「PLUS基地に見学に行きます」
『なんだかガッポォォォォいっっ!!!』
唐突に告げられた言葉に皆は興奮を露わにしながらそれを声に発散した。彼らは進路をヒーローと定めているような身であったが、ここ最近になって活躍をし続けているPLUSについても興味は惹かれている。ヴィランから人々を救うのではなく怪獣災害から人類を守るという使命を帯びるPLUSはヒーローとはまた別の憧憬を皆に滾らせる。
「先日のニュースを君達も見たかもしれんが……山中から出現した怪獣、レジストコード・マグラーを特空機のみで撃破した事で話題になってるな。知っての通りPLUSは人類存亡の要として対怪獣災害想定特殊作戦実行組織として組織されている、その性質故にヒーローとは全く別の方向性を向いている。彼らがやっているのは言うなれば怪獣との生存競争に近い」
それと同時に中には酷く温厚で人間と友好的な怪獣も確認され始めている、中には大昔に残された書物にその存在が確認される怪獣もいる。無人諸島をPLUSが怪獣保護区域へと整備する事で怪獣の生態調査及び研究が行われる予定になっている。
「へぇっ~……単に怪獣を排除する組織じゃないって事なんすね」
「それらについても近々行く見学で皆に考えて欲しい、PLUSに進みたいと言うなら雄英はサポートする用意はある」
「あ、あの相澤先生。雄英としてそれはアリなのですか!?いえ普通科ならばよいかと思いますが私共は……」
困惑を露わにする八百万に相澤は肯定しながらも続ける。
「何も職業ヒーローを育てるのがヒーロー科の方針じゃない、ヒーローをやりたいならPLUSでもやろうと思えばできる。現に轟は既にPLUSに進むと俺に言っている」
『ええっ!!?』
「ああっ。俺はPLUSに行く、ナイトアイにも話してあるし親父にも言った」
一斉に
『親父、俺はヒーローにはならねぇ。俺はPLUSに進む』
『―――そうか、だが簡単な道などではないぞ。お前が挑むのは正しく未知だ、超常黎明期に等しい世界に飛び込む。その覚悟はあるのか』
『俺はヴィランを倒すヒーローじゃない、俺は―――ウルトラマンみたいな誰かを救うヒーローになりてぇって俺が決めた』
『そうか……お前がそう決めたのならば俺は何も言わん、だが母さんにも確りと言っておけ―――焦凍、応援させて貰うぞ』
エンデヴァーは自分が進む道を応援してくれると言ってくれた時、何故か嬉しかった。あれほどまでに№1ヒーローに固執していた筈の父が自分の道を認めてくれたのが嬉しかった。だから自分は自分で決めた道を進むと決めたのだ。
「んじゃ爆豪は如何すんだよ!?」
「……知るか」
素っ気無く答える彼だが内心ではまだ迷っている所があるのも事実だった。ずっと目指してきた夢は捨てたくない、だがPLUSで過ごすのは悪くないし平和の為に戦っている実感もあってやりがいもある。だからまだ決めかねている、まだ時間はあるのだからじっくり迷わせて貰うと決めている。
「んじゃ緑谷は……って彼奴いねぇし!!」
「どうせまた発目に振り回されてんだろ、というか緑谷の場合は発目の事もあるからPLUS決定だろ」
『ああっ確かに……』
焦凍の言葉に思わず相澤までもが頷いてしまった。如何あがいても出久の場合は発目のストッパー兼実験体という代用の利かない役職に固定される事は必須なので当人が拒否したところで絶対に受け入れられないだろう。
「見学はニ日後だ、レポート提出もあるから覚悟しとけ」
『えええっ~あっという間ァ!?』
「しかし随分と急な受け入れを決めた物ですな、雄英生の見学を」
「ええっですが前々から考えていた事ですので別段急という訳でもありません」
テストエリアにて行われているウルトラスーツ:GINGAのテストを見つめながら光士は隣に居るナイトアイへと問いかける。
