緑谷出久はウルトラマンと出会う。   作:魔女っ子アルト姫

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仮免試験、二次試験。

「皆お待たせ」

「おおっ緑谷何処行ってたんだよ!?」

 

時間に限界が来た為、ナイトアイと別れを告げて皆の元へとコスチュームを纏って参上する。一次試験はA組の皆は無事に突破出来たらしく安心していた、話を聞きつつも試験がどんな事だったのかはモニター越しに見ていたが定番とされている雄英潰しにナイトアイは溜息混じり、出久は怒りに近い憤りを感じずにはいられなかった。

 

『唯試験に合格出来ればいい、というのが透けて見えるな……』

『なんかすごいムカつくのって僕だけですかね』

『奇遇だな私もだよ、マグナさんという宇宙規模の正義を知ったからかもしれないな』

 

そんな感想を述べあいながらも直ぐに防衛チームやらウルトラマンの話に移ったりもしたのだが……特に出久は皆の事は心配していなかった、きっと大丈夫に決まっていると確信しながら皆の元へと訪れた。

 

「にしても緑谷お前ずりぃよなぁ、何時の間に校長推薦貰ってんだよ」

「アハハハ……ごめんこれでも僕から抗議して軽くして貰ったぐらいなんだ」

「そうなん?」

 

皆の方でも一部受験者の一次試験免除の話は出ていたらしく、その場で名前を呼ばれた者は係員に誘導されて待合室に移動していたらしい。それに関して受験者からは抗議も出たらしいがその理由について述べられると何も言えなくなり反対意見は皆無だったらしい。

 

「僕の場合はほら、発目さんのストッパーとして強制的に関係させられるみたいだからさ」

『もういいそれ以上言うな』

「大丈夫よ緑谷ちゃん、それは貴方がとても頼りにされているからよ。とても信頼されている名誉ある事よ」

 

その言葉が出た瞬間に全員が事情を察して何も言うなと出久の言葉を止め、梅雨は目が死んだ出久の背中を摩りながら励ました。その光景に他の受験生は一体何があったんだ……と言葉を思わず失ってしまうのだが出久の顔を見て体育祭の事を思い出して彼らも察するのであった。あの超話題になっていた発目に狙われているヒーロー志望として。

 

「というか発目の為だけに声掛けられるってどんだけだよ……」

「おい緑谷、関わりたくねぇならちゃんと言った方が良いぜ」

「大丈夫、諦めたから」

「諦めんなよぉ!!!?」

「じゃあ切島君、僕の代わりに一回発目さんの実験に付き合ってみる?」

 

色がない死んだ瞳、死んだ表情に諦めによって生まれた笑みが張り付いた出久のそれに思わず助けて欲しいならちゃんと助けてやるぞ!!と意気込みを込めた切島は完全に挫かれてしまって何も言えなくなった。そんな出久に同情するように肩に手を置いたのは発目の被害に遭いそうになったが出久に助けられた爆豪であった。

 

「……飯、奢るか」

「大丈夫だよカッちゃん、僕はこれからも頑張っていくから」

「……おう」

『やばい闇が深すぎる』

 

それが待機中の受験生全員が抱いた素直な感想であった。言葉が浮かばなくなっている時にヒーロー公安委員会の目良の声がスピーカーから聞こえてきた。

 

『え~一次試験突破をした皆さまおめでとうございます。それでは手早く次の試験への御話しへと移ろうと思います。ではモニターを見てください』

 

目良の言葉に従うように皆の視線がモニターへと向いていく。そこには先程まで合格者が駆けまわっていたフィールドが映し出されている。中には忌々し気に見つめている者もいるが自分達が合格を勝ち取ったフィールドを見つつ、各自が少々浸る中でフィールドの各所が一斉に爆破されていき、火を噴きながら瓦礫と化していく。突然の爆発に驚きが生まれるが即座に次の言葉が生まれる。

 

『皆さんの中にはもう察した方もいると思いますので次の試験を説明します。次の試験、二次試験にて仮免試験はラストになります、皆さんにはこの被災現場でバイスタンダーとして救助演習を行って貰います。一時選考を突破した皆さんは仮免許を取得した物と仮定して、どれだけ適切な救助を行えるか試させて頂きます』

「「バ、バイスライダー!?」」

バイスタンダー(bystander)だよ二人とも、授業で習ったじゃない」

 

