そこにあったのは最早憎悪をまき散らすのみとなった狂い切った神の使徒を名乗る悪魔の姿、一人の男の命を今奪いながらその矛先を新しく向けようとした時―――貫かれた男が再び立ち上がろうとして、崩れ落ちた。
「生きてるっ!?」
『いや間違いなく胸ぶち抜かれていたで御座いますぞ!?』
確かにキリエロイドの一撃で絶命する筈の一撃を受けた男はペストマスクで覆っていた顔を露わにしながらミリオと出久に守られている少女を守るように立ち塞がっていた。その光景に一瞬少女の瞳が揺れる中、不気味にキリエロイドが笑い続ける中でマグナが呟く。
「―――自身の個性で自身の身体を再構成したのか……あの一瞬でなんて無茶を……」
「っ……」
「動いちゃ駄目っすよ!?幾ら身体が治ったからってこの出血量は……!!」
「再構成……そうか、死穢八斎會の治崎 廻!!」
ミリオはマグナの言葉で理解した、この男こそサー・ナイトアイが警戒しマークしていた死穢八斎會の若頭の治崎 廻だという事に。そして今の光景も彼の個性を考慮すれば理解出来る事だった。その個性はオーバーホール、触れた物を分解し修復するという個性。それで致命傷を受けた自分の身を修復して即死を逃れたが既に出血し互いに溢れ出切ってしまった血液にまでそれは及ばなかった。
「ギュリィィィッ!!!」
「タァァ!!!」
「セェェイ!!」
迫りくる火球を跳ね除けながら出久達を守るマグナとハルキ、その最中で僅かに漏れ出るように軌道を変えた火球が出久達へと向かう。思わず少女が声を上げるのを迎撃しようとする出久だがそれよりも早くに地面からせり出した壁がその火球を受け止めた。それは出血多量によって意識すらはっきりしていない治崎による物だった。
「壊理、には手を出すな……!!」
「っ―――!!」
その時の迫力は一体何だったのか、あれほどまでに死に体だった筈の男が出せるものではなかった。ボロボロに破れて使い物にならないペストマスクの下からは流れ出た血に塗れながらも作り上げられたそれを見た時にキリエロイドは思わず一歩後ろに引いた、それを見た時に咄嗟に光弾を放つがあっさりと回避されながらもキリエロイドは闇へと消えていく。
「俺が追います!!」
「頼む!!」
「押忍!!」
闇の奥へと追いかけて行くハルキを見送りながらも後ろで倒れこんだ治崎へと駆け寄る、最早気力だけで身体を支えているに等しい状態だ。それでいながらあのキリエロイドを引かせるだけの迫力を放った……生半可な男ではないことが分かる、そんな彼へと手を伸ばすと目で威圧してくる。まるで自分に触れるなと言わんばかりに……だがマグナは迷う事も無く触れた。その時に治崎の顔が歪むが、直ぐに呆気にとられたような物へと変わる。
「ッ……?」
「例え貴方にどのような打算があったにしろ、一人の少女を守った事実は変わらない。私の不手際を拭って頂き感謝します、そして同時にその子の安全を確約します」
「―――信じよう」
その言葉を口にしたとき、不思議と治崎の表情が和らいだ気がした。まるで厳しい男が見せる切れ目に挟まるような優しさの笑顔だが、それを見た時に少女の表情も明確に変わった。そして崩れ落ちるように気絶していく、脈を確認し無事である事を確認しながらヒーリングパルスを掛けて体力の回復を促す。少女の目の前だがそうしなければ命の危険もある。
「……」
その光景、マグナの腕から光が溢れて治崎へと降り注いでいく光景を目を丸くしながら見つめる少女。そしてそれが終わるとマグナはミリオの腕の中に少女、その身体にある包帯などには目もくれずに目線を合わせながら笑みを作りながら言った。
「もう大丈夫だよ、君達はもう大丈夫だよ」
「ぇっ……?」
「もう傷付けさせない、その為に来たんだよ私達は」
その言葉に呼応するようにミリオと出久が優しい笑みを浮かべた、特にミリオは自身のコスチュームのマントを外して彼女に掛けてやりながら笑顔を作った。まるで初めてのように驚きを隠せずにいる少女、そんな戸惑いを浮かべる中で途轍もない地響きと共に闇の奥よりハルキが戻って来た。
「マグナさんすいませんあいつ巨大化しやがりましたぁ!!」
「分かった、出久君行くぞ!!」
「はいっルミリオン!後お願い出来ますか!?」
「任せて欲しいよね!!」
力強いサムズアップと共に少女と共に治崎を担ぎ上げるとそのまま元来た道を爆走していくミリオ、恐らく途中倒れている者達も回収しながら戻るのだろう。普通ならば無理なのではと思うが、ミリオもナイトアイにワン・フォー・オールの次代継承者として期待される程の逸材。不可能な事ではないのだろう。その最中、マグナは出久と融合しながら二基のゼットライザーが構えられる。
「行きましょう出久君先輩!!」
「はいっハルキさん!!」
ヒーローズゲートへと飛び込んでいく二人、そして双方はその中で光と一つになって行く。
「平和を守る、勇士の闘志!!マックスさん!ネオスさん!ゼノンさん!」
―――デュァッ!! ヘアァッ!! ジャッ!!
「宇宙拳法、秘伝の神技!!ゼロ師匠!セブン師匠!レオ師匠!」
―――ヘァッ!! デュワッ!! イヤァッ!!
大地へと降り立った二人の巨人、それが目の当たりにするのはあの時のように悍ましくも禍々しく歪な姿。もうそこにはキリエル人の語る神の威光は無く唯の怪物でしかなくなっている。その憎悪を真っ直ぐに巨人へと向けながら怒りが溢れる声で叫びを上げる。背中から突き出したアンバランスな翼、歪んだように肥大化しているかのような四肢にそこから突き出す異形の角や刃。ウルトラマンと同じようゼットライザーで複数の怪獣の力を取り込んだ姿。
「ギュラァァァァァァ!!!」
神の使徒を名乗る姿は無い、そこにあるのは憎しみに囚われた悪魔だけ。王の名を冠する怪獣の力をその身に宿し、その結果神ではなく悪魔へと堕ちた。
「ギュィイイガラァァァァァア!!!!」