緑谷出久はウルトラマンと出会う。   作:魔女っ子アルト姫

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悪夢の台頭。

「それで俺達も捜査に参加って事か」

「うん、そう言う事」

 

PLUSが突き止めたホロボロスを突き動かしたエネルギーの元、それを突き止める為に派遣される隊員と連携するヒーロー達。その中には出久と焦凍の姿もあった。現地によるより詳細な調査と言う名目に送り込まれた二人は東京を巡りながら発目が突き止めたエネルギーと同じ波長を探している。波長が強ければ観測されたエネルギー源が近くにある事を示す。

 

「僕たちは特別隊員だけどそれでも権限的には一般的なプロヒーローに一歩劣る程度なんだって。でも怪獣災害時には完全に上位になるんだって」

「その為の専門組織だから当たり前と言えばそうだな」

 

懐から取り出した隊員証を見つめながら気持ちを引き締めると腕に装着しているデバイスを確認しながら波長を探す。

 

「この辺りはそこまで強くないな……場所移動するか」

「そうだね」

「緑谷、お前のそれまた新しいな」

「ああうん、また発目さんからテスト頼まれちゃってさ」

 

外に出るのならついでにデータも取って来て欲しいと頼まれて新アタッチメントであるXを装着している出久は苦笑いをしながらも何処か心配するような視線を送る友達のそれに感謝を送る。

 

「でも今回のこれは本当に意味があるんだよ、ホラッ今轟君が使ってるコスチュームにも使う事になる技術だからさ」

「俺のにも……もしかしてモンスアーマー?」

「うん、今回のアタッチメントにはそれが本格的に導入されているんだよ」

 

今回、ナイトアイからは万が一起きた緊急時の対処の為に対怪獣災害想定コスチュームの着用が許可されている。但し本来の用途で使う為には事前にセットしたPASSを認証させなければいけない、なので今現在のコスチュームのそれは雄英で使っていたそれに等しい。それでも自分の個性の補助はしてくれるので焦凍自身は十分だと思ってはいる。

 

そんなコスチュームにも使われる事が想定されているモンスアーマー、それが出久のアタッチメントには搭載されている。見た目は酷く華奢で目立った装備なども無いノーマルな状態に見える、強いて言うのであれば胸にあるXの形をしたウルトラマンのタイマーのようなゲージだった。それ以外は出久がマグナから貰ったウルトラマントを羽織っている。そんなコスチュームの腕に触れると投影型のディスプレイが出力され、腕を払うと今までに訪れた場所が一気に表示される。

 

「結構調査したけど今のところ全部外れだね」

「チマチマやってくしかねぇな、爆豪と一緒じゃなくて良かったな」

「アハハハッ……まあ確かにカッちゃんなら悪態吐きながらやるだろうからね」

 

軽口を叩いていると公園を横切ろうとした時だった、広場の方から妙に騒がしい音が聞こえてきた。子供達の遊ぶ声などの部類の物ではないので思わず二人顔を見合わせながらそちらへと向かう事にした。そこにあったのは……公園の広場を丸々一つ占領するように旗を立て、全く同じ服を纏った人々を従えるようにしながら高説を高らかに語り続ける男がいた。

 

「そう、この地球には個性という超常的な力が満ちている。そして今この地球は満ちているそれら、それらに伴う穢れを我らの神は祓う、それが間もなく現実となる―――聖なる炎が舞い降り、この地を浄化する」

 

「宗教……って奴か」

「多分……」

 

思わず首を傾げながら尋ねてくる焦凍に対して困惑を露わにしながら曖昧な答えを返してしまう。流石の出久もその辺りは個性に関して多くの新興宗教が存在している程度の知識しかないので何とも言えない。

 

「まあ妙な騒ぎじゃなければいいんじゃないかな……流石にこう言う所でやるなら許可は取ってるだろうし」

「取って無きゃただの馬鹿だしな」

「そこの少年」

 

そのまま調査を行おうとした時の事だった、突然高説をし続けていた教祖と思われる男が話しかけてきた。同時に周囲の人間が一斉に視線が向けられるので内心でギョッとする二人、その人間たちの目は何処か力がなく機械的な物に近いものを感じたからだろう。ゆっくりと迫ってくる男は如何にも自分は偉く正しいんだと言わんばかりの声色で語り掛けてくる。

