進んでいるのか?」

 

「相変わらず芳しくはねえな。お前の方は何か進展は?」

 

「それに関しては後でだ。少し待て」

 

「何だよ、もったいつけて」

 

「まずは分析、推理だ。フィリップの方は?」

 

「大丈夫だ、今連絡……って、お前が直接かけた方が早いな。取りあえず亜樹子にかけて繋いでもらえ」

 

「ああ」

 

 照井は懐から取り出したビートルフォンを手にして耳元に当てる。程なくして

 

「所長か? ああ。…………所長、今はそういうこと言ってる場合ではない。フィリップに代わってくれ」

 

 そんな言葉が聞こえてくる。

 

 大方、亜樹子が電話口で甘えようとしてあしらわれたって感じだな。

 

 事務所で不貞腐れたような顔をしてるのが目に浮かぶぜ。

 

 こんな時に夫婦で惚気られちゃあ、たまったもんじゃねえ。そこは照井の性格に感謝だな。

 

《えっと……よし! 聞こえてる?》

 

「ああ、問題ない」

 

 ビートルフォンから亜樹子の声が聞こえてくる。

 

 どうやら通話をスピーカーモードに切り替えたらしい。

 

「フィリップ、早速だがいいか?」

 

《問題ない。検索を始めよう》

 

 電話口の相棒は今、意識を地球の記憶とリンクさせているところだ。

 

 所謂【地球の本棚】へと足を踏み入れた状態だ。

 

《検索のキーワードは黒、触手、透明、隠密能力、ドーパントの外見的特徴と持っていると思われる能力から絞り込んでみた。しかしながら決め手に欠け絞り込みきれないのが現状だ》

 

「なんつーか、やたらぼやけた、特徴があるんだか無いんだかよくわからねーやつだったな。顔も隠してるみたいな感じだったし」

 

「うむ、俺が戦った時も顔にベールのような何かがかかっているように見えた」

 

 俺と照井の悩むような声を受けてか、同じように考え込む亜樹子の唸るような声が聞こえてくる。

 

《うーん……ベール、ベリーダンサー? べろーん、顔の前に……のれん? 大将やってる? みたいな?》

 

「って、居酒屋じゃねえんだから」

 

 思わずツッコミを入れてしまう。オマケに亜樹子が手で暖簾を払い上げる仕草まで浮かんでしまう始末だ。

 

《顔……のれん……あっ!? あれっぽくない? 歌舞伎とかでなんかお手伝いとかする……そうだ、黒子!》

 

「言われてみれば……似てるかもな」

 

《なるほど、ではそれで検索してみよう》

 

《へへへ、これはまた当たり引いちゃったんじゃない?》

 

 得意げな亜樹子の声、ドヤ顔で佇んでいる様子が目に浮かぶぜ。

 

 とはいえ俺も悪くない考えだと思う。

 

 暫くフィリップの閲覧結果が出るまで待つこととした。

 

 そして……

 

《残念ながらハズレのようだね》

 

《ガーン! ショックー》

 

 今度は亜樹子がガックリと肩を落とす様が浮かんでくる。

 

「フィリップ、インビジブルのメモリを使っているという可能性は無いか? かつての事件では伊坂が細工をしたイレギュラーなものが使われていた。通常のメモリが使用されていたのであれば、あのようなドーパント体が姿を晒したのもあり得ると思うのだが」

 

 インビジブルメモリ。

 

 今は喫茶店【白銀】の従業員を勤める元マジシャンのリリィ白銀が使用したメモリだ。

 

 ウェザードーパント、伊坂深紅郎の陰謀によって能力を暴走させられ彼女は命を落としかけた。

 

 照井にとって因縁の深い事件だ。

 

《インビジブルメモリの可能性に関しては僕も至った。だが、それでは説明のつかない現象が今回は発生している》

 

「どういうことだ?」

 

《照井竜、先刻僕たちはデンデンセンサーを使用して現場を走査した。しかしながら例のドーパントを発見することはできなかった》

 

「……あ、そうか! リリィさんの時はデンデンセンサーで姿を見ることができた!」

 

