緑谷出久はウルトラマンと出会う。   作:魔女っ子アルト姫

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憧れらへの思い

個性把握テストという入学直後に直面した試練を無事に突破した出久は念願の雄英高校での授業を迎える事が出来た。オールマイトの出身校という事もあるが一流のヒーローを目指すのであれば施設なども充実している上に内容もレベルの高い所が望ましかったからだ。そしてそんな雄英高校の学業スケジュールは通常のものよりもハードなものとなっており、前世の感覚で物事を考えたマグナは若干げんなりとした。雄英の授業は平日と土曜日、加えて平日は7時限まで存在している上に土曜日も6限まで。相澤の言葉を借りるのならば、絶えず試練が与えられていく、これもその一つに含まれているのかもしれない。

 

『まあ光の国基準で考えたらまあ……と言った所か、それに任務の方がずっとつらいの沢山あったからなぁ……』

「やっぱりそうなんですか?」

『想像して御覧、約1週間の間ずっと強敵怪獣に難攻不落のロボット怪獣と戦い続ける日々を』

「うわぁっ……」

 

その時のラインナップの中で特にきつかった相手なのは……ブラックキング、タイラント、キングジョーなどなど混沌した任務であった。ネオスと共によく切り抜けられたとお互いに語り草にしたくなったほどの激戦続きであった。それらに比べたらマシかと思いながらも出久と共に授業へと臨むのであった。そんな授業も午後の授業、即ちヒーローになる為の重要授業、ヒーロー基礎学の時間がやって来た。

 

「わぁあたぁあしぃぃがっ……普通にドアから来たぁっっ!!!」

 

平和の象徴、現代における大英雄、皆が憧れる№1ヒーローのオールマイトだった。世界が認める程の超ビッグネーム。オールマイトがデビューしてからというもの日本の犯罪発生率はどんどん下がり、世界最低レベルを保持し続けているほどの影響を誇る。そんなヒーローが教師として教鞭をとり自分達を見てくれる……これに興奮せずにどうしろというのだろうか。改めてオールマイトの活躍を調べたマグナはそれを見て素直に驚きつつ、よくも人の身のままでそんな事が出来ると(なか)ば呆れるように称賛していた。

 

「さてでは早速行こうか!!私が受け持つ授業、それはヒーロー基礎学!!少年少女たちが目指すヒーローとして土台、素地を作る為に様々な基礎訓練を行う科目だ!!正にヒーローになる為には必須とも言える!!単位数も多いから気を付けたまえ!!そぉして早速今日はこれ、コンバット!!戦闘訓練!!!」

 

その手に持ったプレートには「BATTLE」と書かれている。いきなり始まるそれに、好戦的且つ野心家な生徒達はメラメラと炎を燃やす。それと同時にオールマイトが指を鳴らすと教室の壁が稼動をし始めていく。そこに納められているは各自が入学前に雄英へと向けて提出した書類を基に専属の会社が制作してくれた戦闘服(コスチューム)

 

「着替えたら各自、グラウンドβに集合するように。遅刻はなしで頼むぞ」

『ハイッ!!』

 

各自は勢いよく自分のコスチュームが入った収納ケースを手に取ると我先にと更衣室へと向かっていった。そこにあるのは自分が思い描いた自らがヒーローである姿を象徴すると言ってもいい戦闘服、それをプロが自分たちの為に制作してくれるなど興奮して致し方ない、なんて素敵なシステムだろうか。

 

「―――形から入るってことも大切なことだぜ少年少女諸君、そして自覚するのさ!!今日から自分は"ヒーローなんだ"と!!!」

 

それぞれが希望したコスチュームを纏い、皆がグラウンドβへと集結する。皆それぞれの個性が活かせるかのような物、又は苦手な分野をカバーする物になっており正に個性が出ていると言っても良い中で当然出久も自らのコスチュームを纏っていた。それは―――彼がこうでありたいと強く望んだ思いが反映されている。

 

 

「う~ん……違うなぁ、もっとこう……」

『何を唸っているのかな出久君』

 

