「この後の予定なんですが宜しければ実験の見学を行って貰えませんかね、是非ご意見をお聞きしたいんですよ」
「意見って何を?」
「今現在、この組織の主戦力とされているヒーローの新コスチュームの実験です」
コスチュームの調整なども順調も進んで気付けばお昼ごろになっていた。焦凍も爆豪も自分専用へと調整されたコスチュームには興味津々且つそれに見合うようになることを決意しながらそれに協力していた為か空腹に気付けなかったのか案内された食堂で大盛の食事をしていた。そこに発目がある話を持ってきた。
「新コスチューム……誰だそのヒーローっつうのは」
「それは見てからのお楽しみっという奴ですよ、ですがこの実験が上手くいけば皆さんにも応用が利きますので意義としては大きな物になります」
「フムッ……では昼食後はそちらに行くとしよう。シールド博士らも其方にいるだろうからな」
食事もそこそこに再び訪れたテストエリア。一つの街並みが再現されたようなそこはまるで雄英の運動場βのようだがそれよりも遥かに規模が大きい。流石に規模が違う事を改めて再認識させられながらも発目が指差された先に現在の主戦力とされているヒーローの姿があった。
「あれって……Mt.レディ!!?」
『あの時のお嬢さんか』
そう、そこに居たのは新進気鋭のニューヒーローとして注目を集めていたMt.レディであった。組織が作られると聞くと真っ先に賛同の声と参加を表明し積極的に実験や調整などに参加し続けていた彼女は個性の関係もあって戦闘実働部隊の中心のような立場にあった。
「ライドメカの完成はまだ先ですからねぇ……今はあの人が主戦力ですね」
「確かにMt.レディは2062㎝まで巨大化出来る個性持ちだけどそれでもサイズ的な問題は拭えないと思うけど……」
「ウルトラマンも怪獣連中も大体50m級だ、役に立つのか」
「手厳しいご意見で。その辺りも考えてますよ」
保須に出現したツルク星人、それですら怪獣としての姿は54mもあった。Mt.レディの倍以上の体格となる、それに対して戦力に成り得るのかと怪訝そうな表情を浮かべる爆豪に焦凍も保須でその現場を見ているので同意を浮かべてしまう。それでも見ていて欲しいと言うので見続けているといよいよテストが始まる。
「行きます……デュオッ!!!」
静かに意識を集中させていくMt.レディ、静寂の中にありながらも力強く放たれた声はマグナのリスペクトなのかそっくりだったので思わず出久とマグナは苦笑いを浮かべてしまったのだが直後それが掻き消えてしまった。稲妻のような奔る光の中で巨大化している彼女、そのサイズはビルと並び立つ程だった筈なのにビルを追い越して40m級の大きさにまで至っていた。
「せ、成功よっ……やっと成功した!!」
ガッツポーズをしつつ研究開発部がいる方向を見るとそこでも大歓喜の嵐だった。漸くここまで来る事が出来たと皆が喜び合う中で発目も同じようにガッツポーズをしながら喜びを露わにしていた。Mt.レディのコスチュームにも彼女が関わっているからだろう、本当の意味で怪獣に対抗出来るヒーローが生まれた事は大きな一歩になると歓喜する中でナイトアイが説明を求める。
「ズバリ、あのスーツは着用者の個性を増幅するんです!!これは元々シールド博士が研究していた物らしいんですけど地球のためにとそれを流用しつつも私の技術をアレンジしつつ加えて完成したのがあちらなのです!!」
「I・アイランドでのあれか……」
I・アイランドでの一大事件。それの中心に関わっていた技術が今度は人々を守る為の力となる、正しく技術という物は使う人間によって善にも悪にもなるという事が良く分かる。そして次の実験がそのまま行われる事になった。
「それではゴホン……サイバーカード、インストール!!」
デヴィットは手にしているデバイスにカードをセットされるとMt.レディが纏っているコスチュームへとデータが送信されていく。それと同時にその周囲にデジタル的な青い光が奔ると一瞬で鎧の形へと変貌していきながらその身体へと装着されていく。黄金色に輝く右腕のアームに左肩にはエレキングを模した頭の装甲、それこそが嘗て発目が体育祭で披露したモンスアーマーの試験採用型のモンスアーマー。
「実体化、してる……!!身体にもなにも違和感もない……デヴィットさん成功ですよこれ~!!!!」
右腕のアームを振りながらも興奮したように声を張り上げるMt.レディに呼応するように開発部からも更なる声が上がった。何れライドメカにも対応できるようにする予定のモンスアーマー、その第一歩が、大きな一歩が無事に踏み出す事が出来たという事実が大きな想いとこれからの力になるのだと思うと感情があらぶってしまう。
「これは凄い……今は彼女だけだが将来的には怪獣に対する明確な対抗手段と成り得るだろう、しかしあのアーマーはユーモアも兼ね備えるとは素晴らしいな」
ナイトアイ的にもモンスアーマーの肩のエレキングは中々に高評価らしい。
「もしかして発目さん、僕たちもあのモンスアーマーって使えたりするの……!?」
「当然!!近中遠の全てを取り揃える予定ですよ、フッフッフッフッ……私来てますからね、もっともっとパワーアップしますよぉ……!!」
久しく出るマッドな発目の笑い声、それを聞いて何故か安心感とまた自分が頑張らないとなぁという思いが沸き上がり気合を入れる出久。そんな出久の肩を叩く焦凍と爆豪。続けてモンスアーマーの稼働実験へと移行してエレキングアーマーの特徴である電撃放出を行おうとした―――その時だった……それは突然現れた。
「な、何っ!!?」
空から現れたそれは雲を引き裂くように地上へと激突しながらも明確的な敵意を纏いながらゆっくり身体を起こした。漆黒のボディは宇宙空間の暗黒空間を想起させる、その中で妖しく鋭く輝く紅い閃光のような瞳が周囲を見つめながら標的を探すかの如くだった。
「うっひゃあああああああああああ50m級の人型ロボットのご登場ですかぁぁぁぁぁ!!!!???やっべえええ超研究したいぃぃぃぃ!!!!」
「言ってる場合かクソ女ぁ!!?」
「おいおいマジか!?」
「まさか、このような事が起ころうとは……!!」
皆が驚く中、出久の中にいるマグナは真っ直ぐとそのロボットを見据えた。彼はそれを知っている、一体何者が作り、何の為に作られたのかを……嘗て全宇宙制覇を目的として覇道を突き進んだ銀河帝国の尖兵として生み出されたロボット怪獣―――帝国機兵 レギオノイド。全身が黒で統一されてこそいるが間違いなかった。
それと戦う為に出久は隙を見て指輪を掲げようとする―――レギオノイドは何かを見つけるとゆっくり歩み始めるが同時にレギオノイドを追いかけてきた光が現れた。それは―――
『あれは、まさか……!?』
『―――もう逃がさねぇぜ……もう容赦しねぇぜ、さあブラックホールが吹き荒れるぜ!!!』
頭部に輝く二本のスラッガー、銀に輝くプロテクター、そしてその身に纏う鎧をブレスレットにしながら拳を鳴らしたウルトラマン―――ウルトラマンゼロが降り立った。
みんな大好きゼロ様、ゼロ師匠ことウルトラマンゼロのエントリーだ!!
えっ前回のラストでゼロはこんな事言わない?大丈夫あれゼロじゃないから、じゃあだれかって?それは―――おっと、これから先は皆さんには未来の話でしたね。ですので次回を御楽しみにお待ちください。