緑谷出久はウルトラマンと出会う。   作:魔女っ子アルト姫

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これからの道。

「う~ん……これ自体に大した役目は無いみたいですね、唯のエネルギーの受信装置としか言いようがありません」

 

基地へと戻った出久達、出現した怪獣を鎮める事に成功した事に皆が胸を撫で下ろす中でマグナの言葉と共に発目にホロボロスへと突き刺さっていた杭の解析を依頼する。爆豪の技によって爆散してしまっているが破片を回収する事でその分析を行う事は出来ていた―――がそれ自体は大した意味はない事しか分からなかった。

 

「言うなればこいつはTVのアンテナみたいなものですね、放射されたエネルギーを受け取ってそれを怪獣に放射するだけの機能しかありません。作ろうと思えば今の技術力でも十二分に再現可能です」

「それ以外の機能は?」

「皆無としか言いようがないですね」

 

同じくグルテンも同意見。強いて言うなればこれ自体の構造は画期的で地球で使えるように設計し直せば電線を無用の長物にする事が可能との事。

 

「だけどあくまでそれまで、純粋にエネルギーの受信を行えるだけですね」

「そのエネルギーでホロボロスを操って街を壊そうとしてた、とかですかね」

『いや、違うね』

 

それを強く否定したのはマグナだった、研究室の中で出久に視線が集中する中で人間態になりながらその手でウルトラメダルを弄りながらも言葉を紡ぐ。

 

「エネルギーによる影響を受けて酷く苛立っていた、エネルギーを送り続けてきた奴をホロボロス自身は倒そうとしたんだろう」

「テメェにふざけた事をしやがったクソに落とし前を付けようとしてたって事か」

「そう言う事だね」

 

良く怪獣の心理を理解していると言わざるを得ない、ホロボロス程の存在となれば操作する事は非常に困難。成功したとしても逆に力を弱めてしまいかねない程に強い操作をせざるを得なくなるかもしれない、ならば怪獣がフルスペックを発揮出来るように仕向けた。だから敢えてホロボロスを鎖で縛るような事をした、自分の下に手招きする為に。

 

「そのエネルギーの送信元は分かるかな」

「フッフッフッ……マグナさんってば私を誰だと思ってるんですか、バッチリやってますよぉ!!!ファイターで解析作業中にエネルギーの放射を感知したので逆探知を仕掛けておいたんですよ!!と言っても正確な場所の絞り込むは無理でした、対策してたみたいで広範囲からの照射を行ってました」

「発目君何時の間に……」

「あららっなんだか明ちゃんってばお父さんにライバル意識燃やしまくってるわね」

 

そう言いながらも巨大なモニターへとそのデータを出力する、示されたのは東京の一帯。同じような杭が幾つか仕掛けられておりそこからエネルギーが送られていたという事になる。そうしなければ送れなかったのか、それとも自ら身を隠す為に行った工作なのかは謎だが、絞り込むことは出来た。

 

「ヒーローに協力要請を出すべきか……いや、下手に刺激すれば保須の一件のようになりかねんし危険も高いか……」

「慎重にならざるを得ないな……隊員向けの装備などの開発も急いではいますが」

「何せ元々がヒーローですからそれぞれの個性に合わせたものばかりでしたから、それから統一された装備にするのも難しくて」

 

PLUSの基地機能もライドメカも完全とは言えないこの状況、まだまだ急ごしらえという印象を拭う事は出来ずにいる。人員こそ揃い始めているがそんな彼らが装備する為の対怪獣災害想定コスチュームの開発は遅れているのも事実。ある程度の統一的な装備とそれぞれの個性を出せる物が好ましいとされているが、それこそが難しいと発目やシールド親子も頭を悩ませている。

 

「マグナさん、ホロボロスについてですが……倒さなくても良かったのですか」

 

話し合いが続く中で思わずメリッサが切り出したのはホロボロスについてだった。眠りを妨げられて怒り狂い、その元凶を断つ為に行動をしていたとはいえ人類とはかけ離れた存在である怪獣に少なからず恐怖を抱いている。それを倒さずに傷まで治して元の住処へと戻るのを見逃がす。本当にそれでいいのかと聞きたくてしょうがなかった。それに対して指の間にウルトラメダルを挟みながら正面を見つめているマグナは応える。

 

「確かにホロボロスは危険な怪獣かもしれない、だが彼はまだ人的な被害は出していないし利用されていただけで住処へ戻って行った。私としては倒す理由は無くなっていたからね」

「まあまた起きたら戦う事になるかもしれませんけど、穏便に済ませられるならそれが一番ですもんね~。何事も平和が一番ですよ」

「テメェが言うかイカれ女」

 

文明監視員として活躍した経験があるマグナとしてはただ怪獣であるから、という理由だけで怪獣を倒す事はしたくはない。当然いざという時には相手の全てを受け止めながら全力で立ち向かう、だが倒さない道があるのならばそれを選択したい。

 

「傲慢と思えるかもしれないけど私はそうしたいんだよね、侵略者の尖兵とかだったら当然戦うけどね」

「……いえ素晴らしい考えです、全ての怪獣を倒すなどと言った考えを持ったらPLUSは無尽蔵に力を付けようとする危険な存在に成り得てしまう……」

 

その言葉にメリッサもハッと我に返った、そして自分を恥じた。今の言葉がどれほどまでに自分勝手で浅ましく悍ましい意味を孕んでいたかも理解してしなかったのだ、自らの安全のために他の生命を全てを根絶やしにした方が良いのでは……それに繋がりかねない言葉。父に肩を叩かれながらも反省する。

 

「時には拳を、時には花を―――そして優しさを持ち続けて欲しい。それが私の願いだよ」




―――そう、ウルトラマンは我々を守ってなどくれない。人類を脅かす怪獣を見逃がしているではないか、何故だ。何故ウルトラマンは怪獣までも救うのか、全てを救うとでもいう気か、自らを神だとでもいうつもりか!!ぁぁっなんて恐ろしい……!!

―――ウルトラ、マンは私を助けて、くれない……人間を救わない……。

―――お前はこの星に要らないんだよウルトラマン、いやマグナだったかな……サッサと消えろ。



「さて、この程度で構わないか」

「ああ、感謝するそして永遠に会わない事を望むよ」

「さてそれは如何かな」

「さっさと消えてくれ」

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