緑谷出久はウルトラマンと出会う。   作:魔女っ子アルト姫

19 / 232
地球の未来

戦闘訓練が終了しヒーローチームとヴィランチームはそれぞれ集合場所となっているモニタールームへとやってきた。そこでは皆がこちらを向きながらもモニターでは改めて二チームの戦いがリプレイされており自分達の戦いが映し出されていた、何処かくすぐったい気持ちもあるがそれをドンと受け止める姿もヒーローらしい事。 

 

「さてと少年少女諸君、講評と行こう!!皆、この戦いでのMVPが誰だかわかるかな?」

「はいオールマイト先生」

「おっそれでは八百万少女行ってみよう」

 

と手を上げた八百万へと指名するオールマイト、一体どんな事を言ってくれるのかと内心で楽しみにしながら彼女は口を開いた。

 

「今回の訓練は皆さんがそれぞれかなり役目を果たしていたと思います。ですので全員がMVPと言うのが正解だと思いますが、強いて言うならば飯田さんだと思います。緑谷さんが合流する時まで自分の個性が制限される状況下で常に麗日さんを警戒しつつも核を守り続けていました。それは緑谷さんの奇襲染みた登場で崩れてしまいましたが、設定を考慮するならば最後まで核を守り抜いた飯田さんが一番だと愚考いたします」

「うっうむ正しくその通り!今回はみんな本当に頑張ってたからMVP指定は難しい、だからこそ設定を忠実に守っていた飯田少年だ!!」

「有難う御座います!!」

 

と真面目一徹な飯田は大きく頭を下げながら感謝を述べる、本当に真面目だ。マグナも此処までの真面目な性格をした人間は見た事が無いとやや驚き気味、ウルトラの星にもいないタイプの人間だと思う。

 

「だけどオールマイト先生、緑谷と爆豪のあれも凄かったと思うのだけど」

「うむあれは正直私も驚いたよ、短い攻防ながらも互いが互いを警戒しつつ牽制しあっていた。最後には緑谷少年が隠し持っていた光線を足止めに使う事で勝利へと導いた結果となったがね」

 

とオールマイトはカメラを切り替えながら語る、映されるのはビル内の攻防。光線を警戒しながら自分の強みをMAXに引き出したインファイトを行う爆豪に相手の攻撃を防御しつつもカウンターを交えつつも最後には一本を取った緑谷。何方も素晴らしい物だったと言わざるを得ない。

 

「正直今回の流れはある意味理想的な物だったんだ、それぞれが自分の出来る事を全うしている。だからこそ考慮すべき物は核を如何奪うか、如何守るかに絞られてくる。そうなると麗日少女の攻撃を未然に防ぐように部屋を片付け、個性をMAXに出せないながらに努力した飯田少年がMVPになるのさ」

 

だけど麗日少女もよく頑張った、身体を浮かせながら部屋を一杯に使おうとした機動戦は評価できる!と麗日へのフォローも確りする平和の象徴。そんな中爆豪と出久は隣合うように立っているが互いに何も喋らずにオールマイトの方へと集中していた……だが爆豪がその沈黙を破る。

 

「……勝負を放棄して試合に勝ったってツラするんじゃねえクソデク、テメェは俺に勝ってんだ」

「いやでもカッちゃん的にはあのまま戦いたかったでしょ」

「テメェを組み伏せれば俺の勝ちだ」

「あははっなんだどっちもどっちか……」

 

何だかんだで爆豪も意識していたのは出久との戦い……と見せかけながらも確保する隙を狙い続けていた。だがそれを上に行ったのが出久のも事実、故に爆豪は素直に負けを認めながら出久へと言った。

 

「次は俺が勝つ」

「負けないよ」

 

短い言葉のやり取りだったが、出久は酷く満たされたような気分だった。最悪と言っても過言ではなかった関係だった幼馴染と僅かながらに前に進めたような気がしてならなかった。だから本当に嬉しそうにしながら言う。そんな二人の対決が引き金となったのかその後の戦闘訓練は特に白熱していた。自分らも負けてられるかと皆張り切っていた。その中でも飛びぬけていたのは特待生である轟 焦凍と障子 目蔵のBチームである。

