緑谷出久はウルトラマンと出会う。   作:魔女っ子アルト姫

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新たな光の始まり

二月二十六日、いよいよその日がやって来た。雄英入試試験当日、受験会場である雄英高校を目の前にしながらも出久の表情には不思議と焦りや緊張といった感情や色も見せずにいた。今日この日を迎えるまでの3年近くの時間を必死に生きてきた、必死に修練に励んできた。やり切ったと胸を張って言える今に出久は一歩一歩地面の感触を確かめるようにしながら足を踏み入れていった。

 

『いい精神状態だ、当時の私とは大違いで何よりだ』

 

と脳裏には何処か羨ましそうにしつつも自分の成長に素直な喜びを浮かべている相棒(マグナ)の声が聞こえてくる。それが更に精神にリラックスを促し余計な力を取り払って行く。例えどんな結果になろうとも後悔なんてしない、そうなったら別のヒーロー科を受けてそこでヒーローになるだけでしかない。自分が最高のヒーローになる為には高校は何処なのかは問題ではない―――どんな場所だろうとそこで全力の努力するだけ。

 

大学の講義で使うような巨大な講堂の造りとなっている会場、ずらりと並べられている席には全てに受験票に振られており自分の番号がある席に座り込むと少しした後に同じ中学故か爆豪がドカリと座り込んだ。

 

「やぁっかっちゃん」

「……おう」

 

ぶっきらぼうに挨拶をした後に爆豪は目を閉じて何も喋らなくなっていた。無駄な話をする気はないのとこの後の試験などに集中したいからだろう、自分もそれは同じだと言わんばかりに瞳を閉じているといよいよ時間がやって来たらしく説明が開始される。その為に現れたのは雄英の教員にしてプロヒーローのボイスヒーロー、プレゼント・マイクだった。ファンの一人である出久はその登場に感動しつつも思わずマイクの声に答えてしまった。

 

『今日は俺のライブへようこそぉぉぉお!!!!エヴィバディセイヘイ!!!』

「YEAH!!」

『おっナイスなレスポンスサンキューそこのボーイ!!』

 

恐らくきっと、間違いなく試験に集中するだろうから全無視の塩対応を予想していたマイクは予想外のナイスボリュームの返事(レスポンス)に笑みを浮かべながら出久の言葉に感謝を送り直した。内心で健闘を祈りながら説明に入った。

 

『ふむっ彼がプレゼント・マイクか……しかしよくもまあ返事出来たね、隣の爆豪君も此方を横目で呆れているよ』

「(言わないとファンじゃないです)」

『その気持ちは分かる。ヒーローの登場に名前を叫ぶのと同じだな』

 

巨大なモニターへと試験への概要が投影されていく。様々な情報が出されていく中でそれらを総合しながらどう動くのがベストなのかを考えつつも、爆豪とは全く別の試験場である事に気付いた。矢張り同じ中学などは別々になるように調整が成されているらしい。二人は少しばかり残念そうな顔をするが獲物を喰い合う事が無いと前向きに考え直すのであった。

 

『演習場には仮想ヴィランが三種配置している。そのヴィランは攻略難易度に応じてそれぞれポイントがある、1とか2とかな!!個性を利用して行動不能にすれば、ヴィランに応じて点数が個人に加算される。当然、他人への攻撃などアンチヒーローな行動はご法度!!そして、最後にリスナーに我が校の『校訓』をプレゼントしよう。かの英雄……「ナポレオン・ボナパルト」は言った!「真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者」と! Plus Ultra!! それでは皆、良い受難を!』

 

良い受難を、いい言葉だ。ヒーローを目指すならば進む道は受難しかないと言っても過言ではない。その受難が命に甚大な影響を与えるやり取りになるかもしれない、そんな受難を乗り越えて成長していくものこそが英雄であると思いながら内心で爆豪の健闘を祈った後に各自が割り当てられた試験会場へと進んで行く。

 

人工的に作られたビルが複数並び立つフィールドが広がっている、このフィールド内に放たれる仮想敵を撃破しそのポイントを競うのが実技試験。間もなく開始される試験に脅える者、備える者、格上の他の受験生に圧倒される者と分かれている中、出久はいざ試験の場へと足を踏み入れても酷く落ち着いていた。

 

「(……大丈夫さ、今日までワン・フォー・オールの制御訓練だって一杯やって来たんだ。マグナさんとオールマイトのお墨付きだって貰えた……そんな僕がやる事は全力で目の前の困難にぶつかる事だけ!!)」

 

もう既に準備は万端、何時始まっても対応出来ると言わんばかりの彼に対してそれを試すかのように唐突に―――

 

『はいそれじゃあ試験スタート』

 

それは始まった、唐突且つ軽い始まりの合図に多くの者が反応出来ない中で出久はそれに素早く反応した。身体に染み込んだ感覚は肉体と神経を一気に刺激して個性が循環していき力を滾らせていく。それは肉体の強化と並行して行い続けた鍛錬の結晶とも言える技、ワン・フォー・オールで肉体面を強化するだけではなく神経の伝達速度などを高める事が可能になり思考速度を引き上げることを可能にしていた。人間の神経伝達速度の限界は0.1秒と言われている、だがそれを超えた速度で行う事を可能とし音で聞いたのとほぼ同時にスタートを掛ける事が出来る。全身を強化しながらまるで閃光の如く駆け出せる事からそれを出久は―――

 

「ワン・フォー・オール……フルカウル―――閃光疾走(ライトニング・ダッシュ)!!!!」

 

