「ちょっとちょっとなんですかこの馬鹿みたいな超高エネルギーの塊の怪獣は!!?ええいっレギオノイドの発進準備急いでください、それと周囲20キロ圏内に避難命令を出すようにお願いしてください!!」
「20キロって正気か発目ちゃん!?そんな人数直ぐに避難させるなんて無理だぞ!!?」
「無理だからってやるしかないんですよその位分かるでしょ!!?」
アートデッセイ号のブリッジにて周囲警戒などを行い続けていた発目とブリッジクルーは突如出現したとんでもない怪獣に驚愕していた、大きさだけで言えばグランドキングを上回る程の大怪獣の出現に実戦経験も少なく今回がテスト航行として経験の蓄積の為に搭乗していたクルーは慌てまくっていた。正式な艦長も居らずそれを担う筈だったトップヒーローは現場で直接避難誘導をしている―――故に指揮を執っていたのは発目だった。
「あれは以前神野に出現した奴に匹敵するレベルの奴だと考えてください!!それに避難は出来なくてもあれから遠ざけないと多大な被害が出ます!!」
「だからと言って半径20キロなんて規模が多すぎるしそんな広範囲に避難指示の必要は……それに私達はまだ実戦の経験だって……!!」
プロヒーローであったクルーの言葉に発目は如何しようもない苛立ちがこみあげてきた、現状が見えていないのか、あれを視認出来ないのか!?知識云々じゃない、あれを見て感じる事も出来ないなんて……と歯軋りをする。
「それが怪獣なんですよ貴方は態々このPLUSに何をしに来ているんですか!!!私達は怪獣と戦う責務があるから此処にいるんですよ、実戦経験がないなんて理由ならない!!戦う気がないなら今直ぐここから出て行って自分の部屋で籠ってなさい!!!」
「なっ!!?」
「この船は私だって設計開発に携わっているから操舵や火器管制の制御も可能です、だから戦う気がないなら邪魔ですから消えてください!!!」
此処まで言われたのならばプロヒーローだった者として引っ込む訳には行かないと職務に取り込む。他のクルーもそれに続くが、彼女からすれば自分のような小娘に此処まで言われないとやらないのか……と苛立ちばかりが沸き上がってくる。それを抑えつけながらマグナと対する怪獣のアナライズへと移行する、今自分に出来る事はこの位しかない。何かないかと縋るようにモニターを見つめながらキーを叩く……。
「(出久さん……お願いです、無茶だけは……いえ、必ず勝ってください)」
「ォォッ!!!」
「キュォォガアアアア!!!」
ルインヴォイド。破滅の虚無、その名を冠する巨大な怪獣へと向かって行く勇士の魂を携えるマグナ。その手にラムダ・ソウルブレードを握り締めながら恐れる事も無く飛び込んでいく。それに対してルインヴォイドもその巨体には似つかわしくない動きで走り始め受けて立つと言わんばかり、そこへフェイントの飛び蹴りが突き刺さると続けて光弾が放たれるが全く動じない。
「キュォォガアアアアァァァ!!!」
攻撃に怒りを抱いたかのように鋭利な爪を携える腕を振るって切り裂こうとするのをソウルブレードで受け止める、だがたった一撃でソウルブレードが弾かれてしまいそのまま胸へと命中する。弾かれたソウルブレードが地面に突き刺さるのを見ながらも追撃を防御するがどんどん迫ってくるルインヴォイドに押し込まれ始める。
『何てっパワー……フルカウルを発動させてるのに……!!』
『戦友の力を借りているのに、これとはっ……!!流石にビクトルギエルの力は偉大だなぁ!!不味いっチェエエエストォォオオオ!!!!』
マグナは胸の砲門に光が灯ったのを見ると咄嗟に身を屈ませながらも真下からのアッパーを砲塔へと命中させた、流石にその一撃は利くのか僅かに後退りする。それに合わせて自分も引くと隣にゼットが舞い降りてきた。
『師匠助太刀します!!』
『ああ是非頼む!!こいつは本気で戦うしか止められない!!』
「気を付けてくださいハルキさん、こいつマジでとんでもないです!!」
「それ程の相手って事っすか!!」
それを聞くとハルキは即座に姿を変える為にメダルを手に取った。
「真っ赤に燃える勇気の力!!マン兄さん!エース兄さん!タロウ兄さん!」
―――ヘェァッ!! トワァッ!! タァァッ!!
