「良いねぇビリビリ来るねぇ……!!」
静かに、互いの動きを注意深く観察するようにしながら互いに歩く。距離を詰める事も無く絶えず一定の距離を取る為に自然に完全な円を描くように歩いて行く。先程の姿、空気、精神、それが一変している出久の姿にモルスは何も聞かずに唯戦いたい相手が更なる強さを纏っている事への喜びを溢れ出させながら抑えきれない高揚感と幸福感に自然と肩を回す。
「この空気、この肌を突き刺すみてぇな互いの闘気、この風の感触、そうだこれこそが闘いよぉ……俺はこんなスリルを感じたくて生きてるんだよなぁ……!!」
今直ぐにでも飛び出したいそれを必死に抑える、今この衝動に任せたら駆け引きという戦いの醍醐味の一つ無駄にする。衝動だけで全てを台無しにしたくない、故に手や足を擦るようにして必死に我慢しながら相手の出方を伺い続ける。視線の先の出久、彼は今までにない程にクリアな感情と思考で目の前の敵を見ていた。
「―――……」
右腕をモルスへと掲げながら半身を反らすようにしながら構えを取る、何時でも攻められるようにしながらも回避する事を瞬時に行える事を意識した構えを。出久は自然とそれを取りながら相手を見ていた、相手が此方を観察するのであるならばそれは好都合でしかないのだが―――
「行くぜぇぇあんちゃん!!!」
遂に状況が動いてしまった。駆け出してモルスが一気に距離を詰めながら蹴り込む、それを身体を反らすのみで回避するが直後に地面にめり込むように炸裂した足で跳躍しタックルを仕掛けてくる。がコンマ以下での判断を即座に読み切った出久は同じように回転するとモルスの背中へと平手を当てながら押し込んだ。
「ラムダ・ルナ・スマッシュ……!!」
「甘いっ!!」
未だに地面を捉え続けている片足、それで地面を強く蹴って自ら押された方向に跳び負担を軽減しつつ飛び退きながらも右腕に装着されている二連装式消音貫通弾を放つ。音も無く光に等しい速度で迫るそれを出久はそれを上回るような速度で地面へと受け流した。
「ハハァッ良いじゃねぇかよあんちゃん!!そうだそう来なくっちゃ面白くねぇよな闘いって奴は!!そうだ相手の実力との拮抗、互いが互いを上回り続けて行く展開も堪らねぇ!!漢の
胸を強く叩く、脇腹の辺りから二本の突起が飛び出しそれを掴んで引き抜くとそこには艶が消されている黒い太刀が飛び出した。一本を逆手持ちにしながら一気に迫りながら空気どころか空間を切断しながらの一閃が放たれる。
「ラムダ・ソウルブレードッ……ウォォオリャアアア!!!」
「いい声出すじゃねぇかよええっ!!」
その名を叫ぶとその手に握られるのはラムダ・ソウルブレードが出現しそれで黒刀を迎え撃つ。幾重にも閃光が絡み合う、その一本一本が両者が振るう刃の残光、正しく無数の太刀筋が空間に刻まれていき最後の閃光がぶつかり合った時、その場の空間が耐えきれなくなかったのように衝撃波を生みながらその場が爆発。そこから抜け出して出久を猛追するモルス。
「ハァッ!!」
「あぶねっ!?」
迫るモルスへと向けて腕を切り裂くように振るう。腕からは振るわれた拍子に光の刃が形成されて飛び出していく、飛び出した直後のモルスへと迫るがギリギリで回避されながらお返しと言わんばかりの弾丸が迫りそれを大きくループを描くように回避しながらその後ろを狙う。
「何だ何だ今度は空中戦がお望みか!?望む所じゃねぇか、エースキラーはこの空でも相手を逃した事はねぇのさ!!」
逃げる事を考えるかと思ったがそんな面白くない事をする相手ではないと分かり改めて興奮する、もっともっと血を滾らせながら加速していく。途端に音速の壁を突き抜ける音が木霊する、空中で交錯する弾丸と光刃。互いが背を取ろうとしながらも相手に軌道を狙わせないようにしつつも相手のそれらを計算しながらも的確に偏差射撃を行い、進路を邪魔する攻撃を回避する。
「いいねぇいいねぇこの空を切り裂く流星ってか!!地球にこんなあんちゃんがいるなんて……来た甲斐があったってもんだぜぇぇ!!!」
「ォォォォッ……ディァ!!」
「だが―――経験が足りねぇなぁ!!!」
出久が背後を取り光刃を放った時だった、モルスは咄嗟に身体を引き起こして急激に速度を落した。失速寸前まで速度を落す事で偏差射撃を見誤らせながら出久に