 

自身の身体の一部を複製する事が出来る個性『複製腕』を持つ障子がビル内の音などを調査した後に、どのあたりに相手がいるのかを把握した後に焦凍が決めた。それはマグナですら予想もしない物だった。

 

『これは……まさか、個性と言うのは此処までの物もあるのか……』

 

障子が一人ビルの外へと出た直後に異変は起き始めていた、徐々に空気が冷たくなりそして一気にそれがビルを侵食していく。病魔が肉体を食い貪るかの如く瞬く間に冷気は空気中の水分を凍結させ飲み込むかのように生み出された氷はビルを包み込み凍結させていく。氷が自らの意思をもって自己を増やしビルを貪ったとも見える光景に皆唖然とさせられた。規格外とも言える個性の強さと規模、確かにあれならば特待生など容易いのかもしれない。そして焦凍はあっさりと核兵器を回収した後、自ら生み出した氷を自分の力で溶かしていった。

 

『氷と熱、いや炎か……?その双方を身に宿す個性』

「凄い、なんて……一瞬で勝負を決めて見せた……本当に凄い」

『確かに凄い、いやぁ私は彼は苦手かもね』

 

と苦笑いを浮かべながらもマグナは余裕を醸し出させているが内心では結構マジかぁ……と引いていた。光の国出身にとって寒さというのはかなりの天敵に成り得る。それ故かマグナは何処か引いている、と言っても流石に再生能力まではないだろうからグローザ星系人よりは遥かにマシだろうが……と内心で思いつつも純粋に焦凍の個性の凄さに驚く。

 

『個性、2年でかなりの情報を仕入れていたつもりだがこれは少しばかり報告の方向性を変えた方が良いかもしれないな……』

「(マグナさん……?)」

『いや何何でもないさ、ほら授業が続けられるよ』

 

と出久に授業への集中を促しつつもマグナは圧倒的な個性を持っている焦凍が戻ってくると其方へと視線を向けながら、次の提出する筈だった報告書の修正を開始していくのであった。定期報告としてのそれは個性に関する物だが……それは地球への不安などを書き綴ったものでもあった。

 

『個性は世代を経ていく毎に進化を行って行く。氷と炎、本来相反するはずだった物を操る個性へとなる。宇宙ではそれらを行える者はいるが……』

 

そこで終わるのならばいい、だがその先は?その先にもっともっと進化を行った場合はどうなっていくのだ。世代を経る、地球人の寿命での世代の交代はウルトラマンに比べるとずっと早くその都度に個性は進化を遂げる。そしてその具体例とも言える物とマグナは既に共にあると言っても過言ではない。

 

『ワン・フォー・オール……これは既に何代経ている』

 

そう、出久の個性となったワン・フォー・オール。彼の段階で何人目の継承なのかは聞いていないが、オールマイトの段階で天候すら変えてしまうと聞いた。ならば出久の場合は、いや出久の後の世代は如何なるのだ。出久には自分の影響があり、恐らくワン・フォー・オールもそれから程度影響を受け変質し共に継承させるだろう。ならば……どうなっていくのだ。

 

『……何れこの宇宙の地球人は……ウルトラマンのような存在へと到達するというのか、いやそれよりももっと先へ……』

 

マグナは一抹の不安を感じつつも楽しそうにする出久へと瞳を向ける。それは遥か先の事だろう、それに……訪れるのは不幸な物ばかりとは言えない。自分達のようになるかもしれない、そんな希望もあるのだ。故にそう思いながらもある言葉で締めくくる事にする。

 

『私は個性がどのような終着を迎えるのか、それを見届けたいと思う。それらを持つ人々に問いかけを行いながら―――』




前回のサブタイトルはウルトラマンメビウスの第27話『激闘の覇者』が元ネタです。全然変わってないもんね!!

今年ももう終わり、今年の投稿はこれで終わりです。それでは皆さん良いお年を!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。