開戦だと言わんばかりと光の名から現れたゼットの姿は今までにない程にパワフルだった。筋骨隆々とした身体をしたそれは覆面をしたレスラーのようだった、それもその筈、今借りている力の全ては伝説のウルトラ六兄弟の物。その名も―――
「ウルトラマァンゼェーット!!ベータスマァッシュッ!!!!!」
ドスの利いた声と共に重々しいドロップキックのスワローキックが炸裂する、ウルトラマンゼット・ベータスマッシュ。その一撃はルインヴォイドの胸部へと直撃しなんと胸部の砲門を発射口を拉げさせるほどのパワーを見せつける。
「ダァダァァアアア!!!」
「キュガアアアオアアアア!!」
「ディアアアア!!」
弟子に負けていられるか!!と言わんばかりに今度はマグナがスワロースマッシュを叩きこんだ。ウルトラ・フォー・オール・フルカウルだけではない、戦友であるマックスの巨大化能力を応用する事で四肢を大きくしてパワーを増強している。だがそれでもルインヴォイドはぴんぴんしている。
『ハッハァッ!!今度はプロレスでもしようってのかい、生憎マグナ以外とのプロレスはしない主義でねぇ!!』
と拉げていた筈の砲門に光が灯る、破損部位が即座に修復されていきそこから溢れた光がゼットに向けて放射される。不気味なほどに青白い光と禍々しい赤い光の混じったそれがゼットを貫かんと迫るが、ゼットはそれから逃げずにカラータイマーの前で腕を構え気合を入れると一気に両腕を広げた。
『「ベータクレセントスラッシュ!!!」』
エースのバーチカルギロチンのような三日月状のカッター光線が発射され、ヴォイド・カノンと激突していく。荒波を掛け分けて行くかのように迫る光線だが流石にパワーが違う過ぎてしまっているのか徐々に押され始めて行く。だが其処へ―――
「デェヤァァァァァ!!!!!」
超光速回転しながら突撃するマグナが迫った。それはベータクレセントスラッシュを押し込んでいき、ヴォイド・カノンを両断しながら一気に到達し砲塔を真っ二つに両断しながら大爆発を引き起こした。
『アハハハッアハッハハハハハハッッッ!!流石だよマグナァ流石は僕の愛しい人だよぉ……さあもっと、もっと僕を傷付けるがいい、それが僕の糧となる!!』
砲塔が完全に潰されたにもかかわらずアウローラには焦りの色などは一切無かった、寧ろマグナに攻撃されている事を心から歓喜している。余りにも異常すぎる、本当に何の目的があるのか分からなくなってくる。
『アウローラ、お前は……本当に何がしたい!!』
『まだ分からないのかいぃ?悲しいなぁ、悲しいねぇ……こんなにも君の事を僕は思い続けているんだよ、そうこの僕がそう思ってるよ。本当に凄いよね女って奴はさぁっ……だってさ、君への想いは留まる事は知らずにこの僕を侵食しちゃったんだからさァ!!でもこれはこれで素晴らしい……あの究極生命体に頭を下げた甲斐があったよぉん♪』
その言葉に思わずマグナとゼットは動きを止めてしまった。本当に何が言いたい、自分への想いが自らを蝕んだというのか。全く訳が分からないいや、ゼットだけはそれを理解していた、そして思わず声を上げてしまった。
『きゅっ究極生命体って……まさか、まさか……!?』
『ゼット君如何した!?』
『し、師匠俺知ってるです!!究極生命体、まさかあのっ……!!』
『おやっ知っているのか、フフッお察しの通りそれだよ♪』
突如としてアウローラの声色が変貌した。それは若い女の声……歓喜に染まり悦に浸っている女の声に思わずマグナは戦慄した。
『まさか、まさかこの声は……!!?!』
「えっええええっっ!!?ど、如何なってるんですかこれ!!?」
「出久君先輩にマグナさん如何したんですか!!?この声知ってるですか!!?」
『師匠如何したんで御座いますかぁ!?』
マグナと出久は理解した、いやしたくはなかったのだだこの声が分からない訳がなかった。だがなんでこの声がするのか、訳が分からない。
―――な、何でどうなってるの!!?えええっ!!?
『まさか、まさかそんなっいや……考えられる、としたらもうそれしか……!!』
内からも溢れる驚愕の声、それはアサリナの物だった。彼女としても想定外する物だった、そしてマグナは真実に到達してしまった。だがそれはガリガリとマグナの正気を削っていく程に悍ましい事だった。
『アハハハハッ漸く分かったんだね、これで僕と君は通じ合えたんだね♡ぁぁぁっこんなに嬉しい事はない、後は君を手に入れるだけだ……ねぇっマグナ♡』
『き、貴様っ……その身体を、その声を、どうやって手に入れた……!!!!』
『フフッアハッ……ア~ハハハハアハハハ!!!君の想っている通りだよ♡』
レイブラッド星人の継承者 アウローラ。その肉体は神野区での戦いによって完全に失われた、だが魂まで滅する事が出来なかった。そしてその魂は新たな身体を手にした、だがその肉体は―――マグナの親友、ウルトラウーマンアサリナの……並行同位体。
『貴様ァァッッ!!!!!』
『いいよっさあ僕にもっと君の想いをぶつけてよ、僕―――アサリナ・アウローラにさぁぁぁ!!!』
アサリナ・アウローラ。
肉体を失ったアウローラがある究極生命体と交わした取引によって手にした肉体を得た姿……だがその肉体はマグナの親友であり、アウローラ自身が命を奪ったアサリナの並行同位体、即ちパラレルワールドのアサリナのものである。
マグナにとってアサリナは掛け甲斐の無い親友であった上にその命を奪ったのはアウローラ、それが別の世界とはいえアサリナの肉体を乗っ取り敵として現れるという悪質極まる最悪な事態となっている―――が、何やらアウローラとしては計算違いな部分もある模様。