文化祭にあまり良い目、楽しむという気を向ける事が出来ずにいた発目だが彼女は出久に連れられて今ばかりは技術者としての思考を捨て去ることに決定した。常日頃から新しい技術を、新しい
「偶にはこういう感じで食べ歩きもいいもんですねぇ~(モグモグモグモグ)」
「発目さん、頬張りすぎだよ」
「(ングングング……)いやぁ失敬失敬」
購入したヒーローの仮面を側頭に被せながら片手にはイカ焼き、片手には焼き鳥を手にしながら手首には焼きそばの入った袋をぶら下げている発目を諫めるように焼きそばの袋を受け取りながら次のものを見に行く彼女の後に続く出久。
「何も考えずにこうして食べ歩きするのもいいもんですねぇ……」
「これからも偶にはそうしてみてもいいんじゃない」
「何を言ってるんですか今日だけですよ、明日からは100倍の利子を返すつもりで行きます―――と言いたい所ですが緑谷さんがそういうなら偶には休肝日ならぬ休脳日を作るようにしますか」
その言葉に出久はそうしたら方がいいと言いながらも彼女が自分の言葉を素直に受け取ったことに驚きを感じてしまっていた。それはこの文化祭を楽しめているからだと解釈するのだがその時の発目は無意識的にこっそりと出久の方を見ながら言葉を漏らしていた事を二人とも知らなかった。
「それにしてもやっぱり色んな催し物があるね」
「まあ雄英ですからね、なんだかんだで偏差値とかに目が行きますけどここは全国各地から入学者が殺到する名門校。故に全国の名物を知っている人達が一堂に会するイベント会場みたいなものに変貌するのも一瞬ってわけですよ」
「大体回り終わったけど……あっなんかミスコンテストやってるみたいだよ」
「ドジっ子コンテストとな?」
「いやそっちのミスじゃないでしょ」
そんな寸劇をしながらもイベント会場へと向かっていくことにした二人、そして到着したとき目にしたのは―――巨大な人の顔をした戦車のようなメカに乗った色んな意味で絢爛豪華な姿をした女性だった。
「……あれ、これ本当にミスコンテストなの?」
「あっあの人3年サポート科の絢爛崎先輩ですね」
「サポート科の人なの!!?」
というかあれはありなのだろうか、ミスコンテストというのは女性が自分の美しさや可憐さなどといった魅力を武器にした上で誰が一番なのかを競う物だと出久は思っていた。それなのに目の前では巨大な絢爛崎先輩の顔をしたメカが色んな意味で大暴れをしている、もはや美しさとかけ離れているような気がしてならないというのが出久の素直な感想であった。
「私も親しくないですけど絢爛豪華こそが美の終着点とか言ってた記憶ありますね、まああれだけド派手なら説得力も十分ですね」
「発目さん的にはあれってどうなの、ありなの?」
「普通にありなのでは?」
オレンジジュースを飲みながら答える。
「ミスコンテストは女性の美を競うなんてお題目ありますけど究極的に言えば審査をする人にどれだけ自分の印象を刻み込めるかって事なんですよ、ほらっ誰に入れるか迷った時なんか一番印象に残った人にしようって緑谷さんも思いませんか?」
「あっ確かに思う」
「だからと言って印象に残れば何でもいいわけじゃないですけど、自分の思う美意識でそれをどうやってやるかが焦点な訳です。それで絢爛崎先輩は自分に絶対的な自信があってそれを全面的に押し出しまくった結論があれってわけです」
串で示す絢爛崎の自前メカ。わかりやすいほどに自分の顔面を強調したそれ、そこにあるのは自己顕示だけではなく自分への絶対的な自信と信頼なのである。あそこまで胸を張り堂々と自分をアピール出来る存在に人は引き寄せられていく、それもまた一つの美しさというやつなのだろう。
「まああそこまで自分の顔をしたのを堂々と出せるのは凄いと私も思いますよ、普通だったら引くでしょうけどなんか一周して惹かれますよあれ」
「うんっなんか分かる」
そんな思いを抱きながらもコンテストを見学し続ける中で不意に出久は呟いてみた。
「仮に発目さんがあれに出てたら何してた?」
「えっ私ですか、いやまあ出ることは忙しかったですからないと思いますけど……って今の平穏を知るために考えるのやめろ的なことを言っておいて結局私に考えさせる気ですか」
「アッごめん、純粋に気になって……ちょうどサポート科の先輩が出てたからつい……」
頭をかくようにしながら謝罪する出久に思わずため息を漏らすがそこには何もない、唯の溜息でしかなくなにも含まれていない。だが自分があそこに立つ光景というのは如何にもイメージ出来ない、デザイナーとしてあそこに相応しいベイビーのビジュアルは浮かぶのだがそこでは主役は自分だ、ならば自分はどうするべきなのかというのが浮かばなかった。意識的な面があるからだろうか、如何にもハッキリしない中でそれを誤魔化すように悪戯気な笑みを浮かべながらその場を立ち去ろうとする。
「あっちょっと発目さん、ちょっとってば!?」
「さっきのご質問ですがお答えするのはやめておきますね」
「ええっ?!」
振り返りながら口元に指をやりながらも笑みを浮かべてながら言う発目の姿はどこか悪戯好きな妖精のようだった、そしてその答えも。
「まあそのうち教えてあげますよ、気が向いて時にでも~」
「ズルいなぁ教えてくれてもいいのに」
「ふふん内緒です」
自分がミスコンテストに出る姿を想像した出久、そこに何の意図もないのだろう。だが何故か胸が高鳴っているのである、どうしても考えてしまう。彼がそんな風に考えているのではないのだろうかと……
―――発目さんもミスコンでいいところまで行けると思うけどなぁ。
ただの世辞かもしれない、流れかもしれない、そう思っただけかもしれない。なのに如何してもドキドキしてしまっている、でも何故か嬉しさも同居している。そんな思いを抱きながらも発目は出久を連れて次へと向かって歩いていくのであった。
「ディァァァァァァ!!!」
「アパテー撃破、ウルトライブ・ハードクリア」
「ふふんっこのぐらい軽い軽い!!」
「こ、これは負けていられぬ!!光士殿次はぜひ我に!!」
「いや俺で頼む!!」