「私だって何時までも今の席に座れる訳ではありませんから、今のうちに出来る事を精いっぱいやらなければ……」
「それは私に対する嫌味かいナイトアイ」
「さて何のことやら……別に私に相談も無くワン・フォー・オールを無個性の少年に渡した事なんて気にしてませんよ」
「いやめっちゃ気にしてるよね!!?」
と隣に居る修復が終わったGAIAを纏っているオールマイトがツッコミを入れる。エンデヴァーとホークスにはウルトラスーツは予定通りにリミッター機構が組み込まれた上で貸し出された、がオールマイトには許可されなかった。テストであれだけ派手にやれば当然と言えば当然だろう。
「だが事実として何時までも私が司令官代理をする訳には行きませんからね……ぶっちゃけてしまいますと多忙なんですよ。少しは肩の荷を下ろしたいというのが本音です」
「まあ参謀もやってますからね……書類仕事ならば私も手伝えますが……」
「いえいえいえっこれも私の責務ですのでお手を煩わせてしまうなど畏れ多い」
「いや今の私はPLUSの事務員の光士ですけど」
「それはそれで上司である私が自分の仕事を部下に押し付けてしまう愚か者になるので遠慮します」
「これは失礼」
―――ギンガ……サンダァァボルトォォッッ!!!!
スーツのクリスタルセルを黄色へと輝かせながらエネルギーを雷撃へと変換しながらも頭上でそれらを渦状に集わせ、それを腕の動きと連動させるように前方のターゲットへと放たれる。ターゲットを一気に蝕んでいく雷撃―――いや近い性質をに変換されたエネルギー。ターゲットは内部から爆散するように吹き飛ぶとそれを見たテスター……出久は
「発目さんっ今の如何」
『大分良くなってますけど……まだまだクリスタルセルの変換効率が低すぎます。う~んやっぱりセルその物の方向性を限定した方が……いやでもそれだとギンガのコンセプトを壊す事になっちゃうしでも効率を上げると今度は逆流現象が……』
「あの発目さん、僕は大丈夫だから上げてもいいよ」
『駄目ですってば!!私がそう決めたんですからしません!!別の方法を絶対に見つけますからっその為にハーデロスのエネルギー循環機構のリバースエンジニアリングを急がないと……』
「なんか発目少女……変わった?」
「ええっ何やら装着者、緑谷の事を気にするようになり安全機構との兼ね合いを考えるようになってきました」
オールマイトもナイトアイも感じるそれ、発目の勢いが弱まっている訳ではないが走り方が変わったというべきだろうか。唯々性能の向上やら性能のプルス・ウルトラを目指し続けていた彼女が性能と装着者への安全性を併せて考えるように変わっていた。ウルトラスーツは彼女だけが作っている訳ではない、グルテンもデヴィッドやメリッサも協力しており、安全性などはそちらがやっていたのに今は発目も懸命に取り組むようになった。
「やっぱりあれかい、モルス君と色々あったからかな」
「フムッ……考えられますね」
エースキラー・モルスとの決闘から1週間、ヒーリングパルスも併用しながら完治した出久。それと同時に発目は変わったと言ってもいい、何処か大人しくなったというか……分かりやすく言えば女らしくなったというべきだろうか。研究ばかりで御洒落や化粧などにも一切興味を示さず、休憩しか取らなかった彼女が―――
『あ、あのメリッサさん……その、今時の女の子が着る服ってどんな感じですかね……?』
『―――』
『あのメリッサさん聞いて―――』
『パッ……パパ大変よぉぉぉぉぉっっ発目ちゃんが壊れたぁぁぁぁ!!?』
『うっう~ん……それだけ言われるほど今までの私ってあれだったんですか……出久さん急に変わったって引いたりしないかな……』
『こ、こうですか……?』
『ああっ違う違う、もっと優しくで良いのよ。身体は機械じゃないんだから』
『すいません、こういうのは不慣れで……』
