PLUSテストエリアでは現在、地響きのような音を立てながらも機械仕掛けの巨人が大地を疾駆していた。それは嘗て光の国の王女を奪わんと迫り来た帝国機兵―――を地球人が改修し人類が保有する守り手へと変貌させた。黒く威圧的な風貌だったその姿は燻銀と青に変更されているからか、威圧感よりも先に洗練された印象を受ける。レギオノイド・フェンサーとでも呼ぶべき物へと変わったそれを機動テストを行っている。
データとしての予測でどの程度動けるのか、最高速度はどの程度なのかは分かっているが実際に動かしてみなければ分からない事も沢山ある。故にテストは必須だったが……大問題だったのがテストパイロットについてだった。これまで此処まで巨大なロボットを操った事がある物などいるわけがないしシミュレーターこそ存在するが、まだまだ十分に動かせる物はいなかった―――
そんな所に実戦経験が豊富なハルキの存在は渡りに船であった。
「いいですよ最高っですよハルキさん!!次はそのまま全力で走ってからの飛び蹴りって出来ますかね!!?」
「ちょっと発目ちゃんそんな無茶振りなんて……!?」
『押忍!!ウオオオオォォォッチェストォォォ!!』
「「「出来てるぅ!?」」」
初めて乗る筈の機体で完璧なバランスを確保、それ所かまるで動きがリンクしているかのような繊細で柔軟な動きで空手の型まで取るハルキの操縦技術に皆が舌を巻いていた。そして極めつけはレギオノイドの地上走行最高速度を出した状態で跳躍し飛び蹴りをした上で見事な着地までやってのけた。彼が全く別の世界で防衛チームに所属している事を聞かされているデヴィッド、メリッサ、グルテンも驚きを隠せなかった。
「ハルキさん貴方凄すぎますよ!?どうして初めてでそんなに!?」
『いやぁキングジョーに比べたら扱いやすさが雲泥の差だからだと思いますよ、セブンガー程じゃないですけど扱いやすいっすねこいつ!!』
「う~む……比較対象がない故に何とも言えないな……50メートル級の巨大ロボットをまるで手足のように操るなんて……」
「しかも個性じゃなくて自分の技術……でだもんね」
ハルキ曰く、レギオノイド・フェンサーの扱い易さはストレイジで良く使っていたセブンガーをある程度難しくした程度にしか感じられないとの事。これ以上のとんでもないじゃじゃ馬の操縦経験がある為か、苦に感じないとの事。
「基本的にレギオノイドはまだまだ解明しきれない部分が多い、故に扱いずらいと思っていたんだが……意外だ、逆に操縦性が高く扱い易いなんて……」
「これだと現状、純地球産のロボット……いえ特空機の方が扱いずらいって事になっちゃうわね」
「う~ん……この地球の技術力の限界って奴だねぇ……」
三人が議論する中で発目は何も変わらずに送られてくるデータの解析をし続ける、それを見て誰もが何も悩まないと思うだろう。だが違う、彼女は誰よりも悩んでいる。如何すればいいのか、如何すれば地球の為になるのか、如何すれば自分は役に立てるのかを誰よりも悩み続けている。思わずモニターから目を反らして空を見据えながらポツリと呟く。
「まだまだ問題は……山積みですねぇ……前途多難だぁ……」
「お疲れ様ですハルキさん、スポーツドリンクで良かったですか?」
「押忍出久君先輩、有難う御座います!!」
レギオノイド・フェンサーのテストを終えて降りてきたハルキへとドリンクを差し出した出久。ハルキの呼び方はやや不思議だが、出久が自分の方が年下な上に防衛チーム隊員としては後輩だからと粘った結果、親しみを込めたという意味で君付けを加えた先輩という折衷案が取られる事になった。ハルキ専用の部屋へと移動しつつそこでウルトラマンの相棒としての話をする事になった。
「それじゃあハルキさんはセブンガーってロボットで戦ってた時にゼットさんと融合したんですね」
