緑谷出久はウルトラマンと出会う。   作:魔女っ子アルト姫

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私だってヒーロー 前編

『出久と発目が攫われたぁ!?しかも空間跳躍を用いるって相当用意周到な相手で御座いますぞ!?』

「加えてその直前に恐らく当人が此方を観察していたと思われる、警戒心が強い相手だ。こういうタイプは大概自分の腕前に慢心するのが多いが……この慎重さから考えると実力を完璧に熟知しているタイプだな」

「そ、それじゃあ急がないと出久君先輩と発目ちゃんが危ないって事になるんじゃないんすか!?」

 

ゼットとハルキもその場に合流しつつ直ぐ傍の部屋に身を隠しながらこれからの事を話しあっている、一体どんな相手が何方を狙ったのか分からないが早急な救助が望まれる。だが何処に転移しているのかも分からない相手をどうやって探せば……とハルキが焦る中でマグナは落ち着いていた。

 

「何問題ないさ。ハルキ君、確か大隊長……失礼、ウルトラの父のメダルがあると聞きましたが」

「あっはいあります!!M78流竜巻閃光斬で使ってます!!」

「結構。それがあれば十分捜索は可能だ」

『えっあの師匠、如何言う事で御座いますか……?』

 

光の国の宰相をも兼任する宇宙警備隊大隊長ことウルトラの父、そんなウルトラの父の頭部にはウルトラホーンという立派な角が存在している。そのウルトラホーンは宇宙のあらゆる情報をキャッチする事が出来るという力が存在する、事実としてウルトラマンジード、朝倉 リクの名付け親である朝倉 錘はウルトラの父の力を秘めたリトルスターが発症した際、自宅から出れないにも拘らず様々な事を理解していた。

 

「ウルトラの父のメダルの力を使い、物事を限定して探せば見つける事は可能だろう」

『そうか!!確かにそれなら行ける!!』

「それであとはベリアロクさんの力で其処へ行くって事ですね!!」

 

早速ウルトラの父のメダルを取り出すハルキ、それに加えてノアのメダル……いやオメガスプリームになる為のメダルは自分が管理しているのでその力を応用すれば簡単にそこへ行ける筈。あと少しで助けに行ける事を確信しながらマグナは言う。

 

「あと少しだ、護り抜けよヒーロー」

 

 

 

「出久さん此処なら少しの間位は隠れる筈です、ああっ良いですから早く座って下さい!!」

「ごめん……ぐっ……」

 

何処かも分からない荒野、見通しも悪い岩場にある洞穴を発見した出久はそこへ発目と共に身を隠す事にした。発目のみの安全の確保もあるがそれに出久の負ったダメージは深く大きかった。発目を抱えながら此処までの5キロ余りの距離を全力疾走した出久は思わず崩れ落ちそうになりながら腰を降ろした。

 

「えっと如何したら……そうだ応急処置位は……!!」

 

痛みに顔を歪めている出久に慌てながらも発目は所持が義務付けられていたPLUS隊員キットから簡易処置セットを出す、講習こそ受けたがまさか自分が本当に誰かの処置をするなんて考えた事もなかったのかその手つきは震えておりぎこちない。だが怪我人(出久)本人に処置をさせる訳には行かない。

 

「えっとっ取り敢えず処置しますよ、失礼しますね……」

「ごめん、お願い……うっ……」

「っ……!!」

 

制服を脱がせていくと出久の鍛え込まれている肉体が露わになっていく、ほんの僅かにドキドキした発目だがそこにある物を見ると言葉を失ってしまった。身体中にある塞がってこそいるが無数の古傷、そしてそれ以上に目を引いたのは胸部にある一際大きい傷。拳の形になっているそれは赤や青に変色しながら内出血し、指で触れるだけで激痛が走る程のものだった。

 

「(こ、こんな傷……普通ならショック死するような……触るだけでこれなら私を抱えながら走った時なんてもっと……それなのに出久さんは私を抱き締めながら……)」

「ううっ……」

「あっごっごめんなさい!!直ぐに痛みは収まる、はずですから!緊急時なのでこの鎮静剤だって使用していいはず、ですからね!!」

 

手始めに出久の苦しみを和らげる為に鎮静剤を投与する、そして処置を始めて行く。講習しか受けていないが出久を救う為にと必死になると何も考えなくても教わった事がそのまま手が動いて行く。出久は痛みに耐える為かハンカチを噛んで耐え続けている、その姿に自分が思っている以上の激痛が走っているんだと手を止めそうになるが、早く和らげて上げる為に続けて行く。

 

「これで、良い筈です……一応鎮痛剤は此処にまでありますので痛かったら打ちますので行ってください」

「いや大丈夫……大分、楽になったから……」

 

痛みに歪み続けていた表情は幾分か楽になっているように見えるが、それでも顔は青く体調は芳しくない。つられるように発目は不安に染まり切った表情で問いかけてしまった。

 

「ごめんなさい……」

「発目さん如何して……」

「私が協力を受け入れていたら出久さんがこんな……大怪我なんてせずに済んだのに……」

 

