緑谷出久はウルトラマンと出会う。   作:魔女っ子アルト姫

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激戦の覇者

「緑谷すげぇっ!!あの超高速の奇襲を完璧に読み切った上でカウンター仕掛けやがった!!」

「でも爆豪もすげぇな、あのタイミングで避けれるなんて……」

「やべぇよあの二人とも把握テストでもやばかったのに、どっちも超絶才能マンか!?」

 

モニタールームで映し出されている映像、音声はオールマイトが耳に着けているイヤホンに転送されているので映像のみで観戦している。それらと同時にA組の皆が騒ぎたてるのを聞いてオールマイトは彼らからしたら努力の末の結晶の過程を知らなければ才能の一言で片づけられるのかと少しばかりの苦笑いをする。爆豪の方は分からないが、出久の方の努力は分かっているつもりでいる。

 

「(私はヒーロー活動もあるから常に見られていた訳ではないが……テクターギアとマグナさんの指導は緑谷少年を高みへと連れて行ったのか)」

 

出久が継承した瞬間から10%を許容出来ると聞いた時は素直に驚いた、そして今は純粋な身体能力強化ではなく神経にもそれらを及ぼし思考速度、反射速度などの強化にも及ばせる事が出来ると聞いて彼に個性を渡して素直に良かったとさえ思えている。

 

「(さあ見せてくれ緑谷少年、君の努力を!)」

 

 

「ォラァッ!!!」

「ぐっ!!」

 

片側だけで爆破を引き起こし、その勢いを使った回し蹴りが炸裂する。それらを十字受けするが思わず強く踏ん張ると僅かに身体が沈むかのような威力が響いてくる。爆破によるものもあるだろうが爆豪自身の身体能力も合わさっている、だが爆豪は防がれた事を逆に嬉しそうにしながらも空いていた左腕を差し向けて連続で爆発を引き起こす。

 

「喰らわない!!」

 

素早く払い除けながらも出久は勢いを付けたまま連続でバク転を行って爆破から逃れていく。連続的に起こる爆発の炎から回避しきり構えを取り直すと丁度爆豪の耳に同じチームの飯田からの通信が届いた。

 

『爆豪君!今かなり大きな爆発音が聞こえたが状況を教えたまえ、どうなってる!?』

「状況か。そうだな、少し心が躍る」

『いや気分を聞いているんじゃない!おい爆豪君!?』

「今いいとこだ、邪魔すんじゃねえ眼鏡……テメェの方にももうじき来やがるぞ。備えてろ、精々核を守ってやがれ」

 

言い切ると付けていた通信無視した、これ以上無駄な事を言われて邪魔されたくなかったのだろうか。それ程までに今爆豪の表情はゾクゾクとした嬉しさに包まれているように見える。丁度その時麗日から通信が入る、5階にて飯田と核を見つけたという類の物だった。殆ど爆豪の言葉とタイムラグはない、それを見抜いた爆豪のやばさが窺い知れる。

 

「やるじゃねえかデク……無駄な時間を過ごしてたわけじゃねぇのは分かった」

「この力が宿った時から僕は努力し続けてきたからね、もう僕は唯のデクじゃない―――頑張れって感じのデクだ!!」

「―――ったくウゼェなテメェは……ならそのデクで俺に勝ってみろやぁ!!!」

 

再度爆風で加速しながら迫ってくる爆豪、空中で体勢を維持したまま連続的に蹴り込んでくる。後ろに下がりながら衝撃を殺しながら防御するが徐々に後ろに追い込まれていき遂には出久は廊下の突き当りまで押し込まれた。逃げ場のない所まで押し込んだのを見ると爆豪は笑いながら先程よりも大きな爆破を巻き起こす。爆炎と爆風が迫ってくる、出久は身体をねじりながら腕を構えた。

 

「逃げ場がないのは君だって同じだぁ!!」

「ッ!!」

「SMASH!!!」

 

フルカウルのまま振るわれた剛腕、それは爆豪の爆風と爆炎を逆に押し戻しながら爆豪へと腕圧をぶつける。自分の放った物を逆に利用しながら一撃の威力を倍増させながらのカウンター、悪くない手だと思いながらも爆豪は真横に爆破を起こして廊下の壁をぶち抜きながらそれを避け切ってみせる。

