緑谷出久はウルトラマンと出会う。   作:魔女っ子アルト姫

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悪夢の出現。

「ほれっサービスで海老天やらの盛り合わせサービスしちゃるけん、たんと食いな!」

「ええっ!?でも良いんですか!?」

「オイラが良いっていっちょるんが、ええのええの。んじゃまあ急いでゆっくり喰いな!!」

 

ナイトアイ紹介の手打ちそば店で昼食を取る事にした出久と焦凍、その店主にナイトアイの紹介出来た事を伝えると先程まで不機嫌そうだったのが突然上機嫌になりながら奥の部屋へと通され、頼んだ蕎麦以外にも様々なサービスを勝手につけられてしまった。

 

「すげぇ量だな……」

「う、うんそうだね。ナイトアイが此処の店主さんはユーモアに溢れてて楽しい人だからって言ってたけど……溢れすぎてる気がする、というかあの人元プロヒーローのソードルさんじゃん……!?」

「マジか」

 

漸く思い出した出久の言葉に焦凍は素直に驚いた、そしてそのヒーローはある意味で別の方向で伝説となった人物だと言う事が判明した。具体的に言えば行動と言動が理解不能、オールマイトすら御する事を諦めるという大記録を達成した狂人ヒーロー。現在は引退して蕎麦屋の店主として過ごしている、そんな人の蕎麦を口へと運んでみると凄く美味しく手が止まらない。その中で焦凍は出久へと尋ねてみた。

 

「緑谷、前から思ってた事がある」

「思ってた事?」

「ああ―――如何してウルトラマンは俺たち地球人を助けてくれるんだ?」

 

焦凍の口から出たのは余りにも素朴な疑問だった。

 

「雄英に通ってる奴が聞く事じゃねぇかもしれないけど、俺達はまだ理解出来る。俺たち地球人が、同じ星の奴を助けるのはまだ解る。共通点とか色々重なる所がある、だけどウルトラマンにはそれがない。それなのにウルトラマンは俺達を助けてくれる、それってなんでなんだろうな」

 

海老天を掴みながら自分の中に浮かび上がった疑問を口にした。ヒーローを目指している身が誰かを助ける事に対する事への疑問を持つ事は可笑しいかもしれないが自分達とは文字通りの別次元の意味で規模や範囲が広すぎる話なのに、自分の命の危険すら顧みる事も無く助けてくれる彼らの事が……どうしようもなく不思議だった。

 

「可笑しいって思うの?」

「むしろ尊敬してる、オールマイトみてぇに誰かの為に命張れるってすげぇ事だと思うしカッコいいと思う。でも俺達ですら同じ人間に立ち向かうのは怖いって感じる、だけどウルトラマンは怪獣と戦ってくれる。なんでだろうな」

 

海老天を食らう焦凍を見ながらお茶を口にする、スッキリする口内と違って何処か混雑とする心が出来上がるがその疑問は自分も心の何処かで思っていた。ヒーローが戦うのはあくまでヴィラン、詰まる同じ人間だ。だがマグナ達、ウルトラマンが戦うのは全く別の存在であり余りにも恐ろしい怪獣たち。彼らは怖くないのだろうかとそう焦凍は思い続けている、それを聞いて見たいと思っている。それを出久は―――

 

「同じだから、じゃないかな。僕たち地球人とウルトラマンが」

「同じ……?」

「うん。ほらっウルトラマンって人を示す名前が入ってるじゃない」

「いやそれは別なんじゃないのか……?」

「かもね、実は僕……雄英に入る前に一度だけウルトラマンを見たんだ」

 

その言葉に思わず目を見開いた、それはあくまでも虚像であり作り上げられたストーリーだが出久の必殺技やスタイルが何処かウルトラマンに似ているという事もそれならば説明がつくと焦凍はそれをすんなりと受け止めていた。

 

「僕聞いちゃったんだよ、如何して助けてくれたんですかってそうしたらこう……頭の中に響いてくるみたいな感じで応えてくれたんだ」

「テレパシーみたいもんか、そんな事まで出来るのか」

「理由なんてない、するべき事をしただけだってさ」

「―――でっけぇな」

 

そんな言葉に出久の中のマグナは何処かくすぐったくなった、自分としては当たり前の事なのだが改めて言われると照れくさくなってしまう。

 