救急現場に居合わせた発見者や同伴者を意味する言葉であり一般人にもこの言葉は適応されるがこの場合においては近くの事務所などで待機していたヒーローとして自分達を適応させる事になり、自分達はそこで救助を行うという事になる。そしてモニター内には老人や子供と言った人影が見え始めた、一体どうしてそこに居るのかと謎になる様だったが―――それはヒーローが人気職業になる現代だからこその職業、あらゆる状況の訓練で要救助者のプロ、HELP US COMPANY、通称HUC。

 

「世の中にはいろんな職業があるのね……」

「映画のスタントマン的な感じかな……」

 

形式としてはそちらに似ているだろう。HUCの面々はそれぞれがヴィランによる事件現場、事故現場などで見られる救助者となり自分達はそれらを救い出す、それらの過程で点数を割り出し、基準を超えていれば合格する事が可能になる。それがこれから行われる試験となる。早速士傑のメンバーが声を出しつつ皆に出来る事を確認しつつ、此方にも協力を願い出ている。その中で出久も自分に出来る事を出す。

 

『出久君、こんな時こそあれが役に立つんじゃないかな?』

「(あれって……もしかしてあれですか?)」

『そうあれ。ルナスタイルと並行して行っていたあれらだよ』

 

マグナの言葉に驚きながらも本当に今の自分でやっても良いのかと不安に尻込みするが、自分の言葉なら信頼出来るだろうと後押しをされ使う事を決意しながら遂にその時が来てしまった。

 

『ヴィランによる大規模破壊のテロが発生!!規模は〇〇市全域、建物倒壊により傷病者多数。道路の損壊が激しく救急先着隊の到着に著しい遅れ。到着するまでの救助活動はその場にいるヒーロー達が指揮を執り行う、一人でも多くの命を救い出す事!!START!!!』

 

それと共に壁が横倒しになってフィールドへと直結した。此処も既にフィールドの一つ、目の前に広がっている無数の瓦礫の山々。この辺り一帯に助けを求める人達がいるのかと思いながらも皆が直ぐに動き出していく中で出久は避難所設営をしているチームへと向かうと一つ尋ねた。

 

「あのすいませんもっと広い方が良いですよね!?」

「えっ!!?ああまあそうだけど今から別の場所にする事は出来ないぞ!?」

「違います場所を作ります!!」

 

それを応えたのは傑物学園の真堂 揺。一体何を言いだすのかと思いながらも出久は瞳を閉じてから何やら忍者が結ぶ印のような動作をしてから両腕を開きながら救護所兼避難所として設営している開けたエリア周辺の瓦礫へとエネルギーを放つ。

 

「ウルトラ……念力!!」

 

両腕から放射されていくエネルギーは波のように瓦礫へと浸透していく、すると僅かな揺れと共に瓦礫が動き出すと次々と宙へと舞い上がっていく。

 

「な、なに!?」

「緑谷 出久の個性はまだ先があるのか!!?」

「嘘だろ、一つの個性で何であんな事が出来るんだよ!!?」

 

ウルトラ念力。ウルトラ戦士にとっては余り特別な能力ではない力、光線技に取り入れて光線の操作、追尾能力を与えたりもする。代表的なのはウルトラセブンのアイスラッガーなどが上がるだろう。出久はコスモス・ルナスタイルを追求するに辺り、ウルトラ・フォー・オールの能力制御の為にこの念力にも力を入れた。光線のエネルギーを操作し腕に纏わせる事で通常では受け流す事が出来ない物を可能にする為。

 

「ディッ……ヘェァ!!!」

 

浮かび上がった瓦礫はまるで自らの自重に押し潰されていくかのように中心に向かって圧縮されていく。幾つものビルの残骸は念力によってあり得ない力で圧縮された結果、小さめの一軒家程度まで小さくされて邪魔にならない場所へと纏められて置かれた。その光景に驚き言葉を失っている真堂に向けて出久は言った。

 

「これでスペースに余裕は出来たと思います、僕は救助に参加してきます!!」

「あっああ……」

 

走り去っていく出久に何も言う事が出来ずに固まってしまった、そして漸く再起動した時に思わず、無意識的に呟いてしまった。

 

「何だあの化け物染みた力……」

 

それがヒーローとして正しい言葉なのか、それに目を光らせる審査員でもあるHUCのメンバーがいる事に彼は気付けなかった。


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