緑谷出久はウルトラマンと出会う。   作:魔女っ子アルト姫

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仮免試験、ラストスパート。

「デク君この上の瓦礫退かせられへん!?重さは0にしとるけど上からやないと崩れてまう!!」

「分かった、ウルトラ……念力!!」

「うわっそんな事出来たん!!?」

 

避難所の拡張を終えると即座に救助活動へと参加した出久。自身のそれが通用すると分かった故に自信が付いたのかウルトラ念力で瓦礫を退けていき、下敷きになって居たり動けなくなっている人たちを助ける一助へとなっていく。手を触れる事も無く広範囲へと及ばせる事が出来る念力、その力は相当に強く汎用性も高い。そして麗日の個性によって瓦礫の重量と出久の負担も軽減出来るので相性も良好。

 

「緑谷これ、何とかなるかぁ!?」

「流石にこれは―――よし……シェアッヘァッ!!!」

 

今にも崩れそうになっているビル、そこへの応援要請に出久は手が離せないので其方へと以前マグナから習った八つ裂き光輪を発射する。放たれた6つの光輪は瓦礫へと向かって行くとそれらの周囲へと到達するとその場で静止、そしてそれぞれの光輪を結ぶように光を伸ばしていくと瓦礫の時間を止めてしまうかのように完全に固定してしまう。

 

「おおっ!!?お前こんな事出来るのか!?」

「でも早くしてね、こっちの瓦礫を念力で退かしながらッ……ビルを固定するの、かなりしんどいんだから!!多分、後5分が限界!」

「十分だ直ぐにやるぜ峰田!!」

「おうよ!!」

 

一人で何役の事柄を遂行可能な程に幅広い個性の力、それらを十全に扱えるように鍛えている出久はクラスメイト達以外から見たらどれだけ異質に見えるのだろうか。他の皆とて自身の身体と個性を磨き上げるのを怠った訳ではない、それでも出久のそれは明らかに上に行っていると認めざるを得ない。それは単純にウルトラマンの力を宿しているからだけではない。

 

『出久君、もうあと少しだ。外壁も同時に取り除きながら行こう』

「(はいっ!!)」

 

その力はウルトラマンであるマグナとの絆があったからに他ならない。それらを知る由もないだろうが、それが源である事には間違いないだろう……そしてその時、大爆発と共にフィールドの一部が吹き飛んだ。それに多くの者が驚く中で同時にアナウンスが流れた。

 

『ヴィランが現れ追撃を開始、現場のヒーロー候補生達はヴィランを制圧しつつ救助を続行してください』

 

「プロでも高難易度の案件……仮免でそれをやるか」

 

合理主義者の相澤ですら声を上げて驚いてしまった。救助だけでも相当な神経と集中力を要するというのにそれを上回る状況が一気に生み出されてしまった。そのヴィラン役として抜擢されたヒーローの姿を見て更に驚いてしまった。

 

「さあ如何する、全てを平行して出来るか……戦うか守るか、助けるか逃げるか、どうするヒーロー……!!」

 

爆破で吹き飛んだ壁の奥から影が現れ、それは空に向けて威嚇めいた咆哮を放った。そこにいたのは―――ギャングオルカ、ヴィランっぽいヒーローランキングの常連だがそれ以上にヒーローランキング10位に名を連ねる超実力者。それは数多くのサイドキックを引き連れながら登場したのである、突然のヴィラン襲来に困惑する候補生たち、だがその中でも冷静に状況を見極めて行動を起こす者がいる。

 

「―――タァァァァ!!!」

 

侵攻するヴィラン達、それらの目の前に突如として舞い上がった大量の土埃。それらに足を止めて警戒する中で奥から姿を現した出久、構えを取ると同時にサイドキック達は一斉に装備していた武器を一斉に構えてトリガーを引く。そこから発射されるのは拘束用のコンクリート弾、命中すれば即座に固まって動きを封じるそれが一斉に発射されていくが―――出久は一切慌てる事も無く構えを取り続ける。

 

「ウルトラ・フォー・オール―――コスモス・ルナスタイル……CRESCENT MOON SMASH」

 

