緑谷出久はウルトラマンと出会う。   作:魔女っ子アルト姫

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悪夢の胎動

出久の日々は新学期になってからさらに忙しくなったと言っていいだろう、新学期は新たな勉強が入るのもあるがそれ以上にヒーローインターンの代用として行っているPLUSへの参加がほぼ毎日起きている。勉学面は元々優秀な部類に入るのであまり問題こそ無いが……彼にとっての問題と言うのは何方かと言えば自分でなければならない唯一無二の問題なのである。

 

「緑谷さん緑谷さん緑谷さん、新しいアタッチメントを開発したんですよ今回はなんとモンスアーマーとの互換性を持たせて実際にアーマーを纏えるようにまでした自信作ですよ!!その名もXですよX!!グルテン博士からお話を聞いたXIOという組織と深い関係になっていたというウルトラマンのお名前を拝借したんですよ是非テストをお願いしますよさあさあさあさあ!!!」

「なんか久しぶりな感じするけど本当に相変わらず僕の話聞かないよね発目さん分かった分かりました試させて頂きますから僕を壁に追い詰めるのは止めてくれないから本当に!!?」

 

「最近忘れかけたけどなんかやっぱりあれが明ちゃんって感じがするあたり、僕も染まってたんだなぁ……」

「私は落ち着き始めた所を良く知ってますけど……やっぱり緑谷君と一緒だと凄い生き生きとしてますね」

「うぅむ、矢張り波長と言うか色々とウマが合うんだろうね。能力だけではなくて性格面の相性もいいんだろう」

 

引き摺られるようにしながらテストエリアへと連れて行かれる出久の姿はあっという間にPLUSの中でも名物というか当たり前の物となっていった。最初こそ若い整備士たちはあんな美少女に振り回されるなんて羨まけしからん!!と憤っていたのだが、一時的に出向してきた雄英の教師のヒーロー達が話をすると一瞬でそれは同情へとフォームチェンジする。

 

「それで司令官の人事はどうなりましたか」

「中々に引き受けてくださる方が居なく難航しております……ヴィラン相手ではなく怪獣という未知の存在が相手という事もあって尻込みしてしまう方が多いです。いっその事マグナさんがやっていただくというのは」

「ユーモラスな貴方らしいですが、PLUSの参謀としては微妙な言葉ですよ」

 

出久が別の意味で苦労を重ねている中でその相棒であるマグナは別の場所で仕事をしていた。この世界は言うなればマン兄さんこと初代ウルトラマンの世界に近しい所がある、個性によって発展している技術などこそは存在しているがそれらをどのように怪獣に活かすのかというのが一切ないのが問題。

 

「オールマイトを推す声があるのが一番頭が痛い所です」

「今までの実績が実績ですからね、所謂広告塔としての活用も狙っての推薦でしょうかね。ですが現場は溜まったものではないでしょう」

「全くです、ですので暫くは私が司令兼任を行うつもりです」

「それが良いでしょうね」

 

オールマイトを否定する訳でもないが、誰しも得意不得意という物がある。オールマイトは前線で活躍する隊員の一人と言うのが一番いいだろう、自ら戦いながらもある程度の指示を出す役職程度が一番とマグナもナイトアイも思っている。

 

「レギオノイドの方はどうなりましたかね」

「順調に改修は進んでおります、しかし矢張り地球の技術では解析しきれない部分が多数です。グルテン博士の手なども借りましたが……一度動かしてみないと分からない点が多く正直運用には不安な所があります」

 

前進し続けているがそれでも難しい部分は多い、当然と言えば当然だろう……同時にこれはこれで良いという考えがある。自分はウルトラマンでこの星の人間ではない、文明監視員でもあったマグナは文明に極力干渉すべきではないとは思っている。この星の問題はこの星の者が解決すべきだと思う一方で人間である自分が助けるべきだと叫ぶのも事実。

 

「レギオノイドの技術を応用した新たなメカの開発も進んでます」

「随分と速いですね」

「一番の問題でしたエネルギー関連がホロボロスに刺さっていた杭によって解消される事になったのです」

 

思わぬ処から齎された福音、ホロボロスへと突き刺さっていた杭。それをグルテンを始めとしたPLUSが誇る研究開発部が再設計した結果としてエネルギーを無線供給する事が可能となった。しかも伝送ロスはコンマ0.3%という驚異のレベル。これを活用する事で全く純地球産の対怪獣災害想定特殊空挺機甲、略して特空機の開発が着手される事になった。

 

「現在開発中のバッテリーでは3分程度の活動が精々ですが、このエネルギーシステムを使えば即座に補給を可能とします」

「それは良いですね、それと例の調査は」

「ええっ秘密裏にですが行っております」

 

それに関連するように話を変えた、それはあの杭へとエネルギーを照射していた犯人の捜索である。東京に潜んでいるかもしれないという情報を頼りに現在実力が確かなヒーローとも連携しつつ調査を行っている。あまり芳しくないが……ナイトアイには気になる事象があったのである。

 

「実は現在、東京を中心にした新興宗教が勢力を伸ばしているというのです」

「宗教、ですか……」

「個性社会においては様々な物がありますが、これはある意味異端です。これが資料です」

 

宗教についてはあまり詳しくないマグナは余り何も言えないのだが……と思ったがそれを見た瞬間にある事を即座に思い出した。そこにあった教義、そして祀っていると思われる神とその神と敵対する悪魔の姿を模った聖遺物。

 

「私個人の感想にもなってしまいますが気に入らないというのが素直な所です、破滅を受け入れながら新たな創造を招く。それを司るのがその宗教の神、それと敵対する悪魔……マグナさん、私にはそれがウルトラマンにしか見る事が出来ないのです」

「―――奇遇ですね、私もです」

 

破滅を良しとする教義、創造と破滅を一つとする神。そして悪魔……どうしようもない不安がマグナの内に沸き上がる中で影が光を飲み込まんとし胎動を行い始めた。




多分分かる人ならこれだけでも分かっちゃうでしょうね、というか絶対分かる。

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