出久の言葉を待つ暇も無く発目は後悔しきった言葉を口にしてしまった。偉そうに大層な理想を語っておきながら自分にはそれを守り抜く力も無く、唯守られている事を今自覚してしまった。誰かが言った、力なき理想は戯言だと。結局自分はそれを守る事も出来ず、唯々周囲に負担を強いているだけ。その結果の果てが今だ、彼に此処までの苦しみを与えてしまっている……こんな事なら協力していれば良かったんだと。

 

「私がモルスに手を貸すと言っていればこんな事には―――!!」

「発目さん、それ以上は駄目」

「だって私が!!」

「それ以上言ったら僕、怒るからね」

 

顔を上げた時、そこにあったのは軽く怒った顔をした出久だった。意味が分からずにいると出久は笑顔を作りながら制服を着直しながら言う。

 

「私達は平和を守る為、守りたい人達の為に戦うって発目さん言ったでしょ、僕はその通りだと思うし同じ気持ちだよ。綺麗事だって言われるかもしれないけど僕達はそんな綺麗事を実現する為に頑張ってるんだって」

 

そこはヒーローと同じだよねっと少し笑いながら不安な表情で見つめ続けてくる発目に強い言葉を掛ける。

 

「発目さんの選択は間違ってない。僕達、PLUSはそれで良いんだと思うよ。だから大丈夫、発目さんが責任を感じる事なんてない。それに戦ってるのは僕の意志だよ、それまで発目さんのせいにしちゃったら申し訳ないよ」

「(何で……笑えるんですか……)」

 

自分のせいで大怪我をしているのに、あんなに苦しんでいたのに、何で……。そう思っていると出久はゼットライザーをその手に持ちながら立ちあがった。

 

「ど、何処に行く気ですか!?見つかっちゃいますよ!!」

「いやモルスは確実に僕達を見つけるのは時間の問題だよ、エースキラーは伊達じゃないって言うのは本当みたいだ。凄いスピードでこっちに向かって来てる」

「そ、それじゃあ大急ぎで逃げて……!!」

 

それは出来ない、此処から別の隠れる事が出来る場所は離れている。移動中に見つかる、もう一度煙幕を使ったとしても恐らく今度は確実に見つけに掛かる。自分達は王手を掛けられる一歩手前、だけど此方にでも勝ち目はある。

 

「きっともう直ぐマグナさんがゼットさんやハルキさんと一緒に助けに来てくれる。それまで時間を稼げばいいんだよ」

「そ、それなら逃げても……」

「いやあのハーデロスを持ち出されたらおしまいだ、でも今モルスは単身でこっちに来てる。それなら時間の稼ぎようは幾らでもある、勝てなくて負けない戦いをすればいいんだからね」

 

生身同士の戦いなら何とかなる。だから時間を稼ぐ、そして発目を守る。それだけを胸に出久は外へと出る覚悟を固める、そんな自分の手を必死に力いっぱいに握り込んで止めようとする泣きそうな発目が見つめる。自分を一人にしないでくれという物ではなく自分の身を案じている物、勝てる訳もないしこれ以上の怪我だってするかもしれない、それを止めようとしている。だが出久は……発目の頭を撫でるようにしながら言う。

 

「大丈夫だよ発目さん、僕が絶対に君を守るから。だから僕を信じて、ねっ?」

 

そんな言葉を投げ掛けながら出久は発目の手を振り切って外へと飛び出す、当然痛みが走るがそれらを無視しながら離れて行く。出来るだけ離れた場所に、戦いの余波が発目に掛からないようにと留意しながら場所を選ぶと遠くから此方に向かって土煙が迫ってくる。モルスだ、如何やら間に合ったらしい。それに安心しながら残っていた鎮痛剤を身体に投与する、此処からは粘るだけだ。

 

「僕だってやられてばかりじゃない……意地を見せてやる……!!」

 

出久にも勝機、いや奥の手はあった。それは林間合宿中のガイが自分との特訓で行っていたイージーフュージョンアップ、人間態のままウルトラマンの力を身に宿すあれを自分でもやろうと決意していた。だがこれはマグナから禁じられていた禁手でもある。理由は明白、人間の身体がウルトラマンの力に耐えられるのかという話である。

 

「構うもんか―――発目さんを守りたい、発目さんの笑顔が見たい、その為なら僕は幾ら傷ついたって構わない!!」

 

決意と覚悟を身に纏い、握りしめたゼットライザーへとウルトラメダルを装填する。マグナの戦友にして親友たるウルトラマン達……この時だけは、自分に力を貸してくださいと心から願いながら叫んだ。

 

「マックスさん!ネオスさん!ゼノンさん!」

 

〔MAX〕〔NEOS〕〔XENON〕

 

「平和を守る、勇士の闘志―――お借りします!!」

 

―――デュァッ!! ヘアァッ!! ジャッ!!

 

 

トリガーを引く眩い光が身を包んでいく中、遂にそこへモルスが到達した。モルスは出久の姿を見た途端に笑みを零し抑えきれない衝動が声として漏れた。

 

「よぉっ会いたかったぜあんちゃん、続きやろうじゃねぇか」

「望む所だ。今度は―――倒す!!」

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