「わぁっデク君のコスチューム凄いピカピカだね!!凄いメカメカしい!!」
「まさかこんな感じになるとは思わなかったけどね……というか麗日さんのそれもかなり凄くない……?」
出久が提出したのはマグナを基本としながらも胸にオールマイトへのリスペクトを込めた物だったのが、提出した結果としてかなりメカメカしいコスチュームとなっていた。イメージとしては丈夫な繊維と運動性重視のオールマイト的な物を考えていたのだが……細かな装甲が張り巡らせており、ウルトラマンを模倣したパワードスーツのような装いとなったがこれはこれで出久は気に入っている。実はギャラクトロンなどの話を聞いてロボットみたいなのも良いなぁと内心で思ったりしていたのでこのような形になったのは嬉しい誤算である。
「私ちゃんと要望書けばよかったよ、パツパツスーツんなって恥ずかしい……」
「そ、それだったらサポート科の先生に相談してみたらいいんじゃないか?!デザインの変更とかコスチュームの装備変更とかも受け付けてるらしいから!?」
「あっそっか!!有難う後で行ってみる!!」
『おやおや女性の身体のラインを注視してしまうのはマナー違反だぞ出久君』
「(す、すみません……でもこれはちょっと……)」
『まあ気持ちは分かるよ』
意地悪にしつつもこれはこれで如何なんだといいたいマグナ、女性ヒーローの中にはボディラインをハッキリさせるコスチュームを纏う者は少なくない……というか肌を大胆に露出させている八百万は相当にきつい部類、なのだがこの学校にはそれ以上にやばいコスチュームで授業を行ったり活動をしている人がいる事をまだマグナは知らない。
『しかしこのコスチューム……ふむっああやっぱりか』
「(如何したんですか?)」
オールマイトがこれから行う基礎学、それに関する説明を行っている最中の事だった。オールマイトもマグナに負けないように教師としての勉強をしてきたのか、カンペを出そうとするが咳払いをして誤魔化しながらも自分の口で頑張って説明している時に何やら眉を顰めるような声が出た。
『このコスチュームだよ、君の行動をトレースして各部機能を開放する形になっているが個性因子とやらの活動を検知するらしい……だから光線を撃とうとしてもこれでは撃てんな』
「(ええっ!?あっそうか、忘れてましたけどマグナさんから貰った力は個性じゃないですもんね)」
『そういう事さ、まあこの位だったら私が調整できるさ。専門じゃないから少し時間は欲しいけど』
「(えっ出来るんですか?)」
当人曰く、自身をデジタルデータ化する事で機械の中に入り込む事は簡単らしい。そこで内部からデータ書き換えや調節を行う事は十二分に可能、改めてウルトラマンの万能性を思い知りながらもお願いする事になり、少しの間マグナとは会話できなくなった所でオールマイトの説明が終了した。要約すると……
基礎を知る為の屋内戦闘訓練でヒーローチームとヴィランチームで分かれて戦闘を行う。ヒーローチームはヴィランを確保するか、ヴィランが隠し持つ核兵器を確保すれば勝利。ヴィランは制限時間までに核兵器を守りぬく、又はヒーローチームを全員確保が勝利。核兵器は張りぼてだが、これは本物として扱う事。そして、チームはくじ引きによって決定されるらしい。そしてくじの結果、出久はAチームとなりパートナーは麗日となった。
「それでは最初のチームは……ヒーローチーム:A!!ヴィランチーム:D!!」
初戦から出久の出番となった、だがそれだけではない。対戦相手であるDには爆豪と真面目な飯田という組み合わせ、爆破の爆豪とエンジンと言う個性による機動戦が得意な飯田というシンプルだが強力なペアが相手という事になるのだが―――それ以上に出久は爆豪との対決。戦闘訓練をまだ行わない生徒たちはオールマイトと共にモニタールームに向かう最中も緊張した面持ちを作りながらも鋭く爆豪を見つめる。
