『ハァァァァァッッッッ……』
カトレアが光の国へと戻って行った事で人間態で居続ける理由も無くなったので出久と共に居るようになったマグナだが、そんな彼は深い深い溜息を吐いてしまっていた。もう数年の付き合いになるが彼がこんな姿を見せるのは出久も初めての経験だった、溜息どころか落ち込むという姿すら見た事も無い。
「だ、大丈夫ですかマグナさん」
『あんまり、大丈夫ではないねぇ……やっべぇよぜってぇ誤解されてるよしかもマックスにネオスにゼロ、ゾフィー隊長にさえ見られたって事は……うっわ光の国に帰りたくないって思ったの初めてかもしれねぇ……』
「マグナさん!!?」
あのマグナが此処まで口調を崩した事に出久は嘗てない程の戦慄を覚えながら愕然としながら声を上げてしまった。
『だってさぁ……私思ってた以上にカトレア王女に好かれたって事になるんだぜ、別れ際のあれとか絶対に友人的なあれじゃなくて恋人的な意味での好意だ……』
「い、いやそのそれはそれで逆玉みたいな感じで良かったんじゃないんです、かね?」
『……お見合い云々言われるまで結婚なんて一度も考えた事ないんだぜ、そんな俺がいきなり何段飛び越えて王女とゴールインとかもう何も信じられねぇ』
最低でも職場の同僚には全員話が行き渡る事は覚悟しなければいけないだろう……いや、ユリアンやウルトラ兄弟の皆さんの事を踏まえるともう色んな意味で手遅れなのかもしれない。これで任務を終えて光の国に帰ったら横断幕が広げられて婚約おめでとう騒ぎになってても可笑しくない、いや光の国の国民性から考えて100%どころか1000%あり得そうだから嫌だ。
『出久君、私もうずっとこの地球に居ちゃ駄目かな。もうこうなったら今まで我慢してた地球の食べ物とか食いまくってこの星に本格的に順応してやろうかな』
「マグナさんご自分が何を言ってるのか御理解なさってます!!?口調が戻ってきてますから正気に戻ってるかと思ったけど全然戻ってないですよねしっかりしてくださいよ!!?」
『冗談だよ分かってるよその位……ハァッ……これも今まで任務を理由にお見合いを反故にし続けてきたツケか……覚悟決めないとダメかなぁ……』
溜息を吐きまくっているマグナ、これまで感じた事も無いような事だが改めて思うのはウルトラマンという存在は神と言った絶対的な存在などではなく自分達地球と全く同じ人間であるという事を理解する。そう思うとそんな悪態を吐く姿も不思議と受け入れられている自分が居るのである。
「カトレアさんは僕から見ても凄い美人でしたし何か不満なんですか?」
『不満なんてないさ。彼女は完璧すぎる位の美女だよ、まあ王族だからちょっと奥手になりやすいというかさ、高嶺の花という印象がある位だけど彼女自身は気さくだし気品もあるし気取った所もなくていい人だと思うよ』
「凄い高評価じゃないですか」
『考えてごらん。じっくりと交際やらを重ねていきたいと思ってたのに気づいたらもう外堀が完全に埋められて絶対確実に結婚しなければいけないという状況になる事を』
「……あ~……成程、相手じゃなくて環境が嫌なんですか……」
『うむ。するならするでもっと自由にしたかった』
と言ってもそれも既に半ば諦めが入っている。きっとウルトラ兄弟の方々だけではなく王族の皆様方にもお話が言っている事だろう、そして自分の婿入りがより盤石になっていくのだろう……だが此処でマグナに電流奔る。
『あっ凄いよ出久君、私ってば天才かもしれないよ良い事思い付いた』
「えっ如何するつもりなんですか?」
『いや光の国だと別に王族との交際やらは別に禁止されてないし自由恋愛可能なんだよ、王族の女性方は80とユリアンの事もあって積極性はあるんだけど男側からすればちょっと気持ち的に難しい所があってね』
「お相手が王族なら、まあ確かにそうですね」
『でしょ。故に言い方悪いけど交際を望みながら出来ていない王族もいるんだよ』
そうマグナが思いついた名案とは……
『こうなったら勇士司令部とか文明監視員の同僚に片っ端から王族を紹介して同じ立場にしてやる』
「いや何言ってるんですかマグナさん!!?」
『いいじゃないか別に犯罪とかじゃないんだし寧ろ私は健全な行いの下で王族の方々の恋のキューピットを務めようとしているだけだよ本当だよ嘘じゃないよ1000%の善意だよウソジャナイヨーホントダヨートモダチノシアワセヲイノッテルダケダヨー』
「棒読み!!最後すっごい棒読みになってます!!」
「「「ッ!!??」」」
「如何したんだよマックス、ネオスにゼノン。急に身震いなんてしちまって、風邪か?」
「い、いやなんでもないよゼロ。突然身の危険を感じたというのか、なんというか……何かに狙われたような……」
「マックスも?僕もだよ、なんだった今の……」
「私もだ……何だこの寒気は……?」
「一応ウルトラクリニック行ったら如何だ?ウルトラの母に見て貰ったら多分一発だぜ」
「「「そうするかな……」」」
『うむっ我ながら素敵な考えが浮かび上がった所で君のこれからの事に目を向けるとしようじゃないか』
「ええっ……僕、なんかマックスさんとネオスさんの身が心配になってきたんですけど……」
『大丈夫大丈夫最速最強と誰にも負けない銀色のHEROだから』
「なんか投げやりだぁ……」
先程までキャラが崩壊していたのが嘘なように普段通りに戻ったマグナに安心出来るような出来ないようなものを感じていると出久の掌に3つのメダルが収まった。ゼットライザーに使用されるウルトラマンの力が秘められたウルトラメダル、マックス、ネオス、ゼノンのメダル達。ゾフィーが授けてくれた地球を守る為の新たな力に思わず喉が鳴る。
『しかし隊長も随分とすごい物を渡してくれたよ、この組み合わせ……単純に必殺技として使えると思っていたがこれは―――新たな姿に変身出来るね』
「新しい姿……ウルトラ・フォー・オールとはまた違うって事ですよね」
『うむ。この三人の力で私達を強化する事になる、どんな事になるかはまたお楽しみに、という奴だね』
出久とマグナが新しい力を得た、それは明確に地球を守る光の一つが強くなった事を意味するだろう―――だが、それは同時に
―――そうかそうか、辛かったね……それじゃあ君の味方であり続けようじゃないか。君の友達として。
―――本当……?
―――ええ、本当ですよ。永久にそしてあなたを守りましょう。
地球を脅かす影が濃くなる事を意味するのだと。
『……』
『アサリナ大丈夫かい……?おいちょっと、聞いてるのかい?』
『……よしマグナこのまま地球に残ろうそうすれば僕は君と永遠に居られるし地球の平和も護れるんだもん!!一石二鳥そして僕得だから最高って奴だよね!!』
『好い加減にせい!!』
『オボフッ!!?』