「そう言う事になるっすね、あの時は突然現れたゼットさんにビックリしたなぁ……日本語通じる事にも驚いたし」
ゼットと初めて会った日の事を懐かしむようにしながら出久へと語って行くハルキ、ストレイジの一員として凶暴宇宙鮫・ゲネガーグとの戦闘状態になり命の危機に陥った際に避難所を守る為にゼットと融合したというのが始まり。
「僕は女の子を助けようとして、それで瓦礫の下敷きになっちゃったんですよ。ハルキさんに比べたらなんというかカッコ悪いですけど」
「いやいや何言ってるんすか出久君先輩。誰かを助けようとした事がカッコ悪いわけないじゃないっすか!!誰かの為に行動するってウルトラマンみたいで凄いカッコいいし俺、尊敬しますよ」
「それならハルキさんだってそうじゃないですか、僕も尊敬しますよ」
「そ、そうですかね。それじゃあお互いにリスペクトのキャッチボールっすね!!」
出久とハルキの会話は想像以上にはずんでいる。出久としては同じウルトラマンの相棒、同じ地球人としての会話だからだろうか。共感出来る部分も多い、そしてハルキ自身が優しく明るい性格だという事も大きく関係している事だろう。
『……私の聞き間違いかな、今ギルバリスって聞こえたんだけど』
『いいましたよ俺、確かにギルバリスってデビルスプリンターの影響で復活したってジード先輩が言ってました』
『―――なんて相手と戦ってるんだよこの子……』
その近くではゼットがハルキと共に戦ってきた怪獣を上げながら自分がどれだけ頑張ったかをマグナへと語っていた、あわよくば師匠認定を受けて貰おうとしているのだが……ゼットが戦ってきた相手が想像していた以上の相手だった事に頭痛を覚え始めていた。
『ハァッ……しかし結構な戦歴を積んでいるのにも拘らず未だに三分の一人前とは、ゼロ君も酷な事を言うね。彼の一人前基準ってリク君なのかもしれないね』
『おおっマグナ先生からもそう言われるなんてやっぱりウルトラすげぇぜ兄弟子のジード先輩は!!でも俺達はあのグリーザとも戦ったんですよ、それなのにゼロ師匠ってば全然―――』
『おい今何って言った。グリーザ……だと……!?』
その言葉に目の色を変えてマグナは声色を変えながら問いを投げた、グリーザ。その名前に聞き間違いがなければとんでもない事だ。
「本当っすよマグナ先生、俺達ブルトンって怪獣を倒しちゃったんですけどその影響でグリーザを生み出しちゃったみたいなんです」
「ブルトンって確かマグナさんが四次元怪獣って言ってたような……」
「それでそのグリーザを倒す為に力を貸してくれたのが―――このベリアロクさんっす!!」
その瞬間、ハルキの手元に空間を切り裂くように出現した剣にマグナは誇張表現や比喩表現抜きで言葉を失い愕然とした。何故ならば目の前にあったのは……
『面白そうな奴がいるじゃねぇか』
「嫌々ベリアロクさん違いますってマグナ先生は敵じゃないですよ」
『ンな事俺様が分からねぇ訳ねぇだろうが、だが一度手合わせしてみたくはあるな』
「け、剣が喋った!!?」
『あっマグナ先生、これがグリーザと戦った時に手にした宇宙の穴を縫う針のベリアロクで御座いますぜ』
黒く紫色の答申が妖しく輝くサーベル、だがサーベルの護拳に当たる部分には―――ウルトラマンベリアルの顔が付いていたのである。しかもご丁寧にしゃべる際には口が動いている。余りにも衝撃的な光景に言葉が出なかった、そして漸く絞り出した言葉は……
『殿下面ソード……って絶対に言われてるだろこれ……』
『へっ?』
某ライダーの武器を連想させるような物だった。
よく訓練された特撮マニアのマグナにとってそれを絞り出すには十分過ぎる衝撃だった。
そして記憶を取り戻す前にベリアルの乱で見事に凍結させられてる上にその後も色々とあったので複雑な心境なのですマグナさん。