「無駄無駄ぁ!!」
「振りっ切れない……!!」
速度の管理、コース取り、何もかもが完璧。あらゆる技術が自分の上を行く、まともな手段では絶対に勝てないと悟る中で出久は焦りを感じていた。だがそれを無理矢理に落ち着かせながら逆転の手段を探すが、思い付くのは全て危険な手段―――なのにそれを迷う事も無く実行した。
「何ぃぃぃぃっ!!?」
「ディィィィ……ォォォォオオオオオリャアアアアア!!SHOOTING STAR SMASH!!」
なんとその場で身体を広げてる事でエアブレーキを掛ける事で急速に減速、そのまま振り向きながら回避も減速もしきれずに迫ってくるモルス目掛けて蹴りを叩きこんだ。見事にそれは胸部と捉えたまま流星となって大地へと突っ込んで行った。大地を切り裂き砕く一撃が決まり、爆風が周辺に届いていく。
「がぁっがはごほっ……なんっつぅ無茶するあんちゃんだ……」
あんな速度からの急ブレーキ、自分のコブラなんて目じゃない減速いや停止に近いそれは身体に途轍もないGを浴びる筈。自分でもやろうなんて絶対に考えない、身体が潰れるなんて話じゃない。やってる最中に死ぬ可能性方が高い手段を取った出久に称賛混じりに呆れを吐き出してしまった。そこへ出久が飛び込む。
「うおっ!?」
「シェェアアア!!!」
スマッシュが放たれる、だがそれを咄嗟にそれでも身体に刻み込んだ技術が無意識に威力を殺しながら受け止める。
「舐めんなよぉ!!」
「シェェッダァァァッッ!!!」
「マジかいな!?」
膝蹴りを叩き込もうとするがそれを右腕で止められる、だが自分の腕はまだフリーだとキラーフィストを叩き込もうとするがそれを頭突きを横から当てる事で機動をズラしながら防御する。頭で受け止めようなんて正気の沙汰じゃない、自分の一撃を受けているなら猶更。だが出久の目にはモルスしか映らない、身体を支えている足で地面を蹴って渾身のタックルを放ちモルスを吹き飛ばす。不安定な体勢ながらもなんとか立て直すモルス、だがそこへ舞い上がった煙の奥から光の帯が迫ってきた。
「あっ―――モルサァァァァ!!?」
光の帯―――光線を浴びて大爆発の中に包まれるモルス。それを見つめる出久は十字に腕を組んでいた、荒い息を吐きながらそれを見据えるのだがその表情には一ミリの油断も存在していなかった。そう、まだモルスはやられてなんていないからである。爆炎の中から大地を踏みしめながら胸部に風穴が空いているのにも拘らず声を上げていた。
「ああもう吃驚するだろうが!?いやまあ奇襲も闘いの醍醐味だよなぁ良いぜ良いぜ分かってるなぁあんちゃん!!だが残念無念また来世ってなっ俺様ってばそう簡単にくたばれる程に軟な生き方してねぇぜ!!」
フンッ!!と気合を込めた声と共に風穴が塞がり再生する。驚異的な再生能力にやっぱりかと……出久は内心で溜息を吐いた。マグナからもガピヤ星人は非常にしぶといという話を聞いていたのでこの位の覚悟はしていたが……実際に目の当たりにすると来る物がある。
「ッ……!!」
「あんっ?」
思わず口元を抑える、込み上げてくる物を抑え込もうとするが―――口から赤い塊が指の間から溢れ出た。一瞬のうちに地面に赤い溜まり場が出来てしまう程の喀血。同時に再び激痛がぶり返してきてしまった。震える手を見つめながら出久はそれを力一杯握りしめながら力を入れ直す。
「まだまだァッ……!!」
「あんちゃんおめぇ……いやそうだよな―――漢の勝負で一々事情を聴くなんざぁ野暮ってもんだよなぁ!!」
身体は明確に悲鳴を上げ限界を振り切っている筈、それなのに彼は戦意を見せながら構えを解かずに此方を睨みつけている。此処で引き闘いを止めるなんて誰にでも出来る事だ、だがそんな事では無駄になる。此処までの闘いも彼の覚悟も全てを水泡に帰するのだ。そんな事をさせてたまるか、この少年の全てを見たくなってきた。何処まで行けるんだ、このエースキラー相手に何処まで喰い下げるのかもっともっと見たい!!
「良いぜぇ来いよぉ!!もっと楽しもうぜぇ!!!」
自ら更なる激痛に飛び込むなんて並大抵の覚悟じゃできない、自分でも中々できない。つまり―――このあんちゃんは自分を超えている、精神で自分を凌駕している。そんな漢がこんな所で終わるわけがない……!!
