緑谷出久はウルトラマンと出会う。   作:魔女っ子アルト姫

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継承されていく光のバトン

一人は皆の為に(ワン・フォー・オール)。それが出久が継承し真の意味で自らの個性として得た力であった、あくまで今ある力は偶然マグナと融合できたことによる副産物に近いものだが、それは間違いなく彼の力と心が勝ち取った紛れもない明確な成果だった事は確かな事だろう。№1ヒーローから次の跡目を引き継いだことも意味するそれに出久は大きな責任を感じながらオールマイトとマグナ主導の下で修練に励む事になった。

 

「既に十二分にワン・フォー・オールを受け入れるだけの身体となっている、まだまだ練りは甘いとはいえ素晴らしいレベルだ」

『伊達に2年間鍛え続けてませんでしたからね、あの毎日は無駄ではなかったという事さ出久君』

「はっはいぃぃぃぃぃっっっ!!!」

 

と海浜公園中に存在している大量のゴミ、その中でも一際巨大且つ重い軽トラの上に腰掛けているオールマイトとホログラムのような姿のマグナの会話を聞きながらも出久はそれを全身に力を込めて引っ張りながら回収用のトラックの元へと運んでいく。マグナの分の体重はないにしてもオールマイトの255キロも含まれるので相当な重さになっているがタイヤもあるお陰で少しずつだが進んでいるのはそれだけ出久の力があるという証明でもある―――であるが何故こんな事をしているのか、当然出久の修練の為である。

 

 

個性:ワン・フォー・オール。それは複数人分の極まりし身体能力が集約し一つになったような物、当然圧倒的な力を誇るのだが……それ故かそれを受け入れる側も相応の肉体を要求するのである。肉体、即ち器が出来上がっていない人間がそれを継承してしまうと四肢が捥げて爆散してしまうとオールマイトは語るのだが……マグナと共に行ってきた努力の2年間は無駄ではなくワン・フォー・オールを無事に継承出来るだけの身体は既に出来上がっていたのである。だがそれでもMAXパワーを引きだしたら身体が耐えられなくなってボロボロになる事は必至なので、肉体の鍛錬とヒーローになる為の第一歩として海浜公園のゴミを片付けている。

 

「HEYHEYHEYもっと腰を入れないとダメだよぉ緑谷少年」

「は、はいぃぃぃぃぃっっ!!!!」

『フムッあれの出来も中々良いようで』

 

と二人の視線が向けられている視線の先では全身に鎧のような物を纏っている出久の姿がある。その鎧には何やらケーブルのようなものが腕や足に巡っており時折蒸気と共に伸縮して力のセーブなどを行っているように見える。出久の力ならば軽トラだろうと楽々と運べるはずだがそれを引っ張るのが精いっぱいな程しか出来ていない事が良い証明となっている。

 

「あれは光の国でも使われている物なのでしょうか?」

『特殊強化訓練メニューをこなす者に施される処置で一番きついものではありますがね、それよりかなり落としてますが使われているものではあります』

「ほほう」

 

それこそテクターギア。身を守る防具であると同時に装着者の能力を制限し制御する拘束具の役割を持つ、それによって出久の身体能力は大幅に制限されてしまいマグナによって与えられた力も大きく制限されているので2年で鍛えた出久の身体能力+α程度が今の出久の全てになる。だがそれでいい、何せあのウルトラマンゼロも使っていたのだから効果お墨付きである。

 

『お金はあれで足りましたか?』

「逆に余り過ぎて如何しようかと思ったぐらいですよ、私腰が抜けるかと思いましたよ」

『ご冗談を。№1ヒーローという事はかなりのお金があるのでは?』

「だからと言って即金で5000万は腰が引けますよ流石に」

 

材料費としてマグナが資金を出し、オールマイトが自身のコネなどを使用して地球産のテクターギアが完成した経緯がある。その際に久しぶりに親友に連絡したのだが……一体これらを何の為に誰に使わせるのかと聞かれて返答に困ってしまったのは余談である。

 

「キ、キッツッ……オールマイトにマグナさん、このギア……きつ過ぎませんか、後凄い重いです……」

「そう言う訓練だからね、大丈夫その内取ってあげるから」

『大丈夫だよ出久君、私はそこまで鬼じゃないから。片付け以外はちゃんと外してあげるから』

 