新たに形にしたそれを使う、迫ってくるそれらを一気に回転するように受け流しながら全てを放ってきた者達へとはじき返していく。寸分違わず跳ね返されていくそれらにサイドキック達は捕まって瓦礫や地面などに釘づけにされていく光景にギャングオルカは素直に称賛の声を上げながら、若いながらもその力の高さに関心を浮かべる。

 

「たった一手で数の優位を覆すとはな……この程度で俺に勝ったと思っているつもりか?」

「いえ全く思っていませんよ、貴方という存在相手にこの程度で優勢を取れたと思う程馬鹿じゃないので―――それに僕一人じゃないので」

 

その言葉の直後に出久の背後に爆破を伴うように空から降ってきた爆豪、氷の上を滑りながら勢いよく跳躍して登場した焦凍が並び立った。その上では旋風を纏っている夜嵐 イナサが到着していた。

 

「遅かったねカッちゃん」

「テメェが早すぎんだクソが」

「わりぃ、ちょっと遅くなっちまった」

「凄い熱いっすね!!素直に脱帽っす!!脱がないっすけど!!」

 

一気に現れた援軍、それによって数の優位は容易くひっくり返されたと言っても良いだろう。だがギャングオルカは意志を崩すつもりなど毛頭なかった、この位やって貰わなければ試験官としてヴィラン役を引き受けた甲斐がない。寧ろここからだ、此処からこのヒヨッコが自分に立ち向かって来るのが楽しみでしょうがなかった。

 

「いいだろう掛かってくるがいい!!貴様らが本当にヒーローになりたいというのであるならば、このヴィランを倒してみせろ、滅ぼしてみせろぉ!!!」

 

叫び声を上げながら一気に迫ってくるギャングオルカ、それを真っ先に迎え撃ったのは出久。突進を受け止めながらも受け流し後ろへと投げ飛ばすとそこへ爆破と氷と炎の拳を突き立てる爆豪と焦凍の一撃が炸裂し打ち上げられるとそこへイサナが自らの個性で起こした風で巻き上げた瓦礫を連続でぶつけていく。

 

「やるなぁっ即席でこれだけの連携を取る事が出来るとはな、だがまだまだ甘い!!」

 

連続で攻撃を受けたにもかかわらず全く堪えてない。それ所か飛んできた瓦礫を足場にして一気に跳躍するとイサナの真上を取ると殴り付けた地面へと叩き落とすと最大出力の超音波を叩きつけてきた。向かってくる超音波は瓦礫を吹き飛ばすどころか粉砕する程のパワーを発揮しており思わず爆豪の表情すら曇る程。

 

「任せて!」

 

その手にゼットライザーを手にしながらも飛び上がった出久はエネルギーを集中させながら一気に回転していく。

 

「ULTRA HURRICANE SMASH!!!」

 

超回転にゼットライザーを加えてのスマッシュ、本来ならば受け流す事が難しい攻撃であろうが受け流す事が可能となる。先程と同じように超音波はギャングオルカへと返されていく、が自分の攻撃が通じると思ったのかと言わんばかりに思いっきり腕を叩きつける事でそれを無へと帰する。

 

「超音波を力でねじ伏せるってマジか」

「伊達に№10じゃねえって事か……」

「激アツっすね……!!」

「やっぱり、強い……!!」

 

これがプロヒーローの中でもトップ10に入る男の実力かと思いながらも全員の顔には諦めや敗北と言った色は全く浮かんでいない。寧ろ強い相手ならば更にやる気が出ると言わんばかりの表情にオルカも良い表情だと思いながらも着地する。が、オルカはペットボトルに入っていた水を暢気に飲み始めた。馬鹿にしているのかと思ったが―――

 

『只今をもちまして、配置された全てのHUCが救出されました。それにより、これにて仮免試験全工程終了となります』

 

それは既に試験が終了する事を見越しての事だった。将来有望なヒーロー候補生の力を見て満足気に彼らを一瞥すると―――オルカはゆっくりとそこから去っていく。

 

「さて、彼らは何方の道を歩むのだろうか。何方に行こうが俺はそれを応援させて貰おう、それが先人の務め。そして大いに励めよ、これからを担う若造共」


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