先にヴィラン側である自分がビルの中に入り、その5分後にヒーローチームが内部に突入してくるという流れになっているので出久と麗日は対決の舞台となるビルの外で待機している。オールマイトから貰った図面を見ながらも作戦を立てている。
「う、う~ん見取り図って見るの大変やね……実際この通りに行くのも大変そう……」
「大丈夫だよ麗日さん、今回は別に出来ない事があってもいいんだから。何が出来て解らないのかを知る為の訓練だってオールマイトも言ってたじゃない」
「そうだね、精一杯やればいいんだもんね」
「そういう事」
素直に麗日は出久の落ち着き払っている姿に安心感を覚えている、初めての対人訓練という事で緊張しているという事もあるが相手も相手なので不安もある。だが薄らと笑みを浮かべつつも戦う男の表情を作れている出久に深い安心を感じる。
「ねぇデク君、なんか爆豪君と因縁ありそうな感じだったけど何かあったん?ウチも爆豪君がそう呼んでるからデク君って呼んじゃってるけど」
「幼馴染なんだかっちゃんとは、まあ中学の時に少しあってそれからは少しマシにはなったけど……今日はどうなるかな、本格的にぶつかるのは初めてだし」
「おおっ……男の因縁って奴!?」
「う~ん……ちょっと違うかも、でも大体合ってるかも」
そんな話をしていると開始の時間がやって来た、二人は一旦深呼吸をした後にビルへと侵入を開始する。出久は常にワン・フォー・オール・フルカウル10%を発動させ、何時でも戦闘状態を維持出来るようにしながらも同時に神経も強化しながらも周囲への警戒を緩めない。麗日も同じように周囲警戒をするが何処かオドオドとしてしまっているのか、出久の後ろから離れられない。
「大丈夫だよ麗日さん、今できる事を精いっぱいやるだけでいいんだ。それに君はもうヒーローなんだ、ヒーローとして頑張ろう」
「ヒーロー、ヒーロー……うん、うんっが、頑張ってみる!!」
オドオドしていた少女の顔が少しずつだが勇気を纏い始めていく、それを見て少しだけ出久は笑みを浮かべるが即座にそれは消えた。何故ならば―――廊下の奥から小さいが炸裂音が響いてきている。これは紛れもない爆発、つまり爆豪が迫ってきている。
「麗日さん、かっちゃんがこっちに来てる。先に上がって核を探して、室内なら飯田君の強みは発揮しづらい、でも君の個性は室内なら外以上に活きる筈だよ」
「うん、デク君も気を付けて!!」
短く伝えたい事と麗日を鼓舞する言葉を纏める、それを受けて俄然やる気と勇気を出しながら上へと上がっていく麗日を見送りながら出久は前へと進んでいく。廊下の曲がり角、奇襲にはもってこいの所に入った瞬間―――
「デクゥゥゥゥッ!!!」
「やっぱりそう来るよねぇ!!!」
溜めていた爆破にて一気に加速しながら奇襲を仕掛ける爆豪、大振りの右、やっぱりそう来たかと言わんばかりにそれを身を屈めながら回避しながら下に潜りながら爆豪へとアッパーカットを繰り出す。だがそれに尋常ではない速度で反応した爆豪は咄嗟に手の向きを反らしてから爆破を行って空中の軌道を変更して強引にアッパーを頬を掠らせる程度に留めながら回避しきって見せた。
「デクゥッ……やってくれるじゃねぇか……」
「言ったろ、君は僕の憧れだった。君の始動は右の大振り、知ってたよ」
「へっストーカー同然の観察で凌げた程度で良い気に慣れると思ったら大違いだ、クソが」
そう言いながらも爆豪の表情は好戦的且つ凶悪なヴィランその物でありながら……何処か、心から嬉しそうな表情を浮かべていた。
「そうだデク、俺はテメェが気に入らねぇ。散々ヒーローになるとほざきやがる癖に努力もしねぇテメェが……だから今、テメェに思い知らせてやる。テメェの力が俺に通用するかどうかをなぁ!!!」
「来るなら来い、僕は逃げも隠れもしないぞ!!」
マグナのデジタルデータへの変換。ウルトラマンメビウスにてメビウスがコンピュータによる仮想空間で暴れるマケットゼットンを倒す為に自らをデジタルデータへと変換している。これは同じく円谷ヒーローである電光超人グリットマンのオマージュ。