「すべき事か……人をそうやって当たり前みたいに助けられるか。そう考えるとその域に言ってるオールマイトも改めてすげぇのかもな」

「確かにそうかもね」

「変な事聞いたな」

「ううん気にしてないよ」

「アイヤ~追加盛ってきたんよ!ほいっカレー大盛お待ち!!」

「えっお蕎麦屋さんでカレー!?」

「そう言えば蕎麦屋のカレー美味いって聞いた事あるな……」

 

 

「……カレーも超絶品だったね」

「ああ、すげぇ美味かったな」

 

腹も満たす事が出来た二人は再びパトロールを行っていた。思わず名店を発見する事が出来た事への喜びなどもあるが、気合を入れ直してそれを行う。絶えずエネルギーの監視を行い続けている―――その時だった、突然空の一部が変色していった、それは徐々に広がって行きまるで魔法陣のように街を覆い尽くそうとしていた。

 

「何だ、これ……!?」

「エネルギー反応が増大してる……何か、来る!?」

 

それは的中した、魔法陣の一部から炎が飛来してビルへと突き刺さろうとしたが咄嗟に焦凍は氷で弾丸を作り出してそれを迎撃する。炎は四散するがまた魔法陣の一部から炎が出ようとしている。

 

「轟君、ビルの屋上に行こう!!二手に分かれて炎を迎撃しよう!!」

「ああ分かった!!」

 

出久は焦凍をビルの屋上へと送り届けた後にカバー範囲が重ならないように別のビルへと移動した、そしてそれは突然現れた。まるで隕石が降り注ぐかのように溢れ出してくる炎の雨、水の代わりに大地を焼く焔が舞う。地獄のような光景、それを地上から防ぐのは真っ先にそれに対応出来た焦凍、そして出久だった。

 

「デュオ!!ダァッ!!」

「……ッッ!!!」

 

光弾を連発し炎を相殺する出久、氷を氷柱状にしつつそれを飛ばして無へと返す焦凍。二人が真っ先に行動している為に炎は全く街を焼かなかった。そして徐々にプロヒーローがそれに参加して万全の体制が出来ようとした時だった、一際巨大な火球が生まれた。街の一区画をあっさりと飲み込める程の巨大さに皆が血の気が引いていき中でたった一人だけ、大きく飛び上がりながら指輪を掲げた者がいた―――そして

 

「シェァッ!!」

 

一筋の光線が火球を貫いた、一瞬にして火球は四散すると即座に光線を光輪へと変化させると魔法陣全てを覆い尽くした。そして光が強まりそれを消し去ってしまう、驚きで言葉を失う中で一人、焦凍はそれを行った者の姿を見て口角を持ち上げながらその名前を呼んだ。

 

「ウルトラマン……!!」

 

 

『全く危なかった……あの大きさと感じたエネルギーからして恐らく半径5キロを消し飛ばすには十分過ぎる物だったよ』

『本当にセーフでした……マグナさんが教えてくれたおかげです』

 

と変身した出久は胸を撫で下ろしつつも何とか魔法陣を消し去る事が出来た事に安堵した。あのままだと一体どれ程の人が犠牲になったのか、考える事さえも恐ろしい。だがこれで多くの人を救えた―――と思った時だった、まるで自分を怨敵のように睨みつける男がいた。

 

『あの人って公園の……!!』

『矢張りあの男か……』

 

 

「ウルトラマン、君という存在は実に忌々しい!!何度私達の崇高な願いを阻めば気が済むのだ!!君はこの地球が真に臨む我らの救済を自らの身勝手で邪魔をし守護神と思いこんでいるだけに過ぎないという事を教えてやろう―――そう、我らキリエル人の力を思い知るがいい!!!」

 

全身を炎のような光で包みながら男は高らかに叫びながらその姿を変じさせた。そうそれは―――嘗て別次元の宇宙、ネオフロンティアスペースという世界の地球に現れ、ウルトラマンに戦いを挑んだ存在―――キリエル人の戦闘形態、炎魔戦士 キリエロイド。




という訳で皆さんも気付いていらっしゃってた通り、エントリーしたのはティガよりキリエロイドで御座います。

割かし強い方でティガのライバル的な立ち位置……と思っていたらあっさりいなくなったあいつらです。

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