緑谷出久はウルトラマンと出会う。   作:魔女っ子アルト姫

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私だってヒーロー エピローグ。

「おいおいおい嬢ちゃん流石にそりゃぼり過ぎだろ。俺様の相棒(ハーデロス)の解析と技術提供は惜しまねぇけど丸ごと掻っ攫おうなんざぁ流石にやり過ぎだぜ」

「何を言いますか、此方はマジで死ぬかと思いましたし出久さんなんて大怪我してるんですけど。その慰謝料&私達の拉致云々を踏まえたら安いと思います」

「それを言われちまうとちといてぇけどよぉ……というかあんちゃんのあれは6割は自傷だぜありゃ」

「その原因は其方ですよね」

「まあその通りなんだが……いやいやいやだからって容認は出来ねぇってもんだぜ!!」

 

PLUS基地のテストエリアには巨大な影が膝を下ろすようにしながら鎮座していた。その陰の足元で何やら言い合いをしているのは発目とモルス、そしてそれらを見守るようにしているマグナやハルキ。モルスの仕事は成立せず、その侘びを兼ねてハーデロスの力を使い地球へと戻ってきた一同。出久は医務室へ緊急搬送、そして発目はというと―――モルスとの交渉の真っ最中であった。

 

「え~……んじゃ妥協して貴方ごとPLUSに入って下さいよ。それで手を打ちます」

「ハァッ!?エースキラーの俺様に防衛チームに入れってか!?」

「不服なんですか?」

「冗談じゃねぇぜ……ウルトラマンの旦那が居るチームに入れるとか光栄過ぎて土下座したくなるレベルだぜ!!やるやる~対宇宙人戦闘の教官とかやるぜ俺様~後地球の飯とかたっぷり食わせてくれよな!!」

「交渉成立です」

 

そんなノリで熱い握手をしてしまったモルス、それを見つめていたナイトアイは本当に良いのだろうかと困惑している……がそんな気持ちを察したように肩を叩くマグナ。

 

「しかし……超一流の殺し屋を自称するエイリアンを迎え入れるというのは……」

「まあ心配する必要はないと思いますよ、根っからの悪人という訳ではないですから」

 

エースキラー・モルス。その名声は光の国も届く程の者だが宇宙警備隊はそこまでモルスを危険視する事をしていない。何故ならばモルスは無差別に民間人を虐殺するような事もする事も無く唯金の為だけに仕事を受ける訳でもない、彼なりのルールという物に従いながら仕事を完遂する執行者。確かに広義的に見れば彼はヒットマン、殺し屋だがそのターゲットとなる相手の殆どを占めるのが悪さをする宇宙人ばかり。だが悪癖として自分を楽しませた宇宙人の依頼は相手の素性を一切抜きにして受けてしまうという物もあるが……。

 

「確かに犯罪を犯す事もあったらしいですがそれ以上に極悪人を討ち取った数が膨大なんですよ彼。地球風に言えばヴィランに対して容赦しない過激なヒーロー……と言えばいいですかね」

「成程」

 

複数の星系を支配していたテンペラ―・ガッツ・ヒッポリト・ババルウ・バットといった宇宙人からなる連合を討ち取って平和を齎したという話もある。宇宙警備隊としての認識は敵にすれば厄介になる自由な宇宙人だろうか、それでも近々確保して聴取を行うべきという意見も多くあったのだが……まさかそんな相手がPLUSに協力する事をあっさりと了承するなんて……。

 

「おっあんたさんがPLUSだっけ、それの司令官さんかい?」

「あ、ああ。正確に司令官代理の任をしている参謀だが……」

「ほ~んやっぱりまだまだ対応しきれてねぇのな、んじゃこのモルス様がいっちょ手貸してやるよ。ハーデロスの解析も自由にしな」

「有難いが……良いのか?」

 

ナイトアイはマグナからの話を聞いても矢張り懐疑的にならざるを得なかった。彼からすれば目の前で仲間を拉致した殺し屋を自称する異星人、そう簡単に信頼する事は出来ない……だがモルスはあっさりと好きにすればいいと答えてしまう。

 

「俺様はあんちゃんと嬢ちゃんに負けた、なら敗者の俺様は勝者の嬢ちゃんに素直に従うのが筋ってもんだろ。それに別次元の地球とはいえウルトラマンの旦那方が守ってきた星を一度心行くまで堪能してみたかったんだいい機会だぜ。暫く厄介になるぜ、まあその分ちゃんと働くから安心なさいやって……これでも俺様結構凄いんだぜ?」

 

本当にこれが宇宙でも有数のヒットマンと呼ばれる程の男なのかと疑問符が浮かんでくるナイトアイだが、素直にこの協力は有難い。自分達が生身で戦えるタイプの宇宙人、それらに対する戦闘訓練の構築や対策などに大きく役立つ。そして何よりハーデロスの解析とその技術を得られる事は大きい。ヴィランを受け入れたと思ったら今度は宇宙の殺し屋まで許容するなんてPLUSは何処へ向かうのかと内心で肩を竦めながらモルスと握手をする。

 

「歓迎しよう。改めて参謀のサー・ナイトアイだ、君には対宇宙人戦闘訓練及び特空機特別筆頭教官としての任を用意しよう」

「そりゃいいな特別筆頭教官って響きがまた最高だな!!後この星の名物って何だ、俺様仕事で行った先の星の名物喰うのも好きなんだよなぁ……なあ嬢ちゃんおすすめとか……」

 

と振り向くのだが……そこにはハーデロスの解析許可が出たので喜び勇んで飛び付いている整備班と研究班の姿こそあるが、そこに発目の姿は一切無かった。

 