《その通りだ翔太郎。インビジブルメモリによる透明化は光の波長を捉えるデンデンセンサーで看破できる。今回のドーパントはそれに当てはまらなかった。加えてもう一つの不可解な現象があった》

 

「不可解な現象?」

 

《人質にとられた小宮果穂をダブルが認識できていなかったこと》

 

《あれがドーパントの仕業ってわけ!?》

 

 亜樹子の甲高い声がスピーカーを震わせる。

 

《ネット上にアップロードされたあの戦いの動画を僕は何度も見返してわかったことがある。図解を交えたいところだけれど、口頭で説明させてもらう》

 

 フィリップが言うところによるとこうだ。

 

 あの時、果穂を人質にとったヤモリンゲはジャステリオンと対峙していた。その間の距離は十メートルに満たないくらいだろう。

 

 そしてヤモリンゲのやや左斜め後方、その直線上に立っていた俺たちは逃げようとするギャックアーに向けてヒートトリガーで攻撃を仕掛けた。

 

 その位置関係であれば俺たちの視界には必ず人質に取られた果穂の姿が見えるはずだった。

 

 それが全く見えなかった、と言うことなら、俺たちの視界を遮る何かが、人質に取られた果穂との間にあった。つまりそのドーパントが能力を使って間に立っていた、というのがフィリップの仮説だ。

 

《インビジブルメモリの効果では変身者の身体は完全に透過し、先の景色を遮ることはない。なので敵の使っていた能力はインビジブルとは似て非なる特性を持ったものだと考えられる。恐らくは自身の身体と周囲の景色を同化させる、或いは投影する類のものなのではないかな?》

 

「自分の身体の色を変えられるってことか。ってことはカメレオンみたいなもんか?」

 

《そんなところだね。しかしながら翔太郎の言ったように僕もカメレオンの線は当たってみた。しかしながらこれもハズレだったよ》

 

「ならば複合的な能力を持ったメモリ、という線はどうだ? かつて遭遇したズーメモリのような」

 

《その可能性も大いにあり得るね。だとすると特定には別の能力も知る必要が出てくる。相変わらず絞り込むには情報が足りなすぎる。ヤツとの交戦時間はあまりに短すぎた》

 

 照井の言ったズーメモリ、それは動物園の記憶を持ったメモリ。

 

 それによって変身したズードーパントは様々動物の能力を使いこなし俺たちを苦しめた。

 

「しかしながらヤツらが結託していたとするならば、例の状況でギャックアーが背を見せて逃亡を図ったのも計算された行動と言えるな。共謀して事件を起こしている可能性が非常に高い」

 

「チッ、揃いも揃って子供を、果穂を利用するようなことしやがって」

 

 俺の胸に沸々とした怒りが込み上げてくる。

 

 自分たちの計画に子供を利用する、俺らがその策にむざむざハマってしまった不甲斐なさ、色んなものがない混ぜになって胸の内がグラグラする想いだ。

 

《ともあれガイアメモリの特定、ドーパントの能力の分析について現状出来ることは以上だ。今度は別の角度から事件を追っていく必要がある》

 

「……動機、だな」

 

《そのあたりは僕よりも翔太郎の方が適任だと思うのだけれど、何か思い至ることはあるかい?》

 

「それは……」

 

 フィリップの問いに考えを巡らす。ドーパントに関して色々と思い浮かんでいたものはあるが、朧げながら直感めいた、人によっては馬鹿馬鹿しいと吐き捨ててしまうような答えが一つあった。

 

「仮面ライダーへの、恨み」

 

 そう口にすると照井が一瞬眉をひそめた。

 

 と、その時、デスクの上にある電話が鳴り出した。

 

 照井が受話器を取り話し出す。

 

「こちら超常犯罪捜査課……刃野刑事か。ああ、携帯は通話中だったものでな。…………いや、問題ない。報告を聞かせてくれ。……ああ…………うむ―――」

 

 程なくして受話器を置いた照井は俺の方へと目を向けてきた。

 

「左、お前の考えは正解に近いかもしれん」

 

「何?」

 

「刃野刑事達が聞き込みに行ってたのは、先日ドーパントに襲われた被害者たちの所だ」

 

