緑谷出久はウルトラマンと出会う。   作:魔女っ子アルト姫

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波乱の合格発表。

ヒーロー仮免許取得試験、その全工程が終了しいよいよ合格発表が成されようとしていた。やれる事だけはやった、後は天に運を任せるのみと思っているが皆緊張した面持ちで発表のときを待っていた。出久も同じであり緊張の面持ちでその時を待ち続けている。そして巨大モニター前に目良が立っていよいよ合格発表者が公表されようとしていた。

 

『え~それではこれより、合格発表者を発表したいと思います。モニターに50音順にて名前が表示されますのでどうぞご確認ください』

 

遂に表示されたモニターに映り込む合格者の名前、それらに皆が食い入るように自らの名前を探していく。

 

「みみみみみみみみみっっっっ!!!!」

『いやもうちょっと落ち着いて探しなさい……挙動不審過ぎる、と言いたい所だけど周りもどっこいどっこいか』

 

相棒の震える声と指に呆れようとしたが周りの受験生も同じような物だったので何も言わない事にした。さてさてどうなる事やら……ま行に入り間もなくみ、そこにあるかどうか……と辿って行くと―――そこに緑谷 出久の文字がなかった。

 

「な、い……!?」

『あり?』

 

まさかまさかの事態にマグナも驚きの声を上げてしまった。勇士司令部所属の戦士として、贔屓目を抜きにして判断をしても彼は十二分に良い働きをしていたと思うのだが……まさかの不合格。予想外にも程がある、その展開に出久は言葉を失い倒れそうになる程だった。だがそれは彼だけではない。

 

「ねぇっ……!!!?」

「……ない」

「ゆっが最後……」

 

ギャングオルカと共に立ち向かった爆豪、焦凍、夜嵐も同じ結果だったらしい。爆豪は救助活動において確かに口こそ悪かったが不器用なりに手を差し伸べたり、爆破を上手く調節した物で瓦礫処理などをしていた。それなのに不合格というのは解せない、それは焦凍とイサナも同義。言葉を失っている中で思わずクラスメイト達もどよめいていた。

 

「み、緑谷が不合格!!?な、なんかの間違いだろ!?もう一回探してみろって!?オイラのすぐ近くだろ!!?」

「―――駄目、ないわ。爆豪ちゃんや轟ちゃんのも……」

「おいおい嘘だろ……うちのクラスのトップ3が……!?」

 

『えー、全員ご確認頂けたでしょうか、それでは続きましてプリントをお配りします。採点内容が詳しく記載されていますのでしっかり目を通しておいて下さい。全員100点からの減点方式で採点しております』

 

信じられないと言いたげな皆へとヒーロー委員会職員から次々と合格者へとプリントが配られていく。自分の持ち点と評価内容が詳しく記載され、どんな行動で減点されているのかも詳しく書かれている。そして配られた後に目良は大きな声を出しながらモニターを切り替える。

 

『それでは次の発表を行います―――皆さん、神野区における二大決戦を御存じかと思います。オールマイト、そしてウルトラマンの死闘を』

 

その声に思わず顔を上げると、映し出されていたのは神野区におけるマグナとオーブがアウローラと戦う映像だった。

 

『この戦いは日本、いえ地球そのものに大きな衝撃を与えました。ウルトラマンというこの星のために戦う新たな光の確認は大きいですが、同時にこの星には新たな脅威があると知られました。映像にもありますそれを超巨大なヴィランと全く別の存在、怪獣と定義する事に政府は決定しました。そして―――同時に対怪獣特設特殊作戦実行チームが組織される事に決定しました』

 

長ったらしいが要するに防衛チームの設立である。それは大きなどよめきを生んだ、超常が日常へと変わった現代においても怪獣の存在は完全なSFの領域、それに対する組織が政府によって正式に組織されるという事になった。そしてその組織には多くのヒーローが参加の名乗りを上げている事も上げながらも皆にも平和を守るために共に戦ってくれることを期待するという事を伝えると―――いよいよ本題に入る。モニターが切り替わるとそこには4名の名前が挙がっていた、そこに出久、爆豪、焦凍、イサナの名前があった。

 