それは雄英入学が決まってから少ししてからの事だった。雄英には衣服控除という特別処置がある、それは前述の通りに種類を提出すると雄英専属の会社が希望通りのコスチュームを作ってくれるという夢のようなシステム……なのだが、その為の書類作りに出久は苦戦をしていた。書類と言うよりも正確に言えば会社に向けたこうして欲しいという要望に近く、デザインや細かな装飾やシステム面などで悩んでいると言ってもいい。

 

「なんかこう……僕のイメージ通りって言ったら変ですけどこうありたいって姿が形に出来なくて……」

『ふむっ成程、それなら参考程度にだが私の世界の怪獣やらのデザインなどを見てみるかい?参考になるかもしれん』

「是非お願いします!!」

『何か要望はあるかい?こういった傾向、だけでもいいよ』

 

と語られたので出久は折角なのでカッコいい系、それかメカメカしいものをお願いした。コスチュームには機械的なものを選ぶヒーローも多く、自分もそちら方面も悪くないと思っているらしい。それでは早速と言わんばかりに目の前に出力されたのは頭部に大きな回転するモノアイ、両手に大きな武器を携えている銀色のロボットだった。

 

『これは私の親友が戦ったロボット怪獣、ザムリベンジャーだ。強力な火器だけではなく防御も優れていて、バリアが厄介だったと言っていたよ』

「こんなロボットが居るんですね……というかやっぱり其方でもロボットって人型だったりするんですね」

『大体人型だったよ、まあ竜型の物もあったけど』

「ドラゴンのロボットですか!?凄い見たいです!!」

『それじゃあこんなのなんて如何だろうか、日本人の君には受けがいいとは思うが』

 

とワクワクしながら待っている出久の前に映し出されたのは長い髪を束ねた白い人型のドラゴンのようなフォルムをしながらも酷く神秘的な雰囲気を纏っているロボットだった。唯美しいだけではなくこう、男心を擽るようなカッコよさが本当に堪らない。中々にヒロイックなデザインに出久は興奮気味だった。

 

「凄いなんてカッコよくて神秘的な……これってもしかしてマグナさんたちのお仲間が作ったロボットですか!?」

『だったら良かったんだけどねぇ……これはギャラクトロンというロボット怪獣でね、残念ながらウルトラマンとは無関係……ああいやある意味関係はあるのかな……平和を求めていた事だけは』

 

何やら棘があるような言い方に出久は引っかかったので聞いて見たらとんでもないロボットであった事が判明して顔を引き攣らせてしまった。何故ならばこのギャラクトロンは全ての争いを止める為に世界のリセットを望んでいる、その為の手段として全知的生命体を抹殺しようとしていた。しかも別次元の宇宙にも送り込まれた事があり、そこで元凶とも言える存在が倒されているが……それでもまだ活動しているギャラクトロンは存在しており、マグナも戦った事がある。

 

『いやぁ本当に強かったよ……ロボット怪獣特有の恐怖などを感じないのもあったけど純粋に出力やらも半端ないんだよ……ある意味キングジョーより厄介だった』

「ど、如何やって倒したんですかそんなの!?」

『単純明快な力押しさ。投げて倒れている隙に全力で腕を引き千切って残った腕も関節を狙って破壊、戦闘力を奪いながら光線を浴びせ続けてドカンだよ』

「な、なんかすごい意外です……もっとこう、知略活かしたのかと……」

『私は結構パワータイプだからね。関節部は弱いというのはロボット怪獣共通弱点みたいなものだからね、それを力づくで破壊は結構有効な戦法なのさ』

 

他にも強大な怪獣などの話を聞いていった出久だが明確に言うなればそれらは参考にはならなかった、寧ろそれらと恐れる事も迷う事も無く立ち向かう事が出来るウルトラマンに対する憧れが強くなったといえるだろう。そして彼がデザインしたそれは―――マグナをイメージしつつオールマイトへのリスペクトも忘れない、胸のカラータイマーを模した物にはV字の装飾が成されており、二人への思いが込められている。

 

『少々気恥ずかしいね、まあそれが君のコスチュームだ。胸を張るといい』

「はい、確りと張らせて頂きます!!」




ULTRAMANのウルトラマンスーツのプロトスーツに近いが、マグナを意識しているのが身体のラインなどは炎を思わせる。そして胸のカラータイマーにはオールマイトの髪のような金色のVの装飾がされている。

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