「確か、会社員、主婦、学生だったか」

 

「その三人に明確な共通点は見られなかった。だがドーパントと動画の関連性を聞かされて、もしやと思ってな。彼らのアクセス履歴を調べさせてもらった」

 

「まさか……」

 

「ヘルダークネスの初襲撃の翌日にアップされた例のジャステリオンの動画。全員がそれに対して仮面ライダーを擁護し、ジャステリオンを中傷するコメントを書き込んでいた。無論三人以外にも書き込みをした者はいた。しかしながら被害者たちはアカウントに紐付いた個人情報からプライベートの行動を特定するのが容易だった」

 

「それでドーパントは被害者を探し出して襲ったってわけか」

 

《はあ!? 何それ!? はた迷惑にも程があるでしょ!》

 

《亜樹ちゃんの言う通り、しかも動機が短絡的すぎる》

 

「だとすると、ドーパントは仮面ライダーに恨みを持っていて、ジャステリオンのファンか何か。だからコメントに対して怒りを抱いた。また仮面ライダーに対する恨みを晴らす目的のためにヘルダークネスに協力……」

 

 自分でそう口にして違和感を覚える。

 

 だとすると、明らかにおかしいことがある。

 

「左、気が付いたか」

 

 どうやら照井も同じ考えに至っているらしい。

 

《え、何? どしたの?》

 

「所長、俺たちはこう考えている。ジャステリオンとヘルダークネスはグルだと」

 

《ええっ!?》

 

《なるほど、つまりこういうことかな? 仮面ライダーに何らかの恨みを持つドーパント、風都への侵略行為を企むヘルダークネス、利害の一致した彼らは手を組んだ。邪魔な存在である仮面ライダーを排斥するために罠に嵌めて人々の信頼を失墜させようとした。そしてその代わりとなる者、旗頭として担ぎ出されたのが……ジャステリオン》

 

 フィリップの語る仮説、それは見事なまでにきっちりと状況にハマっているように思えた。

 

 沈黙する亜樹子と照井も同じ意見なのだろう。

 

 だが俺にはどうしても気に掛かってしまう。

 

 俺らが誤射した時、必死に果穂を守り抜いたジャステリオンの姿。今朝の戦いの時、去り際に口にした果穂を気遣う言葉。

 

 それに嘘偽りがあるようにはどうしても思えなかった。

 

 

 

 

「俺はこの後、刃野刑事らと合流してメモリ密売人の情報を探ってみる」

 

「こっちはいつも通りだ。新しい噂やらを虱潰しに当たる」

 

「何かあれば情報をよこしてくれ、所長経由でも構わん」

 

「オーケーだ」

 

 廊下を歩いて警察署のロビーへと差し掛かる。

 

 すると……

 

「だから! お前達が出動してくれればそれで全て上手くいくんだ! 運営事務局もそれで説き伏せられる! 何故それがわからん!」

 

「ですから、いくら議員の頼みでもこればかりは。今朝のようにG.R.A.Dのイベント会場以外が襲われる可能性もありますので」

 

「その会場こそが最も多くの被害を受けているのだぞ!」

 

 怒声を上げて喚き散らすスーツ姿の初老の男、それに向かい合って困った表情で宥めているのは警察署の署長のようだ。

 

「ええい! つべこべ言わずに……お前は―――」

 

 と、こっちの存在に気が付いたのかスーツの男、市議会議員の遠藤がこっちに近づいてきた。

 

「超常犯罪捜査課の照井課長だな。まったく署長は頭が固くていかん。君なら協力してくれるだろう? 何せバケモノ退治の専門部署なのだからな」

 

 怒りに歪んでいた顔をパッと笑顔に変えて、議員は照井の肩にポンと手を置いた。取り入ろうとする態度が見え見えで逆に厭らしく感じるぜ。

 

 と、照井の眉がピクリと歪む。努めて無表情を装っているようだが、照井のやつかなりキテるな。

 

 命知らずもいいところだぜ、このおっさん。

 

「申し訳ありませんが署長がそう判断されたのであれば、こちらも従わざるを得ませんので」

 