それは雄英側としても計測の限界、いや寧ろそれだけ素早く反応出来た事は評価点にしかならない。駆け出した出久、その視線の先には雄英が制作したロボットの仮想ヴィランがいた。それへと迫りながら着地しながら跳躍しサマーサルトキックを繰り出す。胸部を捉えた一撃は容易に装甲を穿ちながら仮想ヴィランを空へと打ち上げ爆発させた。

 

「―――行ける!!」

『出久君左に2、右に1』

「シェアッ!!!」

 

地面を蹴りながら右へと跳んでいくと仮想ヴィランに激突の様な着地蹴りをかましながら反動を使いながら今度は真逆に居る二体のロボへと向かって行きながら両足の蹴りを放って同時に蹴り砕いた。

 

「光弾技が出来ればそっちを使うんだけどなぁ!!」

『一重に練習不足だからね、今は我慢しておくとしよう』

「肉弾戦で頑張ろうぉ!」

 

とマグナへの返答を自分への鼓舞として誤魔化すように言いながらも次の標的を探して駆け出していく。まだまだ光線技関連は未熟、故に試験ではワン・フォー・オールなどによる肉体強化のみで戦う事にした出久。その後も順調にポイントを稼ぎながらも途中途中で見かけた他の受験生のサポートを行っていく。瓦礫に潰されそうな子が居れば瓦礫を砕き、完全に戦意を失っていれば代わりに襲いかかって来た仮想ヴィランを打ち砕いた。他の生徒が見れば無駄だと思われるかもしれないが……手を伸ばせば助けられる人を放置するのはヒーローの在り方ではないと出久は思い、それにマグナも賛成する。そんな時だった、会場に明確で巨大な変化が起きたのだ。

 

「影……上!?」

 

それは武骨な装甲などに覆われている巨人、巨大な手がビルなどを抑えるようにしながらも身体を支えながらも至る所を監視する巨人。直ぐに理解する、あれこそが0ポイントの邪魔だけをするヴィラン。この試験における最大の障害、最大とは言っていたが大きさも最大とは質が悪いとしか言いようがない。ビルをも見下ろし此方を狙うように頭部のモノアイを巡らせる姿は恐怖を振りまく災厄に等しい。

 

「あれが0ポイントヴィラン!?デカァ!!?」

『30m位かな、私の知ってるロボット怪獣よりは小さいな』

「マグナさんの世界って本当に規模やばいですね!!?」

 

と言いつつも周囲の受験生たちが逃げ始めていく中で出久は飛び上がりながらビルの屋上へと位置取った。このまま放置する事も考えた、あれを倒したとしても結局は0ポイントでポイントにもならず得にはならない。だが得にならなければ何もしないのか、違うだろう―――仮にこの場がプロの現場だとすればあんな巨大なヴィランは脅威の一言でしかない。何より―――近くには瓦礫に足を取られていた人がいたのにあれを放置するなんて嫌だ。

 

「マグナさん見ててください、僕の―――光線!!」

 

そう叫びながら胸を張る。同時にイメージする、するのは嘗て見せてくれたマグナの光線を放つ姿。それと自らを重ねながら個性を授かった時を思い出しながら腕に力を込めながらそれに合わせるように腕が輝きを持って行くのをイメージする。腕は激しい力を纏いながらも閃光を作り出しながら腕を掲げる。それを見た0ポイントヴィランは出久へと向かって腕を差し向けるが出久は腕を右へと振り被り、右足で踏ん張りながら力を更に高めた。

 

「イズティウムッッッッ―――光線!!」

 

振り被った腕、それを逆十字を思わせるようなフォームで組む事で放たれた青白い光を纏った碧色の美しい光線。それは雷鳴のような轟きを試験場全体に響かせながら0ポイントヴィランの腕へとぶつかった。巨体の腕をそのまま押し戻しながらも腕を吹き飛ばし本体へと光線は到達する。

 

「ぁぁぁぁっっ……デェヤアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

渾身の叫びと共に光線は一際巨大となりながら本体へと炸裂した、そして―――0ポイントヴィランを上半身を飲み込み爆発を引き起こした。爆煙が晴れた時、そこにあったのは……上半身がボロボロとなりながら完全に機能を停止した巨大ロボの姿だった。それを見届けた出久は全身に激しい疲労感を覚えながらも満足そうな顔を浮かべて仰向けに倒れこんだ。

 

「こ、これが僕の……光線の始まりですよ……マグナ、さん……」

『ああ立派だったよ出久君。見せて貰ったよ君の光を』

 

0ポイントの撃破と同時に試験は終了してしまったが……出久は光線技による疲労も心地良く感じられるほどに満たされていた。




イズティウム光線、本来まだまだ未熟であるがワン・フォー・オールの影響で光線技の強化、そして個性の許容限界は10%だが限界を超えると体外にエネルギーを放出するという事を逆手にとって発射可能とした出久オリジナルの光線。
だが光線の扱いが未熟である事は変わりない為に使ってしまうと余分なエネルギーまで使ってしまい激しく疲労する、そして許容限界を超えるので肉体にも負荷を掛ける。故にまだまだ練習が必要な技という印象が拭えない。

ウルトラマンXのザナディウム光線の発射までのフォームを逆にした物だが、発射の際はスペシウム光線のように手首を合わせるのではなく右肘の内側に左腕を合わせて逆十字を作るような形になるのでどちらかと言えばウルトラセブンのワイドショットに近い。
名前はラテン語で始まりを意味するイニティウムにイズクを合わせている。
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