『いいのよこれから覚えて行けば、そうそうっこんな感じで良いの』
『これがお化粧……』
メリッサから化粧の仕方を教わったりファッション雑誌を読んでいる姿が目撃されるようになっており何があったのかと今現在PLUSでは話題沸騰中なのである。
「いやぁっ喰った喰った……地球の飯の文化ってのはスゲェもんだなぁ」
「おやっモルス特別筆頭教官」
「おいおいおいやめてくれよ旦那、旦那にそう言われるとケツが痒くならぁ」
そこにやって来た新しくPLUSへと入ったモルス、既に対宇宙人戦闘の教本作りや特空機のフォーメーション考案などでその手腕を振るっている。
「あんちゃんの塩梅どんなもん?俺の傷響いてねぇ、響いてたら俺様代わりにテスターやるけど」
「問題ない、既に完治している」
「あれまっ思った以上にタフいのねあんちゃん」
続けてギンガセイバーの実験に移っている出久を見つめながらモルスは素直にそのタフさに驚いた。身体の傷は良くても普通は精神的に参ってしまって暫く動けなくなるなんて当たり前なのに、平然としている。長い事殺し屋をやって来たがあそこまで元気にされたのは初めての事。
「よしっそれではモルス君、私との模擬戦宜しく頼むよ」
「あいよ、任しときなオールマイトの旦那。俺がアンタを負かしたらぁ」
「HAHAHA!!そう簡単には負けないぞ~!!」
と意気揚々と一緒に笑いながら隣のテストエリアへと向かって行く二人、何やら波長が合うのか仲がいい。そしてオールマイトは対宇宙人戦闘術の確立の為に模擬戦の協力を願い出てくれたのでお願いする事にした。そんな二人を見送りながらマグナはチラリと出久の方を見るとテストが終わったのか、ストレッチをしている出久に発目がドリンクを持って駆け寄っていく。
「はっはい出久さんテスト後に望ましい栄養補給ドリンクです!!」
「あっ有難う御座います発目さっ!?」
受け取ろうとした出久は思わず硬直したのに紅潮してから慌ててドリンクを受け取って顔を背けてしまった。
「ギッギンガセイバーは凄い良かったよ!!凄い扱い易かった!!」
「そっそうですよね!!それに関しては一番上手く行ってるの自信作なんですよぉ!!」
と何処かぎこちない二人にナイトアイは何処か心配そうな瞳を向ける、鈍感……というよりも今までの発目を知っている人間からすればこの反応は打倒というか当然なのである。だがマグナは何故そんな風になっているのか分かっている、何故ならば―――
「あっ後その……出久さんえっとこの後一緒にご飯とか……いっいいえ何でもないですはい!!」
「あっえっと……そ、そう言えば僕テストでお腹すいちゃったからこの後食堂に行くよ!!」
「そっそうですよね!!それじゃあ私も御随伴しちゃいますかねぇ色々スーツの感想とか聞きたいですしぃ!!」
「初々しいとはこういう事を言うんだろうなぁ……口紅を付けているだけであんな分かりやすく反応しなくてもいいだろうに」
「(やばいやばいやばいっ何なの今の発目さんなんでこんなに魅惑的で素敵で綺麗に思えるのもう訳分からないしもう何を言ったらいいのか分からないよマグナさん助けて!!)」
「(メリッサさん本当にこの口紅って初心者向けなんですよね信じてますけどこれ出久さんに変に思われてないですよねぇ大丈夫ですよねああもうマグナさん私を助けてぇ!!)」
「(何か二人からのHELPコール聞こえるな……それじゃあ一言、自分で頑張りなさいっ頑張れ青少年。ファイトだよっ♪)」
「「そっそんなぁっ!!?えっ!?いいや何でもないから!!」」
『いいねっ良い青春っぷりじゃないか……これはこの先が楽しみになるねぇ♪』
『菜奈さん凄い楽しそうだね……でもまあ僕も凄い興味深いけどね♪』
『『人の恋路を傍から見る程、平和で楽しい物はないからねぇ♪』』
女性陣ノリノリである。尚、男性陣は我関せず。唯初代のみ静かにエールを送っていた。