「そう固いことを言うな。君の部署は独自の判断、権限で動くことが出来るのだろう? 何、タダとは言わん。君の部署が優位になるよう取り計らってやるとも。望みを言ってみたまえ。人員の増員か? それともオフィスの増築か? 新たな捜査機材などは?」

 

「…………」

 

 あー、こいつはダメだな。

 

 察した俺は数歩距離をとった。

 

「俺に質問をするな!」

 

 照井が議員の胸ぐらを掴んでその顔を睨みつける。

 

 爪先立ちになった議員が目を丸くして、池の鯉のように口をパクパクさせる。

 

「日々事件で怪我人が出て街に被害が出ているのがわからんほどの馬鹿なのか? 貴様の私利私欲のために人々を危険に晒せるわけが無いだろう。とっとと失せろ」

 

 パッと手を離して放られた議員がたたらを踏んでバランスを崩して尻餅をつく。

 

 議員の形相が驚きから怒りへと変わっていく。

 

「こ、こ、この無礼者が! 来年度の予算がどうなっても知らんぞ! 覚悟しておけ!」

 

 よたよたと立ち上がった議員はそう吐き捨てると鼻息を荒くし、ドカドカと足音を立てながらロビーを後にしていった。

 

 その様子を見つめる俺の傍ら、照井に近づいてきた警察署長が、助かった、とばかりに苦笑を浮かべて声をかけていた。

 

 照井は憮然とした表情でそれを聞き流しているようだった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「へぇ、そんな事があったんだねえ」

 

「ったく、怖いもの知らずもいいところだぜ、あの議員サマは。まあ、俺もちょっとばかしムカついたけど」

 

 サングラスをかけた元サンタちゃん、現ペットショップの店長と俺は談笑していた。

 

 彼もウォッチャマンやクイーン、エリザベスと同様に情報を提供してくれる仲間だ。

 

 警察署を出た俺は事務所の居候、元園崎家の飼い猫ミックの餌を買いがてら情報収集に来ていた。

 

「っと、はいこれ。いつもの缶詰。一個オマケしといたよー」

 

「景気いいね。ありがとな」

 

「景気は別に良く無いんだけどね。G.R.A.Dだなんだイベントで賑わってもウチには恩恵無いからね。ペット繋がりでコラボできるアイドルとかもいないみたいだし。ワンワン! ニャーニャー! キューキュー! ってね」

 

「いや、最後のは何だよ」

 

 動物のジェスチャーをする店長に思わずツッコミを入れてしまう。手つきから察するに最後のはウサギのように思えたけど。

 

「まあ、中止となった今となっちゃ言っても仕方ないけどね」

 

「だな。あの議員も損失が出て大変かも知れねえがな」

 

「あー、だとするとウチも人ごとじゃないなあ」

 

「ん? G.R.A.Dとは関係無いって言ってたじゃねえか」

 

「いやいや、そうじゃなくって。その遠藤議員、ウチの常連さんなの。実際来るのは家の使用人なんだけどね。よくウチに餌を買いにくるのよ」

 

「へぇ、そうだったのか」

 

「けど、あそこも複雑な家庭みたいだね。奥さんは早くに亡くなっちゃって、残った一人娘を後継ぎにしようとしてたみたいだけど家出しちゃってさ。それ以来ますます仕事にのめり込んで、議員との二足の草鞋まで履いてね。娘さんはサンタやってた時はよく街中で見かけてたんだけどね。今も元気にしてるといいけど」

 

「なるほどな……政治家とはあまり縁深くないからな、初耳だよ」

 

「けど翔ちゃん、その娘さんのことは知ってるはずだよね?」

 

「えっ?」

 

 店長から更に詳しく話を聞き、頭の片隅に引っかかっていたある事を思い起こした俺は、他の仲間へと連絡を取った。

 

 そして一通りの捜査を終えて事務所へと戻った頃、新たな動画がネット上にアップされていた。

 

《風都の諸君ご機嫌よう。明日、我らヘルダークネスは君たちの街を混沌の渦に陥れよう》

 

 画面の中で新たな怪人がそう語っていた。

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