何がどうしてこうなったのか分からない、どうしてこうなっているのか理解出来ないまま、私は友人と思われる男に手に貸されながら崩れ落ちてしまった身体を起こす、そんな私へ心配そうに言葉を送ってきている。
「あっえっ……?」
「大丈夫かいマグナ!?さあっ確り……大丈夫だ、僕が付いてる」
何処か辛そうな声を漏らしながら必死に自分の言葉を止めに掛かっている、如何やら今の私は相当危険な状態にあるらしい。というか友人の表情が一切変化していない……というか周りが凄い眩しい事に漸く気付く事が出来た。周囲はまるでエメラルドの塊で出来たような輝きを放つ建造物ばかりで道行く人々も常識を超えている。
赤い身体に鎧のような物を身に着けている者、銀色のラインや模様が赤い身体を走っている者、それらとは別に青い身体が何処か美しい者、そして友人と思われる人物もそれらに該当し自分は彼の事を知っていると思われる。そう彼の名前は―――
「ネ、ネオス私は……」
「今はゆっくり休もうマグナ、今回の任務は本当にハードだったものね。君の疲労も当然だ、さあもう少しで君の家だ。そこまでは肩を貸すよ」
ウルトラマンネオス……そして私はウルトラマンマグナ、と言うらしい……。
「お、落ち着こう現状を整理しよう……」
自宅と思われる家まで
自分自身の名前はよく覚えているが、それよりもマグナという名が酷くしっくり来ている。それは今の身体の名前だからだろうか、いや違う、それが今世の名前だからだろう。そう、自分は一度人生を終えた後にこうやって生きている。M78星雲・光の国の住人であるウルトラマンマグナとして生きている、そして任務中に受けたショックによって前世の記憶が呼び起こされた……という事になるのだろう。
「しかしまさかネオスが友だとは……ネオスと言えば勇士司令部に所属する超が付くエリートじゃないか……」
宇宙の平和を守るべく作られたウルトラ戦士の組織、それが宇宙警備隊。その中でも宇宙警備隊中のエリート部隊とされるのが勇士司令部、そしてそこに所属する戦士こそが彼の友人であるウルトラマンネオスなのである。どこか別の場所で聞いたような名前な気もするが気にしないでおこう。
「そして私も……勇士司令部所属のエリートウルトラマンか……実感がない……!!」
ウルトラマンマグナ。元文明監視員という経歴を持ちその実力はあの最強最速のウルトラマンマックスにも引けを取らない所か、純粋な身体能力格闘戦に限ってはマックスを上回り、その肉体を駆使した戦いで様々なウルトラマンから尊敬を集める……と言うらしいが前世の記憶を取り戻した影響かその辺りの記憶が全くなく実感がない
「―――なんて思っていた時期が私にもありました」
「マグナ先生如何したんすか急に!?」
「いいや何でもないさゼット君、さあ続きだ。君もゼロ君に弟子として認められる為にはもっと頑張らないとね」
「オッス!!」
と思っていたのも僅かな間であった。前世その者がウルトラシリーズマニア且つ運動を良くするタイプだった為か、ネオスに組み手をお願いされ付き合うと身体に染みついた経験が反応しマグナとしての力を直ぐに出せるようになっていた。それに安心しつつも光の国の言語が分かるかどうか不安だったりと様々な窮地があったりしたが何とか突破し、今を過ごしている。そして今は―――勇士司令部の司令の孫に当たるウルトラマンゼロから一時的に自称弟子を預かっている所である。
「という訳だ、此処まではいいかいゼット君」
「はい勿論です!!いやぁ流石マグナ先生、80先生みたいにウルトラ分かりやすいです!」
「流石に彼と比べられてしまうと困るな……というか照れるな」
目の前の若者に対して怪獣の対処法や宇宙人に対する知識を自分なりに噛み砕いて教えているマグナ、そんな教えを絶賛しながら嘗て地球で中学生の先生をしていた80と重ねる自称弟子のウルトラマンゼットはご満悦であった。ゼロが緊急の用件で出動してしまう現場に偶然居合わせたマグナに半ば強引に預けられたゼット、そんなゼットに対してマグナは少々困りつつも取り敢えず師匠代理としての役目を果たしていた。