 

「咄嗟に今のが出来るなんて……!!」

 

個性の強さもあるが爆豪の頭の回転も半端ではない、あの一瞬で自分の目論見に気付きながらも焦る事も無く瞬時に自分のダメージを最小限に抑える回避手段を思いついた。単純に強いだけではない、本当に強い相手だと出久は改めて称賛を向けながら同じように口角を持ち上げていた。今まで感じた事がないような高揚感と喜びが身体のそこから溢れてくるかのような感覚に身が震えてしまっている。

 

『出久君遅くなって済まない、漸く調整が終わったよ』

「っ!?(ほ、本当ですか!?)」

『ああ、いやぁこれなら宇宙科学技術局にもっと出入りしておくべきだったと反省したよ。ヒカリさんの手伝いをもっとすべきだったかな、それで今はどんな状況なのかな。随分と君は楽しそうだが』

「(だって、だってかっちゃんとこんなに……!!)」

『ああ成程ね……』

 

マグナは全てを察した、今出久は授業で爆豪と対峙しており出久は自分が思っていた以上に爆豪と戦えている。だがそれと同時に自分が憧れともする爆豪の凄さにも同時に触れる事が出来て本当に楽しいのだ。実力が近しい者同士で戦えている、互角に近い戦いを行えているという実感は実際に感じた事がある者でしか分からない物でもある。そしてそれは酷く心が躍ってしまう物なのだ。マグナにも覚えがある。

 

「こんなに、心が躍るなんて……!!」

「ハッ……テメェもかよ」

 

と壁の奥から爆豪が抜け出てくる、そこには怒りに苛立ちも無ければ悔しさも無い。お前の攻撃を避け切ってやったぞと言わんばかりの笑みがあった、そこには過去の自分を馬鹿にしていた爆豪の姿はなく自分を真っ直ぐと見つめながら戦う意志を見せる姿があった。そしてそれに合わせるように出久も構えを取った。これが好敵手(ライバル)という奴なのかと感動を覚えつつも出久はある事を決めた。

 

「かっちゃん……こっから全力で勝ちに行かせて貰うよ」

「やれるもんならやってみやがれってんだ!!」

「それじゃあ―――ヘェア!!」

「なっ!?」

 

直後、出久は素早く腕を組んだ。瞬間に手首の装甲がスライドしていた、そこへもう一方のスライドした部分を当てると腕からスペシウム光線が発射された。腕を十字に組むだけという最小の動作から光線が放たれる、それは的確に爆豪の足元を爆破して爆煙を作り出して爆豪の視界を完全に奪ってしまった。そして出久は思いっきりジャンプして天井を突き破りながら麗日の元へと向かって行く。

 

「ゲホゲホッ!!あのなげぇモーションじゃなくても撃てるのか……!?」

 

そこが計算の甘さだった。光線を撃つ為にはチャージが必要なのだろうと爆豪は考えており、光線は使ってこないか大きな隙を作らない限り使えないと踏んでいた。だが実際は隙が無いと言っていい程の速さで撃てた。相手を舐めていないと思いながらも心の何処かで舐めていた、今までの出久のように思っていたのかもしれない……普段の自分ならそんな自分に苛立つ筈なのに口角が持ち上がるのを抑えきれなかった。

 

「やりやがって……おい眼鏡そっちにデクが行きやがったぞ!!」

『なんだってうわぁっ!!?下から来るだとぉ!!?』

「ちぃっ俺がいくまで持たせろ!!」

 

と悪態をつきながらも爆豪も後を追ったのだが……結果的にはこの初戦、爆豪が到着するよりも早くなんとか核を確保する事に成功したヒーローチームの勝利となった。オールマイトの勝利判定宣言(それ)を爆豪は不思議と……初めて作るような晴れやかな表情でクソがっと悪態をつくのであった。




カッちゃん軟化……というよりもちょっと好青年化してる……?

因みに前回のサブタイトルはウルトラマンガイア第34話の『魂の激突!』を少しだけ変えた物です。今回は相当解りやすいですけどね、全然変えてねぇもん。

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