「―――っ……!!」
意識が薄れ朦朧とし始めてきている。そもそも時間稼ぎをする為の闘いだが、出久の選択は致命的に間違っている。確かにモルスに対抗する為の手段ではこれしかないのは事実だろう。だがウルトラ・フォー・オールの影響で頑強になってきているが、イージー・ウルトラフュージョンによって出久の身体に掛かる負担は尋常ではなく、自殺行為でしかない。
「(まだ、まだだ……マグナさんがきっと来てくれる……それまであいつを食い止めるんだ……!!発目さんに、近づけさせちゃいけないんだ……!!)」
それが何だ、自殺行為がなんだ、死にそう位が何だっ!!自分を鼓舞し続ける、此処で倒れる訳には絶対に行かない。どれだけ苦しくても倒れてはいけない、どれだけ辛くても屈してはいけない、絶対に……守り抜くっ―――!!
「まだまだまだっ……終わってッッッ……ないぞォォォォォッッッ!!!!」
―――ああもうっカッコいいんですからッッ出久さんってば!!!
「うおっ!!!」
思わぬ銃撃にモルスは不意を打たれたか弾丸を辛うじて回避する。一体何事かと思うがそこに居たのは発目だった、銃の反動に痺れた腕を振るいながら出久の元へと駆けだしその身体を支える。
「発目っさんなんで……?」
「私だって、私だって貴方と同じです。PLUSの隊員です、もうウジウジするのはやめたんです!!もう離れません、一緒に戦いましょうっ出久さん!!!」
「っ―――」
激痛に耐え抜く自分の身体が支えられた時、驚くほどに痛みが楽になったのだ。そして同時に思わず笑ってしまった、ああもう全く―――この子は何処まで自分かって何だろう、だがそれが酷く嬉しく感じてしまう自分も自分だった。
「んもう僕は発目さんを守るとしてたのに此処まで来られちゃ意味ないじゃない、自分勝手だね本当に」
「ごめんなさいっでもこれが私ですから、だからせめて一緒に居させてください出久さん。これからずっと一緒に」
「何それっ告白のつもりなの、この状況で?」
「ご自由に捉えて貰っていいですよ♪」
「「プッ―――アハハハッ……うん一緒に行こう!!」」
共に前を向く、もう迷いも恐怖も無く唯そこにあったのは確かな絆があった。その時、ウルトラ・フォー・オールから光が溢れ、出久と発目を包み込んだ。それを見たモルスはポカンとした顔を引き締めて大きく笑った。
「良いね良いぜぇ最高だなぁお二人さん!!見せて貰ったぜ二人の絆、こりゃ俺も全身全霊で応えねぇと野暮ってもんだな、何が如何したなんざぁもうどうでもいい!!この瞬間に俺の全てを込めてやるぜぇぇぇぇっ!!!グレイテスト・マキシマムシュート―――スタンバイッ!!」
拳を激しく激突させながらも構えを取ると胸部から巨大な砲塔が飛び出した、そこへ両腕を添えるような構えを取ると周囲の空間からエネルギーを集めるように収束させていく。
「行くよ発目さん!!」
「行きましょう出久さん!!」
持てる限りの力をこの一撃に込める、これが正真正銘最後の一撃。支えられながらも腕を振り上げる、力を開放しながら発目との鼓動を重ね合わせ、息を整えながら共に腕を右へと振り被り、右足で踏ん張りながら力を更に高めた。両者の高まりが究極となった時―――同時に放たれた。
「行けぇぇぇぇっっっ!!!オラオラオラオラオラオラァ!!!!」
「「イズティウム―――光線!!!!」」
金色を纏う白い光線、青白い光を纏った碧色の光線がぶつかり合って行く。それぞれが一歩も引かないと思われた時、イズティウム光線が一気に押し返していく。宇宙に轟くヒットマンの最高の一撃を飲み込んでいく光景に思わずモルスは爆笑してしまった。
「マジかぁぁぁぁっっっ!!!??でもっマジでいい気分んんんんっっっっ!!!」
悔いも未練も無く、清々しい笑いと共にモルスは光の中へと飲み込まれていった。そしてたった二人が放った光線が星の空を貫いて宇宙にまで届く光を作りあげた、ウルトラマンの力と人間の絆がそこまでの力を引き出した。
「勝ちましたね……出久さん」
「……ああっ本当だね、なんか嘘みたいだ……」
何処か照れくさそうに言う出久は草臥れた顔をしながらも素直に嬉しそうな声で言う、それを聞く発目の顔は酷く紅潮していた。
くそ詰め込んだ……。
尚まだ続く。