「さてと詰め込み過ぎも良くない、今日はこの辺りにしておこうか」
「今日も授業有難う御座いました!流石勇士司令部所属のウルトラエリート、ゼロ師匠と違って優しいのに俺に合わせて貰えるし、分かるまで親切に面倒見て貰えてウルトラ嬉しいです!!」
素直に頭を下げて感謝を言葉にしてくれるのは嬉しいのだが……如何にも……。
「それは光栄だけど……ゼット君宿題だ。地球には口は禍の元という言葉がある、その意味を考える事だ」
「へっ?」
「―――誰と違ってだって……?」
突然の宿題に頭が真っ白になるゼット、何故突然そんな言葉の意味を考えなければならないのかと首を傾げていると背後から聞こえてきたドスの利いた声に身体を震わせてしまった。まるで駆動系に致命傷を受けたロボット怪獣のような動作で振り返ってみると……そこには丁度任務を終えて帰って来たと思われるゼロがそこにいた。ウルトラマン故に表情の変化はないが……恐らく青筋が浮き上がっている事だろう。
「しっ師匠!!?い、何時お帰りに!!?」
「丁度今だよ……それで、お前……何つった……?」
「これは―――ウルトラやってしまったぁぁぁっっ……!!」
遠回しにゼロは優しくない上に合わせてくれず面倒も見てくれない不親切だと言っているような物だった。流石のゼロもそんな事を言われてしまったら怒るのも当然だろう、そもそもゼロはゼットの弟子入りを認める訳でもない上に一方的に弟子を自称されている身。それでもそれなりに相手をしてやっているだけ優しい方とも言えるだろう。そんなゼロにそんな事を聞かれたら怒るに決まっている。
「悪いなマグナ、こいつの世話を押し付けちまって」
「大した事はしていないよ、面白い子に好かれたねゼロ君」
「付き纏われてるみてぇなもんだ……ったく」
怒り混じりの悪態だが、何処か照れも混じっている。うっとおしそうにしていても何処か内心では自分を慕い敬意を込めて接してくれる相手がいる事に対して喜びを覚えているのかもしれない。
「あっと忘れるとこだったぜ。ゾフィー隊長がアンタを呼んでたぜ、何でも特別な任務を与えるらしいぜ」
「了解した、それでは私はこれから其方へ行こう。それではゼット君また何時か」
「はっはい!!有難う御座いました!!」
「ゼロ君もまた」
「おう」
―――デュォ!!
声を上げて飛び上がり、宇宙警備隊隊長であるゾフィーの元へと向かう、そしてそこで命じられたのは―――地球に向かって欲しいという事だった。しかもただの地球へという訳ではない。
「別の次元の地球へですか」
「その地球では地球人に進化が起こり様々な特殊能力を開花させるという報告が上がってきている。そこで元文明監視員であり勇士司令部にも所属する君にその地球の詳細な調査任務を頼みたい。頼めるかな、マグナ」
「私などで良ければ喜んで」
その任務が全ての始まりだった。別次元の地球への派遣、マグナはウルトラマンとして立派にそれを果たすという志の元でその地球へと向かう事になった。ゼロの力を借りる事でその次元へと到達しその地球へと到達した時―――事故に遭いそうになった少年を救った、のだが……その少年の名前は緑谷 出久。新たな次元、新たな世界でウルトラマンマグナは世界をどう見るのか、これは一人のヒーローを目指す少年と前世で憧れたウルトラマンとなった者が織りなす物語である。
ネオスは作中にてダークマターの影響でアンバランス現象と呼ばれる事が起きておりネオスはその調査の為に別次元の地球に派遣されている、設定的な共通点として友人枠で登場していただきました。
そしてそれを活かす為にネオスと同じ勇士司令部所属ウルトラマンという事にしました。文明監視員だと介入などがしにくいと判断した為です。