 

「今のこの世界は酷く穢れている、個性による犯罪や脅威、誰かがこの世界を導くだと思わないかね」

「導くって……」

「それがアンタだって言いたいのか」

「ハッ私などではないさ、導くのは私達の神さ。我らが神は太古の昔より世界を、人類を見続けてきた。そして今こそ時が来たのだ、誤り続けた人々を導く救世主として世界を―――!!」

 

徐々に熱く早くなっていく言葉、そこに込められる思いも加速度的に増して行く。それらに感動するかのように目尻を拭う人々に二人は困惑を浮かべるしか出来なかった、そして同時に言いようのない恐怖を抱いてしまう。理解出来ないからこその恐怖が沸き上がってくる、何が此処まで彼らの心を揺らしているのか、何もかもが理解出来ない。だが次の物は真っ先に否定出来た。

 

「ウルトラマンなどという自らが守護神だと言わんばかりの行いをする悪魔など、我らが神の力には及ばない!!」

「貴方何を言ってるんですか」

「緑谷?」

 

その時の出久の変わりように焦凍は心から驚いた事だろう、目付から表情全てが変貌していった。そこに居るのは確かに出久なのは間違いないが別人なのではないかという錯覚すら覚える。

 

「何時、ウルトラマンが神だと言ったんですか、違うでしょウルトラマンは誰かを救う為に戦っているだけです」

「それこそが烏滸がましいというのだよ、理解出来ないとは嘆かわしいなぁ」

「それは貴方の感想でしょ、自分の信じる物と相容れないから否定したいだけでしょ」

「―――なんだと」

 

一気に鋭くなる瞳、見下ろしながら威圧するが出久は一歩も引かずに言葉を続ける。

 

「貴方が如何思おうが僕にとっては如何でも良いんですよ、あくまで貴方の感想でしかないんですからねそれに僕がどうこう言う資格は無いです。でもこれだけは言っておきますよ―――何も理解せずに自分の主観だけを当てはめて物事を語るのは唯の愚か者ですからやめた方が良いですよ、後無駄に相手を威圧しようとするのも恥ずかしい事ですから。しかも子供相手に、これから気を付けてくださいよ。後集会をやるのは勝手ですけど周囲の人の迷惑を考えてください」

 

自分の中に溢れてきた何かを全て吐き出さんとする勢いの出久、それは発目との超高速でのやり取りで培った物なのか相手に有無を言わせんものを纏いながら男を完全に組み伏せて自分の主張を全て述べた。そしてその場にいる全ての人間に自分の行いが見られている事を伝えながらさっさとその場から去っていく、焦凍はその背中を見ながらも言いたい事は全部言ってくれたと肩を竦めるとその後を追う、そして公園を出た所で追いつくと出久は一際大きな溜息を吐いた。

 

「はぁっ……ごめん轟君、我慢出来なくて」

「俺の感想だけど俺はお前の言葉が正しいと思う、それに俺もウルトラマンは好きだからあいつの物言いは気に入らねぇからスカッとした」

 

少々不器用そうに笑う焦凍に思わずつられるように笑ってしまった、本当は自分はマグナが自分達は神などではなく同じ人間だと聞いていた故にあの言葉が許せなかった。自分にとって大切な恩人で相棒を侮辱されたようで激情に駆られたと言っても良いだろう、そんな自分を恥じながら焦凍からの言葉で生まれた照れを隠すように時計を確認する。

 

「そ、それよりもさそろそろお昼どきだからご飯にしない!?この辺りにナイトアイに教えて貰った手打ちそばの美味しいお店があってさ、奢るよ!!」

「いいのか、別に良いんだぞ。黙っておくぞ俺は」

「いっいいからいいから奢らせてよお願いだから!!」

「んじゃまあ」

 

 

―――あの小僧、ふざけた事を抜かすじゃないか……ならば見せてやろうじゃないか。我らの正しさを。

 

 

『矢張りあの男、見覚えがある……まさかこの宇宙にもいたとは驚きだ……私と彼は厳密には違う存在なんだがねぇ……』


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