「あれま何処にもいねぇぞ?案の嬢ちゃんならハーデロスの解析なんて涎を滝みたいに垂らすと思ってたんだけど」

「同感だ、彼女は何処に……?」

「医務室へっ出久君の見舞いですよきっとね」

 

とマグナは肩を竦めながら相棒の事を想う。

 

「(やれやれっ女性経験云々と言えなくなってきちゃったねぇ……逆に私がアドバイスを願う立場かなこれは)」

 

 

「小僧、派手にやらかしたじゃねぇか。ええっ随分と偉くなったもんだな」

「グラントリノ……」

 

医療棟の個室、出久の部屋に今大師匠にあるグラントリノが懇々と説教をし続けていた。それで治療の後によって動けなくなっている出久だろうが容赦もなく襲いかかってくる言葉の刃、その一つ一つが心に突き刺さってくるのを真摯に受け止める出久に対して大きな大きな溜息を吐く。

 

「お前さんがやった事は唯の馬鹿だ、相手が超格上なのは分かった。その格上が切り札を持っていてそれを使われたら守るべき相手が即座に危ないのもな、だからこそ守る立場のお前は自分を犠牲にしちゃならねぇ。話を聞けば聞く程、お前は自分を完全に捨て駒にしてあの小娘の為に時間を作る事だけに集中していた。違うか」

「……その通りです」

 

イージー・ウルトラフュージョンは万全な状態の出久でも最長で3分程度しか持たない、それを超えれば人知を超えたウルトラマンの力が逆に身体を壊し始めて行く。だが出久はそれを当たり前のように手段として組み込んで闘っていた、それもマグナを怒らせた原因の一つ。

 

「お前さん、あんなに良い師匠が居るのに駄目な師匠を真似るんじゃねぇ。俊典と同じような事をしくさりおって……ほぼ死ぬと分かっていてどうしてそんな手段を取れた。あいつでもそんなことは容易には出来んぞ」

 

興味本位で尋ねるグラントリノ、オールマイトが内に宿す狂気。平和の象徴として悪に屈し、人々に恐怖を与える訳には行かないと限界でありながら今もヒーローとして励む姿にも似ている今回の出久の行動。理由があるならばちゃんと聞いて正してやらないとまた同じことを冒し今度は死ぬ。それは先人として止めてやらなければならない……天井を見つめる出久、その答えは―――

 

「僕にも分からないんです……あの時、モルスから絶対に彼女を……発目さんを守りたいって思ったら力と勇気が沸いたんです」

「―――ほう?」

「発目さんを守りたかった、それだけなんです……でも最後、発目さんが来てくれた時が一番嬉しくて力が沸きました」

 

たった一人の少女を守りたかったというシンプルな答えだった。誰かの為ならば強くなれるのではなく、明確な一人の少女の為に力を尽くしたという答えにグラントリノは酷く愉快そうな声を上げながら言った。

 

「いうじゃねぇか小僧、だがそれならいい。たった一人、守りてぇ奴を守れねぇようじゃ世界を守るなんざ夢のまた夢だ。説教はこの位にしといてやらぁ、さっさと寝てろ」

「えっえっ……?」

「いいから寝てろ小僧!!」

「はっはい!!」

 

布団を被り直すと出久は疲れもあったからか直ぐに寝息を立て始めてしまった、限界だったのに説教で無駄に疲れさせてしまったようだ。部屋を出ながら廊下を歩いて行く中でクックックッと笑い声を上げる。

 

「一丁前な事を言うようになりやがって……そうだそれもヒーローの在り方だ、正しいヒーローの在り方かもな」

 

このいい気分のまま鯛焼きと抹茶でも食うかと思いながら後ろでそっと部屋へと伸びて行く影を逃しながらグラントリノは足取り軽く去っていく。

 

 

寝息を立てる出久、そんな彼を見つめる影―――いや発目はそっと傷だらけになっている出久への胸に押し当てる手を握り締めながら一歩一歩迫っていく。近づくごとに息が荒く苦しくなっていく、罪悪感かそれとも別な物か……それでも必死に歩き傍まで行くとそっと……彼の手を握る。

 

「出久さん……私、あの時の言葉は冗談なんかじゃないですから。私はずっと貴方の傍にいたい……不謹慎かもしれませんがモルスから逃げる時に抱きしめてくれた時凄いドキドキして可笑しくなりそうでした、胸板に抱き寄せられて嬉しかった……貴方と触れ合えて心から嬉しかった……」

 

紅潮した顔で緊張している為か硬くなっている笑みを作りながら少しだけ、その手を強く握る。

 

「今度はちゃんとお伝えしますから今は―――私のわがまま、許してくださいね……?」

 

少しだけ勇気を出す、あの時の出久の姿を思い出しながらその勇気を分けて貰いながらそっと……彼の眠りを脅かさぬように―――

 

「ッ……そ、それじゃあお大事に……!!」

 

紅潮しきった顔になりながらも足早に部屋から立ち去っていく発目、途中唇を摩ると更に顔を赤くしながら何処かへと消えていく。

 

「しっしちゃった……しちゃった……!!はっ博士、次どんな顔して出久さんと会えばいいんですか私ぃ~……」

「いや僕に言われても分からないっというか君が何をしても出久君なら許してくれそうな……」

「そういう意味じゃないんですぅぅぅ~……」

「えっ~?余計に分からないよ~明ちゃん」

「うっ~……!!!!」

 

 

 

「我儘、なんてもう聞き慣れちゃってるよ……何であのタイミングで僕はっ……!!!ああっもう次どんな顔して発目さんに会えばいいんだぁ~……もうアサリナさんでも菜奈さんでもマグナさんでもいいから助けてぇ~……」




「恋愛経験ないから無理だね」
『僕だって無いんですけど』
『いやぁ青春だねぇ……これからが楽しみだねぇ……!!』


うんっやっちまったぜ☆
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