緑谷出久はウルトラマンと出会う。   作:魔女っ子アルト姫

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入学の朝日

「出久ティッシュ持った!?ハンカチは!?お弁当は!?」

「大丈夫、もう全部持った」

 

この日、出久は新しい制服に袖を通して新調した鞄と共に玄関に立っていた。海外出張中の父から送られてきた応援メッセージが添えられた新しい鞄は少し重いが大きくなっている自分にはピッタリなサイズだった。自分が大きくなっている事を自覚しながら洗面所の鏡に映り込んでいる自分に少しばかり恥ずかしさを覚えながら

 

「それじゃあお母さん行ってきます」

「行ってらっしゃい」

 

出掛けようとする息子を呼び止める、振り返った時に玄関の先から漏れてくる光が合わさって眩しく見れるそれは何処か自分の知っている息子がそれ以上に逞しく見えるのであった。思わず涙ぐみながらも笑顔で今の気持ちを伝える。

 

「超カッコいいよ」

 

その言葉にサムズアップに応えるとそのまま歩き出していくのであった。向かって行く先は雄英高校。ヒーロー科最難関と呼ばれる高校への首席合格を果たし、胸を張ってそこへ通う。出久にとっては重要な夢の一歩、人間としては小さなものが出久としては大きな一歩を踏み出す大事な日だというのに特に緊張もする事も無く前へと足を踏み出していった。

 

『ご機嫌だねぇ出久君、君の夢の一部が漸く叶ったのだから当然だろうけど』

 

夢の一部が叶った、果てしない夢だと分かりながら、周囲から諦めろと言われたりもしながらも出久は諦めずに努力を重ねてきた。そして今、夢へと指をかけ始めていた。まだ夢物語でしかないヒーローになった時の自分の姿を明確なヴィジョンにする為の日々がこれから始まっていく。そんな思いを紡ぎながら雄英へとたどり着くと矢張り何処か緊張していたのか乱れている呼吸を整えてから校門を潜って自分の教室を探しに回った。

 

「確か一緒のクラスだった筈……」

『素直に一旦職員室に聞きに行くべきだったかな、おっ良いものを発見したよ出久君』

 

案内表などを運良く見つける事が出来たのでそれを頼りに1年A組の教室に繋がるルートを見つける事が出来た。初日から遅刻なんて出来損ないのジョークにすらならない、加えて倍率300を誇る雄英はその敷地も圧倒的。念の為に何時も以上に早く起きて家を出た事が幸運を作る事に繋がった。早起きは三文の徳とは良く出来た言葉だと実感した瞬間に約3m近いドア、A組の教室を見つけられた。

 

「うっわ大きい……バリアフリーかな」

『今時は個性の関係で大きな人も多いと聞くが……そういう人もいるのかな』

「いえ聞いた事無いです、個性を発動させたら巨大化する人は幾らでもいますけど異形型でも此処までは……」

『なら万が一の備えだろう。個性とは日々進化しているような物だ、未知数の個性が現れても良いようにだろうね。そう私達の様な』

 

そんな感想を述べているマグナに確かに自分達は一般的に考えてしまうと一般的ではない枠組みに入るのかと納得する。マグナ、そしてオールマイトからの個性を考えると確かに妥当だと思いながらも扉を開けた。そこには同じクラスメイト達が―――

 

「机に足を掛けるな!歴代の先輩方や机の製作者に申し訳ないと思わないのか!?」

「思う訳ねぇだろうが!どこ中だこの脇役が!!」

『不思議と安心するのは君がそれを日常的だと捉えているからだよ』

 

如何にもくそ真面目を絵にかいたような眼鏡をかけた少年と典型的な不良―――もとい、自分達の幼馴染で同じく雄英の合格者でもある爆豪が平常運航の真っ最中であった。本当にいつでもどこでもあの姿勢を貫けるというのは最早才能なのではないだろうか、そしてそれに日常の一ページだと思えてしまう自分もそれはそれで如何なのだろうか……。思わず目が合うと爆豪はケッとそっぽを向く、出久は苦笑いを浮かべながらも自分の席……爆豪の後ろへと向かおうとするのであった。

 

『それにしても本当に変わらないね彼、まあ出久君に対する態度は変わってはいるから変化はしているだろうが……』

「(ま、まあカッちゃんらしくて良いじゃないですか。態度はあれですけど勇猛果敢にヴィランと戦ってくれそうですし!)」

『物は言いようだねぇ……』

「あっ、あの時の0ポイントヴィランをぶっ飛ばした人やない!!?」

 

と荷物を置いて一息を吐こうとした時であった、新たに教室へと入って来た一人の少女がそんな声を上げた。振り向いてみると此方を見て酷くにこやかな表情を作り続けている丸顔な少女が駆け寄って来た。

 

「嗚呼っやっぱりそうや!!ねぇっウチ分かる!?ヴィランぶっ飛ばす前にウチの方見てたし!!」

「―――あっあの時、瓦礫に足を取られてた……」

「そうそう、他の子を思わず助けたら瓦礫に足を取られてしもうて……万事休すと思ったら」

 

そう、彼女は出久があの巨大ロボを倒そうと強く決意するきっかけを与えてくれた少女だった。彼女も彼女で人を助けていたら危機的状況に陥ってしまったらしく困っていた所を救われたという事になり、出久にお礼をずっと言いたかったらしく合格している事を祈り続けていたらしい。そして今日、また会えただけではなく同じクラスだった事を喜んでいる。

 

「あの後大丈夫やったの!?なんか救護班の人たちに連れていかれたけど……」

「うん大丈夫だよ、あの時の必殺技は凄い身体に負担掛かっちゃうみたいで……」

「でも本当に凄かったよ!!なんかこう、ズババババァァァッッ!!!って光がロボに向かって行って、光が腕を砕いたと思ったらロボを爆発させたんやもん!!」

 

彼女の身振り手振りに合わせながらの話にその時の感想を素直な言葉にした語り口、そしてあの0ポイントを倒したという言葉に教室中の視線を集める事になっているのだが二人は気付かない。彼女は純粋に気付かないのだが、出久は注目されていても反応しないようにしているだけであるが。

 

「あれが必殺技なん!?」

「うん、まあ必殺の光線技かな」

「ビーム撃てるん!?」

「一応撃てるよ、でもまあお師匠様みたいな人には怒られたけどね」

『私ってお師匠なの?』

 

凄い凄いと言ってくれると改めて光線の凄さ、というよりもマグナより授かったそれらの凄さを思い知りながらも自分の力としての嬉しさも湧き上がってくる。個性を褒められるというのはこんな感じなのかなと素直な喜びと恥ずかしさが沸き上がって来た。

 

「凄いどんな個性なん!?」

「僕の個性はそうだね言うなれば―――超人(ウルトラマン)……かな?」

『フフフッ君はもう』




緑谷 出久。個性:超人と書いてウルトラマン!! 
身体能力を強化しながらも体内エネルギーを放出する事で光線まで打てる!!今も出来る事を模索し増やし続けている!!

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