『そして今回、試験官にギャングオルカへと依頼を出した理由もお伝えします。彼はトップ10に名を連ねるヒーローなだけではなくパワー、タフネス、テクニック、様々な分野においてもトップクラスのヒーローでもあります。そんな彼を今回、怪獣と仮定し臆する事無く立ち向かう気高く崇高な意志を持ち高い戦闘力を持つ者を選定したかった、その結果としてこの4名を―――対怪獣特設特殊作戦実行チームの特別隊員としての資格そしてヒーロー仮免許の双方を与える事とします』

 

「「「「っ!!?」」」」

『成程そう来たか、落として上げるとは随分と粋な事をするじゃないか』

 

落ちた訳ではなかった、寧ろその逆。壮絶な評価を得ていた。仮免を与えるだけではなく隊員として正式な資格を与えられる、それはヒーローとして社会を支えるだけではなく怪獣という新たな脅威から人々を守る為の盾にも矛にもなる使命を与えられた事になりうる。

 

『勿論、これは強制では御座いません。それぞれ思い描いていた進路、夢、目標、目的などがあると思いますので隊員として活動するにしてもヒーローとして活躍するのもお任せします。ですが私個人の意見としては貴方方は圧倒的な脅威に立ち向かう心、連携を取る程に相手を信頼する心、それらは即ち平和を守る心に直結すると私は考えています。故に力を貸していただけると有難いと思っています、如何か検討してくださると嬉しい限りです』

 

そこで区切られると改めて出久らへとプリントが配られた。そこには点数などがあるが、それ以上に目立つのが特別隊員資格授与の文字であった。ナイトアイに言われていたが改めてこうして目の当たりにするとそれが重々しく圧し掛かってくる。これが平和を守る責任の一端なんだと思い知らされる。そしてその手に与えられる事になった特別枠の資格証が置かれ、出久は不思議と気持ちが切り替わっていくのを感じてしまった。

 

「(マグナさん、僕……頑張ります)」

『ああっ応援してるよ、君がどんな道を選ぶのか楽しみにさせて貰うよ』

 

 

「にしても爆豪お前すげぇじゃねえか!!特別枠とか」

「ったりめぇだ俺が通常の合格程度だと思ってたのかクソが!!」

「良く言うぜプリント配られた時、切島に寄こせとか言ってたくせに」

「あ"あ"ぁ"ん"!!?」

「ぎゃあああ暴力反対ィィィィ!!!!」

 

爆豪にアイアンクローを食らいながら悲鳴を上げる峰田の声が夕焼けの空に木霊する。掌から爆破を起こせる爆豪がやるアイアンクローは冗談抜きで洒落にならないので飯田などが本気でそれを止めに入る。そんなやり取りすら今は何処か微笑ましく感じるのは何でだろう、此処まで満たされている気分は中々ないからだろうか。他の皆とは違う赤、青、黄で彩られている資格証。それの写真を一枚撮ってオールマイトに送ると直ぐに懐にしまう。

 

「それにしてもデク君凄すぎひん!?特別隊員なんてカッコ良すぎるよ~!!」

「僕もびっくりだよ、最初なんて不合格だと思って心臓止まりそうだったのに……発目さんの実験以外だと初めてじゃないかなあんな感覚」

「緑谷、それはそれでどうなんだお前」

 

色んな意味で豊富過ぎる経験が出来る発目の実験。中には冗談抜きで出久が死に掛けた物も存在する、マグナが一緒なので並大抵な事では死なないので彼女も加減はあまりしない所か全くしない。

 

「でも轟君も一緒なんてビックリしたよ」

「俺もだ、特別隊員ってのがどんなのか分からねぇけどなんかいい響きだな。さっき夜嵐 イナサにも謝られるついでに言われた」

「なんかドリームチームだな……もしかしたらあいつも雄英に来てたかもしれないんだろ?」

 

それを加味すると確かにそう言えるかもしれない、だが逆を言えば防衛チームにはそれだけの戦力を集わせないと怪獣に対抗できないという事にも成り得るのである。同時にそこにかかる責任は重大、だから目良もどうするかは自由にしてくれていいと言ったのだろう。

 

「僕は行くつもりだよ」

「そうか、俺も行ってみるか……爆豪お前は如何する」

「行くに決まってんだろぉ!!」




活動報告にて防衛チームの名前についてのご意見を募集中です。

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