ギア自体も重さが15キロ程あるので出久はかなりの重量を抱えた上で動かなければいけないので身体には相当な負荷がかかり続けている。しかも出久本人はこれを外す事は出来ないという仕様まである、この既に大分鬼な気もすると出久は心の片隅でちょっぴり思っている。

 

『大丈夫だ。かのウルトラセブンみたいに滝の流れを断ち切れとかジープで追い掛け回したり地雷レースとかはさせないから』

「「いやいやいや何ですかその修行!!?というか本当に修行!?ウルトラマンってそんなやばい修行してたんですか!!?」」

『絶対にやりません』

「「ならなんでそれを例えに!!?」」

 

とオールマイトと出久が全力で突っ込んでしまう程の事だが、それ程の鬼畜な事はしないからという事らしいが……全く安心出来ない所か逆にウルトラマンですらやらないような修行をやらせたそのウルトラセブンとは一体どんな方なのかと酷く気になった二人であった。

 

「ええっと……あの、マグナさんそれで私の身体の事なんですが……」

『はいっと言っても多少なりともの治療に留まるとは思います』

「それでも是非お願いしたいのです」

 

オールマイトのお願いと言うのはもう一つ、神秘の存在でもあるウルトラマンならば自分の身体の治療が可能なのではないだろうかという事だった。そうすれば仮に出久にワン・フォー・オールを譲渡したとしても自分は彼が一人前になるまでヒーローとして活動が出来るかもしれない……という期待を込めていた。以前話した通りに自身の身体は呼吸器半壊、胃袋全摘出の上に手術などの後遺症で憔悴している状態。それから少しでも良くなればいい……とさえ思っている。

 

『生憎私は専門外ですが……何とかやってみましょう、しかし本当に無茶をしますね……』

「矢張り貴方から見てもそう思いますか……?」

『まあ我々(ウルトラマン)が言えたような事ではないでしょうが……それでも私はそう思いますよ』

 

専門ではない物のオールマイトの治療を了承したマグナ、勇士司令部に所属する彼だが治療を行う為の技は一応修得している。勿論それは専門分野ではないので本職(銀十字軍)に比べたら劣るだろうが……それでもある程度の回復は見込める事だろう。後日、マグナが回復光線である『マグナヒーリングパルス』をオールマイトへと照射。怪我の完治まではいかなかったがそれでも苦しみを和らげ、身体の活力を復活させる事自体は出来た。本人曰く

 

「―――あの日以来忘れていた活力が蘇って来たぁぁぁぁっっっ!!!」

 

とオールマイトとしては予想をはるかに上回る結果を齎したらしく、活動限界だった筈の3時間を超えて活動する事も可能になったと喜んでいる。故か定期的にオールマイトはマグナにこの光線をお願いするようになった。そして約半年後―――出久は海浜公園のゴミを全て片付ける事に成功し、遂に―――オールマイトからワン・フォー・オールを継承する事となった。

 

『そう言えばどんな風に継承をするので?』

「簡単ですよ、私が個性を託すと認めた上でDNAを相手に摂取されるだけです」

「えっそれってつまり……」

「そうっ―――食え」

「ヘェァッ!!?全然イメージが違うぅぅぅ!!!?」

『あっなんかウルトラマンっぽい声が出たね』

 

マグナの影響もあったからかもっと神秘的というか概念的なイメージがあった出久、だが実際は髪の毛を食べるという方法で個性を継承した出久。何やらギャップを感じつつも個性を受け取った出久はその責任を感じていた。今まではオールマイトの個性だったものが今からは自分の物になる……それを考えると呼吸が荒くなる―――と思った時にマグナの声が響く。

 

『慌てる事などはないさ、君は別にオールマイトになる必要はない―――君は君が成せる事をやればいいだけだ、違うかなオールマイトさん』

「ああそうさ、君は君らしいヒーローになってくれたまえ!!」

 

そんな二人の声を受けて出久は―――笑顔を浮かべながら自分が成すヒーロー像を思い浮かべながら新たな一歩を生み出すのであった。




最早伝説のウルトラマンレオの修行シーン。今では放送できない数々の伝説がそこにある。だがそれがレオを育て上げたのも事実、だが見るとマジでうわぁ……となる事間違いなしのシーンだらけ。
それが影響してレオもかなりスパルタな師匠になったのかも……ゼロもそれを語る時はかなり声が暗くなる。アストラがずっと見てて気が散ったりしていたらしい。

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